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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第三章 魔の手からの解放
48/98

46.VSリザース

 地下空間は竜人族の体の二倍位の高さがあった。

 地下の空間にしては、だいぶ広いとは思うのだが、天竜化している状態では入れない場所だ。

 事前に備えておいてよかった。


 しばらく歩いていると、ランドリザード達が見えてきた。

 その中にはリザースもいる。

 相手の姿が見えているということは、しっかりとエルン製の腕輪のおかげで幻覚を無効化しているということだろう。

 

 リザース達も僕達に気づいたようだ。



「やはり来たか」



 リザースは既に僕達が幻覚を受けていないことに気づいているようだった。

 でも特に驚くことなく淡々とした表情で僕達を見つめてくる。



「フィナはどこにいる?」

「フィナか……教えてほしければ私を倒してから聞くんだな」



 そう言ったリザースは僕に襲い掛かってくる。


 リザースの攻撃を魔法で作った炎の剣で受け止める。

 剣は消え去ってしまうが、リザースの攻撃を和らげることには成功し、ダメージを受けることを防いだ。


 

炎熱槍ヒートスピア!」

「ふん、甘いな。水槍アクアスピア



 僕の放った炎魔法をリザースは簡単に避けてみせる。

 そして反撃をすぐさま放ってくる。

 動きも早くて厄介だ。

 でも―――それでも勝機はある!



「なんだと!? 攻撃を受け止めただと……!?」



 避けられなくても、相手の攻撃を受け止めることはできる。

 そしてその攻撃を受け止めたまま、こちらが攻撃をすれば……



獄炎ヘルフレイム!」



 至近距離で放った炎魔法はリザースを直撃し、リザースを焼け焦がす。

 そして、ついには……消え去ってしまった!?



「消える……もしかして、このリザースは幻覚!?」

水流アクアストリーム!」



 僕はとっさに体を炎の膜で覆うことで、リザースの不意打ち攻撃を緩和する。

 だが、それでも防御が十分ではなかったため、多少のダメージを負ってしまう。

 

 その後もパワーで勝る僕がリザースとの戦いを優位にすすめるかと思いきや、実は幻覚が相手だったことの繰り返しだった。

 魔力が削られていく僕に対し、リザースの疲れは全く見えない。

 かなり不利な戦いになってしまっている。


 エルンの腕輪をつけているはずなのに、幻覚をみてしまっている。

 つまり、今は相手の術中の中にはめられているという訳だ……


 僕の周りのみんなもリザースの部下に手を焼いているようで、なかなか倒せていないようだった。

 そして時間が経つにつれて、仲間達が次々とやられていく。



「も……もう駄目ッス……」

「未来、見えない……」

「全然倒せないよぉ~」



 僕も限界寸前だ。

 今まで優位にすすめていたリザースの幻影との戦いでさえ、なんとか攻撃を受け切るだけで精一杯になっている。

 このままでは、負けるのは時間の問題だ。

 早く何とかしないと……



『レン、そのリザースは幻影だ。惑わされてはいけない』

『バルグにはどれが幻影でどれが本物か分かるの?』

『分からないさ。でもそいつの攻撃は明らかに弱くて変だろ?』



 確かに、最初のリザースの攻撃と比べて、今相手しているリザースの攻撃はそこまで鋭くない。

 もしかしてそれは幻影の攻撃だからだろうか?



『目で見るものが全てではないってホージルが言っていただろう? それがヒントになるんじゃないか?』



 そうだ。

 今までは目に頼り過ぎていた部分があるから、こうやってリザースの幻影に惑わされるんだ。

 目を閉じれば、確かに目の前からは熱の反応を感じられない。

 目の前にいるのは本物のリザースじゃないことが分かる。


 でも目で見えないものって、熱の感覚とか直接的なものだけなんだろうか?

 何か大事なものが抜けているような気がする……



『れん……レン……』



 誰かの声が脳内にかすかに聞こえる。

 聞きなれた声だが、誰だろうか?

 バルグではなさそうだし……



『俺じゃないぞ。多分フィナだろうな』



 バルグにも聞こえているのか。

 それより、確かにバルグの言う通り、先程聞こえた声はフィナの声のように聞こえた。

 近くにフィナがいるんだろうか?



『レンの近くにいるわ。でも幻覚で隠されているからレン達には見えないと思う』



 フィナは近くにいるのか。

 それにこうして会話ができているからフィナは無事なのだろう。

 良かった。



『それより、今から逆転するわよ』

『逆転ってどうやって?』

『私との絆魔法”精霊使役”を使えば、本物のリザースに攻撃を与えることができるわ!』

『それを使うと、僕にもフィナと同じような精霊の力を使えるっていうこと?』

『そうよ。早速絆魔法を発動させるわ。レン、私を意識してみて』



 僕はフィナに言われた通り、フィナの事を考えてみた。

 すると、フィナの思い、感情が僕の中に伝わってきて、次第に何やら不思議な力が湧き出てくる!

 不思議な力が僕の中で強く感じられるようになると、目の前のリザースの幻影が消え、代わりに遠くから水の遠距離攻撃を放っているリザースをとらえた。

 これが幻覚を打ち破り、真実を伝える精霊の力なのか……

  

 精霊の力を得た僕は本物のリザースの方へ立ち向かう。

 体は既に疲労困憊といった様子だったのだが、精霊の加護のおかげで、体の傷は癒えていき、心も癒されていく。

 そしてリザースからの攻撃も、素早く動けるようになった僕は簡単に避けることができた。

 攻撃の反動から生まれたリザースの隙を僕は見逃さず、腕輪を狙って攻撃する。



炎熱雷迅ブレイズプロンプトサンダー!」



 精霊イフリート、雷神カプーニスの加護を受けた僕の攻撃は何倍もの威力に増幅され、リザースの腕輪をあっさりと消滅させた。

 リザースの体も精霊が守ることで、僕の攻撃でリザースの体が消失することもなく、無事に腕輪だけを破壊することができた。

 それでも攻撃を受けたリザースは気を失ってしまったようだが、リザースから感じるオーラに変化はなく、体に大きな異常はなさそうなので、しばらくすれば目を覚ますだろう。

 

 こうしてリザースとの戦いが終わった。

 でも肝心のフィナはどこに?


 僕は周囲を見渡すと、フィナは地下空間の奥の方にある簡易型の檻のような物に閉じ込められているのが見えた。

 僕はフィナの元へ近づき、フィナを閉じ込めている檻を破壊する。


 

「レン、信じてたよ。ありがとう!」



 フィナはとても嬉しそうだ。

 精霊の力でよりはっきりとフィナの感情が伝わってくるので、こちらまで自然と嬉しくなってくる。

 フィナが無事で本当に良かった。



「みんな、助けてくれてありがとう! これはちょっとしたお礼だよ!」



 フィナは言うと、何やら金色の光を放つ粒のようなものを周囲にまき散らした。

 その光が一瞬強く輝いて消滅すると、僕達の疲れ切った体が急速に癒され、傷一つ残らずに回復した!?



「フィナちゃんすご~い! 疲れがふっとんじゃったよ~」

「妖精さん、すごいッス!」

「ちょっと、感激」



 みんなはフィナの魔法に感激していた様子だった。


 その後、久しぶりに再会した僕達はフィナと談笑して、しばらく楽しんだ。



 リ・ザール村のランドリザードもほぼ正常化したみたいだった。

 リーザーが事情の説明をしてくれたことで、リ・ザール村の人達も僕達を歓迎してくれた。

 また、襲ったことに関して何かお詫びをしたいとも言ってくれたのだが、それは遠慮しておいた。

 リ・ザール村の人達はブローダンの被害者に過ぎないし、多分腕輪を付けていたときの記憶もないと思う。

 そんな人達を責める気にはなれないんだよね。



「でもレンさんにご迷惑をおかけしたことに変わりありませんから、何かお詫びしたいのですが……」



 それでもリ・ザール村の村長はそう言ってくる。

 そうは言っても、あまりリ・ザール村の人達に負担になることをさせたくないし……

 あ、そうだ!



「村長さん、それでしたらリザースをしばらく村長さんの家で休ませてあげてくれませんか?」

「それは構わないですけど……そんなことでいいんですか?」

「そんなことじゃないですよ。それで十分です。僕の仲間、リザースをどうかよろしくお願いします」



 僕はおじぎをして村長の家を後にした。

 村長に任せておけば、きっとリザースの身の安全は保障されるだろう。

 今のリザースは敵かもしれないけど、かつての大事の仲間であったことには変わりない。

 僕にとって大事な仲間に違いないのだ。


 みんなと合流した僕は今後の事についてみんなと話し合った。



「フィナとの絆魔法が使えるようになって、幻覚の脅威はなくなった訳だけど、これでブローダンに勝てるかな?」

「どうなんだろう? 悪魔ってよく分からない存在だから、幻覚だけじゃない気もするけど……」

「でもそんなこと言っていたらいつまでたっても戦えないよね~」

「きっとレンさんなら大丈夫ッス!」

「レン、きっと負けない」



 フィナはまだ不安があるようだが、他のみんなはブローダンに挑むべきと考えているようだ。

 ブローダンが多くの地域に影響を及ぼす前に、早い段階で倒しておきたいとは僕も思っている。

 若干の不安は残るが、ブローダンに全く手も足も出ないということはないだろう。

 問題は、どうやってコーボネルドを攻略するかだ。



「コーボネルドはまるで要塞。入り口は限られているし、街は広くてブローダンがどこにいるか探し当てるのも一苦労だと思うよ」 

「ブローダンの居場所はオーラを探れば何とかなるわよ」

「残る問題はコボルドッスね」

「きっといっぱいコボルドがいるんだよね~勝てるかな~」

「多分、なんとかなる」


 

 ブローダンの居場所は分かるとすると、やはり街にいるコボルドとの戦闘が問題になりそうだ。

 コーボネルドは広いので、入り口からブローダンの居場所までは距離があり、戦闘は避けられそうにない。



『ん? 別に戦闘を全く避けられないことはないと思うぞ?』

『え、どういうこと?』

『コボルドに変装して、戦闘を避けつつブローダンまで近づけばいいんじゃないか?』



 変装ね……

 なんかそんなうまくいかないような気がするんだけど……

 まあ、真正面から立ち向かうよりはマシか。


 変装潜入作戦を決行すべく、エルンが変装の準備をする間、僕達はリ・ザール村でゆっくりと英気を養うことにした。





 リ・ザール村で一泊した僕達。

 するとついに……



「できたよ~」



 どうやらコボルドに変装する服ができたらしい。

 僕はエルンからその服を受け取り、早速着てみた。

 その服は着ぐるみのように体全体を覆うものなんだけど、とても軽くて体にフィットするから全然動きにくくない。

 というか、こんなに体にフィットするってことは……



「エルン、もしかして……僕の体のサイズをいつの間にか図っていたりするの?」

「もちろんだよ~あんなところやこんなとこもね~グフフ……」



 エルンが気味の悪い笑みで僕のことを見てくる……

 なんか寒気がしてきた。


 エナもエルンが受け取った服を着た。

 どうやらサイズがぴったりなのは僕だけではないらしい。

 もしかしてエルンって、みんなの体のサイズをいつの間にか測っていたということか……


 エルンにちょっと恐怖感を覚えたが、確かにこの出来ならコボルドの変装としては上出来だと思う。

 フィナによれば、質感だけでなく、においも再現できているそうだ。

 なんか獣臭いにおいがするんだけど、もしかしてコボルドだった僕もこんなにおいしてたのかな……

 まあ、過去の話だしどうでもいいか。


 ちなみにジルは体が大きすぎる為、変装はできないので、フィナの変身魔法でコボルドに化けることになった。

 また、フィナは逆に体が小さすぎる為、変装ができないので、僕が持つバッグの中に隠れることになった。

 バッグはリ・ザール村の村長からもらったものだ。


 ジルが変身魔法で化けるなら、みんな変身魔法で化ければいいんじゃないかな?

 僕はそう思ったが、変身魔法を維持する為に魔力を使うのはもったいないとのことで、結局僕とエルンとエナはエルン製の変装服を着ることになった。


 みんなで作戦会議をした後、早速僕達はコーボネルドへと向かうことにした。

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