無意味な沈黙
□ 私の娘がこちらを見て微笑んでいる。
4歳頃か、お気に入りの公園
娘は 草や、虫、その辺の石ころ なんにでも興味を持ち
楽しげに遊ぶ そんな子だった。
目が覚める、やはり あの部屋にいる。
恐ろしいほどの沈黙、沈黙が行き過ぎ自分の心臓の音がうるさく感じる程だ。
この部屋の天井は、すっかり見慣れた天井になってしまった。
顔のように見えるシミもすっかりお馴染みだ。
やる事がないと、頭の中には くだらない考えばかりが浮かぶモノだ。
仮説、私は死んだのではないかという事
この部屋は死後の世界
私の腹が空かない理由もこれで説明がつく
真っ先に浮かんだ考えだが、最も正しいような気さえする。
ならば死後の世界は、なんと退屈で無意味な場所なのか
天使や悪魔、鬼や神といった存在が私の生き恥を読み上げ 罪名を下してくれればいいものを
先に旅立った友人や家族に会わせてくれればいいものを
(神を信じるような心を既に捨てた私には、お似合いの場所という事なのか・・・)
そんなことを考えても、事態は何も変化しなかった
これだ、空想をやめたらやめたで 何もする事がないという現実が襲いかかってくる
頭が変になりそうだ。
時計はきっちりと時を刻んでいる
寝た時間の考慮や、どれ程の時が経ったか正確に記憶する事など もうしなくなったが
おそらく、この部屋に閉じ込められ6日間以上過ぎている。
無意味な奇声をあげる気力すらわかない
凝った首を回す。
そんな時、私の眼にそれは飛び込んで来た
扉の下から紙が挟まれている…。