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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
大学編
127/163

No126

仕事中の話から思わぬ展開になった飲み会……もとい成人祝いだがちょっと予想していない方向に動いている。まず当初予定していた人達に声を掛けた所全員から参加の言葉を頂けた。ここまではよかったんだ。どこから聞きつけたのか商店街の人達や女医さん、刑事さん、海外旅行でお世話になった護衛の坂本さん・山下さん等々が私もお祝いしたいと言い出したんだよ。気持ちは嬉しいけど一番最初に思ったのがどこで情報を知ったのかだった。内々に話を進めていたので無関係な人には伝わっていないはずなのに……と背中に冷たい汗が流れたのは言うまでも無いだろう。かと言って無下に扱う訳にもいかず大勢が参加となりましたとさ。お店のキャパを考えるとギリギリと言った所で断る人がいなくてよかったとホッとしたよ。


そんな事もありつつそれぞれの予定を調整して迎えた当日。時刻は十九時で丁度仕事終わりに飲み屋によって宴を始める一般的な時間と言えよう。開始十分前には参加者全員が集まった為定刻通り成人祝い飲み会がスタート!開始と同時に結衣が話しかけてきた。

「ハル君は最初に何を飲むの?」

「定番のビールからかな」

「それじゃあ私も同じのにしようかな」

「他にビールを飲む人はいますか~?」

「「はい」」

「柚子と楓ね。んじゃ貰いに行ってくるね」

「うん」

カウンターでお酒を作っている店長にお願いして人数分のビールを確保したのち席へと戻る。

「お待たせ」

「おー。綺麗な黄金色だ~」

「上の泡も肌理が細かくて綺麗」

「美味しそう」

それぞれが見た目について感想を述べている。うちで出すビールはそんじょそこらの中途半端な物ではないからな。店長が吟味に吟味を重ねてこれぞ!という一品をお出ししているし、お客様からも好評なんだよ。飲み口も軽く、仄かな甘みと少し強めの炭酸がマッチしてビールが苦手という人でもゴクゴク飲めるお酒だ。居酒屋で飲むみたいに一気飲みしてプハーって感じじゃなく、ゆっくりと味わう飲み方が合う。どちらが良い悪いではなく楽しみ方の違いだな。っとそれはさておき頂きましょう。

「んっ、んっ……。プハッー!」

「あはは。ハル君おじさんみたい」

「いやいや結衣さんや。ビールを飲めばみんなこうなるんですよ」

「本当に~?」

「飲んでみれば分かるよ」

「じゃあ頂きます。んっ……。プハッー!」

「はい、いただきました~」

「本当にプハッー!って言っちゃった。ちょっと恥ずかしい」

「恥ずかしがることは無いよ。ほら楓や柚子、莉子さんも同じようになってるし」

「えっ?……あっ、本当だ」

「ねっ。ただ真白さんは例外だけど」

「うん。なんて言うか凄く綺麗に飲んでいるね」

「だね。うぅ……これが育ちの違いなのか」

「大丈夫!私はハル君がどんな人でも大好きだから♡」

「俺もだよ」

「なにをイチャついているのかなぁ?」

「あっ、莉子さん。あー、その……あれです。あれ」

「あれじゃあ分からないよ。イチャイチャするなら私も混ぜて欲しいな」

「勿論OKです。こうなったらみんなでラブオーラを発しながら飲みましょう」

「ラブオーラって……。昭和を感じさせるなぁ」

「悠君って時折死語が出るよね」

「ねぇ。どこで知ったのか分からないけど中年っぽい言動が出るよね」

「おうふっ」

莉子さん、柚子、楓から総攻撃を食らってしまったよ。だって中の人がオッサンなんだから仕方ないじゃん。無意識に口を衝いて出るんだよ。んっ?まてよ。これってロリババアならぬロリジジイというカテゴリーに入るのか?いや、ロリはおかしいからショタジジイ?でも二十歳だしショタじゃないからなんだろう?……ただのジジイか……。うっ、考えたら空しくなってきた。この考えはここで打ち切ろう。

「さてと、次は何を飲もうかな」

(わたくし)は日本酒にチャレンジしてみます」

「おぉ、いいね。真白さんと同じく俺も日本酒にしよう」

「それなら初心者向けの飲みやすいのがあるから、まずはそれから始めるのがお勧めかな」

「莉子さんはウイスキーだけでなく日本酒も詳しいんですね」

「一応ね。お酒全般が好きだから自然に覚えていったのよ」

「へー。好きこそものの上手なれって事ですね」

「うん。という事で私がもらいに行ってくるわね」

「お願いします」

「お願い致します」


「お待たせ。はいどうぞ」

「ありがとうございます」

陶器のコップを受け取った時思ったのが冷たくも無く、熱くも無いという事。日本酒には多様な飲み方があり一般的なのは冷酒・冷や・ぬる燗・熱燗だが通な飲み方としてみぞれ酒・日本酒カクテル等もある。冷酒・ぬる燗・熱燗に関しては細かく分類されるがここでは割愛させてもらう。んで、俺が受け取ったのは冷やだ。冷やとは常温の事で口に含んだ時やや冷たいと感じる温度だ。

では早速頂きます。

「んっ……。美味い。芳醇な香りと米の旨味がダイレクトに伝わってくる」

「そうですね。とても風味が良いです。口当たりもまろやかでトゲが無くすっと喉を滑り落ちていきます」

「そうでしょう。二人とも日本酒は初めてだから柔らかくて、飲みやすい種類をセレクトしたのよ。純米酒だから米由来の豊かな旨味と奥深い香りを楽しめるのがポイントなの」

「軽い口当たりだからついつい飲みすぎちゃいそうですね」

「そこは気を付けないと駄目ね。お酒は飲んでも吞まれるなが基本よ」

「確かに。お酒の失敗談なんて枚挙に暇がないし、最悪怪我でもしたら一大事ですしね」

「そうよ。何事も程々に。自分の許容量をしっかり把握して、まだ余裕があるくらいで止めるのが一番」

「悠様。二日酔いにも気を付けなければいけませんよ。かなり辛いと聞きますし」

「うん。心配してくれてありがとう」

二日酔いかぁ……。マジで苦い思い出しかないんだけど。頭痛が酷くて仕事が全く手につかず、一日中へばっていて書類の提出期限を過ぎてしまったり、吐きまくってトイレの住人になったり、イライラして家族にあたってしまったりと最悪の過去しかない。まあ、若いうちの出来事であって年を取ってからはほろ酔い位で飲むのを止めていたからクソみたいな失敗はしていないけどだからといって許されるわけでも無し。本当にお酒は怖いよ。

「は~る君!」

「うわっ!?」

「えへへ~。ハル君だーいすき!!」

「ちょ、結衣どうした?大丈夫?」

「だいじょーぶー。フワフワしていいきもちだよ~」

あちゃ~、酔っぱらってんな。そんなに飲んでいる感じでは無かったんだけど、途中で別れた後ハイペースで飲んでたんかな?楓に聞いてみるか。

「楓。結衣はどのくらいお酒飲んだの?」

「ビールをコップで二杯、あとはカクテルを三杯くらいかな」

「ビールはアルコール度数が低いから問題ないとして、カクテルは何飲んだの?」

「ロブ・ロイ、B-52、イエロー・パロットを飲んでいたと思う」

「はっ?マジで……」

「うん。何か問題でもあった?」

「今挙げたカクテルってかなり度数が高いんだよ。しかもショートカクテルだから時間を掛けて飲むわけじゃない。よりにもよって連続でキツイカクテルを選ぶとかある意味凄いな」

「な~にはなしてるの~。わたしもまぜてー」

「ごめんごめん。結衣さ、少し酔っているみたいだからソファで少し休もう」

「ぶぅ~。よってませんよー」

酔っぱらいは皆そう言うんだよ。もうね、定番中の定番だし。てか泥酔まではいってないし少し休めば多少は酔いも覚めるだろ。ここは強引にでも休ませよう。

「分かったよ。でも俺少し疲れたから一緒にソファで一息入れよ」

「はるくんつかれてるんだ。じゃあ、おやすみしよ~」

「んっ。ありがと。じゃあ行こうか」

「ごー」

結衣と連れ立って移動開始。ソファで少しお話していると次第にウトウトし始めついには寝てしまった。寝顔はなんとも可愛らしく、お酒で火照った様が得も言われぬ色香を漂わせている。そんな事を思いつつ結衣の事を見ていると不意に声をかけられた。

「お疲れ様。結衣ちゃん寝ちゃったんだ」

「うん。少し話してたら限界が来たみたいでこの通り」

「ふふっ。悠君はいつも通りに見えるけどもしかしてお酒に強いのかな?」

「どうかな?自分ではよく分からないな。ただ意識的に飲み過ぎないようにはしているけど」

「偉いね。場の雰囲気とかアルコールで理性が緩んでとかでついつい飲み過ぎる人も多いのに」

「何事も適度・適量が一番だから。それにお酒って一種の麻薬みたいなもので、一時的な快楽を得られる代わりに体には結構なダメージが入るからさ。将来肝臓を悪くして病院通いなんて嫌だし」

「確かにねぇ。良薬は口に苦しとは言うけど結局は毒に変わりないしね」

「体質や遺伝によってもリスクは変わるけど、どちらにせよ飲み過ぎは病気の危険を高めるだけだし、少量なら良いのか?と言われれば首を傾げざるを得ないかな。それと決して安い値段じゃないしさ」

「うん。学生にとっては厳しいよね。大衆居酒屋とかなら格安で飲めるけど薄いし、味もクソも無いただの業務用アルコールを飲んでるのと変わりないもん。かといってBARはさっき言ったけど高くておいそれと行けないしね」

「だねぇ。一番はこういった機会に嗜む程度がベストかな」

「同感」

うーん、いつの間にかお酒談議になってしまっていた。結局のところ人それぞれで、自分の価値観に沿った飲み方・楽しみ方をすれば良いんだよ。身も蓋もない話だけどさ。莉子さんみたいなお酒好きも良し、俺みたいなイベントの時に楽しむのもまた良しって感じでね。

「ふぅ。最後の締めにケーキを食べようと思うけど悠君はどうする?」

「じゃあ俺も食べようかな」

「持ってくるね」

「ありがと」

柚子の持って来てくれたケーキを食べつつ談笑していると、他の面々も集まってきた。成人組は初のお酒についての感想、未成年組は今日の感想を言いながら和気藹々とした時間を過ごす。

そうこうしていると終わりの時間になったらしく、締めの挨拶を聞いて終了。参加者は三々五々帰路について行った。俺は片付けがあるのでお店に残り作業です。今日は本当に楽しかった。お酒の席でしか聞けないような話だったり、いつもとは違う一面を見れたりと最高だった。また機会を見つけて開催したいなと考えつつ片付けという仕事を熟していった。

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