No16
今日から期末試験対策勉強会が開催される事になった。場所は図書館で放課後に行う。勉強を開始して小一時間。休憩をする事になったんだが、結衣がぐでっ~と机に突っ伏している。おっぱいが潰れて凄い事になっているが……。そんな結衣を横目で見つつ、先輩に気になった事を聞いてみた。
「先輩って教え方上手ですよね。要点を押さえつつ分かりやすく説明してくれて理解しやすいです」
「ありがとう。昔から勉強の一環として他人に教えていたからね。自分でしっかり理解していないと教えられないし、教える上で気付きもあるから自分の為にもなる。一石二鳥だよ」
「凄いですね。先輩の学力だったら、テストとか高得点なんじゃないですか?」
「う~ん、そうだね、八十五点以下は取った事はないね」
「ほんとですか?それって全教科ですか?」
結衣が机から跳ね起きていきなり質問しだした。ビックリした~。
「あぁ、全教科だよ」
「信じられない……、先輩は勉強の神様だったんですね」
「いやいや、毎日予習・復習をしていれば普通にこれくらいは取れるよ」
「学校で勉強して家でも勉強なんて私には無理です……」
「う~ん、こればっかりは習慣づけるしかないからね」
「そうね。私も予習・復習は毎日してるけど別に苦でもないし。結衣はゲームばっかりしてないでもっと勉強した方がいいよ」
「う~、楓ちゃんのいじわる~」
「でも結衣はAクラスなんだし勉強できない訳ではないんだろ?」
「うん。でもこう……、追い込まれないとヤル気が出ないんだよね~」
「そっちのタイプか。爆発力はあるけど持続力がない感じ」
「的を射ているからなにも言えない……」
「でも、今回はこうして結構前から勉強始めてるし良い感じじゃないの?」
「それはハル君がいるからだよ。ハル君と一緒ならなんでも出来る!」
そんな元気があればなんでもできる!みたいに言われても……。アント〇オ猪木かよ!ってツッコミたくなるんだが。くだらないことを駄弁っていたら、二十分くらい経っていた。休憩は終わりにして、勉強を再開しなければ。その後は閉館まで一所懸命やりました。帰る際次回の勉強会の日程を決めて本日は終了と相成った。
試験勉強はバイトの休憩中もしている。今も教科書に目を落としているんだが、そんな俺に
「お~真面目だね~。休憩中も勉強するなんて」
「勉強は学生の本分ですからね。それにうちの学校偏差値高いですし、調子に乗ってたらあっという間に落ち零れてしまいますから」
「偉いね~。私はお菓子作り以外の勉強なんてしたくないよ」
「まあ、パティシエですもんね。でも、聞いた話ではアリスさん進学校出身らしいじゃないですか」
「なっ!?どこでその事知ったの?」
「えっと、店長が教えてくれました」
「あ~の~女~!余計な事喋って~!」
「もしかしてあんまり知られたくなかったんですか?」
「別に秘密って訳でもないけど、良い学校出身とか分かるとぐでぇ~と出来ないだろ。イメージとかあるし」
「あぁ~、確かに。でも大丈夫ですよ。他言はしませんから」
「頼むよ~。私のぐでだらライフを失いたくはないからね」
「ははは。そこはブレませんね」
「私のアイデンティティだからね。それはそうと、どんな勉強をしているんだい?」
そう言われて今やっている所を教えると
「あ~、ここか。間違えやすい所だから注意が必要だよ。とくにこことここね」
そう言いながらなし崩し的に勉強を教えて貰う事になった。なんだかんだ言いつつ面倒見が良いんだよなアリスさん。心の中で感謝しつつ休憩時間は過ぎていった。
さてさて、今までの流れから勉強だけしているように思うかもしれないが、もちろんそれだけでは無い。試験の後には夏休みが待っているのだ!夏休みと言えば、海・花火・夏祭り等を連想するだろうか。もちろん人によっては暑いから外出たくないなんて事もあるかもしれない。俺はと言えば思いっ切り遊ぶ予定だ。
今も結衣・楓と夏休みをどう過ごすか話しているしね。
「ハル君は夏休みはどうするの?」
「今の所海に行く予定はある。あとは、神社で夏祭りがあるらしいからそれも行きたいと思ってる。あとは~、イベントとかあれば行こうかなと」
「おぉ~、アクティブだね。でも海か~……、それって誰かと一緒に行くの?」
「家族と行く事になってるよ。母さんが車出してくれる事になってて」
「なるほど……、ちなみに他の人も一緒に行く事になっても問題ない感じ?」
「んっ?一応聞いてみないと分からないけど多分大丈夫じゃないかな」
よっし!!その言葉を聞いて私は心の中でガッツポーズをした。チラリと隣を見ると楓ちゃんも同じようなかんじだった。海……、水着……、アピールのチャンス!でも、他の子達も参加しそうだしちょっと厳しい戦いになりそうかも。
「ねぇねぇ甲野君。話が聞こえたんだけど海に行くの?」
「あぁ。今から楽しみだよ」
「あのね、もし良かったらなんだけど私達も一緒に行きたいな~なんて」
先を越されたーー!!くっ、なんて素早い行動、私じゃなきゃ見逃しちゃうね。後発になるけど一緒に行きたいって言わなきゃ!
「ハル君ハル君、私と楓ちゃんも迷惑じゃなければ一緒に行きたいな」
「そうなると、結構人数増えるね。車に乗れる人数も限られるしどうしよっか?」
「じゃあ、私の姉にお願いして車出してもらうよ」
「楓ってお姉さんいたんだ。あと迷惑じゃない?大丈夫?」
「問題ないと思う。今日帰ったら聞いてみるね」
こんな感じでクラスメイトと海に行く事がほぼ決まった。俺も家に帰ったら聞いてみよう。事後承諾みたいな形になって申し訳ないけど……。
夕食を取りながら、教室で話していたことを言ったんだが
「お母さんは構わないわよ。悠のクラスメイトがどんな子か見たいし」
「私は……、ちょっと嫌です。兄さんと一緒に遊べると思っていたのに他の人も来るなんて……」
「葵、我儘言わないの」
「葵も遊んだことある結衣や楓もいるから知らない人だらけではないよ。それでもダメかな?」
そういう事じゃないの。私は兄さんと遊びたいの。水着を兄さんに見てもらって褒めて欲しい、スイカ割りをしたり海の家でかき氷食べたり、そういった夏の思い出を他の誰でもない兄さんと作りたいの。この気持ちをぶつけたらどう思うだろう?嫌われる?呆れられる?我儘だって思われる?嫌だ、嫌だ、兄さんに嫌われたくない。グッと気持ちを抑え込み私は笑顔で答える。
「我儘言ってごめんなさい。結衣さんや楓さんもいるなら安心です。私もOKです」
「そっか。ありがとう。じゃあ、明日にでもみんなにOK貰えたって伝えておくね」
こうして夏休みのイベントが一つ決まった。
月日は流れて、いよいよ期末試験が始まった。しっかり勉強をしてきた甲斐があり、するすると問題を解いている。フフフッ、これは高得点を狙えるなとほくそ笑んでいると……。最後の問題がすっごいヤラシくて、教師の悪意を感じる設問だった。う~ん、う~ん、と悩んでいると終了まであと僅か。閃きを!天啓を!と願うが、そんなものは降りてこず結局は適当に答えを書くしかなかった。終わると同時にはぁ~と溜息を思わず吐いてしまった。他の人は最後の問題出来たのかな?聞いてみるか。
「なぁ、最後の問題難しくなかった?」
「あれはズルいよね。時間一杯まで考えたけど分からなくて無回答で出したよ~」
「確かに難しかったけど、ヒントはあったから何とか解けたよ」
「マジで?ヒントとかあったの?楓先生教えてください」
「楓ちゃん教えて」
「じゃあ、説明するね」
そうして教えて貰った訳だが、あ~ここか!なんで見逃してたんだ?ってくらい割と分かりやすくヒントがあってガックシきた……、俺しっかりしろよ。こうした事もありつつ、期末試験期間は過ぎていき全て終わった後は残るは終業式のみ。その終業式も本日行われ、無事終了。ん~~、ヤッホーー!!明日から夏休みスタートだーー!!照りつける太陽、入道雲を浮かべる青い空、うるさく鳴いている蝉。高一の夏休みはどんな出会いがあるのだろうか?期待に胸を躍らせながら、歩き始めた。




