番外編 メルニがレンと別れたワケ
メルニの過去話なのでメルニ視点になります。
ギルド 白光の刃
それが私達のギルド。
名前はレンちゃんの鋭い神聖魔法からつけました。
このギルドを結成してから1ヶ月ほどだけど、ランクを既にBランクまで上げることができた。
このランクアップのスピードは異例で、他のBランクの人は大体ギルド加入から1年以上たってから今のランクになったとのこと。
そんなことができたのも全部レンちゃんのおかげだと思う。
私も腕には自信がある方だったんだけど、何度窮地に陥ったことか……
そしてそんな私をレンちゃんがいつも助けてくれた。
レンちゃんには本当に頭が上がらないわね。
ちなみに白光の刃は私とレンちゃんを含めてメンバー5人の少数精鋭のギルドだった。
ランクアップするスピードの早さから注目を集めていた私達のギルドには加入申請が後を絶たなかった。
でも私とレンちゃんはギルドを大きくすることを望んでいなかったし、基本的に加入申請を断ることにしていた。
断るのは気が重かったけど、断らないでみんな受け入れていると、育成もままならないし、結局その子の為にもならないから……
というわけで、私とレンちゃん以外のメンバーは3人いる。
まずはアーノンという少年。
この子は私達が初めて助けた人でもある。
私達がアーノンを助ける様子を見て、どうしてもアーノンは私達のギルドに入りたいと言って聞かなかったのよね。
危ないから無理だとさんざん断ったんだけど、あまりの熱心さに負けてついメンバーに入れることになった。
最初は頼りなかったんだけど、持ち前の熱心さでメキメキと上達し、今では頼れる剣士に成長した。
まあ、まだ私ほどではないけどね。
もう1人はタミルという少女。
この子は回復魔法に精通している。
タミルが行き倒れていた所を偶然私達が発見し、そのままギルドメンバーとして保護することになったのだった。
この子の実力もかなりのもので、長丁場となるクエストでは豊富な回復魔法で何度も私達を助けてくれたっけ。
そんな優秀な子が行き倒れていた理由は不明で、謎多き人物でもある。
そして最後の1人は、私の家族に使える召使い、ハーレス。
私達があるクエストで窮地に陥っていた所を突然助けに来てくれて、それ以来、私たちの保護者のような立場でギルドに参加してくれている。
そんな5人で私達、白光の刃は上のランクへと駆けあがっていき、ついにはAランク昇格クエストを受けることになったのだった。
「みんな、すごいよ! オレたちAランク昇格クエスト受けられるんだって!」
そう言った少年、アーノンが一枚の紙きれを持って私達の方に走ってきた。
アーノンが持ってきた髪をギルドのみんながのぞきこむ。
するとそれにはAランク昇格クエストの詳細が書かれていた。
その内容は以下の通り。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Aランク認定試験
内容 モーズ鉱山に生息するブラックワイバーン一体の討伐
難易度 A
報酬 100000
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ブラックワイバーンの討伐……
確かに難しそうなクエストね。
でも実は別のクエストで乱入してきたブラックワイバーンを倒したことがあるからそれほど苦労はしなさそうかも。
「ブラックワイバーンなんて簡単に倒せるだろ! さっさと終わらせてAランクになっちまおうぜ!」
「まあまあ、アーノンさん、気持ちは分かりますが、ここはしっかりと準備をしていきましょう。油断は禁物ですよ」
「そっか、それもそうだよな。じゃあオレさっさと準備すませてくる!」
召使いハーレスの助言を受け、アーノンは急いでどこかへ走り去っていった。
相変わらずハーレスは元気だなぁ。
それからはアーノンだけでなく、私達も準備を整えるべく、いったん仲間と別れ、ギルド会館から出ることにした。
「みんな、準備は大丈夫?」
レンちゃんは私達を見てこう問いかける。
もちろん私達は準備万端なので、すぐにこくりとうなづく。
「分かった。ついにAランク昇格クエストを受けることができているけど、やることは今までと同じ。いつも通り気を引き締めていこう!」
「おー!」
こうして私達の運命のクエストが始まった。
目的のモーズ鉱山に行くまでは全く問題なかった。
そもそもモーズ鉱山はこれまでもクエストで度々訪れていたから、特に問題になりようがないのよね。
道中も今まで討伐してきたようなモンスターばかりだったし、大丈夫だった。
ただ今回はいつもと違って魔物がなんか落ち着かない様子なのが少し気になった。
いつも通り攻撃しただけなのに不意をついたようになってたし、何かあるのかしら?
まあ、気にしても仕方ないし、さっさと目的を達成して帰れるように頑張らなきゃ。
様子のおかしい魔物を時々倒しながら先に進み、山の中腹辺りまで到達する。
そこでついに目的のモンスター、ブラックワイバーンを視界にとらえた。
ブラックワイバーンも他の魔物と同様、なんだか落ち着かない様子で隙が多そうだった。
「ブラックワイバーンもなんか様子が変で不気味ね……」
「うん、そうだね。原因が分からない以上、心配してもしょうがないし、さっさと終わらせよう」
「ええ!」
行動に移すことを決めた私達の動きは早かった。
タミルによる補助魔法を受けて身体能力が強化された私達は一瞬にしてブラックワイバーンのすぐそばまで駆け寄った。
先陣をきったアーノンの斬撃はブラックワイバーンに直撃し、バランスを崩すことに成功する。
そしてそこをすかさずレンちゃんの神聖魔法でブラックワイバーンの動きを拘束し、私とハーレスの斬撃によってたたみかける。
この時点でもう瀕死状態だったブラックワイバーンに対し、アーノンが全力の一撃を放つことであっさりと討伐に成功したのだった。
「ブラックワイバーンの鼓動は――――ない。私達の勝利ですね」
ハーレスのその言葉と同時にみんな歓喜の声をあげた!
「やったぜ! これでオレ達もAランカーの仲間入りだ!」
「本当に……終わったんですよね!?」
「ここまでこれたのが信じられないよ!」
「本当、努力の甲斐があったわよね!」
一瞬にして終わった戦い。
でもこれはAランク昇格が決まった瞬間であり、やはり嬉しい瞬間に違いないのだった。
魔物の素材を少しとってから、しばらく勝利の余韻に私達は浸っていた。
でも、そんな感情、気の緩みが後の悲劇につながることになってしまったのだった……
「お嬢様、危ない!」
ハーレスが突然そう叫ぶ。
喜びに浸っていた私達にはハーレスが叫ぶ意味が分からなかった。
しかし、目の前の光景を見て、嫌でも状況を理解することになる。
私の前に立ちふさがったハーレスを一本の刃が貫いていたのだ。
刃?
なんでハーレスに刃なんて刺さっているの?
周りに敵はいないはずなのに……
ハーレスはすぐさま魔法で刃を引き抜き、素早く止血して距離をとる。
「皆さん、タミルさんから離れるのです、一刻も早く!」
ハーレスの言葉を聞いた私達は慌ててタミルから距離を取る。
するとタミルの周りからは一気に黒い邪悪なオーラが放たれる!
タミルは回復魔法を得意としているけれど、実は近接戦も得意で、剣を隠し持っていることは知っていた。
でもどうして今のタイミングで……そしてあの黒いオーラ……普通の状態じゃないことは分かるんだけど……
「タミル一体どうしちゃったの……?」
「お嬢様……このタミルさんはタミルさんであってタミルさんではありません。操られているのです、悪霊使いに」
「悪霊使い……この近くにいるのかしら?」
「恐らくはそうでしょう。そしてそれが意味することは……我々もタミルさんと同様の状態になるかもしれないということです」
タミルと同じ状態ということは操られるということ!?
それって相当まずい状況じゃないの!?
「みんな、一刻も早くここを立ち去った方がいい」
「レンちゃん……でもそれじゃあタミルは……?」
「お嬢様……今の我々では全滅の危機さえあります。申しあげにくいのですが……」
レンちゃんもハーレスも暗い顔をしている。
分かってる、分かってはいるけど、そんなの信じたくない!
しかし、そんな私をさらに追い詰める出来事が起こった。
なんとタミルとは別の方角から剣が襲ってきたのだ!
間一髪で避けることができたのはいいけれど、問題なのは……
「アーノン、あなたまで……」
私の目の前にはタミルと同じく黒いオーラを放つアーノンの姿があった。
私に攻撃してきたことといい、アーノンも悪霊使いの支配下におちてしまったと思った方が良さそうね……。
これで私達のうちの2人が操られてしまっていて、残るは私含め3人。
しかもハーレスは怪我をしていて万全な状態じゃないし、状況は明らかに悪い。
やっぱり2人を諦めて置いていくしかないのかな……?
「メルニ、そんな暗い顔しないでよ」
私の顔を見たレンちゃんはそう言った。
「だってこの状況……絶望的な状況で笑顔でいられる訳ないよ……」
「メルニはタミルとアーノンを助けたいんだよね?」
レンちゃんの言葉に私は小さくうなづく。
「そっか。じゃあ僕がなんとかする。だからメルニはハーレスと一緒にここから逃げて」
「でもそれじゃあレンちゃんが!?」
レンちゃんは強い。
でもどこにいるかも分からない悪霊使いと私達の仲間2人を相手に対してレンちゃんだけで本当に大丈夫なの!?
いくらレンちゃんでもたった1人で戦って無事に帰ってこれるとは思えない。
「大丈夫。僕は神聖魔法を得意としているから悪霊魔法は僕には効かない。だから安心して町で待ってて?」
「嫌。レンちゃんも一緒じゃないと私帰りたくない! 一緒に帰ろうよ!?」
私の言葉を聞いてレンちゃんは困ったような顔をしている。
私の言うことはただのワガママなんだろうけど、でもやっぱりレンちゃんがいないギルドなんていても意味がないように感じるのよね……
「僕の事を心配してくれているんだよね、ありがとう。僕は大丈夫。でもメルニに心配させるのもかわいそうだから……これをあげる」
そう言ったレンちゃんは私に何かを差し出した。
レンちゃんから渡されたのは――――生命の指輪だった。
生命の指輪――――それは私達がギルドを作るための最初のクエストでもらった記念すべき最初の報酬。
私とレンちゃんにとっては感慨深い一品だ。
生命の指輪はずっとレンちゃんが装備していたため、生命の指輪にはレンちゃんの魔力がたっぷりと染みこんでいる。
その結果、その指輪はレンちゃんを使用者と認識し、レンちゃんの生命力を上げるとともに、レンちゃんの生死と連動するようになっている。
もっとも指輪を壊したからといってレンちゃんが死んでしまうことはないけれど、その逆はある。
つまり、指輪が壊れなければ、レンちゃんは生きているということになるのだ。
レンちゃんはその効果によって私を安心させるために私にこの指輪を渡したんだと思う。
「この指輪……レンちゃんにとって大事なものじゃ……」
「ううん、大丈夫。それでメルニが安心できるのなら安いものだよ」
「でもそれじゃあ……!?」
「お嬢様、時間がありません、早くいきましょう! レンさんの思いを無駄にしてはいけません!」
ハーレスの言葉でハッとした私のすぐそばには、虚ろな目をしたアーノンが向かってきていた。
「させない! 神聖波!」
レンちゃんの魔法は私達の周囲を覆い、悪霊使いに操られているアーノンとタミルを光の波で遠くへ押し流す。
「さあ、二人とも今のうちに!」
「助かります、レンさん! お嬢様、行きますよ!」
「あ、ハーレス、ちょっと……!?」
まだレンちゃんとここに残りたいと思う私を連れ去り、ハーレスが走り出す。
私はただどんどん小さくなっていくレンちゃんを見ていることしかできなかった……
ハーレスの頑張りもあって私達はなんとか山を下り、平地までたどり着く。
そして、そのまま町にある自宅へと帰ることができたのだが……
「うっ……!?」
「ハーレス、その傷はどうしたの!?」
ハーレスの服には大量の血が付着していて、ハーレスは見るからに苦しそうな表情をしている。
「どうやらあの刃には悪霊の呪いが付与されていたようですね……私もそう長くはないようです」
「そんな!? そんなのってないよ!? 待ってて、今すぐ回復魔法を……」
「残念ながら、この呪いはただの回復魔法では治りません。お気遣いはありがたいのですが、お嬢様の大事な魔力を無駄にする訳にはいきませんから……」
ハーレスのいう事は分かる。
私も回復魔法について学んでいて、同様に他の魔法、悪霊の魔法の特徴についても知っている。
だから、私が使える回復魔法くらいではハーレスの傷を治せないことも分かってはいる。
でも何もしないで見ているだけなんて……できるわけない!
「嫌だよ! 私を一人にしないでよ、ハーレス!」
「ワガママ言わないで下さいよ、お嬢様。もうお嬢様はAランクの冒険者であり、一人前です。私がいなくても大丈夫です」
「嫌。このまま終わってしまうなんて、イヤ!」
「そうですね……私としてもこのまま終わってしまうのは心苦しいので、最後にあがいてみましょうか……」
そう言ったハーレスは自分から離れるよう私にうながす。
私もハーレスが何かをしようとしていることを理解し、おとなしくハーレスのそばを離れる。
「いきますよ……輪廻転生!」
そうハーレスが言うと、ハーレスの周りを光が包む。
えっ……確か輪廻転生って、一回今の自分が死んで別の体で生まれ変わるみたいなものだったよね?
ということは、ハーレス、死んじゃうの?
「ハーレス、死んじゃ嫌だよ!」
「お嬢様、これは仕方ないことなんです。でも、この魔法をかければ、もしかすると姿はどうであれ、再びお嬢様をお助けできるかもしれないのです」
「ハーレスが助けに来てくれるの? 本当に?」
「はい。ですからそんなに悲しまないで。きっと、また会えますから……」
そう言ったハーレスはニッコリとした穏やかな表情のまま、姿が薄くなっていく。
「絶対、絶対会いに来てよ、ハーレス!」
「はい、お約束しますよ。それまでお嬢様、ギルドとこの家をお願いしますね」
「うん、ハーレスがそう言うならそうする!」
「いい子です。では私はしばらく旅立ちます。それまでお元気で」
「うん、ハーレスもね!」
その言葉のかけあいを最後に、ハーレスの姿は消え去ってしまった。
また、会えるよね……?
一人残された私はその場でしばらく涙を流していた。




