7 なろう民だって冒険を歌う
俺の世界は灰とアセビ色の世界から緑と青の世界が戻っていた。
それを2人に伝えると2人は嬉しそうにまた笑っていた。
戦士風のなろう民が言う。
「お前、どうせだから一回元来た道戻ってみろよ。
それでいてなろう街をちょっと見てみなよ。きっと、面白いものが見れるぞ」
俺は彼の言葉に興味が引かれて行ってみる事にする。だって、色が見えなくなった俺にまた、色を見せてくれたんだ。
だったら、次何がくるか楽しみだろ?
だから、俺は戻った。
彼らと共に。
そこは、なろう街の始まりの門では無かった。
そこは、多くのなろう民が集まり、話、詩うひろばだった。
右を見ると、
なろう民が噂話をしている。
左を見れば吟遊詩人たちが詩を詩っている。
「この世界がこんなに賑やかだったなんて」
こんな臭いこと言うとは思わなかったが、俺は口に出していた。そして、またそれを笑われた。
でも、その笑い方は馬鹿にするものではなく、もっと先をいってるものたちが昔を思い出して、笑うそれと一緒だった。
なろう民の人は言った。
「ああ、僕たちだって君達冒険者同様歌うんだ」
歴戦の戦士風のなろう民は言う。
「俺たちはこれを見て勇気を貰うんだ」
俺たちの目の前に広がるのは暗がりでも陰った世界でもなく、誰かが誰かの為に歌を届けている詩人たちのいる広場だった。
俺はこんな光を知らなかった。
俺はこんな光景が有るなんて知らなかった。
歴戦の戦士風のなろう民は俺の肩を掴む。
「俺たちは俺たちの冒険を語るが、なろう民は感動した他者の冒険譚を語るんだ!」
歴戦の戦士はそう言い僕の肩を一度気合いを入れるように活を入れるように叩くと、笑顔でなろう民に手を差し出した。
なろう民は、君も好きだね。と、ふっ。と笑いその手を取って光輝く舞台の方に歩いていく。
そして、僕から離れるとワルツを踊りだした。
最初は序章と言わんばかしに踊り、ある程度踊ったら口を開いて歌が始まる。
それは、口を揃えることも、互いに歌い合う事もしている。
そして、その歌を聴いていると僕の知っている歌がつむぎだされていた。
それは・・・
【・・・とある人ぉ、オトコーはた〜びにでた〜。
・・・黄金に輝くぅ、い〜ばらを切り裂いて、い〜く〜どぉ〜と、い〜く〜どぉ〜と、斬撃を食らわ〜せ、力つ〜く。・・・】
ポンポロポンポ〜ンといつのまにか、ハープを弾いている人が現れ、2人にだけスポットライトが当たっている。
その間2人は踊り続ける。
互いに笑顔のまま、お辞儀をして、また、歌が続くのだった・・・。
・・・・・・
周りの人は拍手を送る。
でも、僕は終わった詩に絶大な拍手を送っていた。
それは、僕の冒険の詩だったから。
僕の世界は輝いていた。
2人のなろう民は周りに挨拶とばかしに手を上げてこちらに戻ってくる。
戦士風のなろう民が、
「何泣いてんだ」
優しい笑みを浮かべて僕をからかってくる。
「中々、上手いもんだろ?」
と戦士と踊ったなろう民はニヒルに笑いかけてきた。
僕は涙をぬぐいとり、世界の美しさを知る事になった。




