72.久しぶりの再会
目を覚ますと、僕はベッドの中にいた。
でもバルグの部屋ではなさそうだ。
辺りを見渡しても見覚えがないし、それに部屋が時々揺れている。
一体ここはどこなんだろう?
確か僕はシールドを壊そうとしていて、それで……
「あ、バルきゅん目が覚めたんだ~良かった~」
色々と悩んでいると、部屋の中に懐かしい声が聞こえてくる。
この声は確か……
「エルン、だよね?」
「そうだよ~もしかして忘れてたとか言わないよね~?」
「いや、忘れてなんかいないよ。ただ、久しぶりだったからね」
「冗談だよ~それよりちょっとみんなに無事を知らせてくるね~」
そう言ってエルンは部屋から出て行った。
エルンがいるっていうことは、ここは飛空艇の中ということなのかな?
飛空艇の中なんだとしたら、時々部屋が揺れることも理解できるし。
飛空艇の中にいるっていうことは、シールドを無事突破できたということか。
『恐らくそうだろうな』
どうやらバルグも同意見のようだ。
まあ、もし違ってもエルン達がいるんだから、悪い状況ではないだろう。
それより、どうやって僕達は助かったんだろう?
確かシールドに挟まれそうになっていた気がしたんだけど……
色々と考え事をしていると、ドアを開けて誰かが入ってきた。
「レン、無事だったのね、良かった!」
「一時はどうなるかと思いましたが、何とかなって良かったです」
「オ、オレはレンさんやバルグさんなら大丈夫だって信じてたッスよ!」
「無事で、良かった」
ずっと一緒に旅をしてきた仲間達だ。
みんな揃ったのはずいぶんと久しぶりに感じる。
まあ、1、2か月は経ったんだから、無理もないか。
やっぱりこうしてみんな揃っていると何だか嬉しくなるし、ほっとするなぁ。
それからは、みんなの飛空艇作りの苦労を聞いたり、天空竜国での生活について話したりして過ごした。
飛空艇作りにはみんなかなり苦労していたようだった。
飛空艇を作るエルンはもちろんのこと、他のみんなは飛空艇を作る上で足りない材料を取りに行ったりしていたようだ。
あれっ、もう材料は足りるってエルン言ってなかったっけ?
そのことについてエルンに聞いてみると、
「実はね~設計図通りじゃうまくいかない所があって、そこを補う為に別の材料が必要になったんだ~それをみんなに取ってきてもらったという訳だよ~」
「師匠のアドバイスを私がエルンさんに伝えて実践したって訳です」
「そうそう! 飛空艇を完成させることができたのもレンレンのアドバイスのおかげだよ~ありがとね~」
そっか、本当にアドバイスをする意味があったんだな。
役に立つことができたようで良かった。
「アドバイスをしたとはいえ、飛空艇を本当に完成させて助けに来てくれるなんてみんなすごいね」
「私も本当に師匠を助けられるなんて正直驚きました。何と言ったってあの状況でしたからね……。それを変えてくれた、あの天竜さんとその人の技には感謝です」
「天竜の人の技って?」
「あっ、レンさんは気を失っていて分からないんでしたよね、すいません。実はですね……レンさんがシールドに挟まれそうになったとき、後方に天竜が現れて、技を放ったんですよ」
「その技がシールドに当たった瞬間、シールドの修復がピタッっと止まったんだよ~そのおかげでレンレンはシールドから抜け出すことができて、落ちていくレンレンを飛空艇で助けることができたんだよ~」
確か僕が気を失う直前に、天空束縛という声が聞こえたけど、あれって執事のシュルドの声じゃないか?
ということはシュルドがシールドの修復を止め、僕達を助けてくれたっていうことなんだろうか?
『ああ、恐らくそうだろう。あの声はシュルドの声で間違いないからな』
『でも一体どうしてだろう? シュルドなら確かに僕達の居場所をオーラで探知して追跡することはできるだろうけど、どうして僕達の逃走を助けてくれたんだろう?』
『それは本人にしか分からないだろうな。だが、シュルドは結構協力的だし、別に不思議な事じゃないさ』
確かにしばらくシュルドと過ごしてきたから、シュルドがいかに僕達に協力的かは知っている。
でも僕達を天空竜国に連れてきたシュルドが天空竜国を去る手助けをするというのは何かおかしな話のように思えてしまう。
『確かにおかしな話にも思えるな。だが、シュルドが俺達を天空竜国に連れてきたのは王の命令によるものだから、本心ではなかったんだろう。そう考えれば別におかしくない』
『でもそう考えると、僕達の逃走を手伝っちゃって大丈夫なのかな? シュルド、王からだいぶ怒られそうだけど……』
『恐らく怒られるだろうな。だが、それによってシュルドが執事を辞めさせられることはないだろう。何しろシュルドほど有能な奴なんて早々いないからな』
『そうなんだ。それは良かった』
結局シュルドに御礼は言えずじまいだったなぁ。
でもまた戻る訳にもいかないし……。
僕達を逃がしてくれたシュルドの思いをくみ取って、僕達は精一杯生きていくことにしよう。
「それにしても、師匠やバルグさんがご無事で何よりです」
「うん、本当に自分でもよく脱出できたものだと思うよ。リザース達の助けだけじゃなく、シュルドの助け、人間達の襲撃とか様々なことがあってようやくできたことだと思う」
「確かに、天空竜国にも人間達の襲撃があったおかげで、天竜の警備が私達の妨害に来なかったこともありますよね」
天空竜国にも、ね。
うん、確か天空竜国以外にも人間の襲撃があったって話だった。
そのことについてちょっと聞いてみよう。
「リザース、天空竜国以外にも人間の襲撃を受けているって話だったよね?」
「はい。とは言っても、もう戦いは終わったようですけど」
「場所はどこなの?」
「場所はですね……人間と魔物の境界地でもある腐敗の地ブロドーアです」
「ブロドーアだって!? ということは、ヘドド達が人間達と戦ったということ!?」
「そうなりますね」
「戦いは終わったって言うけど、被害はどれ位でているの?」
「今回はかなりの人数の人間が攻めてきたこともあって、汚泥族の半数が死滅したとのことです」
あのヘドド達の半数が死滅してしまうだって!?
あんなタフなヘドド達がそうなってしまうなんて信じられない……
それにヘドドは無事なんだろうか?
「ヘドドは無事なの?」
「はい、連絡はとれましたし、大丈夫でしょう。それに、汚泥族は汚染物質さえあれば、しばらく経てば復活しますから、死滅したことを気にする必要はないかと」
ヘドドは無事だし、他の汚泥族の心配をする必要もないということだね、良かった。
それにしても、いくら人間達がヘドド達の弱点である神聖魔法を使えるとはいえ、被害が大きすぎる気がする。
一体どれ位の人間達が攻めてきたんだろうか?
そもそもこの世界の人間達はどれ位いるんだろうか?
分からないことが多すぎる。
「ヘドド達の半数が生き残っている位だから、戦いはヘドド達が勝ったの?」
「そうですね。人間達も汚泥族と同じ位被害を受け、引き返していく者が多数だったので、そう言っていいと思います」
「そっか、それは良かった」
「でも、魔物の領域に侵入した人間がいるという報告も受けているようなので油断は禁物です。外に出る時は気を付けて下さいね」
魔物の領域に侵入した人間、か。
そういえば、僕はこの世界に来てから一度も人間と会っていないんだよなぁ。
この世界の人間も、現実世界の人間と同じ感じなのかな?
「まあ、その人間達が師匠を攻撃しようとしていたら、私が撃退してみせますから、ご安心下さい」
そうだよね。
もし今の僕とこの世界の人間が出会ったとしても、戦いになるのは避けられないんだよね。
なんかそれって悲しいことだよなぁ……
それから色々と話をしていると、飛空艇はどこかに着陸したようだ。
「みんな、地上に着いたよ~」
「地上って、どの辺なの?」
「エプール村の近くだよ~作っておいた飛空艇用のスペースに着陸したんだよ~」
飛空艇用のスペースか。
確かに飛空艇はどこでも着陸できる訳じゃないし、そういうスペースを作る必要はあるよね。
こうして、地上に着いた僕達は飛空艇を降りていくことにした。
飛空艇から降りた僕達はエルンの家で休むことにした。
魔力を使い果たした僕はもちろん、仲間達も飛空艇のビームを発射する為に魔力を使って疲れているようなので、休むことに異論のある人はいなかった。
ちなみに飛空艇から降りるときに天竜の姿から竜人族の姿へと変えておいた。
天竜の姿じゃ大きくて目立つから、天竜の姿で村の中を通る訳にはいかないからね。
ジルも同様の理由でそのままの姿では村の中に入れないので、フィナに魔法をかけてもらって体を小さくしてもらっている。
「やっと着いたよボクの家~もうヘトヘトだよぉ~」
「飛空艇のビームを発射するのってそんなに疲れるんだ……お疲れ様」
「いや、これ位どうってことないッス! ってあれ?」
「ジルさん、足がよろけてますよ、フフッ」
「そんな事言ってるリザースだって、フラフラじゃない! まあ、私は足がよろけたりしないんだけどね」
「飛んでいるんだから当たり前。でもフィナ、まっすぐ飛べてない」
「そ、そんな事ないわよ! ねぇ、そうでしょうレン?」
「そ、そうだね……」
まあ、どうみてもフラフラして飛んでいるんだけどね。
それにしてもみんな本当に疲れているんだなぁ……
もちろん僕も例外ではなく、歩くのもやっとって感じなんだけどね。
それだけギリギリの戦いだったんだな……
本当にみんな無事で良かった。
エルンの家の中に入るとみんなすぐにゴロゴロと横になっていた。
エルンの家は一人暮らしの割にはだいぶ部屋が広くて、こんな大人数が横になれるだけの広さがある。
とはいっても、みんなが横になってしまうとスペースに余裕はなくなってしまうのだが。
ぐぅ~
横になってくつろいでいると、急にその音が部屋に響き渡る。
誰かがお腹がなったみたいだね。
「なんかジルの方から音が聞こえたよ~」
「オ、オレは腹減ってなんかないッスよ!? まだまだ余裕ッスよ!?」
「無理しなくてもいいのに。私もおなか減っちゃったもん」
「そうですね。私も少し空腹を感じています」
「ジル、やせ我慢してる」
「や、やせ我慢なんかしてないッスよ」
「そう。じゃあジルだけ食事は抜きということでいいわね?」
「そ、それは勘弁してほしいッス!?」
そういえば僕もお腹減ったな……
寝て起きてからそんなに経っていないはずなんだけど。
『全魔力を使い切ったんだから、腹位減ってもおかしくないだろ?』
『そういうものなの?』
『そういうものだ。ああ、そういえばレンは全魔力を使ったことは今までなかったのか。分からないのも無理ないだろうな』
確かに、今まで数多くの戦いをしてきたけど、どれも比較的短期決戦だったから、魔力が枯渇することはなかったなぁ。
ブローダン戦のときはかなり魔力を消耗したけど、それでも魔力を使い切るまでには至らなかったし。
それより、お腹がすいたのはいいけど、食事はどうしようかな?
「エルン、何か食べるものあったりする?」
「う~ん、基本的に冷蔵庫に物を貯めておかないから買ってこないとないかな~」
「そっか、それだったら僕が買ってくるよ」
「本当~? ならお願いしちゃおうかな~」
助けてもらった上に、泊まらせてもらっているもいるんだからそれ位はしないといけないよね。
幸い、天空竜国で得たバルグのお金があるから、お金には問題ないし。
バルグもお金は自由に使っていいって言ってくれているからね。
そういえば地上と天空竜国って交流がない割にはお金が共通らしいけど、どうしてなんだろう?
まあ、気にしても仕方がないか。
そのおかげでお金に不自由しなくて済むんだから、むしろ都合が良い。
それからリザースとジルは自分が買いに行くと言ってくれたけど、二人とも疲れた様子だったので、待っていてもらう事にした。
僕は飛空艇でしばらく寝ていたから体力が多少回復しているし、みんなには休んでいてもらいたいからね。




