No116(海外編2)
長い時間を飛行機で過ごした後ようやっと目的地に到着しました。もうね、体がバッキバキよ。一応エコノミークラス症候群にならないよう、こまめに歩き回ったり、体操をしていたんだけどそれでも凝り固まってしまうとか恐ろしすぎだろ。あと乾燥した空間に居たから目が痛いし肌もカサカサして大変。潤い~プリーズ!って叫びたくなるんだけどマジで。幸い時差ボケや疲労に関してはぐっすり眠れたので無問題。
して到着して最初にやる事は入国審査なんだが、普通であればアホみたいに長い待ち時間の後順番が回ってくるけど俺の場合は男性専用審査所を利用してパパッと済ませたぜ。荷物もロストバゲージすることなく手元にあるし、さっさとホテルまで移動しましょう。
「ホテルまではバスか電車で行きますか?タクシーはお金がかかりますし」
「甲野さん、それは駄目です。その様な移動手段では安全確保が困難なのでレンタカーで移動しましょう」
「お二人は国際運転免許証を持っているんですか?」
「「はい」」
「おー、凄い。流石ですね」
「まあ色々と必要な場面が多いので必須なんですよ」
「そうなんですね。……すみませんが少し腹ごしらえしてからでもいいですか?お腹空いちゃって」
「構いませんよ。何が食べたいですか?」
「時間も惜しいですしファストフードで済ませたいです」
「了解です。マクド〇ルドがあるのでそこにしましょうか」
三人揃ってマク〇ナルドに行きササッと注文。速攻で出てきた商品を受け取り椅子に座り食事開始。ご飯を食べつつ気になった事を聞いてみることにしよう。
「あの、さっきから思ってたんですが日本語がバリバリ通じるんですね。てっきり英語オンリーかと思ってたんですけど」
「日本語は世界共通語ですからね。殆どの国で第二外国語として勉強する事になりますし、仕事でも必須の所が多いですね。英語に関しては第三外国語という扱いでしょうか」
「流石世界に覇を唱える国だけありますね。そこまで浸透しているとは思っていませんでした」
「女性は兎も角、男性の場合国外に出る機会は皆無ですし知らなくて当然かと思いますよ」
「そうそう知る機会も無いですしね。それにしても母国語が使える事がこんなに楽で便利だとは思いませんでした。しかも相手も片言じゃなくて流暢に喋るから聞き取れなかったり、何言っているか分からないなんて事も無いし」
「第二外国語として勉強する中で文字の読み書き以外にもリスニングにも相当力を入れて教えられるみたいですし、ネイティブに喋れる人は多いはずですよ」
「へー、凄いなぁ」
いやはや、改めてこの世界が前世と似て非なるものだと実感したよ。科学技術や文化も前世と比べて半世紀は先を進んでいるし、単純に同系列の時間軸の世界という訳ではなく少し先の未来の世界に来たってわけだ。今までの生活でも感じていたが、外の世界に出る事で分かる事もあるからね。
「ふぅ、ごちそうさまでした。では行きましょうか」
お腹も満たされたので移動開始。歩いていると沢山の視線が飛んでくる。驚愕・奇異・好奇等々色んな感情が乗った視線を浴びるがそんなの慣れたもので何も感じないしどこの国でも同じなんだなという感想しかない。そして当たり前だが男性の姿は影も形も無い。全て女性オンリー。男は引きこもりというのは世界共通らしいから当然っちゃ当然か。
暫く歩いた後レンタカーを借りて山下さんの運転の元ホテルまでGO。道中は車窓から景色を眺めたり他愛無い話で盛り上がったりして二人の事をよく知る事が出来る有意義な時間を過ごせたぜ。
車で二時間程走った所で今回お世話になるホテルに到着。警備面、格、立地、その他諸々を関係者と話し合って幾つかピックアップした結果選ばれたホテルだ。
さてさて、受付で手続きを済ませた後はお部屋へ向かいますよ~。
部屋の中に入り色々と物色してみた結果、良くも悪くも海外っぽさに溢れた作りだった。部屋にトイレが三つ、お風呂が二つ、ベッドルームが四つにゲストルームまで用意されていて思わず笑いが込み上げてきてしまったよ。泊まるのは俺一人なので絶対に使わねぇ~とか、毎日違うトイレと風呂を使ってみるかなんて下らない計画を立てたりウッキウッキで見てしまったぜ。取り合えず一通り確認した後は早速観光へと繰り出します。ちなみに警備の観点から俺の部屋を挟んで両隣に坂本さん、山下さんが泊まっている為すぐに声を掛けられるから楽ちんなんよ。お二人を呼びに行こうと廊下に出ると気配でも察知していたのか二人とも扉の前で立っていてビビってしまった。
「驚かせてしまい申し訳ありません。そろそろ観光に出掛けるタイミングかと思いまして」
「はい。丁度お二人を呼びに行こうかと思っていた所です」
「ならバッチリでしたね。では行きましょうか」
旅行に来て観光と言えばどこにいくだろうか?名所と言われる場所や、観光案内に載っている場所などが定番かな。あとはツアーなんかでは行く場所が決まっているから楽だろうな。俺が最初に行こうと思ったのは所謂ダウンタウンと言われる場所だ。日本語に訳すと下町だな。庶民が暮らす場所を見るのが一番その国の事が分かるって言うのが一番の要因で、あとは単純に興味からだね。ホテルからは電車に乗って移動する事三十分くらいで到着。
「うわー、なんか新鮮」
「日本とは大分違いますからね」
「十数年昔にタイムスリップしたみたいです。全体的に古い感じがしますね」
「そうですね。先進技術は他国に譲渡しても問題ないもの、かつ古いものを選んでますからそういった印象を受けるでしょうね」
「へー。じゃあ日本以外で生活すると不便に感じる事間違いなしですね。……あと海外の人って太っている人が多いイメージだったんですけど痩せていますね」
「単純に太っていたら男性にモテないですから。それと自己管理が出来ない人という印象を与えるので仕事にも悪影響を及ぼすから体型には気を付けているんだと思います。当然自己管理アプリが浸透しているのもありますが」
「そこら辺の考え方は共通なんですね」
「はい。といっても日本人と比べると太めにはなりますけどね」
「みんな華奢ですもんね」
などと話しながら歩いていると小学校低学年くらいの子供がこちらに駆け寄ってきて声を掛けてきた。
「おにいさん、お花をかいませんか?」
「そうだねぇ、一つ貰おうかな」
「ありがとー!えっと三ドルだよ~」
「ちょっと待ってね」
ふふっ、なんとも可愛らしいではないか。三ドルというと現在の為替レートで三百五十円くらいか。少し高いがいいだろう。財布からお金を取り出そうとした所で坂本さんから待ったの声が響く。
「甲野さん、待って下さい。買う必要はありませんよ」
「んっ?どうしてですか?」
「貴重品をスラれる可能性があります。また、購入したお金は彼女自身には入らずバックにいるシンジケートの物になります。犯罪を助長する行為ですのでお止めください」
「でも、彼女は純粋に生活の為にしている可能性もありますし……」
「こういった路上での物売りは高確率で裏に犯罪組織がいます。なのでどうか」
「分かりました。ごめんね。そのお花は買えないんだ」
そう言うと少女は態度を一変させる。
「チッ!よけいなことをいわないでよ。いいカモだったのに」
「……………………」
そんな捨て台詞を残して少女は去って行った。言葉が出ない。
「気にする必要はないですよ。ああいった手合いはどこに行ってもいますし、気にするだけ無駄ですから」
「そうですよ。いっそ当たり前と思った方が精神衛生上楽になりますから」
「坂本さん、山下さん。ありがとうございます」
旅行初日からなんてこったと零したくなるが、逆に考えれば最初に経験出来て良かったとも言える。大いに楽しんだ後知るよりも最初にガツンとやられた方が心構えも出来るからね。
「さっ、気を取り直して観光の続きをしましょう」
「はい」
くうっ、さり気無いフォローが心に染みるぜ。サンキューです坂本さん。
ブラブラと歩きながら商店街っぽい所を見たり、露店でアクセサリーを物色したり、現地民とお話したりしたが、マジで言葉が通じるって偉大だなと思ったよ。コミュニケーションで困る事が一切ないし、すぐに仲良くなれるから本当に楽しい。しかもだよ、金髪碧眼の美女が多くて最高過ぎる!おっぱいブルンブルンだし、彫りの深い整った顔を近づけながらボディタッチとかされるとあっ……もう無理ってなるよ。護衛の二人の冷めた視線がなければ理性崩壊待った無しだったぜ。
「甲野さんは彼女がいらっしゃるんですから、あまり鼻の下を伸ばすのはよろしくないと思います」
「ですよ。男性なので仕方ない部分もあるとは思いますが、節度を守りましょう」
「はい……」
くぅ~、理性と男の性が必死に戦う状況がこの先も続くのかと思うと辛い。どうか俺のメンタルよ持ってくれ。耐えに耐えて精神崩壊とか勘弁して欲しいし上手く自家発電して発散しよう。
あぁ、苦難の道は果てしなく続く。




