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恋空  作者: おこにぃ
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第4章:青春の色

 珍しく早起きした慎は図書館の奥で優雅な時間を過ごし今日も遅刻ギリギリで登校する。

特に代わり映えのしない日常、この日常が卒業まで続くと思っていたのだが、親友のとある一言により、慎の学園生活に対する意識に少しだけ変化が訪れた。のか?



 「やあ、まさか同じクラスだったなんてね」


 1限終了後、彼女はこちらの席に来てそう話しかけてきた。


 「ああ、ほんとにな」


 「でも、今日も遅刻ギリギリで登校してくるなんてね。もしかして遅刻魔?」


少し怪訝そうな顔をする。


 「いや、それは、やんごとなき事情があってだな、、、。」


 「やんごとなき事情?」


 「少しティータイムに興じてたというか、なんというか」


 「あら、この学園の近くに朝早くから開いてるカフェなんてあったかしら?」


そうつぶやくとますます怪訝そうな顔をして、頭の上にはてなマークを浮かべている。


 「まぁ、とりあえずいろいろあったんだよ」


 「ふーん。ま、これからは気を付けることね」


そんな他愛ない話をしていると始業の鐘が鳴る。そして2限、3限と時間が過ぎていく。


 (やっぱり、久しぶりに授業を受けると眠たくて仕方ないな、、、)


4限も半ば近くになれば、適度な空腹と暖かさで疲れと眠気は極限まで来ていた。


 (やば、、、これはもう我慢できん、、、)


そして、眠気にすべてを委ね意識を手放そうとしていた時、胸ポケットの端末がブブブと震えた。


 「、、、うおっ」


突然の通知に小さな声を上げ驚く。幸い周りには気づかれていないようだ、、、隣の席の女子は少し身体を強張らせていたが。

それを横目に端末を開いて通知を確認する。


 【授業中に寝たりしたらいけないんだからね!】


と、一言とともに怒っているであろう絵文字が添えられていた。


 「げっ、」


ちらりとこのみの席の方に目をやると、じーっとこちらを眠らせまいと睨みつけていた。


 「はは、、、」


そう苦笑いを浮かべ、このみに向けてメッセージを打つ。


 【授業もあと少しだから眠ったりしないよ】


メッセージを確認したあとしばらくの間こちらを睨んでいたが、眠気を感じさせない素振りを見せると納得してくれたのか黒板へと目を向けた。


 (授業もあと20分くらいだし、何とかなるだろ)


授業の進行度に全く比例していないノートに目を向け板書を書き写していく。












――――――つんつん




――――――バシッ!



 「痛い、、、」


 頭部を何かで叩かれたのだろう鈍い痛みが頭を走る。


 「、、、なんだ?」


 「なんだ?じゃないよ」


顔を上げるとそこには、ひきつった顔でこちらを見下ろしているこのみの姿があった。


 (おかしい、俺はさっきまで確かに板書をノートにまとめていたはずだ)


ノートに目を落とすとミミズ文字で訳の分からない線を量産してた。


 「これは、一体なにが起きたっていうんだ?」


 「一体何が起きたんだ?じゃーなーくーてー!大丈夫って言うから安心してたのに、ちょっと目をそらした瞬間に眠っちゃうなんて、夜更かしばかりしてるからそうなるんだよ?」


やはり眠りこけていたらしい。このみはぷんぷんと怒っている。


 「そ、それよりも今は昼放課じゃないのか?」


 「もう、すぐ話を逸らすんだから、、、」


先ほどまで熟睡していたせいか、眠気が消え、その分空腹が増しているような気がする。空腹で腹と背中がくっつきそうなので、一刻も早く腹に何か入れなければ。


 「おーい!このみー!」


今日の昼飯を悩んでいると、教室の扉の方からこのみを呼ぶ声がした。


 「お昼ー先に食べちゃうよー?」


そう言って弁当を掲げている女子は相原(あいはら)しずく。このみの友人だ。


 「あ、待ってー!すぐ行くからー!」


自分の席まで急いで戻ると弁当を持って相原(あいはら)と共に廊下へ消えていく。その騒がしさにポカンとするも、腹が音を立てたところで現実に引き戻される。


 「俺もちゃっちゃと昼飯食べに行かないとな」


席を立ち食堂の方へ向かう。この学園には、学園が運営する食堂の他に、委員会が主導の購買部や外部からの売店の出張などがあり、それぞれに人気のある商品があり昼飯時にはどこも賑わっている。


 「うーん、この時間だと購買も売店も食べたいものは売り切れだろうからなぁ、、、」


購買部も売店も、食堂やコンビニなどでは買えない自家製の商品を販売しているので、商品の競争率はものすごく高い。故に、授業終了と同時に向かうくらいの気持ちでなければ、食べたいものは確保できない。


 「ま、無難に食堂の方へ行くか」


いつもの購買部特製総菜パンが食べられないのは非常に惜しいが、決して食堂の定食もおいしくないというわけではなく、レベル自体は非常に高い。ただ自分が食べたいものが食べたいのだ。


 食堂へ着くとまず食券を買うのだが、ここが学園の食堂かと疑うほどメニューの種類は多い。


 「って言っても定食しか食べたことないけどな」


数あるメニューから選ぶのはいつも決まってC定食。A定食とB定食は日替わりなのだが、C定食は固定でメニューが決まっている。


 「はいよ、お待ちどおさま!」


定食を手に腰を落ち着ける場所を探して食堂内を見渡す。見渡してみるが、どこもかしこも埋まっているようで、座れそうなところがない。


 「どうするか、、、」


そう食堂内を右往左往していると、一つだけやたらと人が少ないテーブルがあった。そのテーブルには見るからに根暗そうな一人の男子生徒が座っていた。


 (ん?あれは)


そのテーブルの方に近づいていく。


 「よう、ここいいか?」


声を掛けるとその男子生徒はゆっくりとこちらの顔を見てこう言った。


 「なんだお前か、珍しいな」


 「はは、ツレないなぁ。せっかく一緒に飯を食ってやるってのに」


 「別に頼んではない」


そっけない返答をするものの、特に嫌な素振りは見せずに黙々と食事をしている。


 「お前こそいいのか?こんな人間と食事をするなんて」


 「別に気にしないさ」


先ほどからこのテーブルの周りの生徒はひそひそと、こちらに聞こえない程度の声量で噂話をしていた。


 「まったく、就任から大分経つというのに口の減らない者どもだ」


当の本人はそんなことはつゆ知らずといった表情で食事を勧める。なぜこの男、海崎蓮夜(かいざきれんや)がこういった状況なのかは、去年の生徒会選挙の頃まで遡ることになるが、今は特段語る必要はないだろう。


 「それより生徒会の方はどうなんだ?」


 「どうなんだとは一体どういうことだ?特に話すことなどないのだが」


 「あるだろ、次の生徒会選挙のこととか」


そう問いかけると蓮夜(れんや)は食事をする手を止め、ふっと僅かに口角をあげる。


 「愚問だな、次の生徒会長は決まったも当然だ」


 「随分と余裕なんだな、もう一人の副会長はどうしたんだ?」


 「そこの根回しも十分だ。まぁ、少し不安定な部分はあるが概ね予想通りに進みそうだ」


 「根回しって、、、そうことするからうわさが大きくなるんだぞ」


そうは言ったが、この学園の生徒会選挙はまともな手段では勝ち抜けないので、多少の荒療治や汚い手段も必要になってくる。それほどまでにこの学園での生徒会の権力は大きいのだ。


 「まぁ、ともかく順調そうでよかったよ」


この男が生徒会長になった暁には食堂のメニューやら学園生活やらで優遇してもらうとしよう。


 「俺のことよりお前はどうなんだ?」


 「俺か?いつも通りつまんねぇ学園生活だよ」


 「、、、俺が言うのもなんだが、自分の心配をした方がいいのではないか?そのまま行けば灰色にすらなれないぞ」


ごちそうさまと小さく呟くと、トレーをもって立ち上がる。


 「少しは残り僅かな学園生活を満喫できるように努力してみろ、なにか団体に属してみるのもいい、人との関りを増やせ、それだけでも色は増やせる」


 「色ねぇ、、、」


 「ま、他人の戯言だと聞き流すのもお前次第だがな」


 「他人ってなぁ、、、無二の親友がそれを言うか」


それを聞くと蓮夜(れんや)はふん、とこちらを一瞥し返却口の方へと向かっていった。


 「なんだかんだいってあいつにも思うところはあるのだろうか」


輝かしい学園生活なんて興味ないと思っていたのだが、あいつもあいつなりにいろいろと考えているらしい。蓮夜(れんや)とはかれこれ6年近くの付き合いになるが、いまいち何を考えているのか分からないことが多い。


 「とりあえず俺も戻るか」


トレーを返却口へと返し食堂を後にする。





 5限、6限と午前よりも増した眠気と戦いながら、時間を過ごしていく。いつもと変わらないいつもの風景。


 「人との関りなぁ、、、」


人との関りなど思い付きや突発的に増やせるものではない。ある程度の時間と偶発的な要素で人間関係は広がっていくのだ。


 (なにかきっかけでもあればなぁ)


そんなことを考えながらはやく終わらないかと時計を眺める。確かに、ここ最近何人かの人と話す機会はあったものの、どれも他愛ない話をしただけでただの他人と同じだ。


 「あ」


思い出した、というよりは違和感で気づいたというべきか。まだ冬服のブレザーで埋め尽くされた教室に白一点、ただ一人(まこと)だけがワイシャツで過ごしていた。


 (そういえばまだ返してもらってないな、、、)


そろそろ返してもらわなければ集会などがあったときに余計に浮いてしまう。それに朝方はまだ冷えるので出来れば返してもらいたい。


 (今日の放課後にでも探しに行くかな)


そうと決まればつまらない授業などさっさと終わっていただきたいものだが、そこは我慢してどこから探しに行くかを脳内でシュミレーションする。


そしてある問題点に突き当たるのだった。


 「ていうかあの子誰なんだ?」


そう、屋上で出会った彼女の、学年と容姿しか知らないということに。しかも容姿に至っては記憶がかなり朧げになっていた。

















そんなことはお構いなしに今日も空は青く澄み渡っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次話登校遅れてしまい申し訳ありません。少し時間はかかると思いますがしっかり書いていきたいと思います。


始めたてで拙い個所もあるとは思いますが、何卒よろしくお願いいたします。


次回投稿は一週間程度を目途にしています。


現在書き進めているのとは別に、もう一つ物語を書く予定なので、よろしければそちらもぜひよろしくお願いします。


お時間があれば感想や改善案などを下されば創作の励みになります。


以上

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