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異世界に喚ばれて  作者: 狐東レン
8/18

街を出ました

 遅くなってしまい申し訳ありません。第8話です、どうぞ。

 ゴブリン討伐の報告を終えた俺とセレナは、ギルドの酒場で机をはさんで座っている。今後の活動について話し合うためだ。


「私はアウグスに最近来たばかりで、特に思い入れとかはありません。なのでカケルさんの好きにしていいですよ」


 そうだったのか、てっきりこの街でずっと冒険者をやっていたのかと思ってた。というか俺と出会った場所になんの思い入れもないとは、これやいかに。


「ならまずはセレナたんの実家へご挨拶に」

「却下です」

「おまたせしましたー」


 注文していたパンが運ばれてきた。食べながら話の続きといこう。


「それで、どこか行きたい場所とかありますか? と言っても、この世界のことはほとんどわからないかもしれませんが……」

「俺はこの世界を色々と見てまわりたいな。だからまずは他の街に行って、その次の行き先はそこで考えようと思う」


 理想は色々な所を観光しつつ旅をするような感じだ。いわゆる異世界観光というやつだ。

 それにしても今食べているパンは硬い。もはや保存食だ。


「わかりました。それなら、今日不気味な噂も耳にしたので明日にでも出発しましょう」

「別にいいけど、どんな噂だ?」

「なんでも、墓地ぼちで大量発生したアンデッドが、何者かに一晩で全て倒されていたみたいなんですよ」

「へ、へえ……」


 絶対に俺のやったやつじゃねぇか! 危うく水を吹き出しそうになった。こうなったら、バレる前に早くアウグスをずらかるしかねぇ!


『犯人は……この中にいるの!』

『見つかった!?』




 話し合いを終えてパンの残りをストレージにしまい、ちょうど明日アウグスを出発する商人の護衛依頼があったから、ついでに受けておいた。条件は、パーティランクがC以上の冒険者パーティであることだ。


 パーティランクと言うのは、パーティメンバーの冒険者ランクの平均で決まり、ランク同士の間になると切り捨てて下のランクになるらしい。


 セレナはAランクで俺はEランク。つまり俺たちのパーティランクはCだから、一番下のランクである俺でも、この護衛依頼を受けることができたのだ。


 依頼を受けたあと、宿をもう一泊とってから食事をして明日の準備を済ませると、もうすでに暗くなっていたから寝ることにした。


 今日もオリジナル魔法で体をきれいにした。そろそろ風呂が恋しくなってきたな。





 翌朝―――ギルドへ行って待っていると、護衛の依頼を出した商人がやってきた。

 変わった形の帽子をかぶり、あまり大きくはない背負子しょいこ背負せおっている。

 ザ・行商人ってかんじの少しぽっちゃりしたおじさんだ。40代ぐらいだと思う。


「はじめまして、私は行商人をしておりますカールと申します。この度はよろしくお願いします」

「私はAランク冒険者のセレナです。よろしくお願いします」

「俺はEランク冒険者のカケルだ、よろしくな」


 挨拶を済ませ、少し話をしてから俺達はギルドの外へと出た。次の街はあまり離れていないらしい。順調にいけば夕方には着くそうだ。


「私は馬車を持ってくるので少し待っていてください」


 そう言うと、カールは馬車をとりにギルドの裏へと歩いて行った。そう、馬車だ。こんなに早く乗れることになるとは思っていなかった。


 さすがに町などを渡って商売をするのだから馬は必要になるのだろう。

 馬車を持っているということは、それなりにもうかっているのかもしれない。


 そんなことを考えながら、ストレージから取り出したパンをモサモサ食っていると、カールがほろつきの荷馬車に乗って戻ってきた。


「おまたせしました。では、出発しましょうか」


 俺達はカールの馬車に乗ってアウグスを出た。今更だが、アウグスの街には特徴のあるものは時計塔以外にはなかったような気がする。


 個人的には、宿屋のおばちゃんがいつ寝ているのかが気になったぐらいだ。




 街道をしばらく進んでいると、近くの森からぶたのような顔をした二足歩行の魔物が3匹、こちらに向かってきた。手には石槍いしやりを持ってフゴフゴ言っている。


「あれはオークですね、どうしますか?」


 カールは慌てることもなくそう聞いてくる。一般人にとっては脅威きょういとなりそうだけど、Aランクの冒険者がいるから冷静なのかもしれない。

 ここは俺が、Eランク冒険者の実力というものをみせてやろう。


「セレナたん、こいつらは俺が片付けるよ」

「わかりました。じゃあ、任せますね」


 馬車から降りるのもめんどくさいし、そのまま魔法で片付けることにした。


「ライトニング」


 俺が魔法を発動すると魔法陣から稲妻いなずまが放たれ、オーク達をまとめて感電させた。

 稲妻を浴びたオーク達は、プスプスとけむりを上げながらその場に倒れ込んだ。


「カケルさんはいったいいくつの魔法が使えるんですか?」

「俺に使えない魔法はないのだよ」

「そうですか」

「ほんとだよ?」


 セレナは何か諦めたような顔をして、そっぽを向いてしまった。信じているのだろうか?


「あのレベルの魔法を無詠唱ですと!? あなたは本当にEランク冒険者なのですか!?」


 ポカーンとしていたカールだったが、かなり驚いた様子で聞いてきた。


「ああ、まだ登録したばかりだけどな」

「なるほど、そういうことでしたか。しかしこれほどの魔法を扱えるとは。頼もしい限りですな」


 カールはやっと冷静さを取り戻したようで、そのまま馬車を走らせた。それから少し進むと、浅くて緩やかな川が流れていた。川には馬車でも普通に渡れそうな横幅の橋がかかっている。


「そろそろ昼ですし、休憩にしましょうか」

「そうですね、場所もちょうど良さそうですし」


 カールの提案にセレナが賛成し、俺たちは馬車を止めてここで休憩することにした。

 街の名前を「アウグス」にしました。どうでもいいですが、作者はアウグスを読むとき「エジプト」ではなく「ボーナス」みたいな読み方をしています。

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