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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第三章 魔の手からの解放
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43.ホーン村

 僕達はフィナの案内で迷うことなく、飛鷹族スカイホークの村、ホーン村に到着した。

 ホーン村の住居は、木に穴を開けて作られていて、自然と一体化しているようだった。



「おや、こんな所に客人とは珍しい。何の御用か?」



 一人の飛鷹が声をかけてくる。



「私達、人に追われていて、逃げてきたんです!」

「人に追われている……? 何か罪でも犯したのか?」

「そんなことしないわよ! ただ、ちょっと事情があって……」



 フィナは飛鷹に自分達の状況を説明した。



「ふむ、なるほどコボルドが……確かに一つの種族に好き勝手されては困るな」

「そうなんです。コボルドはランドリザードを使って、今は大陸に東側への侵攻も始めています」

「なるほど、その東側に侵攻してきたコボルドやランドリザードに追われてここまで来たということだな」



 フィナの説明に飛鷹は納得したようだ。



「いいだろう。我々があなた達をかくまおう。敵が来たら我々が排除する」

「私が言うのもなんなんですけど、本当にいいんですか? あなた達も狙われてしまうんじゃ……」

「大丈夫だ。どうせこの森がより侵攻されていくにつれて、我々の居場所はなくなってしまうから、早い所で手を打つだけだ」



 どうやら飛鷹族は協力してくれるそうだ。

 でも、この一人の村人がそんなこと勝手に決めていいものなのだろうか?



「ご協力はありがたいんですけど、あなたが勝手に決めてしまってもいいんですか?」

「ああ、そういえば名乗っていなかったな。私はホージルと申す。この村の村長をやっている」



 どうやら、声をかけてきたのは村長だったらしい。

 偶然村長に会えるなんてラッキーだな。



「村長さんだったんですか、これは失礼しました。ところで、この村にはまだランドリザード達は襲ってきていないんですか?」

「ああ。幸い、この村は自然に溶け込んでいて、外敵から見つかりにくい所にあるからか、まだ襲われたことはない。ランドリザードやコボルドが森を通り抜ける所はたびたび目にしているが……」



 ホーン村はまだ襲われていないらしい。

 見つかりにくい所にあるということで、しばらくここでゆっくりできそうで何よりだ。


 僕達はホージルの案内によって一つの家を貸し出してくれた。



「ここは客間なので、自由に使って構わない。何しろこの村に客人なんて滅多に来ないからな」



 そう言うとホージルはどこかへ行ってしまった。



「あ~やっとゆっくりできるね~ボクもう疲れちゃったよ~」

「オーガ、許せない」

「オーガが悪いんじゃないわよ! 勘違いしないであげてね!」

「もー腹ペコで死にそうッス……」



 みんなそれぞれ思うところがあるようだ。

 僕もオーガにあんな形で襲われるとは思っていなかったのでちょっと驚いている。

 何か魔物不信になりそうな展開だったな……

 今回の飛鷹族も襲ってくるんじゃないかと実はヒヤヒヤしていた。

 でもフィナによれば、飛鷹族からおかしなオーラを感じないということだったので、きっと大丈夫だろう。

 

 客間に置かれていた食べ物をありがたくいただいた後に、僕達は客間で寝ることにした。




 次の日、薄らと降り注ぐ日の光によって目が覚めた。

 昨日まで追われていて慌ただしかったのがまるで嘘のようだ。

 気分よく目覚めた僕は辺りを見渡す。


 どうやら仲間達は、まだぐっすりと眠っているようだった。

 無理もないだろう。

 あんな戦闘が続いた上に、夜襲までされたんだ。

 肉体的にも精神的にも疲れ切っているに決まっている。

 ゆっくりと寝かせておいてあげよう。



『優しいんだな、レン』



 どうやらバルグは起きているようだ。



『バルグって本当に僕が起きているときはいつでも起きているよね』

『正直言うと、寝ている時もあるんだがな』



 寝ている時間があるのか。

 僕にはいつバルグが起きているなんて全然分からないんだけどなぁ……

 何かバルグだけ僕の事を知っていてちょっと不公平な気がしてくる。



『レンが体を動かしているんだから、仕方ないだろう?』

『じゃあ、バルグが動かせば? バルグが無茶しそうだったら、僕が止めるし』

『いいのか? じゃあ今日は俺が行動するぞ』 



 そうバルグが言い終わると、僕の体から感覚がなくなっていく。 



『せっかくだから、ちょっと外に出てみるぞ』

『うん、分かった』 



 そう言ったバルグは部屋の外に出た。 



 外はだいぶ静かだった。

 まだ日が出て間もないからか、外に出ている人はほとんどいなかった。

 そんな中、一人の飛鷹族の姿が見えた。

 おそらく村長のホージルだろう。



「ああ、竜人殿か。こんな早くにどうした?」

「ちょっと早く目覚めてしまっただけだ」

「そうか」



 そう言ったきり、ホージルは目をつぶって黙り込んでしまった。

 瞑想でもしているんだろうか?

 バルグも黙って目をつぶる。


 しばらくそのまま時間が過ぎ去った。

 するとホージルが口を開く。



「何か……見えたか?」

「いや、真っ暗で何も見えなかったぞ?」

「そうか。お主にはまだ見えぬか」



 目を閉じても真っ暗なのは当たり前な気がするんだけど。

 ホージルには何が見えていたんだろう?



「目に見えるものが全てではないのだ」

「目に見えないものがあるというのか?」

「ああ。目に映るものだけが真実とは限らない。気を付けることだ」



 そう言ってホージルはどこかへ行ってしまった。



『目に映るものだけが真実とは限らない……か』

『幻覚のことかもしれないね。幻覚にやられている状態じゃ、ものを正しく見れないからね』

『ああ、そうだな……』



 でも、それだったら幻覚に気を付けろで済む話なんだよなぁ。

 何でそんなまわりくどい言い方するんだろう?

 何か意味があるのかな……



 バルグはその場でしばらくゆっくりと過ごしてから、仲間達がいる客間へと戻った。


 

「あ、レン。いや、今はバルグね。どこ行ってたの?」



 フィナが話しかけてきた。

 どうやらみんな起きているようだった。



「ちょっと村長と話してきただけだ」

「あれ~もしかして今ってバルきゅんがしゃべってたりする~?」

「そうだが、それがどうした?」

「なんか分かりづらいから何かもうちょっと分かりやすくしようよ~」



 そう言ったエルンが何かを取り出そうとしている。



「一体何をやっているんだ……」

「じゃじゃ~ん! ピンクのリボンだよ~バルきゅんのときはこれつけて~! そうすれば分かりやすいよ~」



 そういってエルンはリボンをバルグに渡そうとする。



「こ……こんなの付けられるか!」

「バルきゅんなら似合うって~」

「バルグがリボン付けている所見てみたいわ」

「リボン、つける」

「バルグさんなら似合うッスよ!」



 嫌がるバルグに無理やりみんなでリボンをつけようとした。



『レン、何とかしてくれ』

『無理だよ。もう諦めなよ』 



 結局みんなの圧力に負けたバルグはリボンをつけることになった。

 部屋に鏡があったので、みんなはバルグを鏡の前に立たせる。


 鏡には、2m近くある大柄でごつい体の竜人族にかわいいピンクの斑模様のリボンが付いていた。

 シュールな光景である。


 思わずみんな笑い出してしまった。

 僕もつられて笑ってしまう。



『おい、レン、お前他人事だと思っているだろ? お前のことでもあるんだぞ!』


 

 確かに自分のことでもあるんだが、バルグが困っているのを見ていると自然とおかしく思えてくる。

 それにリボンはバルグ用のものだし、僕はつけなくていいから他人事と言っても良さそうだ。



「バルきゅんかわいい~」

「なんか面白いわね……」

「ギャップ、萌え」

「に……にあってるッスよ、ぶふっ!!」



 バルグはジルを殴った。



「い……痛いッスよ! 何するんスか!?」

「悪いな、ちょっと手が滑った」



 ジル……笑いたい気持ちも分かるけど、ちょっと笑いすぎたな。

 加減がきかない所がジルらしいのかもしれないんだけど。


 こんな感じで客間でしゃべったり、時には外で飛鷹族の人と話したりしつつ、一日をゆっくりと過ごした。

 でも念のため、フィナにはオーラを感知して周囲の様子を見てもらっていた。



「森の中にはちらほらとランドリザードやコボルドがいそうだけど、あのとき遭遇したような大群はいなそうね」

「ということは、大群は森の中には入ってこなかったということかな?」

「多分そうね。きっと侵攻が目的だから、侵攻の邪魔をしなければ襲ってこないのかもしれないわね」



 侵攻の邪魔か……

 本当にそう考えていいのだろうか?

 なんかちょっと嫌な予感がするんだけど……まあ気のせいだろう。


 特に何事もなく、僕達は再び客間で寝て、一日を終えた。




 外が騒がしい。

 僕は自然と目が覚めた。

 いったい何事だろうか?



「バルグ、どうやら敵襲みたいよ」



 どうやら敵に襲われているらしい。

 ランドリザードやコボルドだろうか?


 

「そうなんだ。ちなみに今はバルグじゃなくてレンだよ」



 昨日の夜にバルグから頼まれて、結局僕が体を動かすことになったのだ。

 もちろんリボンは外した。

 あのリボンはバルグ用だから僕は付けなくていいからね。



「あれ、そうなの? やっぱり分かりにくいわね……じゃあレン、どうやら敵はランドリザードみたい。数人しかいなくて数は少ないんだけど、かなりの強敵らしいわ」



 かなりの強敵か……

 気を引き締めないといけないな。



「僕達もホージルさん達に加勢しよう」

「そうね、そのためにまずはホージルさんと会って相談しましょう」



 僕達は客間を出て、ホージルさんの家へと向かった。

 ちなみにホージルさんの家は昨日のうちに聞いて、お邪魔もさせてもらったので迷うことはなかった。



「お前達か、共に戦ってくれるのか?」

「はい。もともと僕達が来たせいで襲われたようなものですし……」

「そうか。では作戦をたてようと思う。聞いてほしい」



 こうしてホージルから作戦を聞いた。

 どうやら僕達はランドリザードを背後から襲ってランドリザードの戦力を分散させる役割を担うようだ。  

 それ位の役割なら全く苦労しなさそうだ。

 でも、それだけでいいのだろうか?



「でもその作戦だとホージルさん達、飛鷹族の方々に大きな負担をかけてしまうんじゃ……」

「なに、これは我々の戦いなのだ。お主が心配することではない。それに我々はランドリザードなんぞにやられはせん」



 ホージルは自信満々にそう言ってのけた。

 確かに飛鷹族は強そうで、普通のランドリザード相手になら圧倒するほどの戦力はありそうだ。

 でも今のランドリザードは悪魔の力で強化されており、飛鷹族がランドリザードに本当に勝てるのか疑問だ。

 なので心配をしているのだが、ホージルからはそんな心配は無用という調子である。

 あまり、戦の前に弱気にさせてしまうのもどうかと思ったので、口出しはしないようにした。


 話を聞き終わった僕達は、ホージルから指示された待機場所へと向かった。




 待機場所についた僕達はランドリザード達が通り抜けるのを待つ。

 辺りは静まり返っていて、小鳥のさえずりすらも聞こえない。


  

「静かッスね。これが嵐の前の静けさってやつッスか……」



 ジルはそうつぶやく。

 確かにこんなに物音しないなんてちょっと不気味だ。

 飛鷹族も準備が整ったみたいで、飛鷹族が動く音も聞こえない。

 この異様な状況に僕の緊張は高まる。


 しばらくすると、何やら足音が聞こえてくる。


 

「来たわよ。みんな、静かにしてね」



 どうやら敵のランドリザードが近づいてくるようだった。

 僕達はランドリザードに発見されないように茂みに隠れてやり過ごす。

 

 ランドリザードの足音がちょっと遠のいたと思ったときに状況が変化する。


 

「飛鷹族だ! 気を付けろ!」



 ランドリザードがそう叫ぶ。


 どうやら飛鷹族とランドリザード族が戦闘状態に入ったらしい。

 そろそろ僕達の出番のようだ。



「みんな、そろそろ行くよ」



 僕のささやきにみんながうなづき、僕達はランドリザードに背後から襲いかかった!

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