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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第四章 存在を求めて
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53.ブローダンとの再会

 僕達は町の中心からだいぶ離れた所まで歩いた。

 そしてブロースが立ち止まる。



「ついたぞ。ここがデジュラの家だ」 

「ずいぶんと大きな家なんですね」

「そうだな。まあ、ここが田舎で土地の値段が安いというのもあるんだろうけどな」



 デジュラの家の周りには建物はまばらにしかない。

 ブロースの言う通り、ここは悪魔世界の田舎にあたるんだろう。

 でも日本の田舎は自然豊かなイメージなんだけど、ここは荒れ果てた土地が広がっていて殺風景だ。



「では中に入らせてもらうとするか」



 そう言ったブロースは家の中に入ろうとドアノブを握る。

 えっ、無断で入ろうとしていていいの?

 チャイムとか鳴らしたりしないの?


 そしてブロースはそのままドアを開けてしまった。

 えっ、鍵かかってないの?


 勝手に家に入ろうとするブロースに戸惑いながらも、僕もあわてて家の中に入ることにした。



「やあ、ブロース久しぶりだね」



 部屋の奥からデジュラが現れた。

 デジュラはブローダン戦で出会ったときの人間の姿ではなく、ランドリザードの姿をしている。

 って、勝手に中に入ったことには触れないんだね。

 悪魔同士だとそういうものなのかな?



「本当に久しぶりだな。今までどこに隠れていたんだ? 心配したぞ」

「隠れてなんかいないよ。ただ気に入る体がなかっただけさ。ブロースも相変わらずだね。わざわざ念話で話さなくても、声に出して言えばいいのに」



 二人とも久しぶりに会って話すからか、とても楽しげである。

 遠距離では連絡をとりあっていたらしいんだけど、二人の表情を見ると、直接会って話すのはまた別物らしい。

 確かに電話で話すのと直接話すのは違うし、気持ちは分かるな。



「ブロースはレン君の手助けをしているんだっけ?」

「ああ。天使の攻撃による後遺症を治したいらしい」

「天使の攻撃? ああ、よく見れば、レン君いつの間にか霊竜になっているんだね! どうしてそうなっちゃったの?」



 僕はデジュラにこれまでの経緯を説明した。



「なるほどね、それは大変だ。立ち話もなんだから、中に入ってじっくり話そう。ついてきて」



 こうして僕達はデジュラの家にお邪魔させてもらうことにした。


 デジュラによってとある一室に案内された。

 何か電気の明かりみたいに光るものが所々におかれているから、部屋の中は明るく感じられる。

 家具も所々に置かれているが、部屋が広いのでスペースにかなり余裕がある。


 そしてその部屋には先客がいるようだった。

 誰かが椅子に座っているのだ。



「ブローダン、レン君たちを連れてきたよ」



 ブローダンだって!?

 デジュラの所にいるとは思っていなかったからだいぶ不意をつかれた気分だ。

 

 ブローダンと思われるコボルドがこちらを振り向いた。

 そしてそのまま僕の方をじっと見てくる。

 な、何が言いたいんだよ。



「とにかくレン君たちも座ってよ。座りながらじっくりと話をしよう」



 デジュラに促され、僕とブロースは椅子に腰かけた。

 デジュラはお茶などを出す為にキッチンの方へと向かう。

 その場に残されたのは、僕とブロース、ブローダンの三人だ。

 しばらく誰も話さずに沈黙が続き、重苦しい空気が流れる。


 結局誰も話さないまま、デジュラがお茶やお菓子のような物を持って戻ってきた。



「なんか嫌な空気だね。このままじゃ嫌だから、改めて自己紹介から始めようか?」



 デジュラが話を切り出した。


 自己紹介?

 まあ、確かにそれぞれの名前は知っているけれど、どういう人なのかはまだはっきりとは分かっていないよね。

 今更な感じもするけど、ここは改めて自己紹介をすべきだろう。



「僕はデジュラだ。ブローダンとは幼なじみで、長い付き合いになる。体を持って、実体化するまでは幽霊みたいに精神体のまま混沌世界をさまよっていたよ」

「精神体だけでも生きていけるんですね」

「そうだね。ただ、体を持っていないと、誰にも存在を知られることがないし、物もつかめないからちょっと寂しいんだよ」



 一人でゆっくり過ごすことはできそうなのはいいけれど、誰からも気づかれない、何もできずに見ているだけというのは辛いだろうな。

 僕もその時間を過ごしたことがあるし、何となく分かる気がする。



「そういえばレン君、どうして丁寧語を使っているんだい? そんなに硬くならなくていいのに」

「えっ? 会って間もない訳ですし、みなさん僕よりも年上ですから……」

「そんなこと気にしなくていいよ。それよりもよそよそしい方が気になるよ。もっと緊張しないでリラックスしよう」



 リラックスといっても、ブローダンがいるこの場で落ち着いてなんかいられないよ……



「ブロースもブローダンにもため口でいいよ。ね、二人とも?」

「ああ、私は構わないぞ」



 ブロースはすぐに返事をしたが、ブローダンは黙ったままだった。



「ブローダン、返事は?」

「……なんで俺様がそいつと仲良くなんかしないといけないんだ」



 ブローダンはとても不機嫌そうな顔をしている。

 予想はしていたけど、ブローダンは僕に対して悪い印象を持っているようだった。

 うーん、これは交渉が難しくなりそうだ……



「ブローダンまだ根に持っているの? 君はやり過ぎた。それをレン君が止めた。違うかい?」

「確かに俺様はやり過ぎたかもしれんが……」

「そうだよ。別にレン君がブローダンを止めなくても、誰かが止めようとしたはずだ。たまたまその相手がレン君なだけだった」

「それは俺様も分かってる。だがな……」



 ブローダンは不満そうな顔をしながら、僕の方をにらみつけてきた。



「負けっぱなしというのは性に合わねぇんだよ!」



 ブローダンはそう怒鳴った。

 他のみんなもキョトンとしている。



「おい、オマエ、俺様ともう一度勝負しろ!」

「しょ……勝負?」

「ちょっと、ブローダン、レン君はそれどころじゃないんだよ! 命の危険がある位なんだよ!」



 デジュラがあわてて止めに入る。

 デジュラが止めてなければ、危うくブローダンに攻撃されるところだった。



「命の危険だと?」

「そうだよ。今のレン君があのときとは違って弱々しい体をしているのに気付かないかい?」

「……そうだな。確かに今にも死にそうな体をしてやがるな」



 ブローダンは少し冷静になったようだった。



「今日、私とレンがここに来たのは、ブローダン、お前にレン君の病気を治してもらいたいからだ」



 ブロースがブローダンに話しかける。



「負けて悔しいのは分かるが、だからといって、弱った相手を倒した所でお前は満足するのか?」

「それは……確かにそうだな」

「ここはお前がレンを治して、レンが万全になってから再戦を挑めばいいんじゃないか?」



 ブローダンはうなづいて、僕の方へと近づいてくる。



「気が進まないが、オマエの病を治してやる。その代わり、早く俺様と戦えよ!」



 なんか勝手にブローダンと戦う流れになっているんですけど。

 病を治してくれるのはありがたいけど、ブローダンと戦うのは面倒だし、嫌だなあ……


 ブローダンは何やら呪文を唱え始めた。

 すると、ブローダンの周囲に邪気が漂い始める。

 一体何をしようと言うんだ……



「光を打ち消せ! 邪気魔獄!」



 その声とともに、僕の周りを黒く禍々しいものが覆い始める。

 黒い物質を浴びていると、気分が良くなっていくのが意外だった。 

 天使の攻撃によるダメージが回復していっているのかもしれない。


 しばらくすると、ブローダンの呪文の効果が切れた。

 そのときには、僕の体は身軽になっていて、辛い感じは残っていなかった。



「これで治っただろ? じゃあ早く俺様と……」

「ブローダン、レン君は病み上がりだし、無理をさせてはいけないよ。それに、今のレン君は霊竜の体になってしまったから戦闘向きではなくなってしまったし、ブローダンは戦闘を楽しむことはできないと思うよ」



 デジュラが慌ててブローダンを止めに入った。



「それだと治した意味がないだろ!」

「いや、意味はあるよ。まず、レン君はブローダンのおかげでしばらく生きることができる。これはレン君と再戦をする機会が増えることを意味する」

「確かにそうだ。だが、このままではしばらくリベンジすることができないじゃないか!」

「いや、そんなことはないと思うよ。何しろ戦いというのは、戦闘に限らないからね」

「戦闘に限らないだと?」

「ああ。例えば、どちらが探し物を先に見つけるとかね」



 確かに対決するという意味では、戦闘に限らないだろうな。

 でもブローダンはそれで満足するのか?



「確かにそういう方法もあるな。若干物足りないが、それで許してやろう。勝敗が分かり切っている勝負なんて面白くないからな。ククク……」



 ブローダンが嘲り笑いながらそう言う。

 ブローダンの言い方に少し腹が立ったが、戦闘をしなくてもよくなったみたいなのでよしとする。

 こんな霊竜の体で戦おうとしても、まともに戦える自信はないからね。



「で、何を探せばいいんだ?」

「うーん、そうだね……何も考えていなかったな。レン君、何か思いつかない?」



 なんかいきなり話を振られたんだけど。

 探し物っていったってなぁ……

 何かあったら便利なものとかないかなぁ? 

 あ、そうだ!

 霊竜には存在感を戻す技があると言われている。

 もしその技を自分で使えるようになれば、今の僕の問題は解決するじゃないか!



「霊竜の技について記された物とかあったりする?」

「どうだろうなあ? ブロース知ってる?」

「聞いたことならあるぞ。霊竜は長年生きているから、どこかにはあるだろう」



 霊竜は長生きだけれども、技が記された物なんて存在するのかな?

 誰が記すのかという問題もあるし、霊竜はそんな頻繁に技を出す訳じゃないだろうから、そもそも記すことができるのかという問題もある。

 まあ、霊竜自身が記しているんだったら問題はないんだけど。



「そうか。それを探せばいいんだな? レン、オマエより絶対先に見つけてやるんだからな!」



 そう言ったブローダンは部屋から出て行ってしまった。

 ブローダンを見送ると、ブロースが話を切り出した。



「あいつは行ったか。なら、話してもよさそうだな。実はな、霊竜の秘伝書に関して心当たりがある」



 ブローダンがいなくなってから話そうとしてくれるのはブロースなりの配慮なのかな?

 とりあえず、話を聞いてみることにしよう。



「私は先代のシルピィとそれなりに親しくさせてもらっていたんだがな、そいつが秘伝書の隠し場所の一つを私に教えてくれたのだ」

「先代のシルピィと親しかったんだ?」

「ああ、そうだ。今のシルピィとはまだ会っていないがな」



 先代のシルピィはどんな感じの霊竜だったんだろう?

 今のシルピィと似た感じの性格だったのかな?

 いや、そんなことを気にしても仕方がない。

 話を戻そう。



「それで、秘伝書の隠し場所というのは?」

「それは―――海の底にあると言われている」

「海の底か。簡単には行けなさそうだな……」



 海の底って、水圧がかかったりするから並大抵の手段じゃたどり着くことすらできないよね。

 潜水艦とか必要なんだろうけど、この世界に潜水艦なんてあるんだろうか……



「そうだな。たどり着くことすら決して容易ではないだろう。深海生物以外で生身の体で生存を続けることは不可能だ」

「ではどうしたらいいんだろう?」

「潜水艦というものを作る必要があるらしい」



 この世界にも潜水艦が存在するのか。

 でも、貸してもらえばいい話だと思うんだけど、どうして作る必要があるんだろうか?



「潜水艦があるんだったら、持っている人に貸してもらえばいいんじゃないかな?」

「いや、そうはいかないだろうな。潜水艦は人間の軍事機密の物にあたり、存在しないことにさえなっているから貸してもらえることはまずないだろう」



 潜水艦が軍事機密か……

 何か不思議な気分ではあったが、考えてみれば僕が現実世界にいたときもこの目で潜水艦を直接見たことがない。

 潜水艦にはだいぶ複雑な技術が使われていて、貴重な乗り物であることに違いはないか。

 そうなると、貸してもらうことはまず不可能だろう。



「潜水艦を作るといっても、そんな軍事機密にするような高度な技術が必要ならば、僕達じゃあ到底作れないと思うんだけど?」

「普通はそう思うだろうな。だがな、実は潜水艦の設計図を私は入手しているのだ」

「設計図を入手? 一体どうやって?」

「人間の町に潜入して、軍事施設で働いていたときがあってな。そのときにこっそりとコピーをさせてもらったという訳だ」



 重要な技術を簡単にコピーされてしまうなんて、その町の施設のセキュリティが甘すぎるような気がするのだが、大丈夫だろうか?

 まあ、心配しても仕方がないか。

 そのおかげで僕達は次の一手をうつことができる訳だし、ここはセキュリティの甘さに感謝しておこう。



「設計図があるといっても素人には作れないから、技術者が必要になる。そしてもちろん材料も必要だな」



 技術者と材料か……

 技術者といえば、エルンに頼めば作ってくれたりしないかな?

 技術的に難しそうだけど、ダメもとで頼んでみようか。

 材料に関しては全く見当もつかないなぁ。



「設計図をレンに渡しておく。技術者を見つけてから、必要な材料をその人に聞くといいだろう」

「ありがとう。でもいいの? 結構重要なものなんじゃ?」

「確かにそれは重要なものではあるが、私はその設計図を作った国の人じゃないし、情報が漏れた所で気にはせんよ」



 そりゃあブロースにとってはそうかもしれないけど。

 まあ、既にブロースに情報が漏れているんだから、どっちみち情報漏えいは防げていないということだし、気にしないでおこう。


 さて、やることは決まったし、早速悪魔世界から脱出したいな。

 ただ、この世界の事はよく分からないし、ブロースがいないとバルグ達のいる世界につながる門は出せないから、ブロース次第にはなるんだけど。



「ブロースはこの世界に用事があるんだよね?」

「そんな大したことはないぞ? ただ故郷を見に行こうと思っていただけだ」

「ブロースの故郷?」

「ああ。悪魔世界にしては自然豊かな珍しい場所だ。せっかくだからレンも一緒に来ないか?」



 どうしようかな?

 せっかく違う世界に来たんだし、それ位の寄り道はしないともったいないよね。

 ブロースについていくことにしよう。

 いや、どっちみちブロースについていかないと、バルグ達がいる混沌世界への戻り方は分からなくて困るんだけど。



「うん、僕も一緒に行くよ」

「そうか。それじゃあ出発するか。デジュラ、世話になったな」

「こちらこそわざわざ来てくれてありがとう。また来てくれるとうれしいよ」



 こうして僕とブロースはデジュラの家を後にした。

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