第12話 奴隷を買いました
いつもより少しだけ長く書けました。ステータス画面を書くのが難しかったです。
余談ですが、作者は「シルヴィ」をのばして「シルヴィー」と読んでいます。
「いいだろう、話を聞こうじゃないか」
「では、この場で少々お待ちください」
そう言うと、アデルは使用人を1人残して部屋を出ていった。
話の流れから察するに、おすすめ商品の紹介でもされるのだろう。それもかなり高額の奴隷を。
その中にはたぶん、ヒロイン枠の少女もいるはずだ。理想は幼い獣人だ。
ロリコンじゃないからな! ペットとして扱えば、セレナも許してくれるに違いないからだ。
後は、エルフもいいな。今いるのは人間2人とよく分からないのが1人だし、ちょうどいいだろう。
でもそれだとセレナが妬いてしまう可能性が……そうだ! どうせ奴隷なんだし、ペットだと言い張ればいいじゃないか!
俺がとんでもなく失礼なことを考えていると、アデルが荷台を押しながら部屋に戻ってきた。荷台には金属製の首輪をつけた、セレナに匹敵するほどの美少女が乗っていた。
彼女の肌は透き通るように白く、腰まで伸びた髪は美しい白銀色。瞳は血のように赤い。年齢は15才ぐらいだろうか。
簡素な服を着ているからか身体のラインがよくわかり、胸の発育は年相応、もしくは少し大きいぐらいだと見てとれた。
「よし買おう。いくらだ?」
「2億ベルの先払いになります」
2億か……結構高いな。まあ、最悪明日でもいいだろう。
「明日までに用意してくる」
「お待ちしております」
―――――――――――――――
俺は店を出て、この街で1番大きな換金屋を訪れた。空いているカウンターの一つへ行くと、俺より年下の女の子が付いていた。
「億単位の買い取りはできるか?」
「はい、大丈夫ですよ」
俺はストレージから、事前に用意していたバッグ経由で適当な片手剣を取り出して手渡した。もちろん勇者製だ。
「まずはこれだ」
「素晴らしい剣ですね。では……鑑定」
鑑定か……これがユアの言っていたスキルだろう。あったらかなり便利そうだ。ここはギフト『強奪』の出番だ。
俺は強奪を使用して店員の鑑定スキルを奪い、複製してから返してやった。これで俺も鑑定スキルが使えるはずだ。
「……あれ? すみません、もう一度……鑑定」
俺が鑑定スキルを奪ったせいで失敗してしまったのか。終わってからにすれば良かったな。
店員の女の子に鑑定を使ってみると、ステータス画面のようなものが現れた。
持っているスキルは鑑定だけで、年は15、名前はミリィというらしい。魔力は220/240と表示されていた。本人には見えていないようだ。
自分を鑑定してみると同じように、目の前にステータス画面が現れた。内容はこんな感じだ。
・名前:カケル
・年齢:17
・性別:男性
・種族:異世界人
・職業:冒険者(Dランク)
・体力:120
・魔力:35
・筋力:30
・スキル:鑑定
・ギフト:ストレージ、身体強化、全魔法適正、隠蔽、強奪、再生、限界突破
体力・筋力はミリィよりも少し高い。二重鑑定も試してみたら普通にできたし、趣味の買い物と実験がはかどりそうだ。
「お待たせしました。こちらを買い取らせていただく場合、25万ベルになります」
最初に行った換金屋だと15万で売れる剣が25万か……。ちなみにそこの店員は鑑定スキルを持っていなかった。
「ああ、それでいい。次は―――」
ストレージの中のものまで鑑定できたため、高く売れそうなものを選んでどんどん並べていく。
「まずはこれだけ頼む」
並べ終わる頃には、ミリィの顔が引き攣っていた。その後店長と他の店員達も参戦し、鑑定はしばらく続いた。結果……
「―――全部で2億6千万ベルになります」
予想以上に高く売れた。そして、鑑定している間に第2陣まで考えておいた。
「わかった、それでいい。さて、第2ラウンドといこうか」
結局、第2陣まで終わるのに2時間以上かかり、金額は全部で4億3000万ベルに達した。たぶん、金持ちと言ってもいいレベルだろう。
―――――――――――――――
俺は急いで奴隷商に戻り、アデルに2億ベルを袋に詰めて手渡した。かなり驚いていたが、期待していなかったのだろうか。
金額の確認を終えると、何枚かの書類にサインをするだけで、あっさりと奴隷を購入することができた。
彼女の名はシルヴィと言うそうだ。さっそく新たなペットを連れ帰り愛でるとしよう。
「俺はカケル、お前の新しいご主人様だ。よろしくな」
「……」
「……あれ?」
話しかけても、ぼけーっとしていて反応がない。シルヴィの赤い瞳に、俺は映っていないようだ。
「食べ物で誘うのはいかがでしょうか」
アデルがアドバイスしてくれた通りに、焼きとりを取り出してシルビィの目の前でチラつかせてみた。ダジャレじゃないからな!!
「俺について来れば、腹いっぱいになるまで食わせてやるぞ」
「……わかった。ついていく」
少し幼さの残る、可愛いらしい声だ。しかし、食べ物でこんなに簡単につられるとは、奴隷になった理由が何となく分かる気がする。
シルヴィには焼きとりを袋ごと渡し、アデルからいくつかの説明を受けた。その後、シルヴィの主人の上書きを終え、俺は彼女を連れて奴隷商を後にした。
店を出て歩くこと30分、セレナ達との待ち合わせ場所に到着した。時間は蓋付きの懐中時計で確認した。
「おまたせセレナたん。どうした? 頭なんか抱えて」
「カケルさん、そちらの方は?」
「奴隷商で買った。ペットのシルビィだ」
「わーい、ペットなのー♪」
「はぁ……やはり奴隷でしたか。カケルさんを1人にさせた私がバカでした……。それで、いくらしたんですか?」
「500万ベル。なんか理由があるらしくて、格安で買えた」
もっと高かったって? 誤差だよ、誤差。
「そうですか……。シルヴィちゃん、これからよろしくお願いします」
「……よろしく」
シルヴィは相変わらず口数が少なく、表情も変化に乏しい。
「ところでカケルさん」
「どうした?」
「奴隷は宿に泊まれませんよ」
「ああ、それなら問題ない」
事前にアデルから聞いていたから、対策は考えてある。首輪には契約魔法がかけられているらしい。だから……
「ブレイク」
「もうなんでもありですね……」
魔法でそれを破壊することにした。契約魔法だけを破壊するつもりだったが、首輪も同時に破壊できた。さて、宿へ向かうとしよう。
しばらく歩くと、宿屋「星空亭」に到着した。この世界で見た中では最も大きな宿だ。予約は既に済ませてある。
部屋割りは俺だけ別の部屋になった。残念。
星空亭の食堂で軽めの夕食を取った後、久々の風呂で今日の疲れが癒やされた。
俺は部屋に戻った後、明日のことを考えながら眠りについた。




