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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
大学編
101/163

No100

おはようございます。寝起きなので頭があまり働いていませんが、準備を始めます。まず、着替えてそれから顔を洗って歯を磨いて一旦完了。…………てか男の朝の光景って需要があるんだろうか?男女ともに美少女の方が良いんじゃないか?まあ、深く考えても仕方ない事だし朝飯食いにリビングに行くか。あっ、ちなみに髭剃りはしていません。なんか髭生えてこないんだよね。精々産毛程度だから楽なんだけど、やっぱ年取ったら髭を生やしたダンディおじ様になりたいわけじゃん。となると今の状況はあまり宜しくない訳で。真剣に髭育毛剤が無いか探しているんだけど見当たらない……。毛根の将来性にかけるしかないという悲しい現実。朝から気分がだだ下がりになってしまった。くっそー。


「おはよう」

「おはよう」

「兄さん、おはようございます」

「もうご飯できてるから食べてね」

「うん」

さて今日の朝食はご飯、目玉焼き、小松菜のおひたし、味噌汁、鮭の塩焼きといったラインアップ。純和風の朝食ですね。では、いただきます。

「おっ、この鮭凄い美味しい」

「でしょ。商店街のお魚屋さんがお勧めしていてね。時鮭(ときしらず)っていうらしくて、春から初夏にかけて水揚げされるらしいの。漁獲量は少なくてその分お値段も高いんだけどね、折角だから買ってみたのよ」

「へー。貴重な魚なんだ。でも美味しいしこれはご飯が進む」

「おかわりもあるから必要なら言ってね」

「んっ。……葵、あんまり食べてないけど大丈夫?」

「あっ、大丈夫です」

「本当に?なんか元気ないみたいだけど」

「……これから兄さんと一緒に通学出来なくなると思うと寂しくて」

「そっか。でも俺が高校行った時も葵は中学生だったし離れ離れだったろ」

「そうですけど。でも途中までは一緒だったから我慢できたんです」

うーん、これはどうしたもんかな。葵も高二だしそろそろ兄離れしないとマズいと思うけど、悲しそうな顔を見ると突き放す様な態度をとるのもなぁ。

「葵。我儘言わないの。もう高校生なんだからしっかりしないと。いつまでも悠にべったりじゃ駄目よ」

「お母さんの言う事も分かるけど、それでも私は兄さんの隣にいたいの」

「もう、困った子ねぇ。悠はどうなの?」

「兄離れして欲しい気持ちもあるけど、可愛い妹の頼みだし無下には出来ないし」

「兄さん、途中まででいいので駄目ですか?」

「そうだなぁ。……じゃあ、朝から授業がある日は途中まで一緒に行こう」

「やった!」

「もう、悠は本当に葵には甘いわね」

「お兄ちゃんですから」

自分でも甘いなとは思うけど、良い笑顔を浮かべているのを見るとしゃーなしとも思ってしまう。妹が可愛過ぎるのがいけないんだよー。

と、そんな一幕もありつつ朝の準備を全て終わらせていざ出発。今日は授業初日なので遅刻しないようにしなければ。初っ端っから遅れるとか印象悪すぎだからね。



高校時代は葵と一緒に登校していたが、今日からは一人。隣に誰もいないのは寂しさを覚えるが我慢しなければ。イヤホンで音楽を聴きながら通学しているとあっという間に大学に到着。経営学部の教室へと辿り着くと扉を開け中へ。室内には三分の一程の生徒がいた。始業時間までかなり余裕があるからこんなもんだろう。初日という事で張り切ってしまいこんな早く来てしまったが次からはもう少し遅くに来てもいいかもなと思いつつ空いている席へ向かう。高校とは違い席が決まっている訳ではないので空いている所に各々座る形になるが、どこにするか?前はなんか嫌だし、後ろも見えずらいから駄目だな。中間のやや後ろよりで窓側がベストかな。おっと、空いているしGETしちまうか。……俺が歩くたびに凄い視線を集めているんだが。頼むからそんなに注目しないでくれと思いつつ席に着き鞄から必要な物を取り出し準備完了。やべっ、やることねぇー。同じ学部に通う知り合いや友達もいないし、どうしよう。スマホをポチポチする気分じゃないし、ここは目を瞑り悟りを開く訓練でもするか。

暫し瞑想をしていると教室の中が若干騒がしくなり始めた。すっと目を開けて辺りを見回すと続々と生徒たちが登校してきている。が、なんというか緊張感?が漂っているし、機を伺うような雰囲気がある。なんで朝からそんな殺伐とした感じなんだと不思議に思うが、もしや俺が知らないだけで決まり事とかあるのか?暗黙の了解があってそれを俺が守っていないからこんな空気になったとか?あー、こんな事なら柚子にそこら辺の話を聞いていれば良かった。まさに後悔先に立たずである。



another view point


このピリピリとした空気の原因は甲野悠が原因である。別に彼が何かしたとか悪いわけでは無い。では理由はなんなのかとなるが極々簡単な話だ。誰が彼の隣に座るかの争いをしているのだ。はっ??と思うかもしれないが、以前にも話したが大学時代が男性を掴むラストチャンス。しかも自分がいる学部には男性が居るという奇跡。仲良くなりたい、あわよくば彼女になりたいと思うのは当然だろう。となればファーストコンタクトがもっとも重要になる。当然接点がなければファーストコンタクトもクソも無いから誰も彼もが隣の席に座りたいわけだ。

「みんな牽制しあっているね」

「うん。でも気を抜いたら駄目だよ」

「当然。最悪隣が無理でも前後のどちらかは確保しておきたいね」

「だね。馬鹿みたいに高い倍率を潜り抜けて合格したのに男性と一言も話さずに終わるとか勘弁だし」

「言えてる。でもさ、彼女いるらしいよ」

「あー、なんか入学式で一緒に居た子でしょ?」

「そうそう。噂では高校の同級生らしいよ」

「へ~。確かに可愛かったし彼と釣り合うから問題ないけど、羨ましいな」

「ねっ。でも諦めるつもりは無いし頑張ろ!」

「うん。そもそもこの学部に入った人ってかなりの割合で彼目当てじゃない?」

「だと思う。勿論本気で経営学を学びたいって人もいるし、超高倍率を突破したんだから頭はかなり良いんだろうけど目的が不純だよね」

「それあんたが言う?」

「あー、あははは」

「もう。……最悪付き合う事は出来なくてもお友達にはなりたいよね」

「もちろん。男友達がいるってだけでステータスだし、将来も明るいしね」

「うわっ、打算が過ぎるよそれは」

「違う違う!あくまでそれは副次的なものであって、一番は彼と仲良くなりたいっていう純粋な気持ちだから」

「ふふっ、分かっているって」

「いじわる」

「で、どうする?早くしないと取られ…………たーーー!」


another view pointEND



そんなやり取りが交わされていたなど露知らず、なんとなく身構えていた俺に声がかかる。

「あの、お隣よろしいですか?」

「あっ、はい。どうぞ」

「失礼します」

うん、美人だ。やや明るめの茶髪に薄化粧、モデル体型だけど出る所はしっかりと出てていてグッ。服装は清楚+お嬢様系とでも言えばいいのだろうか?なんかそんなかんじ。……女性のファッションとか詳しくないから仕方ないじゃん。ごほん。それはさておき、落ち着いていて透き通るような耳に心地よい声と喋り方。以上の点を踏まえると高貴なお方に違いない!金城さんとはタイプの違うお嬢様といった所か。

「あの、私の顔に何かついていますか?」

「あっ、ごめんなさい。美人だなと思ってつい見惚れてしまいました」

「そ、そうですか。ありがとうございます」

ふっ、美人が真っ赤になって照れている姿はまさにてぇてぇな!

「あの……、お名前を伺ってもいいですか?」

「甲野悠と言います。よろしくお願いします」

「私は坂本茜と言います。こちらこそよろしくお願いします」

「ちょっと聞きたい事があるんですけどいいですか?」

「はい」

「さっきから教室の空気がピリピリしているんですが、理由分かりますか?」

「あー……、あまり気にしなくても良いと思いますよ」

「そうですか?暗黙の了解とかあって俺がそれを破ったからとか色々考えていたんですけど」

「大丈夫ですよ。甲野さんは何もしていませんし、心配いりません」

「そうですか。……あの、俺の事は悠で構いませんよ。あと同級生ですし敬語もいりません」

「では悠君と呼びますね。私も茜と呼び捨てで構いませんし、敬語も不要です」

「分かった。じゃあ、改めて茜。よろしくお願いします」

「はい」

柔らかく笑顔を浮かべる茜はとても綺麗だった。思わず惹きつけられる程に。でも俺には彼女がいるんだし手を出したりはしないよ。悲しませるような事は絶対にしないし、あくまで茜とは友達として関係を築いていくつもりだ。……見惚れていた言い訳じゃないからね。

そうこうしているうちに教室の席はどんどんと埋まっていく。なぜか前後左右に座った女子が喜色満面だったのは謎だが。

初回の授業は大雑把なコースの紹介、シラバスの配布、成績評価について必要事項の確認等々を行い終了と思ったがそうは問屋が卸さなかった。

「えー、例年であればこれで終わるのですが、もう少し話を続けます。皆さんご存じの通り、今年は男子が入学しました。今まで男性と交流があった人も無かった人も節度を持って接して下さい。また、全学年からかなり注目を集めているので厄介事やトラブルが起きる可能性があります。その場合は周りにいる警備員や教員にすぐに声を掛けて下さい。また、彼の迷惑になる行為や必要以上にプライベートに干渉する行為などは控えるように。最悪退学になりますので注意して下さい。以上となります」

おふっ……。名前は出してない物のこれって俺の事だよな。なんか逆にみんなに迷惑を掛けているようで申し訳ないな。ほんとごめんなさい。そんな思いが顔に出ていたのだろう。茜が声を掛けてきた。

「悠君が気にする必要はないですよ」

「茜……」

「先生の話していた事は当たり前の事ですし、皆理解しています。だから本当に気に病む必要はないんですよ。というか理解できない人は合格出来なかったでしょうしね」

「ありがと」

最後の方は小声になって聞き取れなかったが、そっか。そう言われると少し心が軽くなったよ。茜とはこれからも良い友人として付き合っていきたいな。

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