雪の女王
東京の八王子のとある一軒家に住むタクミは、十六歳。彼女はいない。
そもそも、彼にとって、恋なんてものは興味がないと言えた。
そのタクミは、今、雪かきをしていた。
「うわっ。」
タクミはうっかり、足をすべらせて転んでしまった。
後頭部に鈍い音が響きわたり、そこからタクミの意識がなくなった。
気がつくと、タクミはヨーロッパの身分の高い人が住むような、豪華な家で寝ていた。
美女が俺をながめている。
「あの、あなた誰ですか?」
「私は美雪。この世界の女王よ。」
「は?」
「信じられないでしょ。でも本当のことよ。」
「あのー、少し何を言っているのか分からないのですが。」
「当たり前よ。だってあなたが住んでいる世界はこの世界と全然ちがうもの。つまり、あなたは時空のゆがみにより、この世界に来ちゃったの。」
「そうですか。」
「私はさ、あんたとデートしたいの。」
「はい?」
「あなた、いや、タクミのことを知りたいからさ。」
「何で、名前知ってるの?」
「予知能力があるから。だって私、女王だもの。」
「さっきから女王って言ってるけど、何の女王なの?」
「雪の女王よ。」
だから、髪が銀色なのか。とタクミは思う。
「それで、デートは受けるの、受けないの?」
「・・・受ける。」
「よし!目的地はある高級レストランよ。五百万円のお肉があるから。」
いや、五百万円のお肉ってどんなお肉だよ。とタクミは心の中で言う。
「もちろん、費用は私の秘書が。」
レストランはクリスマスツリーがかざられていた。
「いい、私が女王であることは絶対に秘密ね。お忍びで来てるんだから。」
「うん。それとさ、これからもデート続けるの?」
「もちろん。あ、予定あっても大丈夫。タクミの世界に戻ったら時間は変わってないから。」
お肉を食べた後、タクミは元の世界へ戻った。
ほんの少しの時間だったが、タクミは少し美雪に恋をしたようだ。