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調査

 クロウは屋根付きの幌を付けた馬車を走らせフィオと別れた場所まで向かった。

 途中食料や水、そして緑のローブを購入した。

 そこにつくとフィオは騒ぎを起こしたらしく沢山、倒れた人々の山に座りクロウを待っていた。

 「よお、クロウ」

 何事も無かったかのように振る舞うフィオを見てクロウは頭を抑えた。

 「この人の山はどうした?」

 「ほれ」

 フィオが親指で後ろを指すと、先程売られていた親子やら他の魔族が加わり魔族の集団ができていた。

 中には再開を喜び抱きしめている最初に出てきた男の姿もあった。

 

 クロウはため息を付き荷車を見た。

 かなり一杯になるが入りそうだなと考え魔族たちをみた。

 「お前たち、急いで乗れ」

 魔族達はようやく出られると慌てた様子で馬車に乗り込んだ。

 クロウはそれを確認してに馬車の布をおろし前からも後ろからも見られないようにした。

 「フィオ、なんでこんな事を…」

 そう言い途中で話を止めた。

 「あ? 目の前で奴隷を連れた奴らが鞭を使ってまるで動物を扱うみたいに歩かせてた。

 おまけに私の事を同じ商人どうし酒を飲まないか? だとよ」

 クロウは伸びて倒れている黒いスーツの男をちらりと見た。

 「やったのはもう仕方がない。

 とにかく、ここを離れるぞ」

 魔族を乗せ隠した頃には人が少しづつではあったが人が集まり出していた。

 「フィオ、乗れ」

 クロウはフィオが乗ったのを確認し、鞭で馬を叩き、この場を離れ先程の出口へと馬車を走らせた。

 今回、数十人の魔族を連れ出せたがほんの一握りの話だろうとクロウはそう思いながら闇市の街を見て出口の洞窟に姿を消した。

 この洞窟はかなりの距離があるようで馬を走らせているが中々外までつかない。

 途中途中には傭兵が立ち出くる馬車達を見ていた。

 中には止めて馬車の下を確認している姿も見られた。

 どうやら奴隷が逃げないようにしているらしい。

 クロウの馬車はそのまま通り過ぎ外の光が見え無事に抜ける事に成功した。

 外に出るとそこは森の中に出た、あたり一体山に囲まれ隠し通路にはちょうどよい地形だ。

 クロウは馬車を止めず慣れた様子を演じその場を離れた。

 道沿いに進み平野へと出るとクロウは安全を確認し後ろの荷車の中を覗いた。

 中では実はこれは罠か何かで本当は外に行けないのでは無いかと体を寄せ震えている。

 そこにクロウが開けた事により太陽の光が差し込み魔族達はわっと歓喜し出し、外の景色を見ようとクロウの方へ近づいてきた。

 「待て、騒ぐな」

 クロウがそう言い止めると魔族達は不自然な程ピタリと止まり言われるがままに黙りもとの場所に戻った。

 おそらく奴隷でいた弊害だろう。

 「まず、一人これを着ておけ」

 クロウは闇市で買ったローブを投げ入れる。

 「それを着て、この馬を操るんだ。

 俺らはすぐにギルドに行き、お前らの他の仲間を助けに行かなければならない」

 半分は嘘であったが魔族達はそれに頷きクロウの言葉に耳を傾けた。

 「そしてこれが地図だ」

 今度は胸のポケットからそれを取り出し魔族達に見せた。

 「ここのナバト村付近の森へ迎え。

 村の住人にヌサルと言う名の女性を聞くのもいいと思う。

 そこには魔族が隠れ住んでいるはずだ。

 出来るか?」

 クロウはそう言い魔族達を見た。

 魔族達は不安げな顔をしていたが一人の男がローブを着て行った。

 「大丈夫だ、あんたらは他の仲間を頼む」

 クロウは頷き再び荷車の布を閉めた。

 男が出て来ると前方にはマーレの街が見え、そして空は暗くなりかけて来ていた。

 「よし、後は任せたぞ」

 そう言い手綱を男に握らせると走る、馬車から横に飛び降りた。

 「じゃあな」

 フィオはそれを見て続き飛び降りる。

 馬車はマーレをそれ、ナバトへと進路を変えて進んだ。

 「よし、俺たちも行くとしよう」

 クロウに近づくフィオを見て、そう言いマーレに向けて走り出した。

 …

 ギルドの広場はそこそこの賑わいを見せ冒険者達が殺人鬼について情報を交換している様子だった。

 クロウとフィオは迷いなくギルドカウンターへと入りルアとルナの待機室へと向かった。

 扉を叩き、開けるとルアとルナそして何故かヘレナがベットに腰掛けていた。

 ヘレナはクロウを見るなり胸に飛び込んで来た。

 クロウは急な出来事に困惑したがヘレナが泣いていることに気づきそっとそのまま肩に手をおいた。

 「クロウさんっ!…お願いがあるんです!

 クローバ伯爵の館に一緒に来てくれませんか!

 きっと…きっとそこにいるんです。

 きっと助けを待ってるんです。

 私の娘…アイラを助けて…」

 クロウはクローバと聞き顔を仮面の下でしかめた。

 「俺も、クローバについて話がある」

 そう言いヘレナをゆっくりと離しクロウは話をした。

 倉庫の話、マーレの地下にある闇市の話、そして魔族奴隷 。あまり時間が無い事。

 「あまり時間はかけないほうがいい。

 逃げ出す可能性もあるからな。

 それとクローバ伯爵が関与している事が分かった。

 その為の証拠が必要だ。

 ヘレナの話もあるが、今日クローバの館に侵入して調査しようと思う」

 「それなら、私も!!」

 ヘレナが自分の胸に手を当て身を乗り出した。

 「いいだろ、それで作戦だが。

 冒険者に緊急招集をかけ集め、二手に分けさせる一つはルア、ルナ率いる冒険者に抜け道に回ってもらう。

 そしてその部隊がつくのを見計らった時間にフィオ率いる冒険者に突入させる」

 「クロウ、お前はどうすんだよ」

 フィオがクロウの会話を遮り聞いた。

 「俺は、ヘレナと共に邸宅を探る。

 証拠の一つや二つ帳簿か違法な物品が出てくるはずだ」

 フィオはずいと詰め寄りクロウの目を見てきた。

 また、ついてこようとするのかと思ったが違いフィオは言った。

 「無茶だけは絶対すんな、いざとなれば私のいる場所に逃げてこい」

 そう言いフィオはクロウから目をそらし立ち上がった。

 「私も馬鹿じゃない、それぐらい分かるさ」

 フィオはクロウに笑いかけ、ルアとルナに向き直り言った。

 「んじゃあ、決まったなら行動だ!

 鐘を鳴らして冒険者を集めろ!」

 フィオの号令と共に作戦は始動した。

 …

 クロウはヘレナと共にクローバ邸へと向かう。

 すると鐘が街に鳴り響き緊急招集が冒険者にかけられた。

 クローバがこの動きに察知し資料などを消す可能性がある。

 「ヘレナ急ぐぞ」

 ヘレナはB級クラスの力を持ち何度か調査の依頼を頼んだ事もある。

 クロウとヘレナは屋根を駆け、クローバの屋敷の上まで来た。

 クロウは素早く窓に向かい手を差し伸ばし、指で何か文字を空中に書いた。

 「アペクト『開け』」

 すると窓が震えひとりでに開いた。

 そうして窓からスルリと中に入る。

 ヘレナも到着しクロウに続く。

 クロウ達が入った場所は道具が置いてある部屋で見たところ家具しか無い。

 クロウは部屋をすっと開け周りを見た。

 本来は偵察してから来たかったのだが時間が無い。

 「そこの奥がクローバの書斎です」

 そう言いヘレナが指を指した。

 クロウが何故、知っているのかとヘレナを見た。

 「私…ここにアイラと共に来た事があるので」

 ヘレナはそう言い誰もいない事を確認して部屋の廊下へと出た。

 クロウもそれに続く。

 クロウとヘレナはこうしてクローバ邸に侵入しクローバの書斎へと足を進めた。

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