飛竜
クロウが教会に足を踏み入れると一人の女性がパンを焼いている所だった。
「クロウ、遅かったですね」
白い髪と瞳を持つ女性はこちらを見ずにそう話した。
「すまない、ヘレナ、少し別用が入ってな」
ヘレナはクロウに近づき赤い瞳を見た。
「本人ですね、ついてきて」
ヘレナはそう言い奥の部屋まで向かった。
そこは、倉庫の様な場所で木箱や紙袋が積まれている所だ。
「まず、これが手に入ったのでお渡ししますね」
それは烏野マークが入った箱でクロウがそれを開けると一丁の拳銃が収められていた。
「ティラドルから出土したオーパーツです。
以前、欲しいと言ってましたので。
あとこれを」
ヘレナは銃を入れるホルスターを渡した。
「ありがとう」
クロウはそれを受け取り腰に付ける。
手にした銃の引き金を引いたりスライドを動かしてみたりして銃を眺めた。
弾倉に弾を込め銃に入れる。
「ここでは撃たないでくださいね。
子供たちが起きてしまいますし。
何より危ないですから」
ヘレナはそう言い終え次に黒い筒を取り出しそれを開け中の紙を渡した。
「うちの子が手に入れてくれた騎士国の情報です」
クロウはそれを受け取るとポケットから烏の紋章の入った金貨を一五枚渡した。
「銃の分だ受け取っておいてくれ」
クロウはそう言い手渡すと倉庫を出た。
「んんん…マザー…」
外に出ると一人の男の子が目を擦りながらよろよろと歩きクロウにぶつかってよろけた。
「大丈夫か?」
クロウはスッと男の子を支えた。
男の子はその声を聞き見開いた。
「あーー狐のお兄ちゃんだー」
男の子は走り寝室へと駆け戻って行ってしまった。
「クロウさん、見つかってしまいましたね」
ヘレナが意地悪そうに笑顔で微笑み倉庫から出てきた。
「今日は時間が無いんだがな」
クロウがそう言うなり子供たちの軍勢がクロウめがけ押し寄せて来た。
苦労は全員を身をかがめて受け止める。
「全く、朝から元気だな」
「遊ぼー」
「鬼ごっこがいい」
「駄目だよ、隠れんぼだよ」
子供達はクロウを囲み黒いローブを引っ張ったり腕にぶら下がったりと戯れてくる。
それを相手に一人一人持ち上げたり肩車したりと要求に答えた。
「もっとー」
「次、私の番」
そんな中に一人の女性の声が教会に聞こえた。
「おら、ちび共ー。
このおじちゃんはな忙しんだ。
ほれ、散った散ったー」
「うわ、出たー」
「逃げろー」
「ベー、だ」
子供達はクロウの周りから一斉に散り奥の部屋へと駆け込んでいった。
「たく、子供は嫌いだ。
んで、また私が寝てる間にどっか行きやがって。
メモ、くらい残せ」
フィオはそう言いながらクロウに近寄った。
クロウはポケットから鍵を取り出し投げ渡した。
「宿の鍵だ」
フィオはそれを取り見た。
「なるほど、だがこれはお前が持っとけ。
私が持つと無くす」
フィオはそれをクロウに返す。
「フィオ、久しぶりね」
奥からパンを持ちヘレナが出てきた。
「パン、せっかくだから食べていって」
ヘレナはテーブルにそれを起き一つフィオに持ってきた。
フィオはそれを受け取る。
「もらっとく、クロウ、それよりさっさと行くぞ。
ルアの奴に言われた時間だ」
それを聞きクロウはフィオと共に教会を後にした。
ギルド前で青い目の少女とメガネを掛けた黒髪の男がギルド前にいた。
「おっあいつだよ、ユリスって名前の奴」
そう言いフィオがユリスに近寄り話しかけた。
「もう、マーレに着いたのか。
早いな、いつの間にあの村を出たんだ」
ユリスは振り向きフィオを見た。
ユリスはこちらをちらりと見てからフィオに向いた。
「フィオさん、おはようございます」
フィオはユリスが自分を見ていた事に気づき話す。
「ああ、こいつは…」
「ライエールだ」
クロウはまたフィオが偽名を使わないだろうと読み先に言った。
そう言いユリスに手を差し伸べると手を握り返し微笑んだ。
その時、クロウはユリスの青い瞳を見た。
「ノ…ノエル・バーキンです」
急に眼鏡を掛けた男がフィオに手を差し伸べそう自己紹介をしてきた。
その手をフィオは握り笑う。
「ん?、お前も見た顔だな。
でけえ狼に乗ってゴブリンの軍勢の中で一人孤立してたやつだな。
決まりだ、今日の飛竜討伐お前も来い。
度胸があって気に入った!」
フィオは勝手にそう言い約束をした。
クロウとフィオはそうしてギルド内へと入った。
中は人がたくさんいて邪魔だ。
「勝手に約束をして、どうする」
「ん? まあ別に良いだろ?
飛竜程度だろ、見た感じ経験は浅いが強さは私が保証する」
フィオはそう言いながらカウンターの中に入り2階へと上がって行った。
クロウもそれに続く。
1階でルアとルナの双子が演説している中2階では派遣された冒険者達が集まっていた。
フィオとクロウ、ガナンとハーリス
メリーとアルバだ。
この6人は椅子に座りしばらく待った。
少しして演説が終わり二人の冒険者が2階へと上がってきた。
ユリスとノエルだ。
ノエルはすぐに座ったが、ユリスは一階を見下ろし手を振り出した。
フィオは笑い、クロウもつい笑ってしまった。
ユリスはノエルに連れられようやく席についた。
そこでは会議が行われ一人の小人族の女性を紹介された。
噂を聞いたことのある名だった。
彼女はマリダと言う女性で噂では様々な洞窟や古代遺跡、地形を旅をしながら書いているとか。
それも素晴らしい正確さで。
会議が終わりクロウはマリダに手を差し出した。
「先程は済まなかったな。
マリダさん、貴方の功績は聞いている。
呼び捨てしてしまった事をお詫びする」
マリダは気まずそうに顔をそらし手を握り返した。
「わっ私も…その金魚のフンだなんて言って悪かった…。
それとマリダでいい」
マリダはそう言い終わると手を離し飛竜のいる洞窟へと向かっていった。
「んじゃ、行くか」
フィオとクロウはそうしてギルドを出た。
門の外に出る前にクロウはギルドから魔石をルアから貰いそれを担いで向かった。
門外に出るなりフィオが走り出しクロウもそれに続く。
「やっぱ馬より走った方がしっくりくる」
フィオが走りながら並走しているクロウに話しかけた。
「今回は近場だからな走りの方がいいだろ」
長距離では体力を使うため馬を使ったほうが賢明と言うものだが、近場となれば話は変わる。
クロウとフィオは走っている途中馬を2組ほど追い越し飛竜の場所に到着した。
クロウはその場に作戦を話した。
「最初ユリスを連れて行くと決めたが変更してここを守らせよう。
ついでにアルバ。
それでノエルとメリーには爆破を頼む事にする」
フィオにそう言い魔石の入った袋を見せた。
フィオが気配を感じ後ろを向く。
そこを見ると大きな狼に乗ったユリスとノエルが到着した所だった。
「おお、ようやくご到着か 遅いぞ」
フィオは笑いながらユリスに近づいて言う。
その後しばらくして最後にアルバとメリーが到着する頃には太陽が中腹の辺りまでに登ってしまった。
クロウは先程フィオに話した作戦を話し。
マリダ、フィオ、ガナン、ハーリスで向かう事にし、洞窟の中へと向かった。