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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
最終章 天使との決戦
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86.悪魔ネットワーク

「……ついてくるのはいいが、その距離はなんだ? すごい目障りなんだが」



 しばらくブローダンに距離をおきながらついていくと、そうブローダンは言い始めた。



「別にどうついていこうが構わないでしょ?」

「ついてくるならもっと普通についてこいよ。視界ギリギリの所にいられると気が散ってしょうがない。そうするくらいなら案内なんてしてやらないからな」



 別に案内してくれと頼んだつもりはないんだけど……

 まあ、ここで逆らっても良いことないし、ここは素直にいう事を聞くしかないか。


 そう思った僕はしぶしぶブローダンの少し後ろを歩くことにした。




 しばらく互いに言葉を交わさず、黙々と歩き続けていたけど、そんな中ブローダンが口火をきる。



「なあ、お前異世界から来たんだろ? その世界ってどうなんだ? こことは違うのか?」



 へ?

 ブローダンってそんなこと聞いてくるイメージがなかったからすごい意外。

 今までのイメージとのギャップに戸惑いつつ、僕は返答をする。



「そうだね。悪魔なんていないし、魔物だっていないね」

「そうなのか。そうすると、人間同士でしか会話ができないっていうことか? それはなんだか寂しいな」



 寂しい……か……

 元の世界にいたときはそれが当たり前だったから何とも思っていなかったんだけどなぁ。

 でもこの世界に来て色んな種族と話をしてきた経験がある今なら、その状況は少し寂しいと思えるのかもしれないね。


 まあ、この世界の人間でさえ、ほとんどの人達は魔物と会話なんてできないだろうから、実際に会話しているのは人間同士に限られる訳で、元の世界とあまり変わらないとも思えるんだけど。

 そう考えると、他種族の人達と会話ができる僕ってだいぶ恵まれているんだろうなぁ。



「レンは元の世界ではどんな風に過ごしていたんだ? 今のように旅していたのか?」

「まさか。毎日学校に行って勉強して、帰ったらゲームで遊ぶ毎日だったよ」

「ガッコウってなんだ? あとゲームというのは天竜で流行っているアレか?」



 そっか……

 世界が違うんだから、元の世界で当たり前なことも当たり前じゃなくなってしまうのか。

 考えてみればそれも当然だよね。 


 それからは、学校やゲームなど元の世界でやっていたことについて軽く説明しておいた。

 意外にもブローダンは素直に話を興味深そうに聞いてくれた。



「そんな生活があるんだな……やはり異世界は面白いな。でもそうすると、レンはこの世界に来てだいぶ戸惑ったんじゃないか?」

「そうだね。そもそもまず、自分の体が人間じゃなかったことが驚きだったけどね。そのインパクトが強かったし、なんとか日々を過ごすので精一杯で、他の細かい所を気にしてる余裕なんてなかったよ」



 そう、毎日生きるのに精一杯だった。

 やっと一息つけると思ったらまた何か別のやるべきことが見つかったりしたし。

 でもそんな日々も今では良い思い出だよね。


 ブローダンと話をしているうちにいつの間にか何かの大きな穴の前に到着した。



「ここを通るとお前の仲間達が住む世界へ行けるぞ」



 どうやらこの穴が悪魔世界の出口らしい。

 穴の中をのぞきこんでみても真っ暗で何も見えないのでかなり不気味だ。



「お前は世界のどこへ行きたいんだ?」

「えっ!? どこに行けるか選べるの!?」

「だいたいはな。悪魔ネットワークをなめるんじゃないぞ」



 悪魔ネットワークか……

 確かに悪魔は長年生きる上に色んな種族に紛れ込んで生活しているから、色んなつながりを持っていそうだよね。



「僕が行きたいのはメルニの所だね。メルニと少し話がしたいんだ」

「そうか、分かった。大丈夫だとは思うが、念のため俺様もついていく。ここまで連れてきてやったんだから文句はないな?」



 相変わらず気に障る言い方だけど、要するに僕を助けてくれようとしていることだよね。

 特に断る理由もないので、素直にうなづいておいた。



「決まりだな。なら早速向かうぞ。時間も惜しいからな。はぐれるんじゃないぞ!」



 そう言ったブローダンは黒い穴の中に入っていく。

 するとあっという間にブローダンの姿が見えなくなってしまった。


 あのー、これではぐれるなと言われても無理な気がするんですけど……


 とにかくよく分からないその穴に僕も急いで飛び込んでみることにした。



 穴に飛び込んだと思ったら、一瞬にして周りの景色が変わった。

 辺りを見渡すと、どうやら誰かの家の中にいるらしい。

 読みかけの本や飲みものが置かれているし、誰かがここで実際に生活しているんだろうな。


 辺りの様子を眺めていると、すぐそばから声をかけられた。



「レンも無事に着いたか。じゃあ早速人間に変身してから出発するぞ」



 声がする方に振り向くと、そこには一人の人間の男性が立っていた。

 話の内容からすると、その人は人間に変身したブローダンなんだろうね。

 僕はその場で人間に変身し、ブローダンに続いてこの家から出ることにした。




 家から出ると、人間の町の通りに出たので、その通りを僕とブローダンは歩いていく。

 悪魔力のある僕とブローダンならば、人間に混じっても変身魔法がバレることはないから堂々と人混みの中を歩いても大丈夫そうだね。



「ブローダン、この町にメルニがいるの?」

「いや、この町は隣町だ。だから歩いて目的の町まで行く。お前が悪魔世界に来たのもあの家からなんだが……っとそうか。気を失っていたんだったな」



 ブローダンは気まずそうに話を終える。

 ヴァイルがブローダンと合流して隣町から悪魔世界に行くって言っていたけど、それがあの家のことだったんだろうな。

 僕が気を失っている間、誰かがあそこの穴を通って悪魔世界まで連れてきてくれたんだろうね、きっと。


 町から出ると、舗装された道路が続いていて、周囲には等間隔で木が植えられている。

 本来の人間の領域の道ってこんな風になっているんだね。

 僕が初めて人間の領域に来たときは道のようなものが見当たらなかったし、木すらなかったからなぁ……。

 あのときはきっと幻術にでもかけられていたんだろうね。



「こういう道路を見ると元の世界を思い出すなぁ」

「レンの世界もこういう道があるのか?」

「うん。ただこことは違って、車っていう機械がたくさん走っていてとてもうるさいんだけどね」

「機械が走る? そんなこともあるのか?」



 ブローダンの反応を見ると、どうやらこの世界に車はないらしい。

 飛行船とか潜水艦とかあるからこの世界に技術はかなりあるし、てっきりあるものだと思っていたんだけど。


 それからも車についてや元の世界の様子について色々と聞かれつつ歩いているうちにメルニの町へと到着した。


 町に着いたのはいいんだけど、メルニは一体どこにいるんだろう?

 メルニのオーラから探り当てるしかないんだろうけど、この人混みの中、メルニだけを探すのはさすがに骨が折れるよなぁ……

 でも文句言ってても仕方ないし、地道にいくしかないか……



「レン、どうした? 困った顔をしているな?」



 僕の顔を見たブローダンはそう言った。

 見て気づかれる位、気持ちが表情に出てしまったみたいだね。


 メルニの所に行きたいと言っておきながら、その場所が分からないなんて恥ずかしくて言えないし、ここは適当にごまかしてやり過ごそうかな。



「いや、なんでもないよ」

「なんでもなくないだろ。多分、どこに向かったら良いのか分からないっていうところじゃないか?」



 ギクッ!?

 いやに勘がいいな、ブローダン……



「そ、そうだよ。悪かったね!」

「別に責めてないだろ? どうしたいのか言ってみろよ」

「うっ……分かったよ」



 ブローダンは別に責める気はないらしい。

 特に嫌味な事は言われなさそうなので、素直にメルニに会いたいこと、でもメルニの居場所が分からないことを伝えた。



「そうか。ならちょっと待っていろ」



 ブローダンがそう言うと、呪文を唱え、僕達の周囲に結界を張りだした。

 何かをするんだろうから、人目につくのはまずいといった所だろうか?



「よし、これで大丈夫だな。じゃあお前はそのメルニというやつの事を思い浮かべて目をつぶっていろ」



 ん?

 ブローダンが何をしようとしているのか分からないけど、とりあえず言う通りにしてみるかな。


 目をつぶっていると、ブローダンの手のようなものが僕の頭に触れる。

 そしてしばらくすると、それが頭から離れた。



「もう目を開けてもいいぞ」

「分かった」



 目を開けると、そこには右手に黒っぽいもやのようなものを持ったブローダンがいた。



「その黒いものは何?」

「ああ、これは悪魔の記憶だ。悪魔力を持つ者同士でやりとりできる一種の伝達方法だな」

「えっ? それって僕の記憶を抜き出したっていうこと?」

「抜き出したというよりコピーしたというところだな。だからレンの記憶を奪った訳じゃないから安心しろ」



 記憶のコピーね……

 ブローダンが何か持ってるからてっきり記憶が盗まれてしまったんじゃないかと思ったよ。



「まあ、天使ならそういうこともやりかねないけどな」

「天使はそういうこともできちゃうの?」

「ああ。代表的なのは、天使に対して反発する人間の記憶の消去だな。そういった人間に対しては天使に対して反発する原因となる記憶を全て消去するそうだ。するとその人間は天使に対して反抗することができなくなる」

「なかなかえげつないことをするんだね……」

「そうだな。ちなみに天使のことを知らない人間が多いことのからくりがその記憶の消去にある。そういうことを天使がしているからこそ、天使は人間から悪く思われることはない」



 そんなからくりがあるなんて……

 ブローダン達、悪魔の話を聞いていると、人間にとってもこの世界の天使って良い存在じゃなさそうなのに、悪く言う人がいないのはどうしてかと思ったらそういうことなのか。



「それより、メルニとやらの居場所が分かったぞ」

「ええ!? そんなすぐに分かるものなの!?」

「悪魔の力を甘くみるなよ。案内するか?」

「うん、それじゃお願いするよ」



 記憶を共有したり、あっという間に特定の人物の居場所を突き止めたり、悪魔の力ってすごいんだな……

 さすがは天使と戦う存在と言ったところなんだろうな。


 ブローダンについていくと、とある一軒家の前にたどり着く。



「この中にメルニって奴がいるぞ」



 確かにブローダンの言う通り、この中からメルニのオーラを感じ取れる。

 どうやら本当にメルニの場所を特定できていたらしい。

 ブローダン、あんな短時間で一体どうやってメルニの居場所を突き止めたんだろう……?


 しばらくその場でボーっと立っていると、上から声が聞こえてきた。



「あっ、レンちゃん! わざわざ来てくれたんだね! 今迎えに行くからそこで待ってて!」



 メルニの声だ。

 声のトーンからしてずいぶんと嬉しそうだけど、もしかしてまた人間の僕と間違えられている?

 確かに今は人間の姿に変身しているけどさ。





 しばらく待っていると、目の前の入り口の扉が開いた。

 メルニがお出迎えしてくれたようだ。



「わざわざここまで来てくれてありがとう! さあ中に入って入って!」

「あ、あのー、僕は人間の方のレンじゃないけど大丈夫?」

「もちろん!魔物のレンさんと人間のレンさんは別人なのかもしれないけど、今の私にとってはどちらも同じようにかけがえのない存在なの! だから気にしないで中に入って! そちらのお連れの方もどうぞどうぞ!」

「ああ、それじゃ入るぞ」



 メルニは僕を人間の僕と勘違いしている訳ではなさそうでちょっとホッとした。

 正直がっかりされてもおかしくないと思っていたからね……


 こうしてメルニに案内されながらメルニの家にお邪魔することにした。



 メルニの家は広々としていた。

 リビングなんかは元いた世界の基準じゃ30畳はあるんじゃないのかな?

 エルンの家とは大違いだ。



「わざわざここまで来てお腹すいたでしょ? 今からお食事の準備をするからちょっと待ってて!」

「いや、そんな気を遣わなくてもいいよ。それよりもメルニの話を聞きたいんだ」

「そう? でも何も出さないのも悪いから、軽くお菓子でも持ってくるね!」



 そう言ったメルニはキッチンの方へ向かっていった。

 そんなに気を遣わなくてもいいのになぁ……


 メルニが部屋から出て行って、部屋の中には再び僕とブローダンの二人になる。

 僕達はしばらく黙って部屋の様子などを観察していた。



「こいつ、なかなか良い家に住んでいるんだな」



 家の様子を見たブローダンはそうつぶやく。



「ブローダンもそう思う? 家具もなんだか高そうな物が並んでいるよね」

「ああ。両親がとても金持ちだったんだろうな。まさかあいつ自身がそんなに稼いでいる訳でもないだろうし」



 メルニはギルドに入っているみたいだから収入はあるんだろうけど、こんな家が買えるほど稼いでいるとは思えないしなぁ……

 ブローダンの推測通り、メルニの両親が裕福なんだと考えた方がつじつまがあうよね。



「ごめんごめん、時間かかっちゃった!」



 どうやらブローダンと話している間にお菓子の支度ができたようだ。

 メルニが大きなカゴみたいなものを持ってきている。

 そのカゴの中をのぞくとクッキーみたいなものが入っていた。



「メルニ、それってクッキーなの?」

「クッキー……? いや、これはポフホっていうおやつだよ」



 あ、つい元の世界の感覚で聞いてしまった……

 あまりにも似ているからつい、ね。

 見た目は似ているけど、味はどうなんだろう?



「メルニ、これ食べてみてもいい?」

「うん、どんどん食べちゃって!」



 メルニに満面の笑みで見つめられながら僕はポフホというものを口にしてみる。

 この状況だとどんな味でも文句は言えないな……


 でもそんな心配は無用だったみたいだった。

 何しろとても甘くておいしかったのだから。

 クッキーと食感は似ているんだけど、クッキーよりもしっとりとしていて味は少しマイルドかも。



「お味はどう?」

「うん、とってもおいしいよ!」

「本当に!? ありがとう!」

「そうなのか、じゃあ俺様も少しいただこうか」



 僕の反応を見てブローダンは次々にポフホを口に入れ始める。

 ブローダンめ……僕に毒味をさせたな……


 僕達はしばらくメルニが作ったポフホを食べながらくつろいだ。

 他愛もない話をして、その場でゴロゴロしているのも良かったけど、そろそろ本題に入らないと。



「メルニ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「うん、何でも聞いて!」

「ありがとう。もう一人の僕のことについて聞きたいんだけど……」

「うん、分かった。そりゃレンちゃんも気になるもんね。私の知る範囲で良かったら喜んで教えるよ。ちょっと時間かかるかもだけど、いい?」

「うん、構わないよ」



 そう言ったメルニは深呼吸してからゆっくりと話し始めた。



「私がレンちゃんと出会ったのはギルド会館の中なの」

「ギルド会館?」

「うん。ギルド会館っていうのはね……」



 メルニの話をまとめると、ギルドに興味を持っていたメルニはパートナーを探していた。

 そこで人間の僕に出会ったのだとか。



「どうしてギルドに入りたかったの?」

「そうだね……あこがれ……かな?」

「ふーん、憧れかぁ」

「うん。様々な問題を解決して町の人達を助ける仕事で、私も含めて町の人達はみんなギルドの人達を尊敬していたんだよね」



 そういうものなんだ……

 僕が今までいた魔物の世界にはそんなものなかったから全然知らなかった。

 そこは魔物と人間の違いなのかもしれないね。



「人助けをするの?」

「うん。でも依頼は様々で、ペットを探すとか、物をとってきてほしいみたいなものもあるし、魔物を退治してほしいというのもあるよ」



 色んな依頼を受けるのか。

 そこは元の世界のゲームにあったギルドと同じような組織と考えても良さそうかな。



「メルニは人々から尊敬されたくてギルドに入りたかったの?」

「それも一部あるけど……それは一番の理由ではないわ」

「えっ、そうなんだ。何か深い訳がありそうだね」

「深い理由というほどじゃないけど……自由が欲しかったの」



 自由?

 一体どういうことなんだろう?


 それからはどうしてメルニがギルドに入りたいと思うようになったか経緯を話してもらった。


 メルニは貴族の家に生まれ、将来は権威のある貴族の息子に嫁ぐことが決まっていたのだとか。

 でもそれが嫌なメルニは、町で一番活躍するギルドメンバーになればそんな親の考えも変えられるのではと思ったのだそうだ。



「親は反対しなかったの?」

「もちろん反対されたわ。でも私の決死の説得で、期限付きでギルドに入ってやってみてもいいって言ってくれたの」

「そっか、そんな訳でギルドに入ったのかぁ」



 この家、ずいぶんと豪華なつくりになっていると思ったらそんな事情があったのか。

 僕は一般家庭で育ったから、全然そんなお金持ちの人達の決まりとかよく分からないんだけど、なんか大変そうだね。



「そういえば、ギルドって簡単に入れるものなの?」

「簡単……ではないかな。ギルド加入にはある試験をクリアしないといけないの」

「ある試験?」

「うん。ギルドのトレードマークになっている薬草を取ってくる試験なんだよ」



 薬草を取ってくる試験……

 魔物退治とかじゃなさそうだし、そんなに難しそうじゃなさそうかな?



「あ、今簡単そうって思ったでしょう!? ひどーい!」

「え、そ、そんなことないよ?」

「薬草をとるだけなら確かに簡単かもしれないけど、そこに行くまでが大変なんだよ!?」

「そうなの?」

「そうだよ! だってクマの魔物、ブラッドベアが出るんだよ!? 見つからないようにするのすごくヒヤヒヤするんだから!」



 クマの魔物か……

 確かに普通の人間だったら勝ち目なんてないだろうしギルドにまだ入ってもいない人だと逃げるしかないんだろうなぁ。



「メルニもその魔物に見つからないようにしながら薬草を集めたの?」

「そうしようとしたんだけど、ちょっとドジしちゃって見つかっちゃったんだよね。だからなんとか頑張って倒したの! ギルドの人にビックリされたっけ……」



 た、倒したのか……

 メルニって、あの白騎士と戦えるほどの力の持ち主だから強いとは思っていたけどそれほどとは。



「まあ、それも全部レンちゃんのおかげだったんだけどねー」

「そんなに強かったんだ?」

「うん! あの神聖魔法は圧巻だったなぁ。こんなに強い人がどうして今までギルドに入っていなかったのかすごい不思議だった」



 強力な神聖魔法か……

 このときからもう一人の僕は天使に寄生されていたからそういう強力な力を使えたのかな?



「そんな力があるのなら、もう一人の僕とメルニが組んだギルドだったら順調に依頼はこなせたんだろうね」

「うん、それはもう! ギルドにはランクという階級制度があって、上からAランク、下はFランクまであったんだけど、私達はBランクまでいったんだよ」



 上から二番目のランクか……

 メルニの実力は相当なものだし、もう一人の僕というメルニと同じ位もしくは強い人がいたら、ランクがすぐに上がるのは別に不思議なことでもないよね。

 でもそんなメルニ達でも一番上のランクになるのは厳しいのかな?



「そっか、それはすごいね! でもさ、メルニ達ってすごい強いと思うんだけど、それでもAランクまでは難しいんだ?」

「実はもう少しでAランクになれそうだったんだけどね……。でもあの出来事があったから……」

「あの出来事?」

「うん……私がレンちゃんと別れる原因になったクエスト」

「あ、ごめん、そんなこと聞いちゃって……」



 もう一人の僕と別れる原因になったクエストか……

 詳しく聞いてみたいけど、メルニに嫌な事を思い出させてしまうし、聞かない方が良さそうかな……



「気にしなくていいよ。いや、むしろレンちゃんにはこのことを話しておいた方が良いかも。レンちゃんはもう一人のレンちゃんの事を知りたいんだもんね?」

「それはそうだけど……でも辛い思いをさせてしまうし……」

「レンちゃん、優しいんだね。でも大丈夫。こうして目の前にレンちゃんがいる訳だし、あのレンちゃんも性格が変わったとはいえ生きている。話すことに何の戸惑いもないよ。それより、少し話が長くなるけど、いい?」

「うん、それは構わないけど……」

「分かったわ。じゃあそのクエストを受けたときのことを話すね」



 メルニは言葉の内容とは裏腹に声が震えていた。

 そんなメルニに無理をさせたくはなかったんだけど、メルニが覚悟を決めて話そうとしてくれているのも事実。

 ここは黙ってメルニの話を聞いてあげよう。



「本題に入る前にレンちゃんに謝らなければならないことがあるの」

「どうしたの?」

「以前、私が悪魔世界で話をしたとき、竜に襲われて私は命の危機にさらされ、レンちゃんはその竜に立ち向かって行方不明になったと伝えたよね?」

「うん、そう聞いたと思うよ」

「それは実は本当のことではないの。私達のギルドに関わりのない人にはそう伝わっている、いや、伝えたんだけど、実際はもっと違うことが原因になっているの」

「なんか色々と事情がありそうだね……」

「うん。それも含めて……今から話すね」



 メルニは一呼吸おいてからゆっくりと話し始めた。

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