借りパク女
今度はポーチか。ま、大事なものは入れてないからいいんだけど。
私の友人、マナはいわゆる『借りパク女』だ。最近仲良くなった。借りパクの常習犯だと分かってからは、あえていらないものを貸したりもした。こいつは騙せると思わせる為。
次の日、マナは死んだ。電車に轢かれて。
青空に映える薔薇色の飛沫を見て、私は心底当然だと思った。
マナに貸したあのポーチは、先月彼氏から貰った。彼のお母さんの手作りらしい。
あれを貰ってからというもの、私はつくづく不運になったと思う。最初は捻挫から始まって、階段から落ちたり、当たったら死ぬような物が上から降ってきたりもした。
きっとこのまま行けば死ぬのだろう……。そう思って、私はマナにポーチを渡したのだ。
人の物を借りて返さない人間なんて、死んで当然。だからあのポーチはマナに渡る運命だった。マナは必然的に死んだのだ。
だって、私は何も悪い事をしていない。
私はこれまでも、罪人を裁いてきた。そんな私が死ぬなんておかしいに決まっている。
私にはまだ、マナのような罪人を裁く必要がある。この世の中はおかしいんだ。私が変えなくちゃならない。
ふと手に違和感を感じる。
目の前に手を持ってくると、そこにはポーチが握られていた。拝み屋をやっているという彼の母親が作った、ポーチが。