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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第一章 異世界で魔物生活
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5.リザードマン

 スラオによれば、スライムの水補給場所にしていた場所は川から水がやってきていたらしい。

 しかし、10日前位からその川から水が全く来なくなったのだという。



「その川はどこにあるか分かる?」

「うん。こっちだゾ!」



 どうやら水源は、僕が出てきた鍾乳洞からスライムの村に向かう方向と逆の方にあるらしい。

 茂みをぬけると僕とスラオは、スラオと出会った崖の近くに着いた。



「ここでレン兄ちゃんはあの巨大な蛇を倒しちゃったんだよネ? すごいナ~! どうやって倒したノ?」

「いやぁ……必死だったからどうしたかはちょっと覚えてないなぁ」



 実質バルグが倒したみたいなものだし、どうやって倒したか聞かれても答えられないんだよね。

 僕自身がやっていたことといえば蛇の攻撃をかわし続けることだけだし、それじゃあ蛇を倒した理由にはならないしさ。



『じゃあ、俺が代わりに答えてやろうか?』

『いや、性格変わった変な人になっちゃうからやめて! それに説明すると今度戦ってみせてとか言われそうになるのも嫌だし……』



 バルグと一緒に戦って勝てたことは確かに嬉しかったが、だからといって戦闘自体が好きな訳じゃないのだ。

 今回僕がスラオと一緒にスライム村の水源調査をしようと決めたのは、単純にスライム達に恩返ししたいからというだけだし。

 断じて戦いたいから外に出ている訳ではない。



「レン兄ちゃん、さっきからボーとしてどうしたノ? なんか悩み事でもあったノ?」



 どうやら僕がバルグと頭の中で会話している状態は他の人から見て少し不自然な状態らしい。

 既に変な人になっていたというのは少し傷つくなぁ。



「いや、なんでもないよ。とにかく先に進もう!」



 そう言って気持ちをごまかそうとしながら早く先に進もうとしたとき、違和感に気づいた。



「あれ、蛇の死体がなくなってる……?」

「確かにオイラがレン兄ちゃんと会ったときは蛇の死体があったナ……」



 死体が残って腐っているのを見るのも嫌だが、だからといって死体が全くなくなっているというのも気味が悪い。



「変な事言ってごめん。気にしても仕方ないことだし、先に進もう」



 気味の悪さを感じつつも、僕とスラオはその場を後にした。





 しばらく進んでいると、周囲の環境がジメジメして足元がぬかるんでいる湿地帯に変わってきた。



「歩きにくいなぁ、ここ」

「オイラもそう思ウ。でもこの辺りが水源だから、ここにくれば原因は必ず分かるヨ!」



 スラオはぴょんぴょん跳ねながらそう言った。

 


「でも、この辺りにオイラ達が使っている上流の川があるはずなんだけド。おかしいナ。見当たらないなア……」



 確かに辺りを見渡しても川は見当たらない。

 でもスラオが嘘を言っているとは考えられないので、もっと周りを観察するとある事に気づく。



「ねえ、スラオ? この大きな窪みって川の跡じゃない? もしかしてこの川がスラオの探している川なんじゃ……」

「確かに位置的にもそうだと思えてきたナ……でもそうだとしたら、なんでこんなに涸れてしまっているんだろウ?」

「この川のさらに上流にいけばもしかしたら原因が分かるかもしれないね。行こう」



 こうして僕とスラオは川の上流へと向かっていく。

 そしてしばらく進んでいくと、原因が判明した。



「この岩が原因か。明らかに誰かが故意に川をせき止めていたとしか考えられないんだけど……」



 スラオ達が使っていた川は湿地帯にある川の本流から枝別れした川だった。

 そして本流の川はなんの問題もなく水が流れていた。

 だが本流から枝分かれする部分に大きな岩が置かれていた為に、水がせき止められ、スラオ達が使っている川は涸れてしまっていたのだ。

 川が枝分かれする部分にピンポイントで、しかも一メートルはありそうな大きな岩で塞がるようなことはまず自然ではあり得ないことだと僕は思った。

 誰かが大きな岩を持ってきて、ここに置いたに違いない。



「そんなひどい事を一体誰がするんだろウ?」

「とにかく、この岩を破壊すれば解決だね。ちょっと試してみよう」



 そう言って僕は右手に意識を集中させる。



『フレイムクローを発動させたいんだけどファイアーボールと同じ感じでいけるかな?』

『ああ。ただ手ではなく爪に精神を集中させると良いぞ』

『うん、分かった。ありがとう、バルグ』



 バルグの助言を受け、右手に力を集めた後、さらに右手の爪にエネルギーを集める。



「行くぞ! フレイムクロー!」



 赤く光った爪によって繰り出した攻撃は簡単に岩を切り裂き、涸れていた川に水が流れ出した!



『まさかこんなにあっさりと岩を壊せるとは……魔物の力ってすごいんだな。いや、バルグの力か』



 正直僕が繰り出した攻撃はバルグに比べて不完全なものだったので岩を破壊する自信はなかった。

 だが実際は、それ位の力でもあっさりと岩が壊れたので驚いたのだ。



「すごい……さすがはレン兄ちゃんダ……!」



 スラオが尊敬の眼差しで僕を見てくる。

 嬉しいけどなんか恥ずかしい。



「水の問題が解決したことだし、村に戻ろうか?」



 僕はそう言って村に向かおうとした。

 しかし……



「おい! ちょっと待ちな! 川をせき止めていた岩を壊しちまったのはオマエか!?」



 その怒鳴り声とともに近寄ってきたのは三人のリザードマンだった。

 なんか嫌な予感がする……



「せっかく川の勢いを強めて気持ち良く水浴びをしていたのによくも邪魔をしてくれたな! 覚悟しろ!」



 そう叫ぶと同時に三人のリザードマンが襲い掛かってきた!


 数だけみるとこちらが圧倒的に不利なのだが、初戦の蛇に比べれば動きはだいぶ遅いので気持ちには余裕がある。



『というか、そんなしょうもない理由で水をせきとめていたなんて、なんて奴らなんだ!?』



 僕はそう内心怒りながらも、とりあえず攻撃を回避しようとした。

 しかし、できなかった。

 足元がぬかるんでうまく動けないのだ。


 慌ててバルグが使っていたファイアーウォールを使おうとしたが、そんな状態では発動するはずもない。


 なんとか腕をクロスさせて斬撃を受け止めようとする僕。

 相手は剣を持っており、ただでは済まなさそうだ。

 恐怖を感じ、目を閉じて攻撃を受ける。



 ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ



 あれっ、全然痛みがない。

 どうなっているんだろう?


 そう疑問に思いながら目を開けると、そこには剣が折れて震えているリザードマン達の姿があった。



『あれっ? 一体何が起きたの!?』

『多分、二つ目の赤い宝玉の効果が肉体強化だったんだな。今のレンなら多少の斬撃も寄せ付けないだろう!』



 宝玉の効果、つまりバルグの竜の力によるものなのか。

 バルグの力を得た僕ですらこうなのだから、バルグ本体は一体どれだけの戦闘力を持っていたのか想像つかないよなぁ。



「ヒィィィ!? ば……化け物ぉぉぉぉーーーー!!!???」



 そう叫んで三体のリザードマンは逃げ帰っていった。



「れ、レン兄ちゃんはどんな体してるんだア!?」



 スラオは驚きの余りぐるぐる変な動きをしている。

 まあ、無理もない。

 僕自身だって自分の体の頑丈さに戸惑っているんだから。

 どう説明したものか……そう悩んでいるといつの間にか周囲のすぐ近くになんらかの気配を感じた。




『レン、周りを囲まれているぞ』



 バルグからも忠告されたので間違いないだろう。

 周囲を警戒していると気配のうちの一つがこちらに近づいてくる。

 どうやらリザードマンのようだ。


 また戦いを挑んでくるのではと戦闘できる態勢をとる僕。

 するとリザードマンは……



「レンさん……いや師匠と呼ばせてください! 師匠の力は先ほど拝見させていただきました! 是非その力で我々を導いていただけないでしょうか!?」



 そうリザードマンが叫んでいた。

 戦うものだと思っていた僕は拍子抜けし、また言われた内容を理解できずに呆然と立ち尽くしていた。



「導くって、誰が……?」

「もちろん師匠に他なりません!他の皆も異論ないな!」

「「「はっ! 勿論であります!」」」



 そう周りのリザードマンが叫ぶと、一斉に近くに寄ってきた。


 えっ、何この状況?

 早くスライム村に戻ってゆっくりしたいんだけど?

 どうなってるんだよ、これ?



「悪いけど、僕は行くところがあるからこれで……」

「「「お供します!!!」」」



 ここから逃げ出そうとしたのだが、全くそんな僕の気持ちが伝わる訳もなく。

 僕がどんなに進んでも、黙って大勢のリザードマンがぞろぞろとついてくるのだった。


 無視してれば諦めるかなと期待しつつ何も言わずに移動することにした。

 だが、結局蛇と戦った所まで来ても全く諦める様子もなく、ついてきてしまった。



「えー……何でこんな所までついてくるの?」

「「「師匠の向かうところならどこへでもお供します!」」」



 それじゃ理由になってないから。

 何でこんなことになるんだろう?

 なんかまともな話ができそうにないのでリザードマンの中でリーダーになっていそうな人を呼び出して話を聞くことにした。



「こんな所まで来てるけどリザードマンの村の人達が心配するんじゃないの?」

「我々は村を追われた身ですので、村の民から心配をされることなどありません! こんな我々の心配までされるなんて何とお優しいんでしょう! 師匠はやはりスラオ殿がおっしゃる通りの立派なお方で、ますます我々は安泰ですね!」



 なんか変に期待させてしまっているようだった。

 それにスラオ、なんて余計な事をしてくれる……

 ここにくるまでの間にスラオがリザードマンと何か話しているとは思ってはいたが。



「別にそんなに褒めなくてもいいから……僕はスライムの村に戻るつもりなんだけど君達はどうするの?」

「そのようにされるのであれば、我々はスライムの村の近くに棲みついて、師匠をお守りするだけです!」

「ああ、そうなんだ……じゃあそのように頼むね。僕はスライムの村でくつろいでいるから」

「承知いたしました! では、我々はこの辺りで待機してお守り致します!」



 相手をしたくないというのを暗に伝えたつもりだったのだが、全く意味がないらしい。 

 まあ正直まとわりつかれるよりかはマシだろうと思いつつスライムの村に再び向かう。

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