75.ハーナの仲間
翌日警察に行ってみると、受付の近くにクーリがいた。
僕がちょっと近づくとクーリはすぐに気づいて駆け寄ってきた。
「面会の許可がでましたよ、レンさん!」
「本当に!? 苦労したでしょ?」
「いや、上の人達がレンさんとハーナさんのやり取りに興味を持ってくれたおかげで意外とすんなりと許可がおりましたよ! まあ、あの内容を見たらみんな興味を持つでしょうけどね」
「そっか、それは良かったよ!」
僕はだいぶほっとした。
まさかとは思うが、ハーナがすぐに処刑されてしまう可能性も完全に否定できる訳ではなかったので、ハーナが無事な上、再び会えると思うとだいぶ安心するのだ。
「いつ頃面会できそう?」
「いつでも大丈夫ですよ。せっかくここまでいらっしゃったんですから、今すぐ面会を始めますか?」
「そうだね。そうしてもいいかな?」
「もちろんです。ではまたご案内致しますね」
こうして再びクーリについていって、ハーナとの面会部屋にたどり着いた。
「では、ご健闘を」
「うん、頑張るよ」
ただハーナと話すだけだから、ご健闘とか言われるとなんか戦に行くみたいで違和感があるけど……
まあ、この面会はそれだけ重要ってことだよね。
しばらく部屋で待っていると、また色の違う壁が変化する。
そして防音機能が外されると、目の前にハーナが現れた。
「おはよう、レン!」
「おはよう、ハーナ」
ハーナはニコニコしながら元気よく挨拶をしてくれた。
この面会を楽しみにしてくれているみたいでなんだか僕も嬉しくなってくる。
『レン、ハーナのやつ、魔物語で挨拶してきたぞ!』
『本当に!? あまりに自然に聞こえたからそうだとは思わなかったよ!』
僕には自動翻訳の能力があるそうなので、ハーナが人間の言葉を話しても魔物語を話しても同じように聞こえるのだ。
ハーナがカタコトで魔物語を話しているときはなんとなく魔物語を話そうとしていることは分かるんだけど、スラスラと話されてしまうと完全に区別が付かなくなってしまう。
本当、自動翻訳って便利だけど、こういうときにすごい不便になるよなぁ……
「魔物語をそんな流暢に話せるなんてすごいよ! 相当練習したでしょ?」
「うん! だってもっとレンとお話したいんだもん! これ位全然どうってことないよ!」
別に魔物語を話せなくても僕と会話できるような気もしたけど、そこは言わないでおこう。
せっかくやる気になってくれているんだから、水を差すようなことはしたくないからね。
「じゃあ、今日も頑張っていくよ!」
「はい、レン先生お願いします!」
教えているのは僕じゃなくてバルグなんだけどね……
そう内心思いつつ、昨日と同じ方法で魔物語を教えることにした。
そんな感じで今日もハーナへの魔物語教育が始まった。
ハーナに魔物語を教え始めてから一週間位経った。
結局毎日ハーナと面会することが許されたので、ハーナに毎日魔物語を教えることができた。
そういえば、ハーナはすごい努力家で、僕と面会をしている時間以外にも魔物語の勉強をしているらしい。
例えば、ハーナは食事を届けに来る賢猿族の人に話しかけたりしているそうだ。
その甲斐もあって、一週間しか経ってないのに大体の会話を魔物語でこなせるようになっていた。
たった一週間で会話できてしまうなんてスゴすぎだよね……
僕が英語を数年勉強しても話せるようにならないことを考えるとそのスゴさがよく分かるよ。
今日もいつものようにクーリに連れられて、ハーナに会いに行こうとしているところだ。
「レンさんって教えるの本当に上手なんですね」
「いや、そんなことないよ。ハーナが自分で頑張ってくれてるからあんなに話せるようになっただけだよ」
「またまたご謙遜を。それにしても今のハーナさんは凄いです。私がハーナさんと会うと、普通に話しかけてきましたからね」
「どんなことを話したの?」
「そうですね……私達がどんな生活をしているか、どんなものが流行っているのかなどですね。ごく当たり前の事を聞いたり話したりしただけですよ」
それってもう日常会話できているってことじゃないか!?
それだったらもう僕がいなくてもハーナは魔物の世界で暮らしていけるんじゃないかってつい思ってしまう。
そういえば、クーリってどんな生活しているんだろう?
エルンと同じような感じなんだろうか?
「ちなみにどんな生活しているの?」
「どんな生活って……別にレンさん達とさほど変わりませんよ。ちょっと警備の仕事がある位です。いきなりどうしたんですか?」
「ごめん、ちょっと気になって聞いてみただけ。気にさわっちゃったかな?」
「そんなことないですよ。何も話さないのも良くないのですね……。レンさんが知らなそうな事といえば、キャロヌの実が流行っていることでしょうか?」
「キャロヌの実……おいしいの?」
「それがよく分からないんですよ。キャロヌの実によって味が全然違うので、食べてみるまで味が想像つかないんです。それが面白くて私達の種族では今流行っているんですよ」
同じ食べ物なのに実によって味が変わるなんてどういうことなんだろう?
なんか興味が湧いてくる。
「そんな食べ物があるんだ! 今度食べてみようかな?」
「せっかくですから、今度のハーナさんの面会のときに一緒に食べませんか? みんなで食べた方が盛り上がりますよ!」
「いいの!? でも食べ物の持ち込みなんてしてもいいのかな?」
「きっと大丈夫ですよ! 許可がいりますが、そこのところは私がなんとかしてみせますのでご安心を」
「そっか、頼ってばかりでごめんね、クーリ」
「そんな事ないですよ! 私達もハーナさんと分かり合う為にレンさんに頼りっきりなんですからお互い様です」
気を遣ってくれているのかもしれないけど、そう言ってくれるとなんだか安心するなぁ。
お互いできることをやって協力し合えるというのはいいよね。
僕は僕にできることをやればいいんだ。
「それにしても、ハーナって教えているときもだいぶ話せてると思っていたけど、もうクーリと不自由なく話せているんだな……驚きだよ」
「私も驚きましたよ。それにしても、人間と何気ない会話ができるなんてなんだか不思議ですね。ついこの間まで想像すらできなかったことですよ」
「僕もこんなに早くハーナがクーリ達と話せるようになるとは思わなかったよ」
「そういえばハーナさんは上の人達とも会話ができているようです。その為、重役の人達はかなりご機嫌でした。この調子なら釈放されるのも遠くないかと……」
釈放か……
もしそうなったらハーナに村を案内してあげたいな……
賢猿族の人達がどんな生活しているのかとか、どんなものを食べているのかとか教えてあげたいからね。
「では今日もいつもの通り頼みますよ!」
「うん、任せておいて!」
期待に胸を踊らせつつ、僕はハーナとの面会に備えた。
「レンって何族なの?」
「うーん、竜人族って言われてるかな?」
「それなら、竜人族ってどこに住んでいるの? 竜人族の村って聞いたことないよ?」
ハーナとの面会は教えるというよりも、こんな感じでおしゃべりをしている状態である。
だって、もうハーナは日常会話に不自由しない位話せてしまっているから、教えられることがあまりないんだからね。
こうやっておしゃべりをする事がハーナにとって魔物語の勉強にもなると思うし、決して教えるのをサボってる訳じゃないのだ。
『サボってるだろ、どう考えてもな』
『ひどいこと言うんだね、バルグ。というか、どう考えてもサボってるのはバルグじゃないか!?』
『ギクッ! そ、そんなこと、ないぞ』
『それに、ハーナは魔物語で僕と会話しているんでしょ? だったらハーナの勉強になってるじゃないか!』
『確かにハーナは魔物語を話しているな。でも、だからといって、レンの言葉がハーナにとって魔物語に聞こえてるかは分からないだろ?』
『そ、それはそうかもしれないけど……』
僕の言葉は人によってどの言語で聞こえるかが異なる。
だから、バルグの言う事も一理あるし、反論できないのがもどかしい……
「ねえ、レン聞いてる?」
「あっ、ゴメン! 何の話だっけ?」
「もう、ちゃんと人の話を聞いてよ! 竜人族が住む村の場所についてだよ!」
「あっ、そうだったね。えっと……」
時々バルグと念話をしていると、こうやって上の空になっているように見えてしまうようなので気を付けないといけないな……
それはそうとして、竜人族の村って僕も聞いたことがないな。
僕とバルグ以外の竜人族に会ったこともないし、一体どう答えればいいのやら。
答えに悩んでいると、突如部屋に赤い明かりが点滅し、警報音が鳴り響く!
一体何が起こっているんだ!?
「レンさん、緊急事態です! いったん面会を中断させてもらいますよ!」
そうクーリの声が聞こえると同時に目の前に壁が現れ、ハーナとの面会が終わってしまった。
部屋の外に出て少し待っていると、クーリが慌ててこちらの方に駆け寄ってきた。
「そんなに慌てて一体どうしたの?」
「緊急事態です! 人間の二人組が村を襲っているようです!」
「人間が村を襲うだって!? それってもしかしてハーナを助けに来たんじゃ……」
「その可能性も否定できないでしょう。とにかく現場に行ってみないことには始まりません。レンさんも一緒に来ていただけないでしょうか?」
「うん、話し合える可能性もあるからね。もちろん協力させてもらうよ!」
「助かります。では私についてきて下さい!」
こうして、駆けていくクーリを僕は追いかけ、人間が襲ったという現場に向かうことにした。
村の中心部から少し外れた裏通りに賢猿族の警察の人達が集まっている様子が見えた。
恐らくあの辺りに例の人間達がいるんだろう。
「クーリです。例の青年を連れてきました」
「そうか! 今、膠着状態だからちょうどいい。その方に人間と会話してみるようお願いしてくれないか?」
「分かりました。そう伝えておきます」
クーリが警察の人との話を終えると僕の方に振り返った。
「レンさん、今は人間達と話す絶好の機会のようです。お願いしてもいいですか?」
「うん、分かった。話してみるよ」
そう返事をした後、僕は前へ歩き出す。
すると前にかたまっていた警察の人達は僕が通るための道を空けてくれた。
その道を歩いてしばらくすると、二人の人間の姿が見えた。
すると僕が気づくと同時に、人間達も僕のことに気が付いたようだ。
「なんか違う魔物が来た!」
「魔物は種族間交流はなかったんじゃないのか!? これじゃ強行突破は難しそうだぞ!?」
「ここは一時撤退した方が良さそう……でも早くしないとハーナが……」
ハーナだって!?
やはりこの人達はハーナの仲間みたいだ。
となると、ハーナの無事を知らせて、争う必要がないことを伝えることができるんじゃ……?
やってみる価値はありそうだね。
「あなた達はハーナの仲間なんですか?」
僕は人間達に向かって聞こえるようにそう問いかけた。
すると二人は不意をつかれたような様子で辺りを見渡し始めた。
まさか魔物から人間の言葉が発せられるなんて思わないだろうから、驚くのも無理はないよね。
このまま戸惑わせたままではかわいそうなので、もう一声かけてみることにした。
「戸惑わせてしまってごめんなさい。僕はレンといいます。あなた達はハーナを助けに来たのですか?」
すると言葉を話す僕をみた二人は目を見開いてひどく驚いた様子だった。
「あ、あなたは、ボクたちの言葉が分かるの!?」
「そ、その通りだ! ハーナは無事なんだろうな!? 早くハーナを解放しろ!」
それからも二人は混乱しつつも色々と問いかけてくる。
色々と聞かれても答えきれないので
「色々と気になるのは分かるけれど、まずは落ち着いてください!」
そう叫ぶと二人は急に黙り込んだ。
これでうるさいままだったらどうしようかと思ったよ……
「まず、ハーナは無事です。命の心配もなく元気に過ごしているので安心して下さい」
「本当!? 本当に無事なの!?」
「ハーナはどこにいるんだ!? 早くオレたちの所に返してくれ!」
ハーナの無事を聞いた二人は少し緊張が解けた様子だ。
そしてさらにハーナに関する情報を聞き出そうとしてくる。
その様子をみると、ハーナのことを本当に心配しているんだなぁとしみじみと実感する。
いや、仲間なんだから当たり前の事なんだろうけど、教え子でもあるハーナにそういう人がいると思うと何となく嬉しくなるんだよね。
「ハーナは警察の中にいます。でも、もう少ししたら外に出て村で暮らすことができそうですよ」
「警察の中……それって牢屋に閉じ込められているってことじゃないか!? 早くそこから出しやがれ!」
「村で暮らすってどういう意味?」
敵対していて危害を加える存在が村に侵入して来たら捕えるのは当然だと思うんだけど……
短気な人は放っておいて、もう一人の疑問に答えることにした。
「ハーナは魔物語を覚えて、僕達、魔物と共存できるように頑張っているんです」
「魔物語を覚える!? そんなことが可能なの!?」
「はい。実際ハーナはもう日常会話位なら魔物語を普通に話せます」
僕の言葉を聞いた二人はだいぶ戸惑っている様子だった。
それは無理もないだろう。
だってこんな短期間に、二人にとっては未知の魔物語という言葉をハーナが話せてしまうなんて普通は信じられないだろうからね。
「ハーナは警察の人とも会話を楽しめているし、村で暮らせるようになるのも時間の問題ですよ」
「そ、それって、ハーナは元気に暮らしているっていう意味だよね!?」
「はい、その通りですよ」
「そ、そうなんだ、良かった……」
「それなら安心だな……」
さっきもハーナは無事だって言ったはずなんだけど、聞いてなかったのかな?
まあ、話を聞くどころじゃなかっただろうから仕方ない気もするけど……
「それなら尚更、早くハーナに会わせてくれ! ハーナの無事をこの目で確認するまでは信じないからな!」
だいぶ疑り深い人だな……
でも二人にとって僕の言葉というのは、敵が油断させるために適当についた嘘である可能性も考えられるから、信じることができないのも無理ないのかも。
二人の事を思えば、ハーナに会わせたくなるけど、ハーナとの面会については僕が決められることじゃなさそうだから、クーリ達と相談しないといけなさそうだね。
「お二人の気持ちはよく分かりました。面会できないか相談してきますから、少し待っていて下さいね」
「はい、お願いします!」
二人と会話を一旦終えた僕は近くで待機していたクーリに話しかける。
「クーリ、あの二人がハーナと会いたがっているんだけど、できるかな?」
「どうでしょうね……ちょっと上の者と相談してきます」
そう言ったクーリは無線の機械を使って何やら話し始めた。
しばらく待っていると、クーリは機械をしまって僕に話しかけてくる。
「許可が出ました。ただ、条件があります」
「条件ってどういうものなの?」
「はい。条件というのは、その二人も魔物語を勉強して、我々と友好的に生活することを目指してもらうことです」
まあ、そりゃそうなるよなぁ……
友好的じゃない人を村の中に入れるのは危険すぎるし、その条件はあって当然だと思う。
「そして、魔物語を習得するまでの間はハーナさんと同様の生活をしてもらいます」
えっ、それって刑務所の中で過ごせっていうこと!?
確かに村に野放しにするのは危険だし、村を襲ったのだから二人に罪はあるのかもしれないけど、そんな要求を果たしてのんでくれるんだろうか?
なんか雲行きが怪しくなってきたな……
「すいません、こんな形でしか許可できなくて……それだけ我々にとって人間の方は脅威になるんですよ……」
クーリの気持ちも分かる。
だからこそ、もっと好待遇にしてほしいなんて無理を言えそうにもない。
不安だらけだけど、なんとかこの条件で話し合うしかなさそうだね。
「大丈夫。その条件で交渉してみるよ」
「色々条件があって難しいかもしれないですけど、お願いします」
「それじゃ、行ってくるね」
クーリとの会話を終え、僕は人間の二人の所へ向かっていった。
「これだけ待たせてるんだから、当然ハーナに会わせてくれるんだよな!?」
「はい。ハーナに会う事はできます。ただし、条件があります」
「条件ってなんだよ?」
「何か嫌な予感がする……」
僕の言葉を聞いた二人は硬い表情をして身構えている。
「条件とは……二人にハーナと同じ場所で過ごしてもらうことです」
「ハーナと一緒だと!? いいのか!?」
「テール、ちょっと待って。ハーナと一緒ということはつまり……」
「えっ、どういうことだよ?」
「ハーナは牢屋にいる。つまり、ボク達も牢屋に入るということになる」
「牢屋だって!? 冗談じゃない! どういうことなんだよ、お前!」
そう言ったテールという少年は僕の胸ぐらをつかむ。
いきなり牢屋に入れなんて言われたら、そりゃ誰だって怒るよね……。
なんとなく予想はしていたとはいえ、胸ぐらをつかまれた経験なんて今までなかったから、こうやって実際にやられると結構恐怖を感じる。
現実世界ではこんなこととは無縁の生活を送っていたからなぁ……
それはそうとして、この流れどう切り抜けようか?
この条件は変えることもできないし……どうしよう?
とりあえず話をそらしてみようかな。
「ハーナはもう魔物語を話せていて、近いうちに外に出ることもできるようになります。お二人もハーナと同様、魔物語を話せるようになれば、魔物の村で自由に過ごせるようになりますよ」
「だからどうしたってんだ? 結局オレ達がお前達に合わせなきゃいけないんだろ!? そんな不自由な生活は御免だな」
「郷に入れば郷に従えとはいうけど、こんなのはあんまりだよ……」
やっぱり誤魔化しきれないよね。
一体どうしたらいいんだろう?
『レン、困ってるみたいだな』
『うん。予想はしていたけど、クーリが言ってた条件では受け入れてくれそうにないんだ。どうしたらいいのかさっぱり分からなくて……』
『なんだ、そんなの簡単じゃないか。俺に任せておけ』
簡単なことだって?
この問題のどこか簡単だというんだろうか……
よく分かんないけど、解決法があるんだったら、ここはバルグに任せてみようかな。
ちなみにバルグが話した場合は自動翻訳されないので、魔物語を話した場合は魔物語となる。
でも、バルグはハーナに魔物語を教えているうちに、人間の言葉を覚えてしまって、話せるようになったそうなので、自動翻訳がなくても人間と会話できるらしい。
なので、人間との話し相手をバルグに任せてしまっても問題ないのだ。
ハーナもすごいけど、バルグも負けず劣らず、すごいとつくづく思う。
まあ、バルグの場合は天空竜国にいる間も人間の言葉を勉強したことがあるらしく、事前知識はあったようだけど、それでもすごいよね。
僕と話役を交代すると、バルグは一歩テール達に近づいた。
一体何をするつもりなんだろう?
「俺がだした提案に不満があるようだな」
「そ、そんなの当たり前だろ! ハーナに会いたければ牢屋に入れなんておかしい!」
バルグは言葉をきりだすが、やはり二人の反応は思わしくない。
「不満があるか。ならどうすれば満足するんだ?」
「そんなの決まってるだろ。ハーナを牢屋からだしてオレ達に返してくれればいいだけだ」
「そうだよ、テールの言う通りだ!」
まあ、そういう回答になるよなぁ……。
一体バルグはどう対応するつもり――
「そうか。ならば、俺と勝負して決めないか? 負けた方が、勝った方の要求をのむ。シンプルだろ?」
えっ、いきなり何言ってんのバルグ!?
バルグは戦闘好きだとは知っていたけど、ここで切り出すとは思いもしなかった。
だ、大丈夫なのかなぁ……
「勝負っていうけど、条件はなんだ? まさかオレ達二人とお前達魔物の大群の勝負じゃないだろうな!?」
「そ、それだったら勝ち目ないよ。卑怯だよ」
「安心しろ。相手になるのは俺一人だ。お前達は二人がかりでいいぞ」
「ずいぶんとなめられたものだな……だが、本当にそれでいいんだな? お前一人に勝てばオレ達の要求をのんでくれるんだな?」
「ああ、約束する。その代わり、お前達が負けたら、俺の要求に従ってもらうぞ!」
あーあ、バルグ、勝手に約束しちゃったよ……
一体負けたらどうするつもりなんだか。
まあ、バルグが負けるなんてことはよっぽどの事がない限り起こり得ないか。
「そうか、それならその勝負、受けてやる! 相手を降伏させたり、戦闘不能にした方が勝ちでいいよな?」
「ああ、構わないぞ」
「ほ、本当に大丈夫なんだよね、テール? 勝てるんだよね?」
「オレのことが信じられないのか、フートス? 俺があの大戦で汚泥族をどれだけ倒したか見ていただろう?」
「そ、そうだよね。あんなに強いテールが負けるはずないよね」
あの大戦、汚泥族――腐敗の地ブロドーアであった大戦の話かな?
そのとき僕は天空竜国にいたから大戦の事はよく分かっていないけど、もしこの二人が大戦を生き残ったというなら相当強いんじゃないか?
バルグ、大丈夫かな……?




