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Finis talE ~最果ての地より~  作者: ひつき ねじ
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シャオルーンの章 -5#黄金の美少年-

「シャオルーンくんこれ二番テーブルね!」

「はいっ」

「おーい新入り!オーダー!」

「はいっただいま!」

「ぼくちゃん、酒おかわりぃ」

「はいっすぐに」

「シャオルーンくん、レゾン師は元気にしてたかい?」

「はい、とても元気そうでした」

「ハインリヒも相変わらずだろうなァ」

「ご注文をお伺いしますね」

「やっぱり少年趣味かねぇ」

「はい、オーダー『しょうねんしゅみ』…って、はい?」

「言えてるぜ、ハインリヒさんもゴールドちゃんもとんでもない美人だからな」

「やめろよお前ら、レゾンさんの悪口言ったらハインリヒに血だるまにされるぞ」

「君も相当可愛いんだろ?

何しろレゾン師が自分から弟子にしたいって言ったんだから」

「あ、あの、それは違」

「おじちゃんたちに素顔を見せてくれよ、ちらっとでいいからさ、な?」

「こっ困りますぅぅうう!!」




                  Finis talE

                ~最果ての地より~


            シャオルーンの章 -5#黄金の美少年-




酔いどれおじさん集団の魔の手から自慢の駿足で逃れ

なんとかカウンター裏まで避難する、その間五秒

傍らで食事を準備していたユゥトさんが目を丸くしてぼくを見下ろした


「驚いた、シャオルーンくんすばしっこいのね」


「これだけがぼくの取柄なので・・・」


それにしても忙しい酒場だ

人の会話は入り乱れてるし、テーブルの違うお客さん同士も

顔見知りなのか誰もが親しげに話をしている

そんな中で、特に話題に上がっているのが


「新入りー!顔見せろよー!」


「みーせーろっみーせーろっ」


陽気な見せろコールが響くけど、冗談じゃない

悪意や悪気がない所が尚の事質(たち)が悪かった

ぼくのフードを剥ぐために手を構えるお客さんたちの中を安全に配膳する・・・

なんて、高度な技術は生憎と持ち合わせていない

身ぐるみを剥がされるかもしれない恐怖からカウンターの陰に隠れたまま

聖母の笑みを浮かべるユゥトさんに涙目で助けを求めた


「うぇぇ・・・ユゥトさぁん」


「ふふっ泣かなくても大丈夫よ、ここには怖い人なんて一人もいないから

でもお客さんがあんな状態じゃ仕事は無理ね、もう上がっていいわよ」


「そりゃないぜユゥトレイ!ちこーっとぐらい顔拝ませてもらってもえーじゃないの」


「そろそろ勘弁してあげて、まだ子供なんだから」


飛んでくる野次をやんわりといなし

明日の朝は宿泊のお客さんに朝食を準備するから四時起きで厨房に来てね、と

ウインクしながら言ってくれたのでその言葉に甘えることにする

本音を言えば、今夜遅くに来るらしいヴァンさんを待ちたかったけど。

厨房の調理と皿洗いだと身長が低すぎて調理台に届かないから役に立てないし

そう思いながら壁にかかっている大きな古時計を見る


時間は夜の七時


酒場ならこれから更に混み始める時間帯だ

でも店内を見渡してみると今の時点で十分繁盛してるしテーブルも空きが殆どない

この状態から更に人でごったがえすなんて、この酒場は本当に人気があるんだなぁ


「これからもっと忙しくなるのに、本当に上がっていいんですか?」


「いいのよ、ハインリヒさんから言われてるもの

無茶はさせられないわ」


「ありがとうございますユゥトさん」


「やっぱりシャオルーンくんはハインリヒさんが苦手なのね

レゾンさんの話はすぐに返事を返すのに」


「そっそんな事ないですよ!?」


「ふふっ・・・声、引きつってるわよ」


ユゥトさん鋭い

イースペルトさんの話だけ無視してたの、バレちゃってたみたいだ

ユゥトさん以外の店員さんにも「お先に失礼します」と声をかけて

店のエプロンを返して裏口に向かいながら鍵が示す番号を確認する


(えっと・・・)


確か従業員用の部屋は裏口を出てすぐ右側の通路に入って

左側に並んでる部屋だったよね

番号は「4」だから4番目の扉かな


裏手の戸を開けると一番に目に飛び込んできたのは

狭い通りを隔てて視界を圧迫するように築かれた高い塀

既に日も落ち、町全体を夜の帳が覆ってはいたけど

宿の裏手は昼間でも光が届きそうにない深い森のように一層闇の色が濃い

寒い季節というだけでなく、目の前の真っ黒な闇の所為で

骨まで凍り付かせるような寒気を感じて全身が縮み上がった


(なんか・・・嫌な雰囲気の通路だなぁ)


滞在中はここを行き来するんだし、慣れとかないと。

外に出るとそっと扉を閉めて・・・しかし踏み出すことなく

顔だけを細い路地に突き出して左右の安全を確認

誰もいない、喧騒だって壁を隔てて遠い

危険なものは見受けられない


けど、


(・・・怖い)


すごく怖い、言い知れぬ恐怖を感じる

第六感とでも言うべきか、誰かに見られている気がしてならない

こういう時は早めに安全地帯に向かうべきだ

つまりぼくに宛がわれた部屋、右の通路に入れば直ぐのはず

急いで駆け出して右の通路に入り、左側に並んでいる扉の番号を確認していく


(あった、4番!)


鍵を使って扉を開き、一歩足を踏み入れた所で

物凄い力がぼくの背中を突き飛ばした


「わぁ!」


突き飛ばされた力が大きすぎて、反動でフードが脱げる

部屋の床は年季の所為かそれなりに傷んでて

受け身を取ろうとして両手を前に突き出すものの

滑るように倒れこんだ直後、両手に鋭い痛みを覚え

驚いて反射的に腕の力を抜いてしまったために

床にこすり付けてしまった顔面にまで裂傷を負ってしまう


すごく、痛い


猫に顔をバリバリって引っかかれた時よりずっと痛い

それもその筈

ぼくの顔には、傷んで反り返った床板の破片がいくつも刺さっていたから

傷む部分に触れることでその事実を知ったぼくの目から涙が零れ落ちる


痛い、痛いよ


木くずが目に刺さらなかったのが幸いとさえ思えるほどに酷い怪我だった

やっぱり近くに誰かが居たんだ、不穏な気配は勘違いじゃなかった


「だ・・・だれ、ですか?」


なんとか起き上がって振り返ろうとする前に

扉が閉ざされた音が響き、髪の毛が乱暴に引っ張られた

痛みを訴える間もなく髪を隠していた術布(シュテフ)を剥ぎ取られ

いくつもの黒い筋がぼくの視界を遮る

次いで聞こえてきたのは複数の男の声、そして目を眩ませる光

室内の灯りを点けられたようだ


「スゲェ、こいつの髪真っ黒だ」


「質は悪ィがこンだけありゃあ一生遊んで暮らせるぜ」


「無駄口叩くな、さっさと狩るぞ、こいつの導力(ローク)は俺が抑えとく」


「さぁてぼくちゃん、じっとしとこうね~動くと頭がズタズタになっちまうからね~」


複数いる男の内の一人に横腹を蹴られて、また床に転がってしまう

(この人たち、ぼくの髪が目当てなんだ)

なんとかして逃げ出さなきゃと思うのに、痛みと恐怖で体が動かない

眩しさに目が慣れてきたけど背中を踏みつけられて相手の顔も確認出来ない

頭皮が剥がれそうな強さで髪を引っ張られ、反り返った首と背骨が軋んだ


「う、う・・・」


「ぼくちゃん叫ばないの偉いね~我慢強いね~でも目は閉じとこうね~

俺たち顔見られたらぼくちゃんの事殺さなきゃいけなくなるからさぁ」


「やめて・・・ください・・・!」


「これだけ(ロア)持ってんだから少しぐらい恵んでくれよ

イイコトすれば人生豊かになるぜ」


視界の端に光るものが見えて、それが髪を切る道具だと分かった

嫌だ、髪を切られたらぼくは死んでしまうんだ

死にたくない、まだ死ねない


「いやだァ!!」


叫ぶと同時に室内の照明が明滅を繰り返す

僅かでも抵抗を示した所為か

苛立った男に踏みつけられていた手首への力が増した


「静かにしやがれ!クソガキがッ」


更に横から力加減なく顎を蹴り飛ばされ視界が揺れて・・・

床に飛び散る赤い飛沫を見た気がしたけど

それを認識する前に意識が遠のいていく


(・・・た、かったなぁ)


視界が閉ざされる間際に想ったのは

初めてぼくの頭を撫でてくれた時のヴァンさんの笑顔


(もう、一度・・・)


ジャキン、という音と共に引っ張られていた力がなくなり

何本もの髪の毛が引き抜かれる感触と同時に

ぼくの頭はささくれだった床へと打ち付けられた






*****






両手が熱い・・・顔全体がじくじくと痛む

顎とか口の中とか、蹴られたお腹もとても痛い

髪を切られて死んじゃった筈なのにこんなに痛いものなんだろうか


(あれ、ぼく・・・)


まだ生きてるみたいだ

どれだけの間気を失っていたのか分からないけど

傷の痛みで意識が覚醒したらしい、ほんの少し体を動かして気づいたのは

自分が気を失った時と同じ態勢で倒れていた事

額や頬をくすぐる感触から丸坊主にされたわけでは無いと分かって安堵する


(ロア)・・・全部取られなかったから生きてるのかな・・・というか、それよりも、)


体がすごく重い

ちょっと悶えるだけで精一杯というか起き上がれないというか

押し潰されそうというか、ちょっと冗談抜きで内臓が口から飛び出そうというか

さっきから呼吸するのもいっぱいいっぱいで、腰から鳩尾にかけてずっしりと


「だ、誰かっ・・・ぼくの上に、乗ってませんか・・・っ」


「やっと起きた」


のんびりとした子供の声と共に体の上に乗ってた鉄柱のような重みが無くなる

助かった、もう少しでおなかと背中がくっつくかと思った

呼吸を整えて両手と顔面の痛みを堪えつつ起き上がって振り返れば

そこには見たこともない・・・


(えっと・・・男の子・・・?)


金色の大きな瞳と、同じく金色の長い髪はみつ編みでひとまとめにされている

寒い季節だというのに黄色いフードのついたパーカーの前は全開で

真っ白な肌に黒いバストバンドをしてる、おへそもまる出し

腕まくりしてるけどその下には肌に張り付くようにぴったりとした黒の長袖

下半身は黄色でサイズがぶかぶかの、あったかそうなズボンを履いてはいるけど

ものすごくギリギリのラインと言ってもいいぐらい際どい腰パンをしてる

というか黒の紐みたいな下着がズボンからはみ出してるんだけど

もっと言えば、その・・・おへその下から股間にかけての、


大変に美しく煌めく金色(こんじき)のギャランドゥがまる見えなんですが


女の子にこんな毛が生えてるわけがないと判断しての、男の子判定

というか、おへその下って子供の内から生える毛なのかな

顔だけ見れば性別不明の、金色尽くしの美少年が

仁王立ちで腰に手をあててぼくを見下ろしていた


見下ろす、と言ってもぼくより頭ふたつ高い程度で

頭五つぐらい高いイースペルトさんや、更に高いヴァンさんほど見上げはしないけど

それでもあの二人に比べればずっと目を合わせやすい高さ


・・・にしても謎だ


状況から考えるにこの少年がさっきまでぼくの上に乗っかってた筈だけど

見た目は全然重そうに見えない

むしろぼくでも持ち上げられそうなぐらい細くて軽そうだ


(じゃあ、さっきの鉄の塊みたいに重かったのは一体・・・)


美少年の目の前で考え込み始めたところで

なんの前触れもなく突然平手で左頬をパーン!と叩かれた


「痛ぁ!なにするんですか!?」


「お前さぁ、このボクに何か一言ないわけ?

あの暴漢どもを追い払ったこのボクに!ってゆーか失礼だよね

顔合わせて早々人の体を上から下までじっくりその目で犯してくれちゃってさぁ」


「え、あ、えっと・・・その・・・」


突然の言葉に理解が追い付かなくて

しどろもどろしてたら今度は右頬をパーン!って叩かれる

顔面裂傷中なモンだから普通に平手打ちされるよりめちゃくちゃ痛い

なんなのこの子、すごく暴力的だよ・・・


「お前トロ過ぎんじゃないの?チンコつけてる意味ないじゃん」


おまけに口汚い、すごく可愛い見た目をしてるのに勿体ない

それにギャップが激しいこの感じ・・・なんか、イースペルトさんを思い出した

慎ましさの欠片もない言動に内心引きながらも

暴漢を追い払い、ぼくを助けてくれたのだからとお礼を言っておくことにする


「助けてくれて、ありがとうございました」


「死ぬほど感謝してよね」


うわー、ますますイースペルトさんっぽい発言

あんまりに暴力的だから暴漢の仲間じゃないかと勘繰ったのは秘密にしとこう


さて、怪我の手当てはどうしようかな

とりあえず室内を見渡してみるけど目ぼしい医療道具は見当たらない

借りたばかりの部屋だから何もないのは当然だけど

水道は使えるとして、タオルとか毛布とか

色々揃えるまでちょっとの間ユゥトさんに借りてこよう


と、いうわけで床の隅に捨て置かれた術布(シュテフ)を拾い上げ埃を払い

ザンバラになった頭に巻きつけながら部屋の出入り口に向かって

扉を背後に振り返り、少年に視線を向ける


部屋を出ていきたいんだけどこの子をそのままにはしておけない

やっぱり助けてくれたお礼が言葉だけじゃ拙いよね

でも今のぼくはお金も持ってないし、物品の持ち合わせもない

せめてお茶を出す位はしたいけど湯呑みもない

そもそもお湯すら準備できない

フードを被る素振りでどうしたものかと頭を抱えていると

その間の無言による気まずさなど気にもしてない様子で話しかけられた


「ところでお前さ、なんで導力(ローク)使わないの」


「え、導力(ローク)って使えるものなんですか?」


問いの内容そのものに驚いて

矢継ぎ早に聞き返せば即座にしかめっ面が返ってきた


「うわ~そっから説明とかめんどくさぁ」


「す、すみませんぼく、何も知らなくて」


何かを媒介にしなければ利用できない資源の一種だと思ってたから

彼の発言にはビックリだ、つまり導力(ローク)を個人利用できるって事だよね

この髪、高値で売れるだけが取り柄じゃなかったんだ


「上手く扱えるようになればその怪我だってすぐ治せるし

自然エネルギーと融合させて水とか雷とか作れるんだよ?」


「ほんとですか!?」


「ボクが嘘吐いてるっていうの」


「め、め、め、滅相もないです!」


じとり、と睨み付けられて慌てて首を振る

手と顔の怪我が痛いけど死ぬほどじゃない

それにとても耳寄りな情報を聞いたばかりなんだ

怪我が治せたり水や雷まで作り出せるなんてすごい

痛みなんか気にしてる場合じゃない


「あの、どうすればそういう事ができるようになるんですか?」


「ふぅん?学ぶ気あんの」


「はい!ぼく、世界中を旅してるんです!

今のお話を聞くと今後の旅路にとても役に立ちそうなので、是非学びたいです!」


「んじゃ、ヴァンのトコに弟子入りすればいいじゃん」


「え・・・?」


なんでここでヴァンさんの名前が、というかこの男の子


「ヴァンさんとお知り合いなんですか?」


「知り合いもなにも、一緒に住んでるし」


「ええ!?ぼく今日の昼間お宅にお邪魔してましたよ!」


「だからなに?」


「お、お会いしませんでしたよね?」


「だからなに」


「・・・えっと・・・あの・・・」


やばい、この子会話する毎に不機嫌になってく

余計な事話さないほうがいいみたいだ


「ヴァンさんからは『ここで学ばないか』って誘われたんですけど

もう、お断りしちゃったんです」


「だからなにって聞いてるじゃん、バカなのお前」


「だ・・・だからお断りした手前、またお願いに上がるのもアレですし」


「だからァ・・・あ~、もういいや、お前やっぱ今からでも死んどきなよ

生きてる価値ないから」


ううっ・・・この子の言動ほんとにキツ・・・ 否!

ぼくの言い回しが回りくどいのかもしれない!

こういう人には初めからしっかりと明確に目的を話さなきゃいけないよね


「弟子になるって事は長期間その人の元に留まらなきゃいけないんです

でもぼくは旅人なのでひと所に留まる事はできないんです

だから弟子にはなれないんです」


「だからなにって言いたいけどお前バカだから理解してないよね

バカでアホでマヌケでグズなお前の為に懇切丁寧に言ってやるよ


『 だ か ら な に 』 」


「う、うぅ・・・」


「あ、泣いた?もしかして泣いた?ねぇねぇ今どんな気持ち?」


なんでそんなに嬉しそうなんですか!?

人をおちょくって面白いんですか、ハッキリ言いますが貴方最低ですよ!!

・・・と、心の中で叫ぶ。直接言うとまた痛い事されそうだから


先ほどとは打って変わって上機嫌で

ぼくの顔を覗き込もうとフードを引っ張ってくるからせめてもの抵抗に

フードを引っ張り返してみるけど、この子

力加減を知らないのか布を引き裂きそうな力で引っ張ってきた

ビリ、と破ける音が聞こえてもらったばかりの外套(コート)を傷つけるのも嫌で

慌てて引っ張り返してた手を放したと同時に背後から聞こえてきたのは



「また貴様か、ベノン」



聞き覚えのある第三者の声

直後、室内なのに背後から突風が吹いて背中を押され

正面にいた男の子にぶつかりそうになったけど

当の相手はひらりと無駄のない動作でぼくを躱したものだから

反射的に突っ張ろうとした両腕は空を切り

またしても顔面から滑り込むように前のめりに倒れこんでしまう

次いで鋭い金属がぶつかり合う音が背後で響いた


「チンカスこそ何しに来たのさ」


「クソ悪魔がそこのガキにちょっかいを出してないか先生が心配なさっていてな

様子を見に来たんだがやはり思った通りのようだ、愚か者が」


「ねぇちょっと今のこのチンカスの言葉聞いた?

ボクがお前にちょっかいだって、ひっどいよねぇ正義のヒーローに向かってさ」


「貴様のような存在が正義を語るな、言葉が穢れる・・・ああ失礼

貴様は 存 在 そ の も の が汚物だったな

シャオルーン、滞在中この生ゴミに何かされたらすぐ私に言いなさい

相応の報復を約束しよう」


「なにが報復だよ、結局ボクに勝ったことなんて一度だってないクセに」


「生憎だが負けた覚えも ・・・シャオルーン?」


「・・・うわ、コイツ死んだんじゃないの?」


(・・・)

いがみ合う二人が殊更根の深い犬猿の仲であろうことは理解できました

言動が似通っている理由もわかりました

けど、今のぼくにはそんな二人を仲裁することはおろか

返事を返すことすらできないほどの痛みで失神寸前なのです

二度目ともなる床での顔面スライディングは流石に堪えました

お願いですからこれ以上痛い事しないで下さい・・・


倒れ伏してピクリとも動かないぼくを

イースペルトさんと金色の少年が上から覗き込む気配を感じる

そうして、顔面スライディングの果てに脳天を壁に打ち付けた事が原因で

ぼくの意識は白い靄の向こう側へと旅立ったのでした



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