44.リザース
僕達の先には後ろを向いたランドリザードが三人いた。
そのランドリザード達に奇襲をしかける。
「獄炎」
僕がそうつぶやくと、ランドリザードの足元に灼熱の炎が現れ、ランドリザード達を襲う!
「な、何が起こっているんだ!?」
慌てふためくランドリザード達。
どうやら作戦は成功したようだ。
僕の奇襲攻撃でダメージを負ったランドリザードを相手にすることは苦ではなかった。
僕は難なく一人のランドリザードを倒し、黒い腕輪を破壊する。
仲間達もランドリザードを倒したようで、僕達の目に入る範囲のランドリザードはもう倒し切ったようだった。
「余裕があるから、飛鷹族の助けに向かおう」
僕の言葉に仲間達はうなづく。
僕達はホーン村の方へと向かっていった。
何かがおかしい……
僕達が待機していた場所からホーン村まではあまり遠くないはず。
徒歩5分もあれば到着する距離のはずだ。
でも明らかに10分は歩いていそうなのに全く村が見えてこない。
「フィナ、もう村に着いていてもいい頃だよね?」
「ええ。何かがおかしいわよね。もしかして幻覚の中にいるのかしら……」
幻覚の中か……
僕は幻覚の魔法を受けたことがないので、幻覚がどんな感じかよく分からない。
でもこんなに自然な感じで幻覚が起きるとするなら、とても脅威のある魔法だよね。
だって、いつから幻覚になったか全く判断がつかなくなって、いつの間にか相手の手の平の上で踊らされているってことなんだから。
「フィナは、幻覚かどうか判別できないの?」
「多分私には幻覚の影響はないと思う。だからこそ、いくら進んでも全く私達が動けていないことにもっと早く気づくべきだったわね……」
全く動いていない……
これは明らかに幻覚の影響を受けていることになるだろう。
かなり危険な状況におかれていることになる。
しばらくすると、どこかから水の刃が飛んできた。
不意をつく攻撃にびっくりしたものの、なんとか僕は攻撃を避けた。
「一体どこから飛んできたんだ!?」
「私達の右方向に三人のランドリザードがいて、後ろの方向に四人のランドリザードがいるわ」
フィナの言う方向を見るが、全くランドリザードの姿は見えない。
多分幻覚の影響を受けているから、敵の姿が見えないんだろう。
一体どうすればいいのか……
「私がランドリザードを攻撃するから、みんなはそこを狙って!」
確かに自分の目で相手が見えなくても、フィナの目で相手が見えるのだから、利用しない手はないだろう。
僕達はフィナが言うように攻撃することにした。
「いくわよ。水の精霊ウンディーネ!」
フィナの精霊魔法が何もない所に放たれる。
多分そこにランドリザードがいるんだろう。
「水変換! 炎熱槍!」
「氷吹雪!」
「大地槍!」
「動作固定!」
みんなの攻撃が一斉に放たれる。
「いいわよ、みんな! 右方向にいる敵は倒したわ!」
どうやらランドリザードに攻撃が当たったようだった。
僕の目には攻撃を無駄うちしたようにしか見えなかったんだけど。
その後もフィナの攻撃を頼りにした戦法を続けた。
しばらくすると周囲のランドリザード達を倒しきったみたいで、幻覚が消えたみたいだった。
幻覚が消えたといっても、見た目には全然変化がないので実感はわかないのだが。
「何か変な感じが消え去った……多分幻覚は解けたと思うわ!」
幻覚が解けた所で、僕達は改めて飛鷹族を助けにホーン村に向かおうとする。
しかし……
「レン、危ない!」
フィナがそう叫んで僕を突き飛ばす。
すると、フィナが水色の結界の中に閉じ込められてしまった……
「な、何が起きたの……!?」
「多分、ランドリザードが作った水属性の結界ね。でも私ならこれ位の結界……」
フィナは結界の解除を試みる。
しかし、結界に変化はない。
「解除しようとしても無駄だぞ、フィナ」
近くから声が聞こえる。
「その声は……リザース!?」
どうやらフィナを水色の結界に閉じ込めたのはリザースのようだった。
「厄介なその竜人族を閉じ込めようとしたんだが、フィナに当たるとは。まあ、それはそれでいいだろう」
声のする方に振り向くと、そこにはランドリザードを数人率いたリザースの姿があった。
リザースの腕には銀色の腕輪が付けられている。
きっと黒い腕輪よりもさらに強力な腕輪なのだろう。
腕輪の効果があるからか、僕と旅をしていたときのリザースよりも体が大きく、強大な力を有しているように見える。
リザースがフィナの方へと近づく。
おそらくフィナを連れ去る気だろう。
そんなことはさせない。
リザースというかつての仲間を攻撃するのはちょっと気がひける。
でもここで黙って見ていたら状況がより悪くなってしまうから、ためらってはいられない。
「炎熱槍!」
「ふん、甘いな」
リザースに炎の槍が直撃したと同時にリザースの姿が薄くなって、ついには消えてしまった。
「レン、リザースは後ろよ!」
フィナの声を聞いて後ろを振り向こうとしたが……
「水竜突撃!」
僕の目の前にリザースが急に現れ、リザースの攻撃が僕の体を貫く。
なんとか致命傷は避けられたが、結構なダメージを受けてしまい、僕は倒れこんでしまう。
リザースの攻撃はかなりの威力だ。
もう一度あの攻撃を受けて無事な保障はない。
リザースから距離をとるべきなのだが、体が動かず、為すすべがない。
「哀れだな。だが、安心しろ。すぐに楽にしてやる……水槍」
倒れている僕を狙って、攻撃を加えようとするリザース。
しかし、その攻撃を阻もうとする者がいた。
「させない。時間停滞!」
「援護するッス! 大地槍!」
「みんな頑張って~」
エルンは攻撃しないんかい!
っとそれは置いておいて、エナの時間魔法によってリザースの動きは鈍り、ジルの地属性の魔法によってリザースの攻撃を中断させることに成功した。
みんな、ありがとう……。
「とどめをさすのは厳しそうだな……。なら、フィナだけでも連れていく!」
リザースがそう言うと、水の結界に覆われたフィナを連れ去って遠くに逃げていく。
「待て!」
僕は声を張り上げるが、体は思いに反して動かない。
逃げるリザースをただ見送ることしかできなかった……
この場に取り残された僕達はその場に立ち尽くしていた。
「フィナを追いたいけど、手がかりが一体ないし、どうしたらいいんだろう……」
リザースがフィナを連れ去ってしまった。
でも、リザースがどこに行ったかは全く分からない。
もしフィナがいたら、オーラで探知できたかもしれないけど、肝心のフィナは連れ去られていないからどうしようもない。
まさに万事休すといった所だろうか?
しばらく絶望に打ちひしがれていると、エルンが口をひらく。
「フィナちゃんを追いたいんだったらボクに任せて~」
「フィナを追うって、どうやって?」
「実はね~あのランドリザードに発信器をつけておいたんだ~」
発信器……?
いつリザースに発信器を取り付けたか見当もつかないんだけど、まあ細かいことは気にしない。
どうやらエルンによれば、リザースは北西方向に向かったらしい。
でもリザースが向かった方角がわかっても、まず森を抜け出さないと話にならない。
フィナがいない今、森から脱出するのも一苦労なのだ。
「飛鷹族に、頼む」
エナがつぶやく。
確かに飛鷹族ならば森のことは熟知していそうだし、森の抜け方も分かりそうだ。
「確かにエナの言う通り、飛鷹族の協力を得た方が良さそうだ。だとすると、まずはホーン村に向かった方が良さそうだね」
僕の言葉にみんなうなづき、僕達はホーン村へと向かうことになった。
しばらく歩いてホーン村にたどり着いた僕達。
だが、そのホーン村の中は何やら騒がしい。
まだ戦っている最中なのかと思いきや、そんな様子はない。
一体何が起こっているんだろう?
「ああ、君たちか。君たちのおかげで今、村中がお祭り騒ぎさ!」
そう村長のホージルが話しかけてきた。
どうやら飛鷹族はランドリザードに勝ったらしい。
僕の心配は無用だったようだ。
「そうなんですか、それは良かった。少し長い話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「そうか。何の話だか知らんが、それなら私の家で聞こう。ついてくるがいい」
僕達はホージルの後をついていった。
せっかく楽しそうにしていたホージルに水を差すような状況になってしまって申し訳なく思った。
でも、フィナがさらわれてしまったのだから、一刻の猶予もないのだ。
ホージルには申し訳ないが、できるだけ早い段階で協力してもらいたい。
ホージルの家について、僕達は腰を下ろす。
「さて、長い話とやらを聞こうか。先ほどの戦闘と関わりがあることかな?」
「はい。実は、ランドリザードに僕達の仲間のフィナがさらわれてしまったんです……」
「さらわれただと!? それは大変だ、すぐに助けにいかねば!」
「フィナは僕達が助けに行きますので、ホージルさん達は心配しなくて大丈夫です」
「それでいいのか? 我々の戦いで起きたことが原因だというのに」
本当は僕達がホーン村に来たことがきっかけで、ランドリザードの戦いが起こったというのに、ホージルはそんなことは全く考えていないようだった。
なんか申し訳ない気持ちになる。
まあ、そのことをいっても、これは自分達の戦いだとホージルは言って聞かない感じではあったが。
「ただ、ホージルさん達に一つ協力していただきたいことがあります」
「どんな協力なんだ?」
「ランドリザードは北西に向かったことは分かっています。ですが、僕達だけではこの森を抜け出すことさえ困難です。なので、ホージルさん達にこの森を抜けるまで道案内をお願いしたいのです」
「道案内か。そんなことだけで大丈夫なのか?」
「はい。ですが、一刻を争うので、できるだけ早く出発したいのです」
お祭り気分な所に水を差して申し訳ないんですけども。
「そうか……今はお祭り騒ぎだから、水を差すのも悪いな……。よし、ここは私が道案内しよう」
「いいんですか? お祭り気分に水を差してしまった上に、協力までさせてしまうなんて」
「むしろそれしかできなくて申し訳ない位だ。他の者も連れていければ、お主達に加勢できるんだがな」
「いえ、そんなことないです。無理を言ってこちらこそ申し訳ない」
「ハハ! やけに今日は腰が低いんだな! 昨日とは大違いだ! よし、じゃあ早速助けにいくとしようぞ!」
ホージルは昨日のバルグとの会話と対比して腰が低いと言っているんだろう。
バルグって、誰にでもため口で話すからなぁ……
『話し方なんて人それぞれなんだから、別にいいだろ?』
まあ、それがバルグらしさでもあるから、悪い訳ではないんだけどね。
ホージルとの会話を終えた僕達は、ホージルとともに、ホーン村を出て、森の北西方向へと向かった。
ホージルの案内によって、僕達は迷うことなく森を抜けることができた。
そして、森を抜けた先は湿地帯が広がっていた。
恐らく、ランドリザード達が住処にしている湿地帯だろう。
まさに敵の本拠地といった所だろうか。
森を抜けたので、ホージルとはここでお別れだ。
「ホージルのおかげで森をあっさりと抜けることができたよ、ありがとう」
「そんなお礼を言われるほどのことはしていない。本当にこれだけでいいんだな?」
僕は黙ってうなづく。
ホージルは分かってくれたようで、それ以上の言葉をかけず、黙って森の奥へと去っていった。
ホージルを見送った僕は、改めて湿地帯を見る。
湿地帯にはランドリザードの姿が見えない。
警備はそこまで厳重ではないようだ。
きっと村に戦力が集中しているんだろう。
「エルン、リザースがどこにいるか分かる?」
「えっとね~多分あそこの村にいると思うよ~」
エルンが一つの村を指さす。
おそらくリ・ザーラ村だろう。
リ・ザーラ村には、多分リザースだけでなくリーザーもいるはず。
かなり苦戦しそうな予感がするな。
気を引き締めて僕は村の方へと向かう。
リ・ザーラ村の中は静まり返っていた。
誰一人として村を出歩いている者はいない。
「村、静かだね~何かあったのかな~」
もしかしたらリザースが村の危機を伝えたのかもしれない。
戦えそうにない人はどこかへ避難させる。
そして戦える者達は……
「レン、しゃがんで」
エナの言葉を聞いて、僕はとっさにしゃがむ。
すると僕の頭上を水の塊が飛んで行く。
危ない所だった……
その攻撃をきっかけに続々とランドリザード達が姿を現す。
ランドリザードの数は――二十人位はいそうだ。
こちらは僕とバルグ、ジル、エナ、エルンしかいない。
バルグは僕と同化しているから、実質一人で五人ほど相手しないといけない計算だ。
バルグを僕から分離すれば人数的には楽になるんだけど。
『俺はレンから離れないからな!』
そういって聞いてくれそうにないので、四人で頑張るしかなさそうだ。
まあ、バルグが僕と分離して、また敵になってしまう展開は避けたいからこれでいいと僕も思う。
いざとなったら天竜化することもできるからね。
「僕はあそこのランドリザードを相手するよ」
「じゃあオレはあっちの方を相手するッス!」
「私、あそこで戦う」
「ってことは、ボクはあそこ……ってあんなに相手できないよぉ~」
みんなそれぞれ分担を決めてランドリザードとの戦いを始めた。




