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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第四章 存在を求めて
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59.ブローダン戦再び

 クーロスと地上に向かう僕だったが、地上に出るまでまだまだ時間がある。

 せっかくなのでクーロスについて聞きたいと思う。

 そういえばクーロスの住んでいる場所や、どうして海底神殿にいたのかとか全然聞けてなかったから、今は良い機会だね。



「そういえば、クーロスってどこに住んでいるの?」

「そうだな……旅してるからどこに住んでるっていうのはないんだな」

「旅してるんだ? じゃあ海底神殿にいたのも旅の途中だったの?」

「そうなんだな。海を旅してる途中だったんだな」



 海を旅か……

 旅っていうと陸の上でするイメージだったけど、クーロスとか竜は水中でも移動できるから海の旅行もありうるのか。

 って、そういえば水中の生き物に変身してもないのにクーロスはどうして水中で呼吸できているんだ!?



「クーロスってどうして海の中でも竜の姿で呼吸できているの?」

「んー? そういえば不思議だな。どうしてなんだろうな?」



 クーロス本人にも分かってないのかい!

 分からないなら、これ以上聞いても無駄だろうな……



「おいらの種族の中ではどうやら陸でも水中でも呼吸できるのが当たり前だったから気にしたことないんだな」

「そうなんだ。そういうこともあるんだね」



 ここは異世界なんだから、現実世界の常識が通用しないこともあるし、気にしすぎない方がいいだろうな。

 それより、クーロスはこれからどうするんだろう?



「クーロスは地上に出た後はどうするつもりなの?」

「うーん、まだ目的地は決めてないんだな。フラフラと旅しながら何となく決めることにするんだな」

「そんな感じで大丈夫なの?」

「大丈夫なんだな。かれこれ数百年はこうして生きてきたからなんとかなるんだな」



 数百年もこうして生きているのか。

 ひたすら旅して過ごすなんて、僕の理想の生き方とは真逆だなぁ。



「それだとずっと移動しっぱなしということだよね? どこかでゆっくりと過ごしたいとか思わないの?」

「確かに移動する時間は長いかもしれないんだな。でも移動して着いた町ではゆっくりできるからそんなに苦ではないんだな。それに色々な所にいるから退屈することもないんだな」



 確かに旅ってそういうものだよね。

 僕も仲間達と旅してきたから分かる。

 移動する時間は長いけど、飛鷹族の村で一日ゆっくりと過ごしたりとかできたし。

 そのわずかな休息の時間がとても楽しかったりしたなぁ。


 旅の楽しさも分かるから、クーロスの気持ちも分かる気がする。

 だけど、だからといってずっと旅し続けるのは疲れそうだな……



「そういえば、クーロスは数百年も旅しているんだから、もうこの世界のほとんどの所に行ったことがあるんじゃないかな?」

「そうでもないんだな。おいらはまだ人間の町がある大陸の北側には行ったことがないんだな」

「そうなんだ。なんか意外だな。魔法で人間に変身して忍び込んだりしていそうだと思ったんだけど」

「実はおいら、変身魔法を使うのが苦手なんだな」



 おや?

 体は頑丈で水陸両方とも生きていけるから万能だと思われたクーロスにも弱点はあったのか。

 いや、むしろ変身しなくても生きていける、使う必要がないからこそ、苦手になってしまったのかもしれないな。



「クーロスの体って大きいから、変身魔法を使わないと入れない町とかあるんじゃないの?」

「そういうときは体を小さくする魔法を使うから心配ないんだな」

「小さくする魔法は使えるんだ?」

「そうなんだな。変身魔法以外はそれなりに使うことができるんだな」



 そうか、小さくなることもできるから、竜の姿でも受け入れてくれる所、魔物の領域ではだいたいどこでも行けるのか。

 逆に魔物を敵視する人間の領域には行けないということだね。


 旅をずっとしてきたクーロスでさえ人間とは相容れないのか。

 それだけ魔物と人間には隔たりがあるということはなんかちょっと悲しいな。

 だからといって僕が両者の架け橋になろうとも思わないんだけど。

 言葉の壁を僕になんとかできるとは思えないからね。

 僕にできることはせいぜい、人間を余計に刺激しないことだけだろう。



「お、もうすぐ地上に出るんだな」



 こうして僕とクーロスはついに海から出て、地上に戻ることができた。


 僕とクーロスは地上に出た。

 それから辺りを見渡すと、遠くに薄らとではあるが、廃墟が目に入った。

 あそこが廃墟ゴルン・ダークだとするならば、今は多分コーボネルドの南西辺りにいるんだろう。



「クーロス、今ってコーボネルドの南西辺りにいるのかな?」

「そうだな。それで間違いないと思うんだな」



 クーロスのお墨付きも得た。

 魔物世界を旅しているクーロスが言う事ならば間違いないだろう。



「僕はコーボネルドに向かおうかな。クーロスはどうするの?」

「うーん、とりあえず大陸の東側に行ってみようかと思うんだな」

「そっか、それじゃあここでお別れだね」

「そうなんだな。でもレンとはまたどこかで会える気がするんだな」



 僕はゆっくりしつつも時々旅するつもりでいる。

 その旅の途中でクーロスと偶然出会うこともあるかもしれないね。


 

「うん、僕もそう思う。それじゃあ、またね!」

「また会う日まで、なんだな!」



 僕とクーロスはそう言葉を交わしてそれぞれ違う道を行った。


 さて、僕はとりあえずコーボネルドを目指すことにした訳だけど、そこに仲間達はいるのかな?

 そもそも、あのスイノの攻撃の影響を受けてみんな無事なのだろうか?

 ちょっと心配になる。  

 多分コーボネルドに行けば、何らかの情報は得られるはずだ。

 先を急ごう。


 僕は霊竜の姿に戻り、飛びたとうとした。

 だがその時、何者かが僕に向かって急速に近づいてくる気配を感じ、僕は飛ぶのを止めて身構える。


 少し時間が経つと、僕に近づいてくる者の正体が明らかになった。


 

「オマエ、霊竜の秘術を身につけたんだな」



 大柄なコボルドの姿をした悪魔、ブローダンが現れたのだ。



「あ、うん。苦労はしたけど何とか使えたよ」

「俺様はまだ秘伝書を見つけられてないっていうのに……くそっ、また負けたというのか!?」

「負けたって……別にそんな勝ち負けにこだわる必要はないんじゃないかな?」

「そう言って勝ったまま逃げるつもりか!? そうはさせないんだからな!」



 ブローダンは負けっぱなしであることが気に食わないようだ。

 僕としてはもう争う理由なんてないから、戦いなんてしたくないんだけどなあ。



「オマエの力は戻ったようだな。幸い俺様の力も十分回復した。だから、俺様とこの場で勝負しろ!」



 勝負……か。

 まともに戦えば、また永遠と決着のつかない戦いを強いられそうで嫌だな。

 でも霊竜になった今だからこそ、戦いを終わらせる別の方法がある。

 その方法は、ペンダントに残った記憶をたどれば実現は恐らく可能だ。

 となれば、その方法を使ってさっさと面倒な事は終わらせよう。



「いいよ、相手するよ」

「そうか、ようやくやる気になったか! なら、こちらからいくぞ! 大黒波ブラックウェイブ!」



 僕はブローダンの攻撃を虚構事実化フィクションファクトで難なく防ぐ。

 ブローダンの攻撃を避けたり、防御しつつ、僕は辺りを見渡す。

 どこかに良さそうな生物はいないかな……あ、いたいた!

 僕の目が一羽の小鳥をとらえた。


 

「それじゃいくよ! 精神交換スピリットチェンジ!」

「な、何をする!?」



 僕は呪文を唱え、一羽の小鳥とブローダンに向けて光を放った。


 僕の精神交換の呪文による光が小鳥とブローダンに直撃した。

 するとブローダン――だったコボルドの様子がおかしくなる。



「チュン、チュン」



 突然そんな感じで鳥の鳴き真似をし始めたのだ。


 いや、あのコボルドの精神は小鳥なんだから何の不思議もないのだ。

 このことは精神交換の呪文に成功したことを意味するだろう。

 となると、残る小鳥の方は……



「ヂュン!!」



 威嚇するように鋭く鳴きながら僕に突進してくる小鳥がいた。

 相当怒っているようだ。

 だけど虚しいことに、小鳥の体ではどんなに頑張ってもそんな大した攻撃にはならない。

 ちょっと弱めのバリアでも小鳥の攻撃では破ることができないのだ。


 小鳥は僕が張ったバリアを壊そうと懸命につつくのだが、バリアには傷一つつかない。

 やがて小鳥は抵抗をあきらめ、体をぐったりとさせた。



「これで戦いは終わりだね」



 僕がそう小鳥に向かって言うと、小鳥はなんか必死に訴えようとして口をパクパクさせている。

 どうやら今の小鳥(以後小鳥ブローダンと言おう)は攻撃を止めても、まだ戦いを諦めてはいないらしい。

 せっかくだからもう少しこのままにしておこうっと。


 さて、これで戦いにならなくなったから、小鳥ブローダンを放置していても良さそうだな。

 残る問題は、精神が小鳥になっているブローダンの体だろう。

 放っておいても僕への直接的な害はないけど、小鳥がかわいそうだし、精神交換を知らない他のコボルドが小鳥を見つけたら大変なことになりそうだ。


 どうしようかとしばらく悩んでいると遠くから慣れ親しんだオーラを感じ始める。

 このオーラは……バルグ達だ!

 多分その中にフィナもいるから、僕のオーラを感じ取って近づいてきてくれているんだろう。

 ここで待っていれば十分みたいだ。



「バルグ達がここに来るみたいだから、しばらくここでのんびりしていよっと」



 僕が独り言をつぶやく。

 すると小鳥ブローダンの様子が急変した。


 急に土下座を始めて、今にも泣きそうな顔をしている。

 一体どうしたというのか?

 よく分からないが、戦いを諦めてくれそうだと思った僕はブローダンと小鳥の精神を元に戻すことにした。


 元のコボルドの体に戻ったブローダン。

 すると一言。



「ゆ、許してくれなんて一言も言ってないんだからな!」



 いや、確かに言ってないけどさ。

 色々とツッコミたくなるけど、やめておこう。


 どうやら精神交換はブローダンに相当効いたみたいで、ブローダンは元の体に戻ってからも戦意喪失したままだった。

 むしろ、僕が近づくとビクビク震えてすらいる。

 なんかそれはそれで微笑ましかったりするんだけど。


 

「ぜ、絶対にこのことはアイツには言うんじゃねえぞ!」



 ブローダンはそう言うと、あっという間にどこかへ消え去ってしまった。


 アイツって……多分バルグのことだろうな。

 そういえばバルグとブローダンは喧嘩しているんだっけ。

 このことが知れたらブローダンの立場がないし、バルグに馬鹿にされるから口止めをお願いしてきたんだろう。

 仕方ないからバルグには黙っておこうか。

 黙っていられる限りではあるけれど。



「ふふっ、あの方にも面白い弱点があるものなんですね……」



 後ろから急に声がしたので驚いて振り向くと、そこにはリザースの姿があった。

 ちょっと前までは周りにブローダン以外の人の気配は感じなかったのに、一体いつこんなに近づいたのか不思議である。



「リザース、いつの間にこんなに近くに来たんだ……それにバルグ達とは一緒じゃないの?」

「私はずっとバルグさんとは別行動をとっていましたよ。主にランドリザードの町の混乱を止めるために活動してましたから」



 全然知らなかった。

 てっきりバルグ達と一緒に行動しているものだと思っていたんだけど……

 まあ別に終わったことは気にしても仕方ないか。



「ランドリザード達は大丈夫そうだった?」

「はい。私が村に到着した頃にはいつも通りの落ち着きを取り戻していました。心配ありません」



 それから僕達の間に沈黙が続く。

 リザースと話すのは久しぶりなんだけど、こんな気まずかったっけ?

 リザースがだいぶ気を使っているように見える。

 

 しばらくすると、リザースが真面目な顔をして僕に話しかけてきた。



「すいません、お話があります。ちょっといいでしょうか?」

「うん。どうしたの? いきなりあらたまって?」

「先日は、我が主を見間違え、挙句の果てには敵対行為をしてしまう失態、誠に申し訳ありませんでした!」

「いや、あれは仕方ないことだし、もう終わったことだから気にしないでいいよ」



 ブローダンに操られていたときの行動をリザースは今でも気にしているようだった。

 バルグのように意図的に敵対していた訳じゃないんだから気にすることないのにな。



「いや、どうしてもこのままでは私は主に顔を合わせる資格はありません! 何か償いをしなくては……」



 償いなんて、そんなことされたら逆に僕の方が困っちゃうよ。

 でもこのままではリザースはずっと謝り続けるだろうし、僕の気分が滅入っちゃうよな。

 なんとかリザースにそれなりのことをお願いして、かつ僕も気分よくリザースと接していけることは方法はないだろうか?


 すると僕はあることを思いつく。



「どうしても何か僕にしないとリザースは気持ちが収まらないんだね?」

「はい、その通りです」

「なら償いとして、リザースにお願いをしてもいいかな?」

「はい、なんなりとお申し付けください!」



 僕がリザースに望むこと。

 それは――――



「僕と友達になってくれないかな?」



 そう、僕が望むのはリザースと気兼ねなく接することなんだ。

 リザースは僕のことをすごい敬ってくれるんだけど、僕としてはもっと気軽に話がしたいと思っていたりする。

 敬うとかそういうことは抜きにしてもっと気軽に接していきたいという気持ちが友達という言葉に現れたのだ。


 僕の言葉を聞いたリザースは驚きや戸惑いが混じったような表情を浮かべている。

 何か変な事を言っちゃったかな?

 今更何を言っているのかと思われてしまったんだろうか?


 色々と僕が不安に思っていると、リザースは表情に笑みを浮かべてこう言った。



「はい、喜んで!」



 どうやらリザースに喜んでもらえたらしい。

 僕は思わずほっとした。



「僕とリザースは友達なんだから、これからは余計な気遣いはなしでお願いね」

「はい、かしこまりました!」



 うーん、結局言葉が堅いままな気がするけど、逆にリザースの口癖からして変に注意してしまうと逆に疲れさせちゃいそうだもんな。

 そこは気にしないであげた方がいいのかもしれない。

 それがリザースらしさってことでね。

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