No127
今日は絶好のデート日和で僅かな夏の残滓を感じられる太陽の輝きと心地よい風が肌を撫でる。こうしてデートするのは結構久し振りでそれぞれ予定が埋まっていて中々都合がつかなかったが、本日ようやっと漕ぎ尽きた訳だ。んで、行き先は結衣のおススメの動物園です。子供っぽいかもしれないが、侮るなかれ。最近の動物園はマジで凄いんだぜ。昭和世代の俺からしたらまさに未来って思わせる驚きの連続だった。今日はそんな彼女達とのデートをお送りしようと思う。では、どうぞ。
「いやー、でっかいなぁ」
「でしょ。最近改修工事をしたばかりで、凄いお洒落になったんだよ」
「雑誌にもお勧めスポットとして掲載されてたね」
「うん。私の友達も面白かったって言ってたし、期待大だよね」
「うっし。それじゃあ行きますか」
入場口を潜り中に入るとまず目に入るのは巨大ホログラム案内板だ。園内はかなり広い為必須なのだが凄いデカさ。多くの来園者がホログラムに目を奪われている。
「こんな巨大なホログラム初めて見た。どんだけ金かけてんだよ」
「そうねぇ。大体数億はいくでしょうね」
「……それって採算取れるんですかね?」
「織り込み済みだとは思うけど、費用回収計画を圧迫する事にはなるでしょうし、ハッキリ言って冒険だと思うわ」
「ですね。ファーストインパクトは絶大だし効果はあると思うけど思い切ったな」
「これ以外にもかなりの部分で最先端技術を使っているみたいだし総額は想像できないわ」
「ひえ~」
「もう!二人とも現実的な話をしていないで楽しみましょう」
ついつい莉子さんとお金の話をしてしまったが、結衣の言う事は尤もだ。折角のデート、しかも動物園でする話じゃないな。小さいお子さんもいるし、夢を壊すような事を言うもんじゃない。
「悪い。えーと、どこから見て回る?みんなは希望はある?」
「アクアリウム」
「小動物コーナー」
「同じく」
「猛獣館を見てみたいです」
「ペンギン館かしら」
順に結衣、楓、柚子、真白さん、莉子さんが答えてくれた。が、結構バラけている。同じ意見なのは楓と柚子か。多数決じゃないけど同意見があるしそこから攻めてみようか。
「じゃあ、小動物コーナーから行こうか」
「「「うん」」」
「「はい」」
行き先が決まり目的地まで歩きつつパンフレットを見ているが、全部で三十を超える施設がある。全部を見ようと思ったらとてもじゃないが一日じゃあ足りない。二・三日かけてようやく全部見れると言った所か。さらに季節毎のイベントもあるみたいだし、何度来ても楽しめる仕様となっていてよく考えられている。こういう場所って一回来たらお終い、または年に一回来る程度だと思うがこれなら季節毎に遊ぶに来るし商売上手だななんて感心したり。なんて考えている内に小動物コーナーに着きました。
「わぁ~、可愛い」
「あのウサギさん耳が垂れてて可愛い」
「あれは確かイングリッシュ・ロップイヤーね」
「へー。柚子さん詳しいんですね」
「特徴的だったから知っていただけよ」
「それでも凄いです」
うむ。ウサギを嫌いな人はあまりいないんじゃないだろうか。それほどまでに可愛いらしいし癒される。特に触った時のモフモフがたまらない。はわぁ~ってにやけちゃうよね。なんて結衣、楓、柚子の会話を聞きつつそんな事を思う。
「あれはモモンガですか?初めて見ました。莉子さんは見た事がありますか?」
「私も生では初めて見たわ。思ったより小さいのね。それと目がクリッとしていて愛嬌があって可愛い」
「モモンガって飛ぶんですよね?こう……腕を広げてぶわっーって」
「そうね。木から木へ滑空する姿をTVで見た事あるわ」
「生で飛ぶところを見たいけど、木の上でじっとしているし今は見れないかな?」
「無理そうね。ご飯を食べてお腹一杯になったから休憩しているのかしら?」
「ふふっ。想像するとちょっと可愛いです」
「たしかに」
サイズも小さいしペットとして飼う人もいるだろう。けど飛び回るから世話が大変そうだし、夜行性だから寝ている時に顔に飛び降りてベターって引っ付く可能性もある訳で中々に危険だったりするのかも?もし俺がペットを飼うとしたら安牌の猫か犬かな。
「あっ、あっちは鳥さんのコーナーだ。行ってみよう」
その声に頷き皆で移動していく。笑顔でキャッキャッしている姿を見れてこの時点で大満足だが、まだまだ始まったばかり。気合を入れていくぜ!
小動物コーナーは二時間ほど見て大いに楽しんだ後次の場所へと向かう事になった。
次に来たのはアクアリウムだ。幻想的で美しい光景に目を奪われる。水族館とはまた違った趣があり、個人的にはアクアリウムの方が好きかな。落ち着くし、ゆったり眺めて楽しめるのが良い。子供にとっては退屈だろうし面白くはないから、大人向きなのかなと思う。彼女達もさっきまでとは一転して静かに眺めている。その様はとても絵になるし、可憐だ。言葉少なに巡りっていると出口に着き終了。丁度お昼時になったのでここらで昼食と相成りました。レストランや軽食を提供しているカフェなんかもあるが、今回は利用せず自前の弁当を食べます。またそういった人用に休憩スペースがあり晴天時は芝生の上で、雨天時は建物内でと天候に左右されずに使用できるありがたい場所だ。して昼食にあたり弁当を作ってきてくれたのは柚子と莉子さんです。全員が作ると凄い量になってしまう為持ち回りで作る事になっているいて今回はその二人という訳。
「今日は動物園デートだからキャラ弁にしてみました」
「おぉ!可愛い。桜でんぶとか海苔で上手い事動物を表現しているね」
「うん。最初は苦戦したけど慣れてきたら楽しくなって少し作りすぎちゃった」
「大丈夫。俺がモリモリ食べるからOK」
「ありがとう」
キャラ弁の存在は知ってはいたが実際にこうして作ってもらったのは初めてだ。デフォルメされた動物を食材で表現するのは難しいと思うが本当に良く出来ている。というか可愛くて食べるのが勿体ないくらい。
「柚子さんの後だと少し恥ずかしいけど私が作ったお弁当はこれよ」
「中華ですか。うん、美味しそう」
莉子さんが作ってきたのは中華。家庭で料理するのは敬遠されがちだし、弁当を作るにしても冷凍食品で済ます事も多いが、莉子さんのは手作りだ。そう手作り。見た目も綺麗でどれも美味しそう。否応なく期待が高まるぜ。一見キャラ弁との相性が悪いようにも見えるが、柚子は和風の弁当なので濃い目の中華ともかち合わないから無問題。ということで早速頂きましょう。
「んっ。美味しい。やっぱり二人とも料理上手だね」
「「ありがとう」」
「この可愛い動物さんを食べるのは気が引けます」
「うー、真白さんと同じ気持ちだよ~。可哀想になっちゃう」
「それは分かるけど私としては食べて欲しいな。美味しいと思うし」
「そうそう。ここは心を鬼にしてガブッといこう」
「わかりました」
「うん」
真白さんと結衣の気持ちは分かるが、躊躇してはいけない。一思いにやっておしまい。どこぞの女幹部みたいな声援を送りつつ様子を伺っているといった!!
「んっ……。美味しいです」
「むっ、んっう。美味しい~」
「お口に合ってよかった」
頭から齧られて無残な姿になっているが、これも宿命。合掌。
彼女達とこうして過ごしているが、仮に子供が居たら変わるのだろうか?おとーさん、おいちい?なんて聞かれたり、膝の上に乗せて甘やかしたり……。前世でも結婚はしておらず子供もいなかった為妄想でしかないが、悪くない。が、そんな風に甘えてくるのは子供の時だけで思春期に入ったら嫌われるのは目に見えている。父親の悲しい所だが甘んじて受け入れなければいけない業でもある。
「悠様どうかいたしましたか?」
「んっ。ちょっと考え事をね」
「そうでしたか」
「もし子供がこの場に居たらどうなのかなって妄想していた」
「きっと可愛らしくて、父親想いの子供ですよ」
「かな?将来の事は分からないけど立派な子に育って欲しいと思うよ」
「そうですね。力を合わせて頑張りましょう」
「ああ」
「なになに?子供がどうのって聞こえたけど」
「子供が生まれたら子育て頑張ろうねって話をしてた」
「えぇ!!真白さん妊娠したの!?」
「残念ながらまだです。結婚してからのお話になりますね」
「ほっ。よかった~。……うん、結婚して妊娠して我が子を産む」
「その通りです。結衣さんが言うように手順を踏んで進まなければ駄目です」
真白さんの言った事は間違っていないが、前世感覚で考えると古いと言わざるを得ない。性に奔放で手あたり次第喰い散らかす人もいれば、経験だけといって簡単に致してしまう人も居る。一概に良い悪いと判断は出来ないし個人の好みや価値観によるだろう。俺としては恋人や結婚相手が中古だったら嫌だな。童貞・処女を守るのは格好悪いわけでは無いし、寧ろ誇りだと思う。身体の相性云々は心の持ちようで如何様にも変わるし、言い訳に過ぎない。とまあここまで持論を述べてきたが、好きだから、愛しているからこそ相手を大切にしたいという気持ちが大切であり、重要なんだ。
「難しい顔してどうしたの?」
「なんでもないです。それよりも食べましょう」
すぐに頭をリセットして考えを追い出し食事に集中する。今はこのひと時を楽しまないとね。
昼食の後は再び散策開始です。リクエストのあった猛獣館やペンギン館を見たり、世界の珍獣館なんてイロモノがあったので興味本位で見に行って後悔したり。あれやこれやと盛り上がっている内に帰る時間になってしまった。楽しい時間はあっという間だな。
「んじゃ、時間だしこれで帰ろうか」
「うん。でも全部は見て回れなかったね」
「それは仕方ないよ。また時間を見つけて来よう」
「「「うん」」」
「はい」
「ええ」
名残惜しいがこれで終わりだ。だが、全館制覇するまで通ってやるからな!
謎の決意を胸に今日のデートは終わりと相成った。




