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類は友を呼ぶ――とは信じたくない。

 緊急招集。

 名にやら不穏な言葉で呼び出しを受けた俺達は今、学園長室の中、並んで直立していた。

 ミハイルにミルヴァ、俺は言うに及ばず。

 呼び出しを受けたのは俺達だけではない。この学園の、教師や生徒と思わしき数名が、一列に整列させられていた。

 そいつらがまた……なんというか、濃い。


「けっ! 珍しく学長様からの呼び出しだと思って来てみりゃあ……クッソくだらねぇ面構えが並んでやがるなあぁぁぁぁ?」

「それはこちらの台詞です。あのゲイン様が緊急招集を行うほどの事態に、何故貴方の様な下衆が、まるで私と同列の様に隣にいるのですか? 理解不能です」

「ああぁ? そりゃ俺がテメェよりつええって学長様もよぉく理解されてるからに決まってんだろうがよぉぉ。これだから眼鏡を掛けた女はいけすかねぇぇ」

「貴方が私よりも強いなどという妄想は聞き流して差し上げましょう。私は貴方とは比べ物にならない寛容な器をもっていますので、下衆の眼球などと私の眼鏡では見える物に差があり過ぎるのも当然というものですから」

「はっ! なぁらその下衆の魔法でてめぇのご自慢眼鏡、眼球ごとぶっ壊してやろうかぁぁぁ? ああ?」

「やれるものならどうぞ? その代わり、貴方の命は無くなっている事でしょうが」

「はっはっはっ先生方。言い争いは話を聞いてからでも遅くはないじゃあないか。まずは有難い幼女の話を拝聴せねば!」


 ……いやあ、うん。

 僅か二メートル横で繰り広げられている会話がこんな感じです。

 俺は横にいるミルヴァにこそこそと話掛けた。


「(なにあの危険人物達? 超怖いんですけど?)」

「(貴方も人の事は言えないと思いますが……うーん、私の学園時代にはいなかった方々ですね。最近赴任してきた教師方や、おそらく役員に就いている生徒だと思いますが)」

「おぉぉい! そっちでコソコソ話してるガキ共ぉぉ!」


 おろ? まさかの御指名か?


「てめぇら見た事ねぇぇぇ面だなぁ? 何モンだぁぁ?」

「理不尽です!」

「村娘です!」


 俺達は即答した。 


「ふぅざけんなぁぁぁ! 意味わかんねぇぇぇよぉぉぉ!」


 怒られた。そりゃそうだ!


「こぉの学園の生徒じゃねぇぇぇ……俺ぁ生徒の顔は全員覚えてっからなぁぁ。……ミハイルの監督付きなら問題はねぇんだろぉぉが、この招集に呼ばれる意味はなんだぁぁぁ? ああぁ?」


 そう言われてもなぁ……そんなもん俺が知りたいわ! 状態なんだけども。


「なあ、語尾の長いおっさん」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ここぞとばかりに伸ばしすぎじゃね!?」


 疲れないのかなぁ、まあそれはいいとして。


「緊急招集って、そんなヤバイもん?」

「「はああぁぁぁぁぁ!!??」」


 これに大仰な反応を示したのは、問いを向けたおっさん一人ではなく。その隣でおっさんと剣呑な言い合いを繰り広げていた眼鏡の女教師もまた、語尾を伸ばしていた。

 こいつら実は仲良いんじゃなかろうか。


「キラノさん。緊急招集は初めてですか?」


 声を掛けてきたのはミハイルだ。


「あー……軍事行動とかでなら良くあったな」


 もちろん地球にいた頃の話だ。

 とはいえあの時の緊急招集とは、ほぼ雑用係の招集という意味に近い。本当に大事が起こった時には、一々誰それの呼び出しなど行わなず、『来い』とか『戦え』の二文字で済まされるのだから。

 最も俺は軍の中でもかなり特殊なポジションにいたから、ぶっちする事も珍しくなかったが。


「ああぁ? てめぇみてぇな餓鬼が、軍属経験者ぁぁぁ? じょぉぉぉだんはほどほどにしとけよぉぉ」」

「上流階級の人間であれば珍しくもありませんが……貴方の様ないかにも凡俗らしい方が? 信憑性には欠けますね。口だけでならどうとでも言えます」


 おっと、いきなり見下してくるね。二人共、ずいぶんとプライドがお高いようで。


「そのくらいにしておきなさい」


 こちらを睨んでくる二人の視線を遮って、ミハイルが進み出る。


「この二人は学園長がその実力を認められたお二人です。それに疑問を持つという事は、学園長の判断を疑うという事。それがこの場所でどういう意味を持つのか、分からないあなた方ではないでしょう?」

「ミハイルぅぅ……てめぇぇ……」

「しかしミハイル殿……」

「もし、それを承知の上でなおこれ以上余計に話を拗らせるつもりならば」


 その瞬間、室内の温度が明らかに下がった。


「――私がお二人を処断する事になりますが?」

「――――」

「っ」


 ぎゃーぎゃーと煩かった二人が、黙る。


「へえ……」


 常人なら寒気に震え上がるその眼差しの冷たさに、見入ってしまう。

 ただの気苦労気質な優男かと思っていたが、ああいう瞳ができるんだな。

 ひょこっと、ミルヴァが顔を出す。

 こいつが笑顔なのはもはやデフォルトだが、微妙な雰囲気の変化でムカつく笑顔が見分けられる様になってきた。

 間違いなく、今こいつはニマニマしている。


「どうです? カッコいいでしょう?」


 どうやら、今のミハイルの放っている鋭い気の事をいっているらしい。

 にまついているこいつはムカつくし、素直に肯定してやるのはもっとムカつく。

 良し、混乱させてくれる。


「村娘神よりはカッコいいな」

「――――――ッッ!?!?!?」


 どおだ肯定も否定もできないだろう?

 実際狙い通り答えられずにショートして、百面相をこなしている。

 くっくっくっ、悩め悩め。

 ――と、そこで。



「待たせたな、学園切っての問題児ども」

 

 

 この国のトップが、失礼な言動と同時に、ようやく顔を見せた。

 ふむ。ちら、と横の教師二人を窺う。

 この二人、ゲインの声が聞こえた瞬間に無駄話を完全に切り上げ、揃って背筋を伸ばしている。さっきまでの、ギスギスが嘘みたいな静けさだ。やはりゲインに対しての忠誠心は高いと見える。

 ――よし、なら試す価値はあるか。


「呼び出した張本人が重役出勤とは、良いご身分だなぁ? チビッ子女王さま?」

「なっ……!?」

「てんめぇぇぇぇぇぇ!!?」


 瞬間、横合いから殺気が飛んできたが気にしない。

 もとより少しばかりの遅刻でどうこういう細かい性格などしていない。ヘイトポイント回収の為に吹っかけてみただけだ。

 当のゲインは、薄く笑って流すだけ。予想通りの反応だが、やはりこんなチャチな挑発には応えてくれないか。

 こいつの負の感情は、結構なヘイトポイントになりそうなんだがなぁ。

 何事もなかった様に己の座へと迷い無く落ち着く。

 こういった何気ない動作の一つ一つに『格』が滲み出ていて、なるほど学園の教育方針の境地とはこの姿なのだと。実像がすぐ近くに存在するのだから、そりゃあ誰だって目指してみたいと奮起するわな。

 それこそ、長寿族のエルフだからこその芸当だ。設立当初からの狙いなのか、後付で培われたものかは知らないが、全く巧い事できているものだと感心する。


「さて……見知らぬ者らもいるだろう。まずは各人の自己紹介――といきたいところなのだがな」


 背の低さを補う為の、高めに設計されたイスの上で、気難しげに眉を顰めて腕を組む。

 どうやら、本気で難儀な案件を抱えているらしいな。こいつをこれほどまでに悩ませるとは。


「その時間が惜しいほど、今はわりと切羽詰っている。それは各々必要と思う範囲でやっておいてくれ。そういうわけで、早速本題といかせてもらおう」


 さあ何が飛び出すやら。

 隣国との戦争でも迫っているのか? あるいはVIPを抱えるこの国で、疫病でも流行りだしたか?

 そういった俺の予想は――


「龍の大群がこの国に近づいている。一歩対応を誤れば、明日にも国が滅ぶ。お前達の意見を聞きたい」


 ――さらに一回り、追い越されていったのだった。

変人国家の片鱗が見えてくるの回。

次話では、アルティの見過ごされていたドジッ娘ぶりが発覚します。


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