No2
さて、入学式の為家を出て駅に向かったんだが、丁度通勤ラッシュとかち合ったらしくホームは人で溢れかえっていた。そんな場所に男が一人いるわけだ。目立つのなんのって。視線が痛いって初めて知ったよ……。そんな居心地の悪い俺に葵がこちらを見ながら
「兄さん、男性専用車両はこっちですよ」
とホームの端の方を指さしているので案内してくれるらしい。
歩きながら気になった事を聞いてみる事にした。
「なあ、学校は中高一貫校だから同じ敷地内にあるんだよな。校舎って近いの?」
「そうですね。大体歩いて10分位の距離でしょうか」
「なるほど。じゃあ次の質問いいか?」
「どうぞ」
「男性専用車両って例外なく男性しか乗れないのか?理由があれば女性も乗車可能なのか?」
「女性が乗車する場合は男性の付き添いとしてならOKですね。それ以外では家族・恋人もOKです」
「なるほどね。ありがとう。あ~、あとよかったら一緒に男性専用車両に乗ってくれないか?」
「分かりました。良いですよ」
そんな会話をしている内に電車が到着したようだ。吐き出される人・人・人。それを横目に目の前の車両をみるとガラガラ。人いないんじゃないか?と思ったが一人だけいた。スーツ姿のオッサン。付き添いも無く一人らしい。車両にいるのが俺・葵・オッサンの三人だけなので声を抑えて会話していたらあっという間に目的の駅に到着した。さて、駅から歩いて十五分程で学校に着くらしいので他愛無い話をしながら歩いていたら、同じ真新しい制服に身を包んだ生徒が増えてきた。
当たり前だが女子・女子・女子で男子を見ない。チラチラと視線や、小声でなにか言っているのを感じつつ学校に到着。
「兄さんは体育館に直行ですね。私が通う中等部はこっちなのでここでお別れです」
「うん。あっ、放課後一緒に帰らないか?」
「はい。では、校門で待ち合わせでいいですか?」
「了解。じゃ行ってくる」
んじゃ、行きますか。
同じ行先の人の流れに乗りつつ体育館を目指して歩き始めた。
さて、体育館の入り口には受付があってここで名前を言えばクラス毎に分けられた座席表を貰えるらしい。さっそく受付で名前を言うと座席表を貰えた。俺はAクラスらしい。席はっと……、一番後ろの端っこみたいだ。さっそく行きますか。
席についてぼっーとしていたら、いつの間にか入学式が始まっていた。内容については特に語る事は無い。校長の話から始まって来賓の挨拶等々お決まりの流れだ。
長かったお話も終わり、いよいよ各クラスに移動みたいだ。先生の先導の元、クラスに向かっていった。
俺の席は窓際の最後列だった。良い位置だったのでちょっと嬉しい。席替えとかないといいな~なんて考えていたら担任が話し出した。まずは自己紹介から始めるらしい。各々自己紹介をしていよいよ俺の番になった。年甲斐もなく緊張する。
「初めまして。甲野悠といいます。みなさんとはこれから一年間一緒のクラスなので、色々とご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願い致します」
無事終わってホッとしながら席についたんだが、周りがしーんとなっているのに気付いた。俺なにかやっちゃいました?なんて思っていたら先生が
「甲野君は社会人みたいな挨拶をするんですね。みんな少し驚いているようです」
そう言われてうわっ、やらかした…………と思うと同時に冷汗が出てきた。中身オッサンだから反射的に固い挨拶をしちゃったよ。高校生ならうぇ~い!みんなよろしく~!とか軽いノリの方が良かったんだろうか?この空気……気持ち的にはくっ!殺せ!ですよ。とか下らない事を考えていたら先生が
「先生としては真面目でしっかりとした印象で良い自己紹介だったと思いますよ」
そう言ってから空気を変える為かパンパンと手を叩いて今後の事を説明しだした。そして放課後。妹と一緒に帰る為鞄を取り教室を出ていった。
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クラスには大多数の生徒が残っていた。そこでは一人の生徒の話でもちきりだ。
「甲野君格好良かった~!ホントこのクラスに入れて最高!」
「ねっ!クラス落ちしないように猛勉強しなきゃ!」
「それに自己紹介の挨拶も大人っぽくて、ちょっとびっくりしちゃった」
「やっぱり、大人な女の人が好きなのかな?同年代とか範囲外とか?」
「えっ~~、もしそうなら打つ手無し……オーマイガー……」
「いやいや、確定じゃないし本人に聞いてみるしかないんじゃない?」
「でも、いきなり大人な女の人が好きなんですか?なんて聞けないしまずはクラスメイトとして仲良くなるのが先かな」
「だね。よっし!明日から頑張るぞ~!」
「「「おお~~!!」」」
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校門に着くと妹がもう待っていた。
「悪い。待った?」
「ううん。今来たところ」
なんてお決まりの台詞を言いつつ帰路に就いた。
家に帰ると玄関に見知らぬ靴があった。もしかして、母親が帰っているのか?この世界の母親とは初めましてなので緊張する……。着替える前に居間に行って挨拶しようとドアを開けると、美人がいた。めっちゃ美人な女性がいた。
えっ?この人が母親?嘘やろ~、んなわけなかとよ~、とよく分からん言動をするくらい動揺している俺に
「あら、お帰りなさい。学校はどうだった?」
と美人さんが話しかけてきた。
「えっと、ただいま。学校はまあ、上手くやれそうだよ母さん」
「そう。良かった。何か困った事があれば言ってね。お母さん頑張るから」
「うん。ありがとう。じゃ着替えてくるね」
そのまま踵を返して自室に向かっていった。
まさか母親があんなに美人とは……、まあ俺もイケメンだし妹も可愛いし当然なのかな。自分でイケメンとか言うのはちょっとキモイけど……。
その後明日の準備をしたり夕食を食べて風呂に入りベッドにイン。明日から高校生活が本格的にスタートするわけだが、勉強はまあ問題ないだろう。たぶん、きっと、おそらく。 目立たず、平凡に過ごせるよう頑張ろう!努力の方向性が間違っていなくもないが、まあいっか。そうして瞼を閉じると疲れていたのかすぐに意識が遠退いていった。
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ふうっ~、と息を吐いて手元の日記から目を上げた。この日記に書いてあることが本当なのか妄想なのかは分からないが、やけに現実感というか実感がこもった内容だったな。まだ、日記の始まりの方、プロローグといった辺りだろうか。チラリと時計を見るとまだ午前中。飲み物を用意してじっくり読み進めるかと私は椅子から立ちキッチンに向かった。
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拙作をお読みいただきありがとうございます。
また、ブックマークをして頂いた方本当にありがとうございます。
さて、本作の更新ですが週一で更新していきます。(たまに週二の時があるかもしれません)
一応毎週日曜に更新予定です。よろしくお願い致します。
ちなみに初回のみ連投しています。