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この世界で俺は……  作者: ねこネコ猫
大学編
100/163

No99

大学編スタートです。

大学に行くにあたって皆さんはどんな準備をするだろうか?一人暮らしの準備や新しいPCや道具を買うとういう人もいるだろう。俺は実家から通学するので問題ないし、ノートPCも既に買ったのでOK。じゃあもう準備万端じゃね?と思うかもしれないがそれは大きな間違いだ。なぜなら服が無いからだ!高校時代は制服という最強の武器があった為私服なんざズボン二枚と季節に合わせた上着が数着あれば十分だったんだよ。平日は制服、休日は家にいる時は部屋着でデートとか外に出る時は数少ない私服を着るって感じで過ごしてたんだ。そうなると毎日私服で通わなければいけない大学では大いに困るわけで……。仮にだよ、毎日同じ様な服だと『うわ~、あの人毎日同じ服着てる~。キモッ』、『不潔すぎて近寄れないわ。てか、キモッ』とか影で言われる事必死。そうなれば暗黒時代の到来な訳で、引きこもりの末大学中退待った無しなわけよ。そんな悲劇を回避すべく今日は彼女達&葵と買い物に来ています。予算はふんだんに用意したのでこれでもかと買うぞ!

「え~と、紳士服売り場は四階だね」

「エスカレーターで行く?エレベーターで行く?」

「エレベーターでおなしゃす」

「分かったよ~」

トコトコと四階まで上がり着きました紳士服売り場に。ここは以前もお世話になった所で色々と便利なので今回もお世話になる事にした。

「いらっしゃいませ」

「こんにちは」

「今日はどの様な商品をお探しですか?」

「春物を買おうかなと思ってます。お値段は多少張っても構いません」

「そうですか。でしたらこちらなどどうでしょう?」

そんなやり取りをしつつ商品を吟味していく。と言っても今どきの流行りとかあんま分からないし、女性から見た印象も大事だから女性陣に丸投げ……、じゃなくて意見を聞きつつだけどね。

「これなんてどうかな?」

「うーん、ハル君のイメージとちょっと合わないかな」

「私は可愛いと思うけど」

「結衣。ハル君は男性なんだから可愛い系は駄目でしょ」

「じゃあ……、これとか?」

「うん、良いと思う。柚子さんと葵ちゃんはどう思う?」

「良いんじゃないかな。清潔感もあるしデザインも落ち着いてるし」

「そうですね。兄さんに似合うと思います」

「じゃあ、これで仮決定ね。次はズボンを選ぼうかな」

お分かり頂けただろうか?俺の出る幕が無いという事が。そう、女性陣が張り切ってしまいどんどん決めていくのだ。偶に意見を聞かれるくらいで、俺の役目と言えば仮決定した商品の中から選ぶだけ。いや、いいんだよ。頼んだのは俺だし、センスがある人達に選んでもらった方が良いってのはさ。でも、なんか違くね?と思ってしまうのは俺だけではないはず。

『ハル君、これとかどうかな?似合うと思うんだけど♡』、『ふっ、可愛い彼女が選んだんだから間違いないね。これに決めた!』とか甘酸っぱいやり取りを期待してたんです。まあいいけど……。


んで、最終的にはズボン三着、上着七着、その他諸々を買った結果俺の財布は物凄く軽くなりました。だが、これでオシャレボーイとして大学で名を馳せる事間違いなし。グフフフッ。

「折角だし私達も服買ってかない?」

「そうだね。春物を新調しようかな」

「賛成」

「いいですね。兄さん、いいですか?」

「構わないよ」

「……その前に少し休憩しない?悠君も疲れたでしょ?」

「ありがと。そうさせてもらえると嬉しいな」

柚子はなんて気の利いた子なんだろう。普段は買い物なんかちゃっちゃと済ませるから今回みたいに時間がかかると疲れるんだよね。デパートとかでお父さんがベンチで疲労困憊で座っている気持ちが分かる。

「じゃあ、カフェにする?それともお昼も近いしレストランの方にする?」

「兄さんはどっちがいいですか?」

「そうだね。お腹も空いたしレストランかな」

「了解~。じゃあ、レッツゴー」

五人もいれば食べたい物も違う訳で、下手をすると終わらない戦争勃発となるが俺達には当て嵌まらない。なぜなら全員ラーメンが食べたいと言ったからだ。ラーメンとは漢字で書くと拉麵となる。ルーツに関しては諸説あるが、ここでは議論はしないので悪しからず。定番の味噌・塩・醤油に豚骨等が基本だが白湯やカレー牛乳ラーメン・ブラックラーメン等一風変わった品もあるし、続々と新しい商品が生み出されている奥が深い食べ物でもある。その深奥を覗くことは決して叶わず、果てなき道はどこまでも続いている。まさに拉麵道というべきそれは生半可な覚悟では歩けない。……と下らない講釈を垂れてしまったが、要はラーメンって最高だよねって話。

「皆は何味にするの?」

「味噌」

「醤油」

「醤油豚骨」

「トマトラーメン」

結衣は味噌、楓は醤油、柚子は醬油豚骨、葵はトマトラー……、んっ?

「葵。トマトラーメンってなに?」

「トマト系スープパスタのような見た目で、味もどちらかと言えば洋風のラーメンです」

「それって本当にラーメンなの?」

「はい。中太縮れ麵が濃厚かつさっぱりとしたスープに絡みついてとっても美味しいですし、やみつきになりますよ」

「マジか。興味出てきたけど……、浮気せずにここは塩一択で」

「でしたら少し私のを食べてみますか?」

「いいの?」

「はい」

おぉー、やったぜ。ありがたやー。


こうして昼食を食べた後は女性陣の買い物に付き合いました。さっきとは逆で俺に色々と意見を求められたが、我ながら今回は良いチョイスを出来たと思う。可愛いのが買えてよかったって喜んでたし。

という事で目的も果たしたのでこれでお開きとなります。駅で別れの挨拶を交わして家路へと向かおう。うん、たまにはこういうのも良いな。夏服を買いに行く時が楽しみだぜ。



四月になりました。現在スーツに身を包み、鏡の前で改めて身だしなみをチェック中。髪型OK、ネクタイも曲がっていない、スマイルOK。うむ、どこにも問題は無いな。よっし!行きますか。


電車に乗り最寄り駅で降りた後しばらく歩くと見えてきました。俺が今日から通う大学が。そう、今日は入学式なのです。この世界に来て三年が経ったと思うとなんとも感慨深いな。

「ハル君、こっちこっち~」

耳慣れた声の方に振り向くと結衣と楓が手を振っている。何を隠そう二人も俺と同じ大学に合格したんです。二人ならもっと良い大学に行けたはずなのに同じ所を選んでくれたのは凄い嬉しかった。ここだけの話結衣は勉強があまり得意では無いけど地頭が良いからやれば出来る子なんだよね。そう、やる気にさえなれば物凄く努力するし、その才を思う存分発揮する気分型とでもいうのかな。そんな感じ。

「待たせてごめんね」

「ううん。道に迷わなかった?」

「結衣、お母さんみたいな事言わないの。ハル君だってもう大人だよ」

「でも、心配だったんだもん」

「ありがとな」

そう言いながら頭を撫でると目を細めて破顔一笑。小さい背丈と相まって大変可愛らしい。まあ、おっぱいは凶悪なサイズだけどな。

「それじゃ行こうか」

「「うん」」

入学式は構内の大講堂で行われるので少し歩かなければいけない。当然そこまでの道のりでは他の新入生もいるわけで。左右に結衣と楓がいるが、高校時代以上に目立ってしかたない。

「えっ!?男性が……いる?」

「スーツということは新入生?」

「噂には聞いていたけど本当だったんだ」

「ふふふっ。彼は経営学部で私も同じ学部。あんたは文学部史学科だったよね。今どんな気持ち?ねぇねぇ今どんな気持ち?」

「うっさいわボケーーー!!」

最初の方は妥当な反応だったけど最後のなに?完全に煽り倒してたんだけど。あっ、ポカポカ殴られてる。いやー、些細な事でマウントをとって煽り散らかすのはどこの世界でも一緒なんだな。

「ハル君、見ちゃ駄目」

「うわぁ」

楓が後ろから手を回して目隠ししてくる。が、背丈が足りない為微妙にズレているんだが。

「あー、気持ちは嬉しいけど大丈夫」

「本当?」

「友達同士の些細な喧嘩みたいなもんだし可愛いもんだよ」

「ならいいけど……それよりも早く行こ」

手を握ってきて催促してくる楓に軽く頷きながら歩き出す。その光景を見て嫉妬と疑念が渦巻いたのは見なかった事にしよう。して話しながら歩き辿り着きました大講堂。受付で手続きをした後会場へ行こうとしたら待ったがかけられた。

「甲野さん、今案内の者が来ますので少々お待ち下さい」

「えっと、はい」

このパターンは入試の時と同じなのかな?まさか別室でモニター越しに式典を見るとかは無いと思うけど。…………ないよね?

「お待たせしました。では、ご案内しますので着いて来て下さい」

「あの、俺だけ移動ですか?彼女達は一緒じゃないんですか?」

「あっ、すみません。言葉足らずでした。お連れの方もご一緒にご案内します」

よかった。一人だと結構心細いんだよ。ホッと安堵しつつ連れられた先は新入生が座る場所から離れた角っこだった。椅子は三脚のみで周りには警備員や職員が立っている。おいおい、物々しいし悪目立ちするじゃんと思うが、口には出せない。なんで小声で彼女に聞いてみた。

「なぁ、流石にこれはやり過ぎじゃない?」

「そんな事無いよ。もしハル君が一般席にいたら前後左右の席を取り合う血みどろのバトルになるよ」

「うん。それに、ハル君が入学するって知っているのは同じ学部の人と一部の先輩のみだから男性が居る!?って大騒ぎになっちゃうよ」

「ここに来る道でも結構な人数に俺の存在を知られているし今更じゃない?」

「その人たちも精々全体の三分の一以下だし、混乱は免れないよ」

「それもそうだな。ここは大学の厚意に甘えるとしよう」

「「うん。それがいいよ」」

特別席でお偉いさんのお話や、入学生総代の宣誓文読み上げ、関係者のありがた~いお話、新入生への諸注意等々を聞いた後終了。さて帰るかと立ち上がると後ろから声がかかった。

「甲野君、今日はこのまま帰りますか?」

「はい」

「では、校門まで案内しますね」

「あの、場所は分かっているので大丈夫です」

「規則なのでお願いします。それと案内無しではまともに帰れないと思うので」

「というと?」

「外で出待ちしている学生が沢山いるという情報が入ってきています。それに迂闊に外に出たら質問や告白の雨霰になりますし、身の安全も脅かされるでしょう」

「あっ、はい。案内お願いします」

うん、安全第一。面倒事は極力避けなきゃね。はぁ……、俺の大学生活はどうなるんだろう。平穏無事に過ごせればいいんだが、入学式でこれだと無理……いや、ここで心が折れては駄目だ。

絶対に目立たず、静かで、安全な大学生活を送るぞーー!!

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