No102
今日は朝の講義が無かった為少し時間がある。家で暇を持て余すのも勿体ないので久々にあの人と会う事にした。大学に入ってからあまり会えてなかったからちょうどいい機会だろうと思ってね。連絡をしたら彼女も午後から講義があるという事でカフェでお茶をしない?と誘ったら即答でOKと返事を貰えたぜ。早速待ち合わせ場所に向かうと凛とした雰囲気を漂わせながら立っている女性が。
「ごめん。待たせちゃったね」
「いえ。私も今来た所ですから」
「そっか。じゃあどこのお店に行こうか?リクエストとかある?」
「そうですね……、スターバ〇クスに行ってみたいです」
「あれ?真白さんってスターバック〇に行った事無いの?」
「はい。噂で呪文のようなものを唱えないと注文できないと聞いて、尻込みしてしまいまして」
「あはは。それは間違ってないね」
「やっぱり本当だったんですね」
「うん。でも慣れればそんなに難しくないし、普通にコーヒー下さいって言えば通じるからそんなに緊張する事無いよ」
「分かりました。悠様がご一緒であれば万事問題ないでしょうし行きましょうか」
こうして世界的に有名なコーヒーチェーン店に行く事になりました。近場にあったかな~とスマホをポチポチして探すとここから十分くらいの所にあるみたい。真白さんと他愛無い話をしつつ店まで行き、入店。幸い店内は空いているようで席に座ることが出来そうだ。いつも混んでいるからテイクアウトばっかだったけど今回はラッキーだぜ。ウキウキ気分でカウンターまで行くと店員さんがお決まりの言葉で出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい。エスプレッソショットアーモンドトフィーシロップバニラシロップチョコレートソースキャラメルフラペチーノを下さい」
「かしこまりました。お客様はもうお決まりでしょうか?」
「えっと……、あの……、悠様どうしたらいいんでしょうか?」
「真白さんは何が飲みたいの?」
「抹茶があればそれが良いです。なければ紅茶にしたいと思っています」
「了解。俺のおススメは抹茶クリーミーフラペチーノかな」
「美味しそうですね。それにしてみます。すみません、抹茶クリーミーフラペチーノを下さい」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
待つ事暫し。トレーに乗せられた美味しそうなドリンクが登場。ソファ席へと移動して座ると真白さんが疲れたように吐息を吐きだす。
「疲れちゃった?」
「はい。凄く緊張してしまいました」
「うん、その気持ちは凄く分かる。最初はどうしたらいいんだろう?って緊張しちゃうよね」
「はい。それにしても悠様は随分と慣れていらっしゃるのですね」
「学校の友達と来る機会も結構あったし、この店は新商品が頻繁に出るからそれ目当てで来たりもしてたからね」
「そうなんですね。羨ましいです」
「真白さんは学校の友達とかとカフェに行ったりしなかったの?」
「実家の手伝いもありますし、なにより皆さん行きつけの場所があるのでそういった機会はありませんでした」
「あー、そういえばお嬢様学校に通ってたんだもんね。そりゃそうか」
「高校時代は機会がありませんでしたが、こうしてこれて嬉しいです」
「それはなによりです。おっと温くなっちゃうし飲もうか」
「はい」
ズズッと飲むとまず甘さが口を蹂躙する。次に苦みとアーモンドとバニラの優しい香りが鼻孔を抜け舌を楽しませる。ぶっちゃけ色々と混ぜすぎている為味覚が渋滞をおこしているがそれもスパイスとなり美味しいと感じるのだろう。多分……。
「抹茶クリーミーフラペチーノはどう?口にあったかな?」
「はい。少し甘みが強いですが美味しいです」
「よかった。ここの商品は基本的に甘ったるいのが多いから心配だったんだ」
「そうですね。たまに飲むくらいなら良いかもしれませんね」
「だね。頻繫に飲んだら病気になっちゃいそうだし」
「糖尿病になりそうですね」
「間違いない。でも、美味しいものほどカロリーが高いんだよねぇ。しかもついつい手が伸びてしまって食べちゃうし」
「甘い物や脂っこい物を食べると脳内麻薬が分泌されるので中毒になりやすいんですよ。所謂分かっちゃいるけど止められないという状態ですね。早めに対処しないと年を取ったら大変な事になりますよ」
「う……、忠言が耳に痛い。でも、ありがとう。やっぱり真白さんは優しいなぁ」
「ふふっ。他の人にはこんな事言いませんし、私にとって悠様が誰よりも大事な人だからです」
「美人さんにそう言われるとなんか照れるな」
「あら、お世辞でもそう言って貰えて嬉しいです」
頬を桜色に染めて淑やかに笑う姿はただただ美しい。この笑顔を傍でずっと見ていたと思うのは我儘だろうか?あぁ、俺はこの人の事が………………。
真白さんと二時間ほどお喋りした後、お互い午後から講義があるのでお別れして今は電車の中です。もう少しでお昼時という事もあって車内はかなり空いている。といっても俺が乗っている男性専用車両はいつもガラガラなんだけどね。あくまで、一般車両が空いているって事なんだけどマジ暇。誰かと一緒なら話も出来たんだろうけど、一人だし音楽プレーヤーも持って来てないからやる事ねぇー。ちなみにスマホで音楽は聴きません。音には結構こだわりがあってスマホだと音質が悪いし、電話とかきても気づかないから使う事はないんだ。歩きながらとか電車やカフェで音楽を聴くんなら音環境も悪いし気にし過ぎじゃね?と思う方もいるだろうが、そこは妥協しちゃ駄目だと思う。もちろん家でアンプに接続したスピーカーで聴くのが一番だけどね。ととっ、考え事をしているうちに駅に着いたみたいだ。
大学に着いた時には丁度お昼になっていた。このままご飯を食べようと思うんだが、一人で食うのも味気ないんで彼女に連絡をしてみようか。
『もしもし、俺だけど今大丈夫?』
『うん、大丈夫だよ』
『今大学にいるんだけどさ結衣はどこにいるの?』
『私も構内にいるよ~。楓ちゃんも一緒だよ』
『そっか。じゃあさよかったら一緒に昼飯でも食わない?』
『勿論OKだよ。じゃあ学食の入り口に集合でいい?』
『了解。今から向かうね』
『気を付けてね』
よし、面子確保完了。我これから学食へ向かう。オーバー。
「おっす」
「あっ、ハル君」
「ハル君、おはよう」
「おはよう。お腹も減ったし行こうか」
「「うん」」
食堂に入ると沢山の学生が列をなしている。これは少し時間がかかりそうだなと思いつつ最後尾に並ぶことにした。さて、何を食うかな?学食を利用するのは初めてなのでここは無難なメニューにした方が安全かな。拉麵・カレー・日替わり定食あたりが妥当だろうか。……カレーにすっか。
「ハル君は何食べるの?」
「無難にカレーにした」
「そっか。私は激辛麻婆豆腐にしたよ」
「結衣さんや。それは危険なチョイスなのでは?」
「うっ……、やっぱりそうかな?でも気分的に麻婆豆腐だったし他のはちょっと」
「普通のやつはないの?激辛じゃない麻婆豆腐とか」
「探してみたんだけど無かったんだ」
「マジで?物凄い尖がったメニュー構成してんなこの食堂」
「だね」
「楓は何にしたの?」
「私は酢豚定食にしたよ」
「おっ、美味そう。……ちなみにパイナップルは入ってるのかな?」
「う~ん、どうなんだろ?」
「パイナップル入ってなかったら次来た時に頼もうかな」
「パイナップル嫌いなの?」
「嫌いでは無いんだけど、酢豚に入っているのが許せないんだよね。なんの為に入れているのか分かんないし、餡と絡まって甘いのに酸っぱい味になるしで許せない存在だね」
「私もあんまり好きじゃないんだ。でも本当になんで入っているんだろう?結衣は知ってる?」
「パイナップルに含まれている酵素にブロメリンというのがあって、たんぱく質を分解する働きがあるんだ。だから酢豚に入れることでお肉を柔らかくしてくれるんだよ。あと消化吸収をよくしてくれる効果もあるよ」
「「へ~」」
「まあ、テレビの受け売りなんだけどね。えへへ」
「いやいや、それでも凄いよ」
「結衣って何気にそういった雑学系知識が豊富だよね」
「まあね!楓ちゃんも勉強ばっかりじゃなくてこういった知識も身につけた方がいいんじゃない?」
「ぐっ……。でも結衣だって雑学ばかりじゃなくしっかり勉強をした方が良いと思うよ」
「「…………」」
あっ、これはヤバいかも。一触即発の雰囲気が漂いだしてきたのでここら辺で何とかしないと周りに迷惑を掛けてしまう。
「はい、そこまで。もうすぐ俺達の番になるし喧嘩は無しで、ねっ」
微笑みつつ二人の頭を撫でながら言うと二人同時に頬を染めながら頷く。
「「うん」」
可愛いーーー!!なにこの可愛すぎる生き物。俺の幸福指数は今三百%を突破してなお上昇中だぜ!丁度順番が回ってきたのでもうにっこにっこでおばちゃんに注文したら何を勘違いしたのか真っ赤になりながらこんな事を宣ってきた。
「気持ちは嬉しいけど私子供もいるし、けど若い男の子から素敵な笑顔を貰っちゃったし。うふふっ、やっと私にも春が来たのね!これから彼と二人っきりの甘い生活が始まるんだわ」
………………この人怖い。どうしよう、マジでヤバい人に出会ってしまった。所謂メンヘラとかヤンデレ気質がある人なのかな?ここで俺が何かアクションを取れば変に勘違いしそうだし、かと言って逃げるのも後が怖い。どうしよう……。
「ハル君、ここは私達に任せて」
「いいの?かなりヤバそうな人だったけど」
「大丈夫だよ。ハル君は先に席を確保していてもらえるかな?」
「OK。じゃあ結衣、楓。検討を祈る」
「ラジャー」
「任せて」
女の子に丸投げとか男として失格だが今回は相手が悪すぎた。二人がどうやって解決するのかが気になるがここは大人しく指示にしたがい席の確保に動こう。
はぁ~、なんかどっと疲れたです。




