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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
15/163

No14

スマホのアラームで目を覚ますが、眠い……二度寝の誘惑が。必死で抗いながらベッドの上でモゾモゾしつつ起き上がった。朝は比較的すんなり起きられるんだが、疲れていたのか今朝はグダグダだな。しっかり目を覚ます為、ベランダに出て深呼吸。新鮮な空気を取り込み頭も働いてきたし、さっさと準備して朝飯を食いに行こう。


朝食を済ました後は班のメンバーで集まって今日の予定を確認。集まった女子を見て結衣と楓がいつもと違うなと思ったら、髪型が違うのか。結衣はポニテ、楓はおさげ風ツインテールにしている。髪型を変えるだけで雰囲気がガラッと変わるんだな。結衣はより活動的な感じに、楓は少し幼い感じの見た目で可愛い。おっと、会話に参加しなくては。


午前中はレクリエーションをしたが、疲れた。それ以外の感想は無い、疲れたよ。昼食はバーベキューで野菜を切ったり、火を熾したりしないといけないので疲れた体に鞭打ってやる事に。炭とかは重いので俺が運んでいるんだが、女子たちが

「すご~い!甲野君力持ちなんだね」

「わ~、筋肉凄い。格好良い」

「男らしくて素敵」

なんて言ってくれて、調子に乗って運びまくっていたら

「せっかく運んでくれたのに悪いけどそんなにいらないよ」

「あっ、はい……」

反省してます、調子に乗ってましたごめんなさい。次は同じ過ちはしないと誓いつつ火熾しにかかった。団扇でパタパタ風を送りつつ、炭の位置を調整してまた扇ぐ。暑い、汗をタラタラと流していると代わるよと言ってくれる女子が。ありがたい、少しだけ休ませてもらう事にした。休憩がてら調理班の方はどんな感じかなと見に行ってみたが、みんな危なげなく準備している。一人は包丁の扱いが壊滅的だったり、料理した事無いなんて人がいてもおかしくないと思っていたが女子力の平均値は高いみたいだ。

「みんな上手だね。普段から料理とかしてるの?」

「家でお母さんの手伝いをしてるから、慣れてるだけだよ」

「私は料理教室に通って腕を磨いているの。これくらいは楽勝」

「基本的にお菓子作りがメインだけど料理もそれなりに出来るよ」

「もしかして、これくらい出来るのは普通だったりするの?」

「うん。家事・料理は出来て当たり前だと思うよ。親にも小さい頃から教えられるし、多少の得手不得手はあると思うけど苦手とか出来ないっていう人は私は見たことないな~」

「なるほどね。俺も家でたまに料理とかするけど下手の横好きってレベルだし、頑張らないとな」

………………なぜに一斉に黙ったの?

「甲野君料理するの!?」

「あぁ。チャーハンとか野菜炒めとか簡単な料理しか作れないけど」

「男性の手料理……、二万までなら出す」

「ふっ、甘いね。私は三万までならいける!」

「う~わ~、羨ましいーー!私も甲野君の手料理食べたい」

「あー……、よかったら俺も調理手伝おうか?焼きそばとか作るよ」

「本当?ありがとう、助かる~。じゃあお願いします」

「これは、焼きそば争奪戦が始まるね。絶対に勝ってやる!」

「負けないよ~。甲野君の手料理が食べられるんだからなにがあろうと勝つ」

こうして、料理をすることになった。ちなみに、火熾しの方はしっかり終わらせてから焼きそば作りに取り掛かった。


鉄板に向かいキャベツやニラを入れてジュージュー焼いているんだが、暑いね~。首にタオルを巻いてテキ屋のおっさんスタイルで調理している。そんな俺の前にはじっーと食い入るように見ている女子達が。ちょっと怖いが、気にしない様にしつつ目の前の料理に集中。麺をいれてソースをかけて混ぜ、少し炒めた後完成。バーベキューの方も準備が終わったみたいなので実食です。あの、なんで焼きそばの前に行列が出来ているんですかね?肉の方に人が全然いないんですけど……、焦げるよ。そんな事を考えつつ皿に盛りつけてどんどん手渡していくが、最後の一皿になった時それは起こった。吹きすさぶ風、曇り始めた空、漂う不穏な気配。

「この一皿は渡さない。邪魔する者は抹殺する」

「ふっ、貴様に私を倒せるはずがない。全てを薙ぎ払い私が頂く」

「ははは!雑魚共が囀るな。至高の焼きそばはこの我がいただく!」

どこのバトル漫画だよ!厨二病全開かよ!ってツッコミたくなる光景が繰り広げられて軽く眩暈が。この後血みどろの戦いが行われ……ることは無く

「なにを馬鹿な事をやっているの。適当にじゃんけんで決めなさい」

先生の鶴の一声で終了した。無事配り終わったのでようやく食事を始める事が出来る。まずは肉、次も肉、う~ん、美味い!舌鼓を打ちつつ肉を食う。

そんな俺に楓が口を開き

「ちゃんと野菜も食べなさい。バランスよく食べないとめっ!だよ」

お母さんかよと思わず言いそうになったが、楓のいうことももっともなので野菜も食べました。こうしてある意味で波乱のバーベキュー大会は過ぎていった。


午後は自由行動で今日は森林浴をします。だらだら歩きながら他愛無い話をしていると、ポツポツと雨が降ってきた。最初は小降りだったが、しだいに雨脚が強くなっていき本降りに。急いで集合場所に戻り先生の指示で宿に戻ることになった。夕方になっても雨は止まず、より強くなり時々稲光が見える。宿の人の話では明日の明け方くらいまでは降るだろうとの事。特にやることも無く、疲れていたので少し眠ることにした。


落雷の音でハッと目を覚ますと、部屋は暗く窓から外を見ると夜になっていた。夕飯食べ損ねた……、誰か起こしてくれればよかったのに。取り敢えずベッドから起きて、改めて外を見てみた。相変わらず雨が降り、時々雷も落ちている。初日にも思ったが、宿が洋館という事もあり事件が起きそうな雰囲気満点。嫌な想像が頭を過ったが、(かぶり)を振り、気分を変える為お風呂に入る事にした。まだ男性が利用できる時間なので心配無用。昨日のようなハプニングは二度は無いよな?と思いつつ廊下を歩いていると……。

「ヒッ!?」

思わず小さな悲鳴を上げてしまった。廊下の先に白い仮面を付けた黒づくめの人が過ったからだ。見間違いだよな?変なことを考えていたせいで、勘違いでもしたんだ。幽霊見たり枯れ尾花っていう言葉もあるし、気のせいだよな。頬に冷汗を垂らしつつ、重い足を動かし風呂場に向かった。ふぅ~、やっぱり風呂は良い。疲れが溶けていくようだ。ゆっくりと湯船に浸かっていると、結構時間が経っていて就寝時間間際だったので上がり着替えて自室に戻ることに。部屋に戻る途中でふとあの白仮面を思い出した。あれはなんだったのか?コスプレでもしてたのかな?それと悪戯とか?あれこれ考えていて前をあまり見ていなかったのが、致命的だった。ふと気配を感じて前を向くと…………目の前にいた。白仮面が!人間ほんとうに恐怖すると、声が出ないし身体が動かなくなるんだな。そんな俺にヤツは一歩一歩と近づいてくる。それに合わせて後退(あとずさ)るが、このままでは埒が明かない。走って逃げたいが、足がいう事を聞いてくれない。轟く雷鳴、窓を打ち付ける激しい雨。脳裏に過るのは俺はここで殺されるのか?という事のみ。そしてヤツの手が俺の首に………………


伸びる事は無く軽くデコピンされた。

「はぇ?!」

変な声が出てしまったが仕方ない事だろう。

「もう。就寝時間なのに出歩いていたら駄目ですよ」

「え?だれ?」

「私ですよ、私」

「あの……、本当に誰か分からないんですが……」

「担任の谷口です」

「えぇーー!先生?えっ、マジで先生なの?」

「はい、あなたの担任です」

速報!白仮面は先生でした。てか、なんで仮面なんてつけてるの?

「えっと、聞きづらいんですけどなんで仮面を付けているんですか?」

「仮面?……あー、これパック」

「パック?パックってあの美容のですか?」

「うん。こういうのは毎日やらないとあまり効果がないのよ」

「そうなんですか?でもいきなり真っ白の顔の人がいて、ビックリしました」

「あははは。ごめんね、怖がらせちゃって」

「多分女子が見たら泣くんじゃないですかね?」

「ん~、多分見慣れていると思うし少し驚くくらいじゃない?」

そういうもんなのか?家族で美容パックとかしてるの見た事ないけど……。

「それはそうと、もう就寝時間なんだから部屋に戻りなさい」

こうして、恐怖!白仮面事件は幕を閉じた。こう……本当にしょうもない事件だったな。


翌日、朝食を食べた後部屋の片づけを簡単にしてエントランスへ向かう。バスに乗り学校へ向かって進む中、車内では寝息が響いていた。気持ちよさそうに寝ている顔を見ながら、二泊三日の林間学校を振り返ってみた。ラッキースケベあり、事件あり、焼きそばを巡ってのバトルあり。本当に濃い時間だった。それにみんなのいつもとは違う一面をみられたし、仲も一層深まったと思う。特別な時間は終わり、いつもの日常がまた始まっていく。なにかあるかもしれない、なにもないかもしれない。でも、全てひっくるめて楽しもう!色々と考えていたら眠くなってきた……。車の心地よい振動を感じながら、瞼を閉じて夢の世界に入っていった。



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