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8月7日(木)

   〜8月7日〜


 何で完全に元に戻してくれないのかな……。


(だってそっちの方が色々と面白いだろ?)


 そうは言ってるけど、私はマリナさんが楽しんでるだけのように思えるんだけどな……。


(つべこべ言うな! どっちにしろ、まだ元の俺の体が治りきってないんだから仕方ないだろ!)


 でもさ〜、だからって記憶だけ戻して精神入れ替えたままにする必要は無いわよね?


(うぐ……。そんなこと言ってるとまた昨日みたいに完全に乗っ取るぞ?)


 うひっ! ご、ごめんなさい! マリナさん!


 ◇


 さて、今私はどういう状況に置かれているのか説明するとしましょうか。

 簡単に言うと、マリナさんは昨日1日を満喫した後、私と記憶だけを元に戻したの。つまり、今の私はトシナリなんだけど、心というか……口調とか仕草はマリナなの。逆に、本当のマリナさんは私の本来の心を持っていることになる。だから今、マリナさんは男口調で話してるんだけど、何故か私が本来の心で話す時より男っぽくなってる。普段のマリナさんにも男っぽい一面もあるのかしら。






 ところでマリナさん。マリナさんの心になって思ったんですけど、マリナさんの口調ってこれといって決まってないんですか? なんか語尾というか、口調が不規則に変化してる気がするんですけど……。


(ん? あぁ。俺の普段の口調の事か。説明は面倒だが……あえて言うなら、俺は俊成の言う“ゲームの世界”の存在だから、かな)


 どういうこと? なんでゲームの世界の人だと口調が定まらないの?


(全部のゲームにおいてそうって訳じゃないが、ファイナル・ガーデンでは普段……つまり戦うとき以外は、自分の意志で話したり動いたりする事が無いだろ? しかも話すとは言っても、所詮は『頑張れ!』とか『よしっ!』とか『いっけぇぇぇ!』とかばかりだ。だから戦闘時の行動パターンなどは決まっているけど、普通に話す時の口調や仕草はこれといって決まってないんだ)


 ふ〜ん。なるほど〜。だから所々、「あれ? なんかマリナさんの口調が違う?」って思うときがあるのね?


(そういうことだな。今もまた変わってるし)


 あら、そういえばそうね。違和感が無かったわ。


(ほら、また変わった)


 ふぅ〜ん。まぁ、あまり気にしない方が良いってことね?


(まぁそういうことでよろしく。決して作者が『あれ? そういやマリナの口調がおかしくね?』と思って後からこの設定を加えたって訳じゃないぞ。決して女の子口調が難しいとかいう理由じゃないからな!)


 ……作者? 何を言ってるのよマリナさん。これはれっきとしたフィクションよ?


(俊成こそメタるな!)


 はぁ〜い。


 ……思うけど、メタるなっていうのが最強のメタ発言よね(笑)。


 ◇


(ところでマリナさん、一昨日のあれは、一体何だったの?)


 お昼ご飯を食べ終えて、私はマリナさんに聞いてみる。あの事故のせいで今私はこうやってマリナさんに取り憑かれているんだから。


(一昨日? ……あぁ、俊成の体が裂けたやつか)


 ……もうちょっと言葉を選べない? マリナさん。


(つっても事実なんだから、しょうがないだろ。)


 それはそうなんだけど……。


(あれは前にも言ったが……、俊成の体は魔法というものに慣れていないだろ? だから空間の歪みに耐えられずに、体も歪み始めたんだよ。その結果体が裂けていったんだ)


 へぇ〜。そうだったの。あ、あとさ〜、穴に吸い込まれた時は幽体離脱したみたいになってたよ? あれは何だったの?


(あぁ、あれは俺もよく分かってないけど……。多分、俊成は向こうにも“アバター”としてもう1つ体を持っているからじゃないかな? だから、わざわざこっちの体を向こうに移す必要が無くて、精神体だけを送ろうとしたんだと思う)


 はぁ〜……。難しいのね。


(そりゃあ、魔法研究家の俺でさえ、よく分かってないんだから、魔法に最近触れたような人に分かられてたまるか! って感じだよ)


 まぁ、確かに私なんかが理解出来たら、商売あがったりだよね。


(というか、そもそも何でログインしたら向こうの世界に行く必要があるのやら……)


 そこからなのね……。まぁ、そんなに深く考えてもしょうがない事だし、今は「へぇ〜、そんなことがあるんだ〜」程度にしておきましょうよ。


(……投げたな?)


 まぁ、それはそれとして、今日は木曜日でバイトは休みだし……何しようかな〜。


(……まぁいい。俺は暇だし、寝てるぞ)


 そうマリナさんは言い残して、完全に黙り込んだ。


 ◇


 午後2時を過ぎた頃、キジさんがやって来た。私が今の状態を説明すると、ベッドに横たわるマリナさんの体をチラリと見て言った。


「つまり、今の矢田君は矢田君の記憶を持ったマリナちゃん。だということ?」


 流石のキジさんでも勘違いをした。私でも今、私達が今どういう状況にあるのか分かってないから、キジさんが分からなくても仕方無いのだけれど。


「いや、それは逆なの。口調と仕草がマリナさんのトシナリなのよ」


「……つまり今の矢田君はオカマだということか」


「うぅ……。そういうことにもなるわね」


「いや、性同一性障害の方が近いかな……」


 実際キジさんから見たら、今の私はただのオカマにしか見えないのかもしれない。だって男の人が女の口調と仕草をしているのだもの。しかも今の私は女物の服を着ている。何故私が女物の服を着ているのかというと、マリナさんが寝てから暇になった私は、何か面白い事が無いか調べていた。そしたら、私が簡単な魔法なら使えるようになっている事に気付いた。

 その時私が使える事が分かったのは、


・拡大魔法


・変形魔法


・簡易攻撃魔法(炎・水・草・電気)


 の3種類だった。そして、無機物の形を変化させる“変形魔法”で、私の着ていた男物の服をフリフリの女物のデザインに変えた。だって今の私の心は女の子なんだもん。可愛い服だって着たくなるでしょ!


「ま、一応矢田君であることには変わりないんだろ? ならどんな格好でも良いよ」


「ふふっ。ありがとね。ところで、キジさんは何をしに来たの?」


「あぁ、ちょっと渡したいものがあってね。……ほら、これ」

 そう言うとキジさんは持っていたバッグから1冊の本を取り出した。


「『The Hole Connecting The Two World』……何? これ?」


 キジさんが取り出した本は非常に古く、よく映画とかに出て来る魔法の書みたいな本だった。そしてその本のタイトルは『2つの世界を繋ぐ穴』……。


「いや〜。僕のおじいちゃんがさ、古い本を集めるのが好きなんだよ。で、一昨日おじいちゃんに魔法に関する本は無いかって聞いたら20冊くらい出してきて……」


「その中にこの本があったってことね」


「うん。ちょうど矢田君のこの状態にぴったりでしょ?」


「うん……。だけどキジさん……。この本って全部……」


「もちろん英語だよ」


 私は英語が苦手だ。だからこういう英語の本は、読めた事が無いの。面白そうだけど……読めなくちゃ仕方無いわよね。

 そう思っていると、


「でも矢田君は英語読めないでしょ? だからそれの内容をざっくりまとめたから、持ってきたんだ。」


 キジさんが今度はバッグからUSBメモリを取り出した。


「これなら矢田君でも読めるでしょ」


「そんなのがあるなら先にそっちを出してよぅ〜」


「じゃ、この本をおじいちゃんに返さないといけないから、もう帰るね」


「あ、は〜い。わざわざありがとね〜」


「んじゃ、また明日バイトで」


 そう言ってキジさんは帰っていった。そして直ぐに私はパソコンの前に座った。


「さて。この本にはどんな事が書いてあるのかな〜」


 私はキジさんから貰ったUSBメモリを早速パソコンに読み込ませた。その後、中に入ってたファイルを開くと、大量の文字が現れた。スクロールバーから見て、40文字×36行換算で1000ページ程度かしら。


「って、長過ぎるわよ!」


 一体キジさんは何をまとめたというの? というか、一昨日借りたって事は2日間であの本を読んで、パソコンに打ち込んだって事?


(また今度、気が向いたら読もっと……)


 キジさんの英語力とタイピングの速さに感心しつつ、私はファイルを閉じた。


 ◇


 夜、私はマリナさんの体をチェックしてみた。マリナさんがそろそろ治ってそうだと言ったから。

 私がマリナさんの体に手を当てると、


「ん? あ……」


 私の手がうっすらと光り、全身の力が抜けていくのを感じた。そして私はそのまま眠ってしまった。


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