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8月11日(月)

   〜8月11日〜


「ふ……ふぁ……ブァックション!」


 夏風邪は馬鹿が引くと言うけれど、確かに俺は馬鹿だった。MPの事を忘れ、変形魔法を使いまくっていたのだ。そのせいで体の調子が悪くなり、そのまま寝込んでしまった。


 え? マリナの魔法で治せるんじゃないか? 俺だって最初はそう思った。けど、覚えているだろうか。一昨日のことを。

 あの日何故かマリナのMPは回復していなかった。そして今もまだ回復していないらしい。


「う〜ん……。なんで魔力が戻ってこないのかしら」


 昨日の朝からマリナはずっと考えているが、思い当たる節は無いらしい。


「ばぁ気長に理由ぶぉ探せばックスン! ズッ、あ〜、良いんじゃだい?」


「気長に、ねぇ〜。でも魔法が使えないのは困るし……」


 マリナは困るだろうが俺はむしろそっちの方が嬉ッシュ! ……そっちの方が嬉しい。なんたって牛にされたり憑依されたりしなくて済むのだから。

 しかし……


「ん〜……。何か無いかな〜」

 マリナが本気で困っているのを見て、少し手伝おうかという心が芽生えた。


「あのざマリナ。何か本みたいなのって無……ズビッ。無いの?」


「本? あったら苦労しないわよ」


「じゃなさ、一旦元の世界に帰ってびたら? 向こうにはぞういうのあるんじない?」


 俺は無理でもマリナはパソコンの穴からゲームの世界に行くことが出来る。……はず。

 理論上は可能だろう。だってマリナは初めてこっちに来た時「あの穴を通ればゲーム世界に行けるのか」という質問に「行けるけど、今の俺は魔法に慣れてないから無理」と言っていた。つまりマリナはゲーム世界に戻れるはずだ。戻ってるのを見たことは無いからあくまで戻れる「はず」だ。


「ん〜。戻っても良いけど、向こうのそれ関係の本はもう全部読んじゃったのよね……」


「ぶぁい?! ……ックシュ!」


 全部読んだ……だと?


「マジで……?」


「えぇ。前に言った気がするけど、魔法は5年くらい前に現れたものなのよ。だからあまり研究も進んでないの。魔法関係の本なんてまだ30冊くらいしか出てないのよ?」


「ほぇ〜」


 確かに30冊なら俺でも本気を出せば読めそうな気がっ……する。前に雉が持ってきた本みたいなやつじゃ無い限り……。


 ……あれ? 雉?


「そうだ! 雉ックション!」


「キジックション?」


「いや、雉なよ。確か前、あいつの祖父ちゃんが魔法に関する本を持ッス! ……持ってたって言ってた。」


「へぇ〜。ちょっと行ってみようかしら。参考程度にはなるでしょうし」


「じゃ、雉に連絡するよ」


 俺は携帯で雉にメールを送る。


『ちょっとマリナがお祖父さんの本を読みだいらしいんだけど、良い?』


 すると2分程で返事が来た。


『大丈夫だと思うよ。お祖父ちゃん、本好きには物凄く甘いから。本が読みたいってマリナちゃんが言ったら直ぐに出してくれそう。

 前に見に行った限りでは、火を起こす魔法の使い方だとか時間を操る魔法だとか色々あったよ。前に矢田君にあげた穴みたいなのもあるし。ところであれ読んだ?

 じゃ、今から迎えに行くね。多分10分ぐらいで着くから。』


(あいつ……。携帯でメール打つの速くね? 2分で打つにしては長いだろ。)


 俺は雉の送ってきた文章を2分以内で打つという挑戦を開始した。しかし何度やっても間に合わなかったり打ち間違いが発生したりと失敗する。

 そんな不毛な挑戦をしているとインターホンが鳴った。


「あれ? 矢田君、風邪でも引いたの? なら丁度良かった」


 マリナがドアを開けると、雉が入ってきた。何が丁度良かったのかは知らないがー手には何やら紙袋を持っている。


「あぁ……。ちょっと色々あって……。俺は行けないからマリナと一緒に行ってックジュン!」


「ん。分かった。じゃあこれ置いてくね。じゃあマリナちゃん、行こうか」


「は〜い」


 雉は持っていた紙袋を床に置き、そのままマリナと部屋を出た。


「……何だろ?」


 俺は雉の置いていった紙袋を覗き込む。そこにあったのはいかにもお見舞い用ですといった感じで籠に入った果物達だった。


(……まさか丁度良かったってこれのことか?)


 雉は俺の風邪の事を知らないはずだ。なのにこんな物を持っていたってことは……お裾分けか何か……か。確か雉の本好きでは無い方のお祖父さんが八百屋か何かをやってたっけ? で、大量の果物を送ってきたからお裾分けでも……というところか。

 俺はバナナを頬張りながら考えていた。


 ◇


(……遅い)


 すでに時間は9時を過ぎている。なのにマリナはまだ帰ってきていない。雉に連絡してみたが、どうやら雉はマリナを送った後用事があったらしく、直ぐに帰っていた。また、お祖父さんに電話やメールをしても、倉に閉じこもっているのか返答が無いらしい。


「ま、どうせお祖父ちゃんのことだし、マリナちゃんと一緒に話し込んでるんでしょ。心配しなくてもいいと思うよ」


 雉はそう言っていたが、どうも不安が拭えない。


 俺はベッドの上で何も出来ぬまま深夜2時まで待っていたが、力尽きて寝てしまった。


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