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元凶と喧嘩してみた。

「で、アは俺に何の用が――」

「アルティで! アルティでお願いします!」


 一文字で呼ばれるのはよっぽど嫌みたいだ。創造神が必至で声を張り上げ、頭を下げている。

 本来敬われ、畏れられるべきはずの存在の哀れな姿に、なんとも言えない気分になってきた。

 名前くらいちゃんと呼んであげよう。


「アルティは俺に何か用があるんだよな? だからわざわざこんな処へ喚んだんだろ」


 ざっと周囲を見回す。

 なんとも異常な空間が広がっている。

 上下左右の概念などなく、そもそもちゃんと前を見れているのかも判然としない真っ白な空間。

 今はアルティの存在があるからまだマシだが、あまりの何も無さに、放り込まれた当初は自分の生死を疑ったくらいだ。

 というより、やっと死ねたと思っていたのに。

 目の前の創造神さまが現れた瞬間の失望感を思い出したら溜め息が出てきた。


「はぁ」

「なんだかムカつく溜め息じゃな」

「ああ、別に気にしなくても、お前の体が貧相すぎて残念だなぁって思ってるだけだから」


 適当に最低な理由で誤魔化そう。

 あ、そういえばこいつ心読めるんだっけか。

 俺は内心しまったと思っていると、


「本っ当にムカつく理由じゃったな! せめて隠す努力くらいせんか!」


 さっき俺が嫌がったからなのか、どうやら心は読まれていなかった様子だ。

 これ幸い、さっさと進めて忘れてもらおう。


「そんな事よりさー。いい加減俺をこんな所に喚んだ理由を教えてくれませんかねー?」

「じ、自分から話しを拗らせておいて……っ」


 なにやら拳をぷるぷると震わせている自称神魔王サマ。

 何かとてつもないものでも鎮める風に深呼吸をして震えを落ち着かせ、ようやく口火を切った。


「お主、召喚される直前の記憶はあるかの?」

「うん、世界が消滅する寸前だった」


 原因不明の超エネルギーが宇宙の彼方で炸裂して、あと数分までに迫る宇宙消滅(ビッグバン)

 


「うむ! 何を隠そう、世界を消滅させちゃったのは妾じゃよ!」

「へー」

「いやーついうっかりとな。本当はあそこまでするつもりなかったんじゃが、予想以上にエネルギーが強力で――」

「ふーん」

「…………いや、あの……もうちょっとなんかリアクションないかの……?」

「だって興味ねえし」

「自分の世界の事じゃろ!? もっと恨み骨髄死ねこのクソヤロー! 的な事言ってもいいと思うんじゃが……」

「めんどい」

「そういう問題か!?」

「なんだよお前こそ。そんなに恨んで欲しいのか?」

「い、いや。そう言う訳ではないが」

「ならいいじゃん。さ、話し続けてくれ」

「想定と違い過ぎて調子狂うのう……」


 ぶつぶつ言いながらも、また変にこじれては面倒だと思ったのか、すぐに気を取り直して口を開いた。


「あっ! そういえばお主が今までどんな悲惨な目に遭っても死なずに済んだのは妾の掛けた祝福のおかげじゃ。なあに、礼にはおよばんぞ! ハッハッハッ」

「死ぃぃぃぃねえええええええええこのクソヤロウがああああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


 十七年分の恨み骨髄。

 全身に殺気を纏って全ての元凶へと飛び掛かった。

 今の俺は神殺しの禁忌すら躊躇わん!


「ちょっと待てい! 世界が滅ぼされても文句ひとつ言わんかったくせに、どうして不死の祝福を掛けられていたらそんなに殺気立てるんじゃ!? 順序おかしいっ」

「俺にとっちゃあ世界なんぞよりよっぽど重大事だからだよっ。……そういやお前は世界が消滅する直前に俺を喚び出してくれたんだっけな。どこまでも人の死に場所を奪いやがって、どうやら貴様とはここで決着を着ける運命らしいな!」

「ついさっきが初対面じゃのにまるで怨敵のような物言い!?」

「ついでに世界を滅ぼした事のお仕置きをしてやる」

「ついでが重くて軽い!?」


 がっし! と両腕を組み合って力比べ。

 こ、こいつっ、見た目に反してなんちゅう腕力を……さすがは自称神と言ったところか。

 しかし俺の全力には及ぶまい。

 不死の呪いがあったにしろ、荒事に巻き込まれ、揉まれ続けた人生は伊達ではない!


「自称ちゃう! 本物の神! それとのろいじゃなくしゅ・く・ふ・く!」

「あ! ってめ、ずりぃぞ! 心読むなよっ」

「命掛かっとる状況でずるいもくそもあるかあああああああ!!!」


 ……結局その揉み合いはお互いの体力が底を尽くまで続けられた。

 なお、へばっている状態の方が話しが捗ったのは余談である。


アルティは元人間の神成りなので、生身では人間の届かないほどではありません。生身では。

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