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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第一章 異世界で魔物生活
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番外編 リザースがレンを慕うワケ

 私はリザースと言う。

 リ・ザーラ村の誇り高き戦士だ。


 リ・ザーラ村はランドリザードの最大の村である。

 その村で一二を争うほどの実力を持つ私は村の一隊を任せられていた。

 そんな重責を担えるのはただ私の心が強いからではない。

 リーシャという恋人の支えがあるからだ。



 ”今日もお仕事がんばって”というこの毎日の見送りの一言が心の支えになるのである。


 今日もその言葉を励みに、職場である警備室へと向かった。




 村の警備室で待機していると、緊急の連絡が入った。

 どうやらリ・ザーダ村で反乱が起きているらしい。


 リ・ザーダ村といえば、ランドリザードの中でも荒くれ者が集まる村で、治安が悪いことでも有名なので、反乱を止めるために出撃することはそう珍しくもない。



「じゃあ、さっさと反乱を止めてくるよ」



 そう同僚に言い、自分の部隊を率いてリ・ザーダ村へ向かう。





 リ・ザーダ村に到着して私は目を疑った。

 先にリ・ザーダ村に到着していて反乱の鎮圧を試みていた兵士達のほとんどが重傷を負っていたのだ。

 だが戦いは続いているらしい。



「急いで加勢するぞ!みな、行くぞ!」



 そう叫んでから私の部隊は反乱軍に立ち向かった。

 反乱軍の鎮圧は何度も行った経験があり、毎回あっさりと鎮圧を終えてきたのだが、今回はなぜか様子が違う。

 何かがおかしい……

 そう思っていると見られないランドリザードの姿が現れた。



「もっと骨のあるヤツはいねぇのか!? おっ! ついに隊長がやってきたか! おい、俺様と戦いやがれ!」



 そう言ったランドリザードの若者は私の元へ今にも襲い掛かろうとしていた。



「なめてもらっては困るな! ウォーターソード!」

「ふん、隊長でもこの程度かぁ!? 話になんねぇなぁ! ヒートスピア!」



 そう叫んで放たれた若者の攻撃をかわそうとしたが少しかすってしまった。

 するとその攻撃が容赦なく私に深い傷を刻む。



「かすっただけなのにこの威力だと……!? お前……いったい何者だ!?」

「冥土の土産に教えてやる。俺様の名前はリョーザン! 次期ランドリザードのトップになる男の名前だ! さあ、消えるがいい!」

「くっ! スモッグミスト!」



 目くらましの技を使ってなんとか技を避け切り、急いで後退する。



「状況が悪いから一時撤退するぞ!!」



 そう叫び、私の部隊は命からがら戦線から離脱した。



 私は焦っていた。

 リョーザンの圧倒的な強さを目の当たりにして、リ・ザーラ村まで攻め込まれ、占領されるのは時間の問題だと感じているのだ。

 一回占領されたが最後、自分達は奴隷のように人権なくこき使われることになってしまうし、それ以前に多数の一般人の犠牲者がでることが予想される。

 そこで私はリ・ザーラ村に到着すると同時に住民の避難を急がせた。



「もうすぐこの村は戦乱に巻き込まれる! その前に早く村の入口にいる隊長について行ってこの村から逃げるんだ!」



 私はそう叫んで村の入口に人々を誘導する。

 村の入口にいる隊長はリーザーという名前で私と仲の良い友人であるとともに、腕を競い合うライバルでもある。

 彼の腕は私に負けず劣らずのものであり、彼に避難誘導を任せれば安心だ。


 私は彼が住民を避難させる時間を稼ぐために村に残るつもりである。

 リーザーからずいぶんと心配されたが、



「大丈夫だ、危なくなったら逃げる。死んでしまったらリーシャも悲しむからな」

「そうか、必ず生きて戻ってくるんだぞ!」



 そう言葉をかけあうと安心した様子になったリーザーは住民を引き連れて村から旅立っていった。



『これで町の住民の全滅は回避できた。後は時間を稼いで自分達も逃げよう』



 そう心に誓い、ついにリ・ザーラ村までやってきた反乱軍を迎え撃つ。


 リョーザンの姿がないこともあって、反乱軍を進行させないように時間を稼ぐことはそれほど苦労はしなかった。

 ある程度時間を稼いだ所で私の部隊はリーザーとの合流を急いだ。



 しばらく村から直進しているとランドリザードの群れが見えた。

 その群れを目指して進み、ついに追いついたときにその群れが異様に騒がしいことに気づいた。

 何がどうなっているのか?

 とりあえず事情を聞いてみよう。



「何があったんですか?」

「突然大きな赤い蛇が現れて、何人かがさらわれてしまったんだ! あまりに速い動きにみんな圧倒されて、どうしようと思っているところだよ……」



 何人かさらわれた!?

 一体どういう事なのか、リーザーから話を聞かなければ。



「隊長はどこにいるか分かりますか?」

「隊長さんは途中で襲ってきたランドリザードの荒くれ者の相手をしていると思うよ。部下に私達の先導を任せて先に逃げるように言っていたようにみえたな」



 もしかするとリーザーが相手しているのはリョーザンなのかもしれない。

 リーザーのことも心配だし、でも蛇にさらわれた住民も助けないといけないということでどうするべきか迷っていたところ……



「あっ! リザースさんじゃないか! 大変だよ!」



 誰だっけと考えていると、近所のおばさんだということに気が付く。



「そんなに慌ててどうしたんですか?」

「大変だよ! リ、リーシャちゃんが蛇にさらわれてしまったんだよ!?」

「何だって!? 蛇はどの方角に向かったんですか!?」

「あっちの方角に行ったよ……」



 おばさんが指差したのでその指の方向に向かって全速力で駆けていく。



「間に合ってくれよ……」



 そう祈りながら蛇の元へ私は向かっていき、それに気づいた私の部隊も少し遅れてから私の後に続いていった。


 湿地帯が終わってもうすぐで草原帯に入ろうかという所で私達は蛇に追いつくことができた。



「おい! 人質を放せ!」

「リザース! 来てくれたのね!」



 蛇に向かってそう叫ぶと、蛇のいる方向から愛しのリーシャの声が聞こえた。



「リーシャ、今助ける! ウォーターソード!」



 こう叫んで繰り出した攻撃は蛇の頭を直撃した!

 蛇をひるませ、人質の解放に成功する。


 人質達は一斉に逃げ出すが、人質の中にいた一人の子供が転んでしまう。

 その子供に蛇の容赦ない鋭利な尻尾の攻撃が襲い掛かる!

 間に合わない!?

 そう思ったとき、子供の前に一人のランドリザードが立ちふさがり、子供の代わりに蛇の攻撃を受けたのだ。


 そのランドリザードとは……



「リーシャーーーーーーー!!!」



 そう、愛しの優しいリーシャが子供をかばったのだ。

 リーシャは守れてよかったとでも言うような笑顔のまま石化してしまった……

 蛇の尻尾には石化の作用があるようだった。

 リーシャがかばった子供はその場で泣き崩れるが、別の人がその子供を救いだした。



「貴様……よくもリーシャを!? 覚悟しろ! ストリームソード!!」


 

 だが、私の攻撃は蛇に傷一つつけることもできなかった。

 先程はたまたま不意打ちをすることができただけだというのか……!?


 私は全力をかけた攻撃の失敗によって態勢を崩しており、為す術もなく蛇の噛みつき攻撃が直撃してしまった。

 重症を負い、動けなくなってしまった私は自分の無力さ、恋人を亡き者にした恨みもはらせない情けなさを感じていた。


 私の部下も人質を逃がす為にこの場を去った者以外は蛇に挑んでいたが、ことごとく返り討ちにあい、私のように重症を負って動けなくなったり、リーシャのように石化してしまった。


 このまま蛇に食べられてしまうのか……と思っていると



「く~ろいへびはよ~わむしだア~いつ~もまるくなってふ~るえ~てル~♪」



 何者かの声が遠くから聞こえて、蛇はそちらの方に向かっていった。

 蛇が去って行った様子を見た後、力尽きて目を閉じた……。




 あれからどれ位経ったか分からないが、突如異変がおこった。



 キキィィィィィィィィィ!!!!!!!!



 そういう耳障りな音が響き渡ったのだ。

 この音は一体何なんだろうか?


 音を聞いて目が覚めた私は、身体中のあちこちがまだ痛みながらも、何とか体を動かせたので、石化したリーシャをおぶさりながら、ゆっくりと音がした方角へと歩いていく。


 茂みがあったのでそこで隠れつつ様子を見ると、どうやらコボルドの青年が一人であの蛇と対峙している様子が見えた。



『群れないとまともに戦えないコボルドがこんな所であの蛇に見つかってしまうなんて運が悪かったな。まあ、姑息なコボルドらしい最期だとも言えるな。せっかくだからお前の最期、見届けてやるよ』



 そう冷めた様子で状況をうかがうことにした。

 最初のうち、妖狼族の青年はただ逃げ回っているように見えた。

 だが、どうやら事情が違うらしい。

 コボルドの右手が赤く光ってきているのだ。

 妖狼族にそんな技あったか疑問に思いつつ、そのまま見ていると、妖狼族の青年の右手が強く光り、炎をまとい始める。



『おいおい、手が燃え始めてるけど大丈夫か?』



 そう思っていたが、次の光景を見てその考えを改めることになる。

 右手にまとった炎が勢いづくと同時に一気に蛇へと向かっていったのだ!


 自分が敵わなかった相手が放つ攻撃を物ともしないその様子は異様な光景に映った。

 このコボルドの青年が只者ではないことを瞬時に感じ取り、その後の戦いを静かに見守る。



「そんなものか! ならこれで終わりにするぞ!」



 コボルドの青年は蛇がいる方向に向かって飛び上がる。

 その間に繰り出される蛇の攻撃を宙で全てかわしきってから




「覚悟しろ! フレイムクロー!!!」



 そう叫んで蛇の首を切り落としてしまった。


 その戦いにいつしか魅入っていた私は、自分が敵わなかった宿敵を倒してくれた、あの圧倒的な攻撃を目にし、いつの間にか妖狼族の青年を尊敬、憧れの目で見ていた。


 妖狼族の青年が蛇に近づくと赤い光が周囲を照らし出す。

 そして……



『な、なにが起きているんだ!?』



 赤い光を浴びたリーシャは徐々に元の姿を取り戻し始め、石化が完全に解けたのだった。



「リーシャ……無事なのか?」

「……リザース? あれっ? 私生きているの……?」



 この瞬間、私にとってあの妖狼族の青年は尊敬、憧れの対象だけでなく、崇拝の対象にもなったのだ。



 それから倒れていた仲間達の元へと戻ると、みんな私とリーシャと同じように赤い光によって元気を取り戻していたようだった。


 こうして無事に生還できた私達は一旦ランドリザードの群れへと戻った。

 するとそこでも嬉しいことが発覚した。


 

「おーい! リザースー!」

「……リーザー? リーザーなのか!?」

「そうだよー! リザースもよく無事だったなー!」



 リーザーが生きている!

 あのリョーザンを相手にしてよく無事でいられたものだ、本当に。


 どうやらリーザーはリョーザンと戦ってなんとか耐えていたが、途中でリョーザンの仲間がきてリョーザンに何か耳打ちするとリョーザン達が去って行ったそうだ。


 恐らくリ・ザーラ村が陥落したんだろう。

 だからもう戦う必要はないと。

 でもそのおかげでリーザーと無事に会えたのだから、そのことは全く気にもとめなかった。


 かつての村は盗られても、また新しく村を作ればいいのだから。

 村作りによさそうな平地を見つけた私達はそこに新しいリ・ザーラ村を作ると決めた。




 リ・ザーラ村の復興作業が一段落した頃、私はリーザーに話しかける。



「リーザー、村のことは任せてもいいか? 私はあのコボルドの青年に恩返しをしたいんだ!」

「本気なのか? いくら強いコボルドといってもリザースが仕えるほどの相手なのか?」

「いやいや、こんな私なんかじゃ釣り合わないお方だよ! 一刻も早くあの方のお役に立ちたいんだ。だから、頼む!」

「仕方ないな。お前がそうしたいなら好きにしろ。リーシャさんにも必ず許可はもらうんだぞ」

「もちろんだ。じゃあ村は任せたぞ、リーザー!」



 ちなみに恋人のリーシャとは既にそのことは話しており、時々会いにくることを条件にあのコボルドに恩返しをしに行っても良いと言ってくれている。

 リーシャにとっての命の恩人でもあるからか、”頑張ってきてね”と応援された。

 もう心置きなく恩返しができるのだ。


 私は一人でコボルドの青年に会いにいくつもりだったのだが……



「私も一緒に連れて行ってください!」

「リザース様が行くところならどこへでもついていきます!」

「俺も命の恩人の役に立ちたいです!」



 そんな感じで結構な数の兵士達がついてきてしまった。



「いいか? ついてきてもいいが、決してあのお方の邪魔をするんじゃないぞ!」

「「「了解いたしました!!!」」」



 こうして私達はあのお方がやってくるであろう場所の近くでそっと待機することにした。


 部下からの情報によれば、あのお方はスライムの村に住まわれていて、リ・ザーダ村の連中がそのスライムの村の水をせき止める岩を置いたということであった。

 それならばあの方はこの岩の近くに必ず姿を現されるはず!


 そしてついに……



「あっ、例のお方が現れました!」



 確かにあのお姿は紛れもなく蛇を倒した妖狼族の方!

 隣にスライムを連れているが、他種族と仲良く交流されていて、なんと心の広いお方なんだろうと私は感激していた。



「まだだ、まだ近づくんじゃないぞ!」



 そう言って、そわそわしだす部下達を鎮める。

 例のお方は大きな岩をいとも簡単に砕き、愚かなリ・ザーダ村のリザードマン達の攻撃をあえて受けて力の差をお示しになった。



「よし、このタイミングでゆっくり近づくぞ!」



 こうしてついに私にとって運命の瞬間が訪れるのである。

 そう、あの憧れのお方と声を交わすことができるのだ!



「レンさん……いや師匠と呼ばせてください! 師匠の力は先ほど拝見させていただきました! 是非その力で我々を導いていただけないでしょうか!?」



 緊張の余り声が若干裏返りつつも、なんとか自分の思いを伝えることができたのだった。

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