9 その勇者に栄光を (終)
僕は今、剣を振るう。
なろう民に聞いた話を思い出して、
『僕も昔は冒険者になろうとしたことがあるよ。でも、僕は勇気も知恵も想像もなっかったから、諦めたんだ。
だから、誰かを応援する側に着いたんだ。』
その優しい笑顔が心に留まった。
歴戦風戦士なろう民が言っていた。
『冒険者になれる奴は、一歩を踏み出す勇気とどんな時でも前に進む向上心を持ち、知恵で剣を振るい、想像で魔法を撃てるものが始めて冒険者になれる』
と、新たな冒険者を激励するように話していた。
僕は目を瞑っていた。
幾度となく他者の冒険譚で語られたボスが現れたからだ。
敵はこちらに物理的に攻撃はしてこない。だか、事実は僕を攻撃する。
ジリジリと迫る気配が僕の心を消耗させていく。
僕は知恵を絞る(剣の向きを考える)、僕は想像を働かせる(世界を導く最強の魔法)、そして、一歩を踏み出す勇気を持って、ただ、剣を振るう。
その劔を黄金に輝かせて、固く閉ざした茨を吹き飛ばした。
すると、後ろから大きな声援がきた。
僕は思わず振り返っていた。
「よくやった!」
「カッコよかったぞー」
「感動したよ! ありがとう!!」
「支援魔法はいるかっ?」
いつのまにか・・、いつのまにかである。僕の後ろには多くのなろう民がいた。
中には、僕同様に様々な形の武器を腰にさしている。
また、そのうちの誰かが言った。
「大丈夫か? 飯ならあるぞ!」
そう言って二つの物を渡してくる。ありがとう。と、言って受け取ると今度は他の鍛冶冒険者なろう民が言う。
「いろんな奴のご祝儀だ! これ着て次のステージだな!」
快活に笑いながら、その人は鋼で出来た鎧を渡してくる。
僕の肩を掴む支援者代表みたいな人が僕に言う。
「俺たちはお前の冒険を横にいて一緒に戦うことは出来ない。
だってこれはお前の、お前だけの・・冒険だから。」
その人は真っ直ぐ僕を見つめる。
「だけど、俺たちはお前を支える事は出来る!
お前がくじけそうな時、泣きそうな時、俺たちはずっとお前の側にいる。教え導こう。
お前は入らないと言うかもしれないが、これをお前にやる。」
僕はそのなろう民が差し出して来た物を見るため下を向くと綺麗な雫が落ちたのに気が付いた。
そう、僕は嬉しくていつのまにか泣いていた。その雫に驚いていると目の前の代表者が言う。
「前を向きなよ。勇敢な君」
と、あのなろう民さんが居た。
その横には笑顔をで左目に傷を湛えた歴戦さんが僕に剣を差し出す。
僕はまた、涙が溢れてくる。
ただ、我武者羅にやって来ただけだった。
なのにいつのまにか、沢山の仲間が出来ていた。
僕は剣を受けっていた。
その剣は古く血が滲んだ万年筆の形だった。
歴戦の風の戦士なろう民は言う。
「今日お前は、一番最初のボスを倒した。
だが、そのボスはお前が生み出した気持ちの一つだ。
これから、お前はいくつもの自分(睡魔や悪魔)と戦うことになるだろう。
場合では、悪魔に魅入られた支援者かもしれない。
だか、忘れるな。この剣の意味を、これより生えある勇敢なる冒険者に口伝を伝える。」
僕は戦士なろう民の言葉に狼狽つつも聴き逃すまいと耳を傾ける。
「なろう民として誇りを持ち、また、流浪の冒険者(民)であれ、様々な世界を見て知恵を磨け、そうすればお前が困った時劔が勝手に道をひらいてくれるから。」
ニヤリとあった時から笑っている歴戦風の戦士なろう民は、僅かながら体が光輝き世界に溶けるように消えて行っている。
僕は何事かと、思い戦士を掴もうとするが手は空をかする。
なろう民は分かっているかのように微笑んで言う。
「また、旅にでるのか?」
戦士風なろう民は頷く、頷き僕に語る。
「お前を見ていて、また、冒険にでたくなった。」
それだけで、僕には分かった。
だから、頷き。戦士に聞こえる声で少し待つように言う。
戦士は目を見開き、僕がなにかをしようとしていることがわかり少しだけ待ってくれている。
だから、僕は宣言することにした。彼の冒険の知恵になるように。
「聞け! なろうの民達よ!」
僕の声は空間を支配し、空に響く。
観衆は僕の言葉を聞こうと静まっていく。
「僕は立ち止まらない! 引かない! 負けることはしない!
だから、付いて来い! 僕の冒険を特等席で見たいものは付いて来い!
さすれば、お前たちに栄光の一助をみせてやる!!」
僕は二つの武器を天へ捧げる。
一つは先達者の知恵の武器、もう一つは今僕にある知恵。
それぞれがそれぞれの光を放ち空へ舞い上がる。
二つの武器は力強く輝き、ゆっくりと近づいき、そして交わるように合わさった。
その武器は一つの武器となる。
その武器を見て僕は思う。この武器とならば何処までも道を切り開いて行けそうだ!
だからこそ、宣言し直す。
「我に続け! さすれば、荊の先の黄昏の財宝を見せてやる!」
静かなる世界が今ここにある。
誰の瞳にも希望と期待が見て取れる。
私は彼らを見やり少し微笑むが、直ぐに振り返り彼らに背を向ける。
新しい私の一歩は大きい。
二歩目は力強く、三歩目は高く飛び!着地とともに大きく武器を振り抜く。
荊は大きく消し飛んだ!
僅かな沈黙の後に大歓声が空に響く。
私は彼らに言う。
「さぁ、行くぞっ!!」
私はただ、黄金の荊の先にある黄昏の財宝を求めて歩き出す・・・。
コッコッォ! コッコッォ! ゴーン! ゴーン!
と、酒場にある大きなのっぽで最近マスターが買ったアンティークの古時計が酒場の中に鳴り響く。
ナイフとフォークの二刀流で武器を持つ冒険者は、カウンターで酒を飲む。
冒険者は『ここの酒イマイチ』とか思いながら、古茶けた年季の入った本を閉じ、元あったのがわかるくらい跡がついたカウンターの上に戻していた。
ふと、冒険者はマスターに聞いた。
「なぁ、マスター。」
「はい、なんでしょう?」
「この本の作者って誰なんだい?」
「さぁ?」
「さぁ? って、マスターの知り合いかマスターが書いたものでは・・・?」
「いや、私はそんな初々しいのは書けませんよ。それに私の冒険譚はもっと古風です」
そう言ってマスターは壁に飾る万年筆を見てニコニコ微笑む。
「いいのかい?」
「ええ一つくらいあっても、それにここの国は、文字を読むのが好きな人が多いですから置いておけば誰かが休憩がてらに読みますし」
「ははっ、確かに、俺とかな」
「ええ」
マスターと冒険者は2人で笑った。
ひとしきり笑うと冒険者は立ち上がる。
マスターは黙ってコップを磨く。
「また、来る」
後ろ背に手を上げて挨拶する冒険者にマスターは、
「ハイ、お待ちしています」
後ろ背で見えないが深々と頭を下げているだろうマスターを背にして店を出る。
店を出て冒険者は確認のために店の看板を確認する。
【勇敢なる冒険者に栄光を】
冒険者は朗らかに笑った。
さて、俺も上手くドラゴンを書(狩)りて、美味しく食べる(書く)とするか。
冒険者は、そう思いながら光輝く世界へと消えていくのだった。
己の栄光を見つけるために。
少し場所移動を考えています。