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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
大学編
122/163

No121

長時間のフライトを終えて無事帰国しました。荷物も確保して入国ゲートから出ると出迎えの人が大勢いる中、誰か迎えに来ているかなと辺りをきょろきょろしていたらいました。行きよりも沢山の人が。そんな中真っ先に俺を見つけて走ってくる人影が。

「兄さん!」

「「ハル君」」

「悠君」

「悠」

「悠様」

葵、結衣、楓、柚子、莉子、真白さんが脇目もふらず駆け寄りヒシッと抱き付いてくる。目に涙を溜めながら思い思いの言葉を紡いでいく。

「兄さんご無事で何よりです。ずっと、ずっと会いたかった」

「ハル君、ハル君。無事でよかったよ~」

「怪我をしたって聞いたけど大丈夫?歩いて問題無いの?」

「悠君が怪我をしたって聞いて気が気じゃなかったけど、顔を見れて安心した」

「悠、お帰りなさい」

「悠様、よくお帰りになって下さいました」

「みんな、ただいま」

ただいま。その一言で限界を迎えていた涙腺が崩壊し、泣き出してしまった。女性が一斉に泣くとか非常に外聞が悪いが、これは悲しみの涙ではなく喜び、そして安堵の涙だ。あぁ俺はこんなにもみんなに心配をさせてしまったんだな。本当に申し訳なく思う。心の中で謝罪しているとこちらに向かって歩いてくる人影が。

「お帰りなさい。悠」

「母さん。心配をかけてごめん」

「ううん、悠が無事で良かったわ。ほらみんな悠も疲れているだろうし、少し離れましょう」

母さんの一言によりグズッグズッと涙を啜りながら離れていく女性たち。話したい事、伝えたい事は沢山あるが彼女達だけを構う事は出来ない。刑事さんや女医さんとも話をしないといけないし、真理さんにも色々と助けてもらったのでお礼を伝えないといけない。まずはやるべき事を済ませよう。


話し合いは俺が疲れているだろうからという事で手短に要件のみを伝えて終わった。後日詳しく護衛の二人も交えて話さなきゃいけないし、病院で改めて検査入院をする事にもなったがここら辺は事前に予想していたので問題はない。大事なのは俺の事より彼女達や友人知人のメンタルの方だ。飛行機の中で少しだけ状況を聞けたんだが不眠症になったり、精神的に不安定になったりとギリギリの状態の人が多いみたい。まずは顔を見せて無事を伝えて、あとは時間をかけて少しずつ改善していくしかないだろう。

「お話も終わったみたいだし、一先ず家に帰りましょうか」

「うん。みんなもわざわざ来てくれてありがとう」

お礼を言った後帰宅の途についた。車の中であれこれと話をしたり、ボディタッチが凄く多かったのは心配の裏返しという事にしておこう。



えー帰国してから二週間ほど経ったがマジで色々とあったし、凄い大変でした。一から十まで書くのは大変なので申し訳ないが大きな出来事をメインに振り返りたいと思う。

まずは、病院の件かな。お世話になっている女医さんがいる病院で二日かけて精密検査をした結果異常は無し、至って健康と言われたよ。ただ、脇腹に小石が刺さった傷はどうしても痕が残ってしまうが、希望するなら整形外科手術で目立たなくすることは可能だけどどうする?と聞かれた際少し悩んだがそのままにすることにした。傷痕があるとかなんか格好良いし、歴戦の男って感じがしていいかなと思ったのもあるが、一番はあの事件を忘れたくないからだ。この先この傷痕を見る度に思い返すし、カトレアとの思い出を風化させない為にもね。彼女や家族にも一応伝えたんだが、反対はされなかった。事件の詳細やカトレアとの事も話しておいた事も反対意見がなかった一要因だろう。とまあそんな感じで後遺症やなんらかの異常も無く終わったとさ。


次はバイト関係かな。俺が居ない間代替要員として優ちゃんが働いてくれていたが、帰国した為お役御免とはならずそのまま続投と相成りました。以前からお客様が増えてホール担当人員が欲しい所だったのもあるし、優ちゃんが人生初バイトなのに仕事覚えも良く数日で完璧に仕事を熟してしまったというのもあるだろう。そんな優秀な人材を放り出すのは勿体ないので引き続き働いてもらいたいという話になり、本人からもOKを貰えたので先も言ったように続投となった訳よ。葵も喜んでいたし、俺も男の娘のカフェスタイルを見れて万々歳だぜ!ちなみにうちの女性ホールスタッフの制服はタイトスカート+白ブラウス+エプロンとなっている。想像してみてくれ、美少女男の娘がカフェで働く光景を。

『いらっしゃいませ。お一人様ですか?』

『ではお席にご案内致しますね』

『こちらご注文の品になります。きゃっ……』

『あの……、そんなに見つめられると照れてしまいます』

『バイトは二十九時に上がりますよ』

『えっ?お仕事が終わった後食事ですか?……良いですよ♡』

『もう終電が行っちゃいましたね。この後はどうしますか?』

『家ですか?どうしよう……』

『私男の娘ですけどいいんですか?』

『分かりました。私の初めてを貰って下さい♡』

なんてなぁ!!妄想が極限まで膨れ上がってしまったが、こんな事があったらどうするよ?俺なら美味しく頂いてしまうね。それはもう、精魂尽き果てるまでハッスルですよ。やべっ、涎が垂れてきた。ハンカチどこにやったっけか?

「兄さん、だらしない顔をしてどうしたんですか?」

「うげっ!?葵!」

「うげって。私兄さんに嫌われるようなことをしましたか?」

「いやいや、なんにもしてないよ。ていうか俺が葵を嫌いになるなんて無いから」

「本当ですか?」

「本当だよ」

「じゃあギュッてして下さい」

「しょうがないなぁ」

そっと抱きしめてあげると女の子特有の甘く優しい香りが鼻孔を擽ってくる。仕事中だし長々と抱きしめる事は出来ないのでここら辺で終了。

「あっ……」

「これでお終いだよ。満足した?」

「もう少しして欲しい所ですが、満足です」

「ならよし。仕事に戻ろうか」

「はい」

ふぅ、なんとか誤魔化せたか。しかし帰国してから葵がやけに甘えてくるんだよな。最初は心配だったからとか、数週間会えなかったからだと思ってたけどどうにも違うみたいでさ。心変わりした理由は分からないけど妹に甘えられて嬉しくないお兄ちゃんはいないし、葵の気の済むまで甘えさせてやろうと思っています。


次は大学関係とコラムの話かな。大学には戻ってきて早々に復学届を出してきた。本来であれば休学届は一ヶ月程度なら必要は無いし、復学も基本的には学期始めに限られるが俺の場合は特例で必要なのだ。まあ面倒臭いけどそういう決まりなんだし従うほかないんだけどね。

して新しく請け負ったコラムの仕事だが、事前に二号分を書いていたので穴を空けるとかは無かったけど、どうにもそれ以外で問題が発生したみたいで。あぁ、問題と言っても悪い方では無くて発売された雑誌が即売り切れ&増刷しても即売り切れとなり、買えない人が続出。しまいにはプレミア価格が付く事態にまで発展したみたい。電話で話した時編集長はホクホク声だったけど俺はあまりの反響の大きさに怖くなったよ。だってたかが素人が書いたコラムだぜ。せいぜい流し読みか読み飛ばすくらいだと考えていたのに真逆って。しかもさ、恐らく雑誌を見たであろう他社から我が社でも是非にコラムを書いて下さい!って話も来たんだけどお断りさせてもらったよ。時間が無いのもあるし、あくまで茜の頼みだから受けたし、編集長の人柄に惚れたというのある。だから見ず知らずの人に是非と言われてもちょっとね……といのが本音だ。つー事でこれ以上はお仕事は増えません。


ふぅ……。ざっとこんなもんかな。他にも先輩後輩達とお話をしたり、商店街の人に無事帰って来た事を祝ってあれこれ貰ったりしたけどそれはまた別の話。

そして今に話を戻すけど、なんか真白さんが話したい事があるとかで神社の方まで行きます。正直こうやって真白さんから呼び出しを受けるなんて初めてなので少し緊張してます。てか話って何だろう?帰国してからちょくちょく会っているし、電話でも話しているから皆目見当もつかない。

女性からの大事な話……はっ!?まさか告白とか?それはまあ、真白さんは美人だし大和撫子の体現者だし、料理も上手で良い奥さんになるだろうなとは思っているけど、でもねぇ。俺でいいのかなって思いもあるし、巫女として男性とお付き合いしても大丈夫なの?という心配もある。くぅ~、あれこれ考えても答えは出ないし取り合えず行こうか。会って話せばおのずと答え合わせも出来るわけだし。

おっと、一応告白の線も考えてバッチリお洒落をしていこう。


さあやってきました神社に。長い階段を登り境内へ向かうといました真白さんが。

「こんにちは」

「あら、悠様。こんにちは。ようこそおいで下さりました」

うん、笑顔が大変可愛らしいし白衣と緋袴姿が美しい。

「立ち話もなんですから社務所の方へどうぞ」

「はい」

二人連れ立って社務所へと向かうが、いつもなら他愛無い話で盛り上がるのに今日は無言だ。しかもどことなく思い詰めたような顔をしている。これはよくない話かもな。

向かい合って座り、出されたお茶を一口飲んで喉を潤した後ほっと一息。よし!覚悟は出来た。何を言われても問題ない。ドンときてくれ。

「悠様に一つお聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」

「なんでも聞いて下さい」

「………………()()()()()()()()?」

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