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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
大学編
130/163

No129

最近思うんだが季節が巡るのが早すぎないか?仕事に追われ、勉学に追われ、彼女達とデートしてイチャイチャして。日々一所懸命に生きていたら時間があっという間に過ぎ去ってしまう。一日二十四時間じゃ全く足りないし、出来る事なら倍に増えて欲しいというのにさ。時の流れというのは斯くも残酷だ。

()()()()()()()()()になっていたのも充実した毎日を送っていたからという事にしておこう。……まあ御託を並べた所でなにが変わるわけでも無いんだけどさ。でも今年も含めてあと二年で卒業となれば将来に向けて今から動かなくてはいけない訳で。俺は大学を卒業したらやりたい事があるし、その為に本格的に行動を開始しようと思っている。でも他の人はどうなんだろうか?とふと気になり聞くタイミングを伺っていたんだが、中々その機会が訪れない。そんな中偶々というか偶然というか俺のバイト先に彼女達が揃ってやって来たんだ。当然この機を逃すはずもなく、早速聞いてみた。あっ、もちろん仕事の休憩時間中にだよ。

「みんなに聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「なんでしょうか?」

「柚子は大学四年生で俺達も三年だろ。んでこの先どうするのかなと思って」

「なるほどね。私はもう就職活動をしているんだけど中々大変だよ」

「柚子はSonneが第一希望だったっけ?」

「うん。でも倍率も高いし、世界中から優秀な人材が応募するから競争率がとんでもないんだよね……。まずは第一関門の書類選考で落とされないように色々と対策を練っているところ」

「うわ~、私だったら即落とされちゃいそうだね」

「結衣は……奇跡が起きれば通過するかもね」

「間違ってないけど楓ちゃん辛辣すぎ」

「柚子さんが希望している会社は私達なんかでは手も足も出ないんだから辛辣もなにも無いと思うけど」

「そうだけど……」

「まあまあ。柚子の状況は分かったけど結衣と楓はどうなの?」

「私はハル君のお嫁さんに永久就職です」

「それは私達全員がそうでしょう。ハル君が聞きたいのはそう言う事じゃなくて」

「分かってるよ。うーん……といっても特にこの仕事をしたいとかは無いかな」

「へー。なんか意外だな。結衣ならこれ!っていうのがあると思ってたけど」

「あっ、一つだけ希望があった。ハル君と一緒に働きたい」

「おっ、嬉しいねぇ。結衣と一緒なら毎日楽しく仕事が出来そうだ」

「ねっ♡」

「結衣の希望は分かったし、楓は?」

「私はどこか適当な会社に入ってOLでもするのかなって漠然と考えてた」

「おうふっ。それはなんとも……」

「自分でもどうかと思うけど、無難だし妥当かなと考えちゃって」

「まあそれも一つの手だよね。でも会社についてはしっかりと調べた方が良いよ。会社説明ではいかにも素晴らしい会社ですって謳っていても、内情は超絶ブラックとかざらにあるからさ。そういう会社に入社したら最後。骨までしゃぶられてポイ捨てされるのがオチだし」

「……凄い実感がこもっているね」

「ちょっと思う所があってね。うん分かった。ちなみにさ俺がお店とか開いたら一緒に働いてくれる?」

「勿論。例え就職していたとしても、すぐに退職してハル君と一緒に働くよ」

「ありがとう。さて、真白さんは神社の神主になるんだよね?」

「はい。代々受け継がれてきた仕事ですし、母の代で終わらせるわけにはいきませんから」

「そのために神職になる為に大学に通っているし当然か」

「はい。ですが、心の中では悠様と一緒に働いてみたいと思っているんですよ」

「んー、俺が今から神職につくのは難しいし神社の仕事のお手伝いくらいしか出来ないよな」

「そうですね。ですが、お手伝いでも一緒に作業を出来るので嬉しいです」

「あはは。それなら手が空いたときなんかに手伝うよ」

「はい。ありがとうございます」

「最後になったけど莉子さんは教師をやっているし、そのまま続投だよね?」

「そうね。転職する理由も無いし、教職が嫌いという訳でも無いから続けるつもりよ。それに悠と出会えた大切な場所でお仕事を出来ているし尚更ね」

「みんなの意見が聞けて良かったよ。将来の事を考えるにあたってどうしたいか、どうするつもりかっていうのは大事な要素だからさ」

「将来って……結婚とか?」

結衣の言葉に一瞬にして静まり返る一同。さっきまで和気藹々としていたのになぜか鬼気迫る顔をしている。凄い圧があるし、ちょっと怖いんだが。つっても曖昧にするのも違うし、かといって結婚しようとか言えばプロポーズになるしその言葉は然るべきタイミングと雰囲気の良い場所で言いたい。となれば……

「うん。勿論結婚も視野にいれての将来設計をしているよ」

「やった」

「よかった」

「ホッとした」

「悠様のお気持ちのままに」

「これで私も花嫁に」

口々に小声で感想を言うが距離が近い為嫌でも聞こえてしまう。内容からして嫌だという意見はなかったようだし、俺としてもホッとしたよ。もし、ゲッ!有り得ないんですけど~!とか言われた日には軽く死ねる。滂沱の涙を流しながら捨てないでくれ~って懇願していたかも。

ふぅ。これで話は一段落かな。ちょっと飲み物でも貰いに行ってくるか。


ホットココアを飲みながら一息。落ち着くわぁー。

「ふぅ。そういえばさ、柚子も就活で忙しくなるし今後こうして皆で集まれる機会も減るのかな?」

「だと思う。大事な時期だし手を抜いたら大変な事になるのは明らかだしね」

「会えないのは寂しいけど仕方ないか」

「そうね。就職してからも最初の一年は時間的余裕は一切無いだろうから三年くらいは厳しい感じかな」

柚子とそんな会話をしていたが、雰囲気がどんどんと暗く、重くなっていく。理解はしているが納得は出来ないといった所だろう。

「暗くなっちゃうのも分かるけど二度と会えない訳でも無いんだし、時間のある時に会ったり、電話やメールでもやり取りが出来るんだからそこまで心配する事もないわよ」

「莉子さん良い事言う。さすが」

「ありがと」

年長者だけあって心に余裕があるというか、大人だな。見た目は合法ロリなのに。

「そういえば、前にうちの学祭に来たでしょう。実はあの後大変だったのよ」

「というと?なにか問題でも起こったんですか?」

「うーん、問題と言えば問題ね。噂の悠と会えた、話せたって数週間は生徒たちが興奮して大騒ぎだったの。落ち着かせるのが大変だったわ」

「ちょっと待って下さい。噂って何ですか?俺高校時代は割とひっそりと生活してたんですけど」

「ひっそりって……。皆勤賞を取った生徒がいう言葉じゃないわよ」

「他にも取った人いますよね?」

「いるけど、男子生徒で皆勤賞なんて前代未聞なのよ。これはあなた達が卒業した後の話だけど、Aクラスで悠が座っていた席は毎回取り合いになるし、学食の裏メニューも今では一番人気になっているし、アルバイト部も過去最高の部員になったのよ」

「マジですか?」

「マジよ」

「一つずつ聞きたいんですけどまず席の取り合いについて教えて下さい」

「単純に悠が在校中に座っていた席に座りたいからよ。ただの男子生徒だったらこんなことにはならないけど変革を齎し、色々な人と分け隔てなく接していたあなただからこそ起こった事ね」

「ふむ。次は裏メニューについてお願いします」

「学食で悠がよく頼んでいたメニューがあるでしょ。覚えている?」

「あれですよね。ハーフカレー」

「そうそう。半分がカレー、半分がドライカレーでご飯の上にキャベツを敷いて上からルーをかけているやつね。あれってメニュー表にはないじゃない」

「うん。俺がおばさんに頼んで作ってもらったからね。てか存在を知っている人なんてほとんどいないと思ってたけどどうやって知ったんだろ?」

「偶々居合わせた生徒が注文している所を見てとかじゃないかしら。まあ経緯は兎も角徐々に注文する人が増えていつの間にか大人気になっていたわけ」

「へー。なんか面白いですね」

「最後にアルバイト部だけど、これに関しては悠が入部していたからね」

「ですよねー。分かっていました」

「部活の性質上あまりに人数が増えすぎると管理出来なくなるから、入部制限を掛けざるを得なくなったのは心苦しいけど」

「俺が居た頃は全部で四人しかいませんでしたからね」

「ええ。少数だからなんとかなっていたけど、二~三十人ともなると流石に無理だし、他の教員に副顧問を頼もうにも手一杯だしで中々ね。……忸怩たる思いだわ」

「無理をしてもトラブルの原因になるし、仕方ないと思いますよ」

「そう……ね」

こうして卒業後の出来事を聞けるのも莉子さんが彼女だからこそだろう。そして俺のせいで苦労を掛けてしまっている事に胸が痛む。在校中にもっと上手く立ち回っていれば彼女の負担も減らせたんだろうか?後悔先に立たずとはこのことをいうのだろう。せめてものお詫びにスウィーツでもご馳走するか。

「莉子さん。奢りますから好きなお菓子を注文して下さい」

「えっ?いきなりどうしたの?」

「なんとなくそういう気分になったので」

「そう。それじゃあ遠慮なく選ばせてもらうわね」

「ハル君。私達には?」

「んっ。結衣達も好きな物注文していいよ」

「ありがと!」

「ありがとう」

「悠君、お財布は大丈夫?」

「問題無いよ。柚子も遠慮なくなんでも頼んで」

「悠様、ありがとうございます。ご馳走になります」

お金はこういう時に使わないとね。彼女達の笑顔プライスレス!

その後は休憩時間が終わるまでお話に華を咲かせましたとさ。

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