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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
高校編
11/163

No11

葵視点


最近兄さんの様子がおかしい。なにかに警戒しているような、怯えているような感じ。何かあったのか聞いてみても何もない、大丈夫と言うのみ。日に日に顔色は悪くなっていき、あまり眠れていないのかクマも酷い。ねえ、兄さん。私もお母さんも心配してるよ。何があったか話して欲しい。どんな事でも力になるから。


その時は唐突にやってきた。授業を受けていたら高等部に救急車が来て、隊員が慌ただしく校舎に入っていく姿が目に入った。なにかあったのかと俄かに騒がしくなる教室。しばらくすると、他の先生が来て授業をしていた先生となにやら話し始めた。その後自習になり、喜ぶクラスメイトを横目に私は勉強をしようと教科書に目を落とした所で、呼びかけられた。顔を上げると先生が話があるのでついて来て下さいと言ったので移動することに。職員室の片隅で向かい合って座った所で口を開いた。

「あの、なにかあったんですか?」

「葵さん、落ち着いて聞いて下さいね。……お兄さんが教室で倒れました」

………………ナニヲイッテイルノ?理解できない。理解したくない。ありえない。兄さんが倒れた?なんで?どうして?なにがあったの?身体が震える。怖い。兄さん、兄さん、兄さん。

「葵さん!しっかりして下さい」

強い語気とともに肩を掴まれた。

「目立った怪我は無いようですが、病院に搬送されて精密検査を受けるようです。葵さんはこのまま病院に向かって下さい。お母さんには私の方から連絡しておきますから」

「はい……わかりました……」

全身の血が冷たくなり、生きた心地がしない。なんでこんなことになったの?私がもっと兄さんの事を見ていれば、無理にでも休ませていればこんな事にはならなかったのでは?全ては私のせい……………。もし、もし兄さんに何かあれば……私は死んでも許されない罪を背負う事になる。贖罪は永遠に叶わないほどの大罪を……。その後教室に戻り荷物を持って病院に向かった。ただただ、兄さんの無事を祈りながら。


葵視点END




有馬柚子視点


なにやら騒がしい声が聞こえる。耳を澄ませばそれが悲鳴や泣き声とハッキリ分かった。なにが起きたのか?生徒会長としてまずは、事態の把握、そして問題の解決に動かなければいけない。先生に一言言って授業を抜けると階下に向かって階段を降りる。そして見えた光景は……。大声で指示を出す先生、野次馬で群がる生徒、泣きじゃくる生徒。状況は混迷を極めていた。なにがあったのか事情を聴こうにもこんな状況では難しい。そんな中救急隊員が担架を片手にある教室に入って行った。あそこは甲野君のクラス、もしかして……。その予感は教室から出てきた担架を見た時現実となった。全身から力が抜けて床にへたり込んだ。現実とは思えない、どうか夢幻(ゆめまぼろし)であってくれ。だが、人込みを掻き分けて進む担架が嫌でも現実だと叩きつけてくる。座り込んでいる私に近づき声を掛けてきたのは結衣と楓だった。二人とも酷い顔をしている。

「先輩、ハル君が倒れました。外傷は特にありませんが精密検査の為病院に向かうそうです」

「そう。何で倒れたか分かる?」

「いえ。ただ、最近顔色が悪くてあまり寝ていないようでしたので、もしかしたらそれが原因かもしれません」

本人も辛いだろうに泣かずに説明をしてくれる。本当につよい子だ。私が同じ状況だったらきっと泣いて碌に喋れなかっただろう。

「どこの病院か分かる?今から行こうと思うんだけど」

「市民総合医療センターです。私たちも一緒に行きます」

「分かった。じゃあ、先生に話してから向かおう」

甲野君、無事でいてね。ただただ、彼の無事を願いながら行動を開始した。


有馬柚子視点END




担任 谷口莉子視点


私は一年Aクラス担任の谷口莉子(たにぐちりこ)。生徒からは先生と呼ばれて名前で呼んでくれないのが悲しい。それはさておき、今は職員室でテストの採点中。室内は静かでペンの走る音やキーボードの打鍵音しか聞こえない。そんな静寂を破るように悲鳴や、大声が聞こえた。職員室に一気に緊張が走る。何人かの先生が発生場所に向かう中私も急いで行く事に。階段を上がり辺りを見回すとすぐに分かった。

私が担当しているAクラスでなにかが起こったらしい。クラスの周りに集まりだした生徒を掻き分けながら教室に入ると目を疑う光景が。男子生徒の甲野君が倒れている……、頭が真っ白になった。理解が追い付かない。なにがあったの?生徒同士のいざこざ?外部から不審者が侵入した?色々なことが頭を過るがまずは、現状を確認しないと。授業をしていた先生に話を聞き、甲野君の容態を確認することに。外傷は無し、意識は混濁していて倒れた拍子に頭を打った可能性もある為迂闊に動かすことは出来ない。そばにいた前田さんと上原さんに簡単な指示を出しご家族や、バイト先に連絡する為その場を後にした。


担任 谷口莉子視点END




Cafe & Bar Meteor視点


営業準備をしながら、物思いに耽っていた。そう、彼の事だ。最近ミスが多くなってきて、心配して話を聞いてみたんだがどうやら登下校時やバイト中に気味の悪い視線を感じたり尾行をされているらしい。らしいというのは本人も確たるものがないからみたいだ。気のせいかも、勘違いかもしれないと言っていたが、どちらにしろ看過出来るものでは無い。ご両親や担任に相談したのか聞くと大事にしたくないから言っていないらしい。そんな事気にしないで相談した方が良いと言ったが、もし警察沙汰になればお店にも迷惑をかけることになるので実害が出るまでは行動はしないらしい。私はいくら迷惑をかけられても構わない。君がこんなに辛そうにしているのを見ている方が苦しくて、悲しくて辛いんだ。今日出勤してきたら、強引にでも警察に連れて行ってストーカー被害にあっていると相談しよう。そう決めた時店の電話が鳴り響いた。受話器を取り

「はい。Cafe & Bar Meteorです」

「私は私立蒼律学園の教師をしております、谷口と申します。佐伯様でしょうか?」

「はい、佐伯です。あの、どの様な御用でしょうか?」

「そちらでバイトをしている、甲野悠が倒れまして緊急搬送されましたのでご連絡致しました」

息が詰まった。声が出ない、なんで?倒れた?緊急搬送?聞きたい事は色々あるのに言葉がでない。

「大丈夫ですか?」

その声になんとか絞り出した言葉を紡ぐ。

「甲野君の容態はどうなんですか?」

「外傷はないみたいですが、精密検査の為病院に搬送されました。それと暫くは入院すると思いますのでお店の方には出勤できないと思います」

「分かりました。あの、搬送された病院を教えて貰ってもいいですか?」

「市民総合医療センターです」

「ありがとうございます」

「では、これで失礼いたします」

受話器を置きふらつく身体をカウンターに手を置いて支えながら考える。私のせいだ……、私がもっと早く警察に相談していればこんな事には……………。

後悔先に立たず、まさに言葉通りだ。今日の営業は中止にして、病院に向かおう。もう少しで伊藤さんも店に出勤するから、その旨伝えて一緒に行こう。後悔の念がひたすら心に渦巻いたまま準備を始めた。


Cafe & Bar Meteor視点END

次回は二回更新になります。

七月十四日・七月十八日に投稿します。

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