穢れた手帳
娘が絵を描いてくれた。
大きな丸い物体がママであり、その横でクチャクチャになってる謎の生命体が私らしい。
私はその絵をどこに飾ろうか悩んだ。
手帳だ。
手帳がある
いつからそこにあったのか、私が戻って来てから?
手帳は汚れている、しかも 明らかに血がついている。
もちろん私は手に取った
それがなんであれ構わない、罠でも、脅しでも、単なる”ヤツら”のお遊びでも
重要な進展だ。
”この部屋に来て、どれくらい経っただろうか?”
「・・・・・・・・・あ!?」
私は驚愕した、その手帳の最初のページには
誰かの日記が書かれている。
最初のページ以外は、破れたり、汚れていたり、あるいは燃やしたような痕跡があり全く読めなかった。
ドアの下の紙の件で、正直 何の情報も得られない事も覚悟していた。
全て白紙でもおかしくない
だが、これは違う
今の私が求める、まさしく進展の為の情報だった。
” この部屋に来て、どれくらい経っただろうか?
ベッドの他に何もない。
ドアは開かない、外から打ち付けられている感じではない
開かないのだ。
誰か助けてくれ。
誰か… ”
「そんな・・・こんな事が・・・・」
その内容はどう考えても
私の前にここに閉じ込められていた者の存在を示していた。
なんだこの気持ちは、嬉しい事などでは断じてないはずなのに
自分と同じ境遇の者がいたという事実に喜びに似た感情が込み上げてくる。
これでこの部屋の謎がますます深まった訳だが
そんなことよりもまず、自分の感情が溢れ出し
私は涙を流していた。
何度も何度も、読み直す 何度も、何度も。
そんな時、私はふと ある事に気付いた
体勢を変えた時、何かがカサと私のズボンのポケットから
聴こえた気がしたのだ。
なんだ? ポケットの中に手に入れる
そこには紙が入っていた。
『部屋から出るな』
「・・・・ヒッ!」
私は驚き、手を放した
あの紙だ、ドアにあった、私がビリビリに破いた
紙の形状も、書いてある文字もそのまま
全身が震え出す、この部屋から初めて純粋な恐怖を提示された気がした。
床は?
確かに、ビリビリに破いて そのままにしていた紙屑がない。
どこにも
私は手帳を握りしめる
救いを求めるかのように
この手帳の持主よ・・・・・・・君は出られたのか?