りこちゃんのパズル
りこちゃんはジグソーパズルが大好きです。
お人形遊びも鬼ごっこも好きですが、一番好きなのはジグソーパズルを完成させること。
ある日、りこちゃんは朝からわくわくしていました。
今日は、誕生日にパパからもらったジグソーパズルに、初めて取りかかる日なのです。
りこちゃんがずっと欲しかった、大きなクリスマスツリーが描かれた巨大なパズル。
真ん中に金色の星が描かれたピースがはまることを知ったりこちゃんは、
最後にはめたら達成感があると思って、星が描かれたピースだけよけておきました。
まずは外枠になるピースと、そうでないピースを分けます。
次に夜の空の色のピースと、クリスマスツリーの緑色のピース、雪が積もった歩道の白色や茶色のピース、
それぞれ小さな箱に入れて分けていきます。
こうすると、見本の絵を見ながら、さくさくとはめていくことができます。
お昼になりました。りこちゃん、パズルはどうなったかな?
まあ、すごい。外枠は全部できていました。まるで大きな窓のようです。
夜の空も、クリスマスツリーも、歩道も、半分ぐらいできあがっていました。
これなら、夜、パパが帰って来る前に完成しそうです。
「パパ、びっくりするかなあ。」
「まさか一日で完成させちゃうなんて、びっくりして尻もちついちゃうかもね。」
ママもなんだか嬉しそうです。
りこちゃんはお昼ご飯をあっという間に食べて、またジグソーパズルに取りかかりました。
いつもなら、おやつを食べる時間になっても、うとうと眠くなる時間になっても、
りこちゃんはずうっとパズルを見ていました。
小さな箱の中身がどんどん少なくなっていきました。
さあ、夕方になりました。そろそろパパが仕事から帰ってきます。
りこちゃん、パズルはどうなったかな?
…あれ?小さな箱の中は空っぽです。
夜の空も、歩道も、クリスマスツリーを眺めている人だかりも、全部できています。
ですが、りこちゃんはとても悲しそうな顔をしていました。
最後にはめようとしてよけておいた、金色のピースが見当たらないのです。
なんとか、パパが帰って来る前に見つけないと!
台所に行ってみました。ママが夜ご飯の準備をしています。
「ママ、わたしが最後にはめようとよけておいた、星が描いてあるピースを知らない?」
ママは見ていないと言いました。台所でいっしょに探してみましたが見つかりません。
夜ご飯のいい匂いが、おやつを食べていないりこちゃんのお腹を空かせます。
でも今、りこちゃんはそれどころじゃありません。
お風呂に行ってみました。床に手をつけながら探してみましたが見つかりません。
もうくたびれて、ゆっくりのんびりお風呂に入りたくなりました。
でも今、りこちゃんはそれどころじゃありません。
りこちゃんのお部屋に行ってみました。お人形を動かして探してみましたが見つかりません。
ふわふわな布団を見ると、今日はお昼寝をしていないので眠くなってきました。
でも、りこちゃんは首を横に振って、探し続けます。
「パパが来る前に完成させたいのに…。どこいっちゃったんだろう…。」
ピースが見つからないまま、パパが仕事から帰ってきました。
りこちゃんは、嬉しいような悲しいような、むずかしい気持ちです。
ですが、パパに、おかえりなさいと笑って言いました。
未完成のパズルを見られたくなくて、もじもじしていると、
パパがポケットから何かを取り出しました。
なんと、パパの手にあったのは、星が描かれているピースでした!
「りこ、ごめんね!パパ、今日の朝、すごくばたばたしていて、会社に持っていくSDカードと間違えて、りこのパズルのピースを持って行っちゃったんだ。」
「SDカード?」
「会社で使う大事なものなんだよ。パパ、SDカードがなくて困っちゃった。」
「困ったのはわたしの方だよ!これ、最後にはめようとしてたんだから!」
りこちゃんはパパから最後のピースを受けとり、真ん中にぱちりとはめました。
やっと、やっと、大きなジグソーパズルの完成です!
りこちゃんは、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。パパとママといっしょに笑い合いました。
次の誕生日には、もっともっと大きなジグソーパズルをお願いしようと思ったりこちゃんでした。
「ところでパパ、パパの探してるSDカードって見つかったの?」
「それがどこにもないんだよ。ママもりこも探すの手伝ってくれないかな?」
「ええ!?わたし、もう探すの疲れたよ~!」
おわり
冬休み中の長い時間に、大きなパズルや模型に挑戦するのもいいですよね。
パズルは完成させた後、片づけるのがもったいないんですけどね。