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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第五章 天空竜国という名の牢獄
69/98

67.ゲームスタート

 執事シュルドについていくと、バルグの部屋へとたどり着いた。



「”天空覇竜決戦”の準備が整いましたらお呼びしますので、それまでは少々お待ちください」

「ああ、分かった」



 そう言うとシュルドは部屋から出てどこかへ行ってしまった。



『結局城に戻っても待つハメになるんだね』

『それは仕方ないと思うぞ。”天空覇竜決戦”の機械を作動させるまでには時間がかかるからな』

『機械を作動させるって、まるでこの城にその機械があるみたいな言い方だね』

『ん? まさにその通りなんだが、それがどうした?』

『没入型のゲームは家庭にないってバルグ言わなかったっけ?』

『ああ、確かに普通はそうだが、城には特別に没入型のゲームができる装置が設置されているんだ』

『バルグはそれを使ってゲームをしていたっていうこと?』

『だいたいはそうだな。でも本当に最新のゲームをやるときは、さっき行った建物に行ってたけどな』



 一般家庭ではできないことも王族のバルグならできるということか。

 なんか格差を感じるな……

 バルグは僕と気軽に接してくれるから王族っていうイメージがないけど、こう生活している環境を見ると、本当に王族なんだと実感させられる。


 しばらくすると、シュルドが再び部屋に入ってきた。



「お待たせ致しました。準備が整いましたよ、バルグ様」

「そうか、それじゃあ部屋に向かうとするか」



 こうしてバルグとシュルドはバルグの部屋を出て、”天空覇竜決戦”の機械がある部屋へと向かう。

 目的の部屋にたどり着くまでにはさほど時間はかからなかった。

 王の間とは逆方向に、恐らく数分歩くとその部屋にたどり着くことができたのだ。

 いや、数分歩いているんだから建物内の移動としては相当時間がかかっているんだろうけど、この広い城を移動するにしてはだいぶ短い距離だったように感じた。


 部屋の中はバルグの部屋と同じ位の広さだけど、その部屋のおよそ半分を占める巨大な機械が置かれているので狭く感じる。

 その機械の近くには天竜が入れそうなベッド型のカプセルが三つほど置かれている。

 そして、そのカプセルと機械はコードでつながっている。



『このカプセルの中に入ってゲームをするの?』

『ああ、そうだな。レンはゲームをした事があるみたいだが、こういうゲームをするのは初めてなのか?』

『うん、実際にやるのは初めてかな。没入型のゲームって、他のゲームと操作する感覚はだいぶ違うよね? うまくできるか不安だな……』

『確かに他のゲームとは違うが、そんな心配する必要はないさ。没入型のゲームはだいぶ現実に近く作られているから、感覚をつかむまでにそれほど苦労はしないだろう』

『それならいいんだけど……』



 没入型のゲームなんてやったことないから、うまくできるか心配になる。

 それに今回はあまりひどい結果だとバルグが大変なことになりそうで、若干プレッシャーがあるし。

 いや、僕が操作をする必要はないから心配する必要はないのか……?


 僕が色々と悩んでいるうちにバルグはカプセルの中へと入り、何やら操作を始めた。

 すると、カプセルのふたがしまり、カプセル内は密閉空間になった。



『うわぁ、だいぶ狭いんだね……中は体熱で暑くなって脱水症状とかにならないかな?』

『その心配はないぞ。カプセルの中は気温も湿度も体に負荷がかからない適切な環境に整えられるから汗をかくこともない。水分に関してはゲーム内でとった食糧の成分がカプセルから送られるし、心配ない』

『そうなんだ、それは一安心だね』 



 ゲームをプレイするための環境はしっかりと整えられているということか。

 余計な心配をしなくてもすむのはいいことだね。



『じゃあ、そろそろ始めるぞ。準備はいいか?』

『うん、大丈夫。いつでもいいよ』



 僕の言葉を聞くと、バルグはさらに機械を操作する。

 すると体に青い光のようなものがまとわりつき始めた。

 そして次第に眠気が襲ってきた。


 多分、寝ることでゲームのプレイができるようになるんだろう。

 僕はそのまま眠ることにした。




 ―――僕は目を覚ますと、カプセルの中にいた。

 あれっ?

 特にさっきと変化がないんだけど?



『どうやらゲームへのアクセスに失敗したらしいな……一体何が原因なんだ?』



 ゲームをうまく作動できなかったらしい。

 その原因を探ろうとバルグは一生懸命、機械で色々と入力している。



『こうやってアクセスに失敗することってよくあることなの?』

『いや、そんなことはほとんどない。少なくとも俺が城の機械でゲームをしていたことは一度もなかったんだが……』



 けっこう珍しい現象らしい。

 そんな現象が起きてしまうなんてついてないなぁ……

 いや、待てよ?

 かつてのバルグがこの装置を使うときは問題なく使えていたとしても、今のバルグも問題なく使える保障はないんじゃないか?

 だって、今の体には僕とバルグ、二つの精神が入っている訳だし。 



『そうだな、そう言われてみれば今の俺達の体って特殊すぎるよな』

『竜人族の体に戻って、別々の体になるとうまくいったりするかな?』

『やってみる価値はありそうだ。そうしよう』



 バルグはそう言うと、機械を操作し、カプセルのふたを開けた。



「バルグ様、どうかされましたか?」

「機械がうまく動かなかった。多分今の俺の体に問題があるだろうから、色々と試してみようと思う」

「左様ですか。メンテナンスは日々行っていたのですが、機械側に問題がある可能性もあるので、一応担当の者に連絡しておきますね」

「ああ、よろしく頼む」



 そう言ったシュルドは部屋から出て行った。

 それから僕は天竜化の魔法を解き、さらにバルグと体を分離させた。 



「よし、これで良さそうだな。レンはそっちのカプセルに入ってくれ。操作の仕方はフィナの精霊を介して伝える」

「そういえば、僕もこのゲームをやってもいいのかな? バルグと一緒のときはついでにプレイするつもりだったけど、今はこうして完全に分離している訳だし」

「別に一人位参加者が増えたって誰も文句言わないだろ」

「そう。それならいいんだけど」

「分かったら早くカプセルの中に入ってくれ。早くしないとゲームのスタートが遅れて不利になってしまうからな」

「うん、分かった」



 僕はバルグに指定されたカプセルの中へと入った。

 バルグは先ほど天竜の姿で入ったカプセルに再び入ったようだ。



「いいか、操作方法を説明するからよく聞くんだぞ?」

「うん、お願い」



 バルグの説明に従って、僕は機械を操作していく。

 慣れないものを使うのは難しいけれども、なんとかバルグの言う通りに操作することはできていそうだ。



「そこまできたら、あとは画面に表示されているゲームスタートボタンを押すだけだ。覚悟が決まったらボタンを押してくれ。俺は先に行ってるからな」

「うん、ありがとうバルグ」



 その言葉を聞いてからバルグからの連絡はこなくなった。

 恐らくゲームを無事に作動させることができたんだろう。


 僕も覚悟を決めてゲームスタートのボタンを押そうとしたが、何やら外から声が聞こえてくる。

 話をちょっと聞いてみよう。



「えっ、それは本当ですか!? ならやめさせなければ!」

「”天空覇竜決戦”の中にウイルスが仕込まれたそうです。いつもならばセキュリティでウイルスは排除できるのですが、なかなか手間取っているようでして……」

「今はバルグ様がゲームをプレイされているんだぞ! バルグ様にもしものことがあったらどうする!?」

「申し訳ありません、ただいま我々も全力を尽くしておりますので、プレイされている方々に被害は出させません」



 なんか”天空覇竜決戦”は大変なことになっているようだな……

 バルグには悪いけど、ここは参加するのは控えた方がよさそうだ。

 初心者の僕がゲームをしても足を引っ張るだけだろうからね。

 そう思って、ゲームをやめようと操作をしようとすると……



「――時間位かかるかと……」

「それでは遅ーい!!」



 その言葉と共にズドーンと部屋全体が揺れる。

 その拍子に僕はなんとゲームスタートボタンを押してしまった!?

 いや、そうじゃないんだよ、ゲームをやめたいんだよ!


 しかしその思いもむなしく、カプセルから放たれた何かの物質によって僕は眠らされてしまった……








「天空覇竜決戦の世界へようこそ!」



 その声を聞き、僕は目を覚ます。

 辺りには、見渡す限り草原が続いている。

 これってゲームの世界なんだろうか?

 草むらとかを触ってみても、現実とほとんど違いがないように思える。



「これからチュートリアルを始めます。まずは左腕にある腕輪に触れて下さい」



 左腕に腕輪?

 そんなものあったっけと思いつつ、左腕を見ると、確かに左腕には腕輪がはめられていた。

 そして自分の体を見る限り、今の僕は竜人族ではなく天竜族になっているようだ。

 このゲームは天竜がやるものだから当然といえば当然なんだろうけど。


 とりあえず僕はアナウンスされた通りに腕輪に触れてみた。

 すると、なんと腕輪の近くに画面が映し出された!

 液晶画面とかないのに画面が表示されるなんて、近未来な道具だな……

 まあ、この没入型のゲーム自体が近未来な道具なんだけどね。


 

「続いてステータス表示のアイコンに触れて下さい」


 

 えっと、どれがステータス表示のアイコンなんだ?

 ハートマークっぽいものがそうかな?


 とりあえずハートマークのアイコンを押してみる。

 すると画面には次のような表示がされた。



 レン   LV 1

 HP 102/ 102 

 MP  30/  30

 AP 100/ 100



 うん、無事にステータス表示ができたようだ。

 それにしてもさっき見た誰かのステータスに比べるとすごい貧弱だなあ……

 レベル差があるだろうから当然なんだろうけど。



「このようにハートマークのアイコンに触れるとステータスが表示されます。自分だけでなく近くにいる他人のステータスも見ることができます」



 ふーん、他人のステータスも見られるというのは結構便利かも。

 これってサバイバルゲームらしいから、強い人を見つけたら戦わないように逃げることも重要になりそうだね。

 

 それからも色々と説明を受け、僕はチュートリアルを終えた。

 チュートリアルを終えて1分後からゲームが始まるらしい。

 なんだか緊張するなぁ……



 いや、緊張なんかしている場合ではない。

 ゲームが始まったら一刻も早くバルグと合流しないと……

 このゲームになにかよくないことが起きていそうだから、何か問題が起きる前にゲームを終了させる方法をバルグに聞かないといけないと思う。

 ゲームを楽しんではいられないのだ。



「ゲーム開始5秒前、4、3、2、1……スタート!」



 そのアナウンスを聞くと同時に、辺りの景色が急に変化する。

 周囲は先程まで草原だったが、今ではうっそうと生い茂る森林になってしまった。

 じめじめしていて蒸し暑く感じる。

 ここがゲームの空間だとは信じられないほどの不快さだなぁ。


 とにかく、早くバルグを探しに行くことにしよう。




 僕はバルグを探す為、森の中を歩いていく。

 しかし歩いても歩いても景色は全く変わらない。

 ステータス表示を見ると、いつの間にか残りAPが30をきっていた。


 このままでは歩くだけでゲームが終わってしまう。

 ゲームが終われば僕の身は安全かもしれないけど、バルグの身が危ないから、このまま終わるわけにはいかない。

 でも周囲を見渡しても食べられそうな物は見当たらないから、とにかく食べ物がありそうな所を目指すしかなさそうだ。

 

 気が滅入りそうになる自分をなんとかふるいたてつつ森をひたすら歩き続ける。

 すると近くの茂みから音が聞こえてくる。

 誰かがいるんだろうか?

 

 食べ物の在り処を教えてもらおうと僕はその音がする方へ近づいて行った。

 すると目の前の草が刈り取られるのを目撃した!


 一体何が起こったのか分からなかったが、目の前にいるものをみて理解した。

 クマのような体つきをしていて頭には角が生えている魔物が目の前にいるのだ!

 恐らくその魔物が攻撃をしてきて、ギリギリ当たらずに済んだのだろう。



 危ない所だった……

 あまりに不用心すぎたな。

 次からは気を付けよう。


 それより今は目の前の魔物をどうするかだよね。

 ここは木々が密集しているから飛んで逃げる訳にもいかないし、戦うしかなさそうだ。

 

 少し間をあけた後、魔物が僕を目がけて襲い掛かってくる。

 僕は落ち着いて少し飛んで避け、魔物の背後をとった。


 

氷変換アイスコンバート! 炎柱フレイムピラー!」



 森の中で炎魔法をうつのはまずいと思ったので、氷魔法に変換して攻撃をした。

 数本放たれた氷の柱が魔物のあちこちに直撃する。

 そして数本の氷の柱は魔物の体を貫通して地面に突き刺さり、魔物の身動きを封じた。



「これで決める! 雷撃サンダー!」



 僕は手を魔物にむかってかざし、魔法を放とうとした。

 しかし、手から魔法が発射されない。

 一体何が起きたというんだ!?


 僕は左腕に表示されている画面を見て、状況を理解する。



 レン   LV 1

 HP 102 / 102 

 MP   0 /  30

 AP  26 / 100



 MPが尽きていたので魔法が放てなかったのだ。



 どうやらこのゲームの中では、自分が思っているよりも魔法を使えないものらしい。

 なんていったって、変換魔法と炎魔法を一回ずつ使っただけでMPが空になってしまうのだ。

 できるだけ魔法の使用は控えていかないとなぁ……



 僕がもたもたしている間にも、魔物が氷の柱を抜こうと暴れまわっている。

 早くとどめをささないと、僕の身に危険が及びそうだ……

 ならここは自分の身でとどめをさすしかない。

 幸いこのゲームでの僕は天竜の姿をしている。

 なので攻撃手段はあるのだ。



 僕は天竜の鋭い爪を使って魔物を切り裂いてとどめをさした。


 魔物にとどめを刺すと、魔物の体が光の粒子となって消滅し、アイテムらしきものがいくつか出現した。

 その中に肉っぽいグラフィックの物があったので、それに触れてみると、何やら画面が表示される。

 内容は次の通りだ。



 アイテム名:生肉

 詳細   :魔物の体を調理しやすい形にカットされたもの。火を通して食べましょう。火を通さないで食べると……?



 なんかいかにもって感じなアイテムだなぁ……

 でも、このゲームにおいて貴重な食糧なんだから、大切にとっておかないといけないだろうな。



 アイテムを取得しますか? YES NO



 そういう画面が表示されているけど、僕は迷わずYESの所に触れた。

 すると、その瞬間に生肉が消え去ってしまった!?



『えっ、今確かにYESを押したよね? どうして消えちゃったんだろう?』



 僕は目の前で起きた現象に戸惑いつつも、あるアイコンを見てピンとくる。

 それは、袋みたいな形をしたアイコンのことなのだが、恐らく僕の勘が正しければ、それはアイテムを管理する役割があるだろう。

 その袋のアイコンに触れてみると次のように表示された。



 所持アイテム

 生肉  ×1



 うん、やっぱりそうだった。

 となると、手に入れたアイテムは消滅したのではなく、アイテムアイコンの中に格納されたということか。

 持ち歩かなくてもいいなんて、便利な機能だなぁ。

 せっかくこんな便利な機能があるんだから、使わなきゃ損だよね。

 そう思った僕は、魔物がドロップしたアイテムを全てアイテムアイコンの中に格納した。

 その結果が次の通りである。



 所持アイテム

 生肉      ×5

 獣の爪     ×1

 魔水晶のかけら ×1


 

 獣の爪というものは使い道がよく分からなかったが、魔水晶のかけらというものはMPを回復させるものらしい。

 MPが空になってしまった僕は早速、それを使用することにした。

 ステータスは次の通りである。



 レン   LV 3

 HP 232 / 232 

 MP  30 /  50

 AP  18 / 100



 使う前のMPは20だったので、MPは10回復したことになる。

 えっ、10しか回復しないの?

 なんか期待外れだな…… 

 魔物を倒して少しレベルが上がったから、それなりのMPは使えそうだけど、思っていたよりもMPの回復は厳しそうだ。

 なるべく温存するようにしよう。


 それよりも心配なのはAPである。

 あと18しかないとか、かなりやばいんじゃないかな?

 一応、生肉という食糧があるにはあるけど、このままじゃ食べられないしなぁ……

 いや、待てよ?

 生肉はそのままでは食べられなくても、焼いたら食べられるんだよね。

 だったら、炎魔法で焼けば食べられるようになるんじゃないか?

 早速、僕は試してみることにした。


 炎魔法を使うことによって、生肉はよく焼けた肉へと変化した。

 そしてそれを使うコマンドにふれると、APが全回復した。

 これでしばらくはAPの心配はしなくて良さそうだね。

 良かった、良かった。

 まあ、肉を焼くために少しMPを消費してしまったのは痛手だけど、仕方ない。

 気を取り直して、再び森の中を歩き出した。

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