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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第三章 魔の手からの解放
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38.これからするべきこと

レン視点に戻ります。


 僕はバルグよりも早く目覚めた。

 周りには心配そうに看病してくれていた人達がたくさんいて驚くことになった。

 フィナ以外はみんな僕の知らない人だったので、ちょっと落ち着かなかったけど嬉しかったな。


 軽く周りの人と自己紹介をし終わった後で僕はバルグの様子を見に行くことにした。


 バルグはしばらく眠っていたが、待っていると目を開けた。

 そしてバルグとこの世界で久しぶりに会話した後、バルグが僕と融合してきたのだった。


 これじゃ別々の体になった意味がないよね。

 まあでもバルグからとても安心した感情を感じられるし、そっとしておいた方が良さそうだ。



『そういえば今の俺達って翼が二つ揃っているんだな』

『翼が二つ? あっ、本当だ』



 僕が目覚めたばかりのときは確か左翼だけしかなかった。

 でも今は何故か左翼だけでなく、右翼も背中から生えていた。



『もしかして、バルグが僕の体と融合したから……?』

『そうかもな。となると、俺達は二人一緒のときだけ自由に空を飛べるって訳だ』

『二人一緒だからこそできることってことだね』



 二人一緒のときに自由に空を飛べる――これは良い情報だと思った。

 僕は目覚める前にバルグと手をつないで飛んだが、そのときは一瞬でも気を抜いた途端に息が合わなくなってバランスを崩すような不安定な飛行だった。

 でも、もし一つの体で二つの翼を使えるのならば、難易度はぐっと下がりそうだね。

 

 しばらくすると、ジルとフィナがやってきた。



「あっ、レンさん! バルグさん、どこ行っちゃったんスか?」

「バルグは僕の体の中に引きこもっちゃったよ」

「えー!? バルグさんが目を覚ましたら戦い方を教わろうと思ってたんスけど……レンさん、なんとかバルグさんを出すことできないッスか?」



 ジルは真剣な表情で僕を見つめてくる。

 ジルはどうやら熱血タイプのようだ。

 僕はちょっとそういうタイプは苦手なので対応に困るんだよね。



『バルグ、ジルの相手してあげたら?』

『嫌だ。レンが相手すればいいだろ?』

『僕、ああいうタイプ苦手なんだよね……バルグなら結構気が合いそうじゃない?』

『そんなことないさ。むしろ適当にあしらっておけばいいから楽だぞ』



 楽って言い方はないと思うんだけど……

 それに楽と思うなら尚更相手してあげてもいいのに。

 でもバルグは全く出てくる気配がないんだよね。

 困ったな……



「ごめんね、ジル。どうやらバルグは今すぐには外に出られないらしいんだ」

「そうッスか……でも代わりにレンさんが教えてくれるんスよね!?」

「えっ!? それはどうかな。ハハハ……」



 竜の戦い方なんて僕は知らないし、教えようがないですけど……。

 ジルの対応に困っていると、フィナが口を開く。



「レンとバルグ。本当に一人になれるのね」

「フィナ、旅してるとき事実を言えなくてごめん」

「いえ、その事は気にしてないわ。バルグが話してくれたし。それに、もし言ってくれても信じられなかったでしょうから」



 まあ、たしかにそうだよね……

 もし誰かが、自分の中に竜がいるなんて急に言い始めたら、何言ってんだコイツと思うだろう。



「今は起きたばかりのレンより倍以上に強いオーラを感じるし、本当にバルグと一体化していることが分かるわ」

「オーラとしても一体化しているの?」

「ええ。事情を知らなかったらレンとバルグの二人がいるなんて分からないと思うわ。完全に強力なオーラを持った一人の竜人族がいるようにしか感じないもの」



 僕とバルグが一体化すると、オーラも一体化する……

 まさに二人で一人になった状態ということか。



「レン、少し落ち着いたらジールダースさんに会いにいくといいわよ」

「そうだね。双竜の奇跡をおこしてくれたみたいだし、お礼を言っておかないといけないね」



 こうして僕は新たな仲間達を連れて、地竜の長であるジールダースの所へ行くことになった。




 僕はジールダースの所に着いた。

 ジールダースはジルとは比較にならないほど巨大で威厳があって、正直びっくりした。

 竜って近くで見るとこんなに迫力あるんだな。

 と、とにかく話しかけないとなぁ。



「ど、どうも……レンと申します……」

「そう緊張しなくてもよい。我はジールダースと申す。汝がバルグの相棒なのだな?」

「多分……そうだと思います……」

「そうか。バルグの決死の行動は無事叶ったのだな。安心したぞ」



 ジールダースは見た目同様に言葉が少しかたい印象を受けるが、思ったよりは気さくなようだった。



「汝達には感謝しておる」

「感謝……ですか?」

「そうだ。この目で双竜の奇跡なんて生まれて初めて見せてもらったんだからな」

「でもそれはジールダースさんの助力があったからで……」

「いや、我はほとんど傍観していたに過ぎんよ。ほとんどバルグがやっていたようなものだ」



 確かに双竜の奇跡を起こすために必要なものをバルグがかき集めた上に、儀式の代償もバルグがほとんど捧げたと聞く。

 バルグ、本当に頑張ったんだな……



「特に不思議だったのは、レンよりもバルグの方だな」

「どういうことですか?」

「バルグは儀式中に大量出血してしまって一度は死んだのだ。だが、突如強烈な光につつまれ、気づいたときにはバルグの体が竜人族の体へと変化し、命がまた宿ったのだ」



 バルグはかなり無茶をしたとは聞いていた。

 でも死んでいたとまでは聞いていないんですけど!?



『本当に無茶しすぎだよな、バルグ』

『そうか? 確かに俺も命まで犠牲にするとは思わなかったな。でも結果が良かったんだからそれでいいじゃないか、ガハハ!』



 後先考えない感じがバルグらしいと言えばそうなんだけど、やっぱり心配になる。



「汝とバルグが一つに融合できるというのも、同じ双竜の奇跡で得た体だからなのかもしれんな。全く、奇跡っていうのは常識では考えられないことを起こすんだとつくづく思わされるわい」

「確かに、本当に起こったこととは思えないですね……」



 肉体を失った僕と、死ぬ運命にあったバルグが、ともに転生を果たし、これからも生きていけるという事実は奇跡としか思えない。

 そんなことが起こり得るなんて誰が想像できるだろうか?

 奇跡……か。でもこの奇跡があるのもバルグの決死の行動があったからであって、バルグの執念が形になったというべきかもしれない。

 バルグはただの面倒嫌いの竜じゃないんだなと思いなおした。



『誰が面倒嫌いの竜だって?』

『えっ? 何も思ってないけど?』

『いや、絶対そう思っただろ? 俺には分かるぞ。それに、俺は今はレンと同じ竜人族であって、天竜じゃないからな』



 今までははっきりと思いを伝えた内容だけがバルグに伝わっていた。

 だけど今は何故か、なんとなく考えている内容まで伝わるようになってしまったようだ。

 非常に厄介である。

 というか、こうやって今考えていることもバルグに筒抜けということなんじゃ……?



『ああ、そうだな』



 やっぱり!

 うわっ……面倒臭いすぎるよね、これ。

 コボルド時代とは違って、今はバルグを体から追い出せそうだし、早いところ追い出した方がいいんじゃ……



『レン、そんなこと絶対に許さないからな。意地でも居ついてやる!』



 って、何でそんな強気なんだよ?

 ふふ、じゃあそんな反抗的な態度をとるなら、今すぐ……



『いや、調子のりすぎました。すんませんっした!』



 急に今度は謝り始めたよ……



『でもさ、本当に僕の思考の隅々まで分かっちゃうと悪口とかも隠せなくなっちゃうし、居心地悪いんじゃない?』

『別に俺は構わないさ。変に隠し事されるよりかはずっといい。それにもし嫌になったら体を分離すればいい……そうだろ?』



 まあ、確かにその通りではあるんだけど。

 この融合状態は強制されたものじゃないから、無理して続ける必要はないみたいだし。



『お互いに隠し事はなし、そういうこと?』

『ああ。別に今までだってそうだったんだから、それ位どうってことないだろ?』



 どうってことないとは言い切れないんだけど……

 まあ、もう少しだけこの状態を続けてみるとするか。


 ジールダースとの会話を終えた僕は仲間達と話してみる。



「で、レンレンはこれからどうするの~?」



 これからか……

 確かに考えてなかったな……


 僕が異世界に来てから目指してきた事といえば、バルグから離れるために赤い宝玉を集めることだった。

 でも、もう赤い宝玉の呪縛からは解かれたし、バルグと離れる必要もなくなった。

 さて、何をするべきか……



「レン、私からお願いがあるの」

「どうしたの、フィナ?」

「実はね、コボルドのレンの体を持った人がいるんだけど、そいつを倒してほしいの」

「え、どうして?」



 確かにかつての自分の姿をしたコボルドが何か変なことをしているのなら、気分が悪いだろう。

 でも、倒さないといけないとフィナがお願いするほどのものなのか?

 決して許したくはない存在ではあるが、だからといって戦わなければいけない理由があるのだろうか?

 そう僕は疑問に思うのだ。



「コボルドのレンの体を持った人はブローダンって名乗っていたわ。そのブローダンがコボルドの長になってからは周囲の魔物達がおかしくなっているのよ」

「おかしくなるってどういうこと?」

「えっとね……例えば、ランドリザードが他種族を問答無用で襲うようになっていたり、闇のオーラを放っていたりするの」



 ランドリザードが他種族を問答無用で襲うだって!?

 リ・ザーダ村の荒くれ者の仕業だろうか?



「それってリ・ザーダ村の荒くれ者連中の仕業だよね、きっと。だって他の村のランドリザードはかなり友好的で話を聞いてくれそうな人達ばかりだったからさ」

「そうなの? でも、私はそうは思えないな……だって私を襲ってくる、あのランドリザードの多さは、一つの村の人数にしては多すぎだと思うもの……」



 一つの村より多いってことは、他の村のランドリザードも他種族を襲っているということか……

 普通そんなことは考えられないし、ブローダンとやらの影響はあるんだろうな。



「でも、ぶろーだんってたった結局一人のコボルドに過ぎないんでしょ~? なら、本当に周囲の魔物に影響を与える力ってあるのかな~?」

「いえ、ブローダンはただのコボルドじゃない……悪魔よ」

「あ……あくまぁ~!?」

「ええ。悪魔は人の心を操って悪の道に染めることを得意とするらしいわ。多分その人の心を操る術を使って、周りの魔物をコントロールしてると思うの」



 周りにいる者の心を操る……か。

 非常に厄介だな。

 

 ん、待てよ? 

 ブローダンがいるのは恐らくコーボネルド。

 で、その周りっていうと、僕が関わった村の人達に影響がでるということじゃないか!?

 そして心配なのは……



「フィナ、リザースはどうなったの?」



 そう、リザースのことだ。

 一度旅をした仲間。

 ちょっと変な所はあったが、根は真面目で良いヤツだった。

 


「そのことなんだけどね、実は……」



 フィナは一呼吸おいてから話し始めた。



 フィナの話によれば、リザースはブローダンに洗脳されてしまったということだった。

 そしてそれはリザースに限った事ではなく、大陸の西に生息する魔物のほとんどがそうなっているらしい。

 実に恐ろしい話だなぁ。



「しかも、大陸の西側を征服したばかりか、東側にも侵攻してきているってこと?」

「そうなるわね。もしかしたら、この地竜の洞窟にまで侵攻してくるのも時間の問題かも……」



 戦いは避けられそうにないということか。

 ただ、恐らく相手は洗脳された人達。

 その人達自身には罪はない。

 なんとか洗脳から解放してあげたいところだ。



「それは厄介だね。その人達をなんとか洗脳から解放してあげる方法があるといいんだけど……」

「洗脳から解放ね……洗脳されている原因を取り除いてあげれば何とかなるかもしれないわ」



 洗脳されている原因を取り除くか……

 難しそうだな。



『そんな難しいことじゃないと思うぞ』

『どうしてそう言えるの?』

『俺が聞いた話によれば、村を襲撃してきたランドリザードにはみんな腕輪がついているということだった』

『つまり、その腕輪が洗脳の原因ということ?』

『恐らくな。実際、河童がその腕輪を付けた瞬間に豹変して同族を襲い始めたって話も聞いたからな』



 腕輪か……

 付けた途端に豹変するって相当強力なものなんだと感じられる。

 そんなものが存在するなんて恐ろしい。



『一回、生命の源泉フロセアに行った方がいいかもな』

『どうしてそうなるの?』

『フロセアは比較的コーボネルドから遠くて結界が張られているから防衛にうってつけなんだ。そこを拠点にすれば比較的安全に情報を得られるだろう』

『ここにいたらダメなの?』

『確かにここにいれば、強い地竜達と戦えて心強くはあるんだが、ここは洞窟だ。出入口を塞がれたら打つ手がなくなってしまう』



 確かにバルグの言う事は一理ある。

 それに悩んでいる暇もなく、他に案もなかったので、僕は生命の源泉フロセアを目指すことにした。

 フロセアを拠点にして事態を改善しつつ、打倒ブローダンを目標に頑張ろうかな。


 僕は自分の考えをみんなに話すと、



「分かった~じゃあ早速しゅっぱ~つ!」

「フロセアかぁ、綺麗な所なんでしょうね……」

「故郷、守ってみせる」

「腕がなるッス!」



 みんなついてくる気満々のようだった。



『なんでジルまでついてくるんだ?』

『ああ、確かにジルって深紅の宝石の入手についていっただけなんだよね?』

『そうだ。だからこれからの旅についてくる必要はない。それに地竜の洞窟の防衛も必要だろうから、ジルはここに残るべきだと俺は思うんだが』



 確かにそうだよね。

 バルグの話を聞いた僕はジルにここに残ることを勧めようとしたのだが……



「レン、ジルを一緒に旅の仲間として同行させてもらえないだろうか?」



 奥からジールダースが現れ、そしてそう頼み込んできたのだ。

 相変わらず怖いなぁ。



「でもそれだと、ここの守りが薄くなるんじゃ……」

「そんな心配は無用だ。何といったって我がついておるのだ。汝はそんなことを心配しなくてよい」

「そ、そうですか……」

「それに、ジルはずっとこの洞窟で過ごしてきたが、火山の旅を経て成長し、外への興味を持ち始めている。これは好機だと思うのだ」



 その後もジールダースの話が長々と続き、僕は心が折れて、ついにジルの同行を受け入れることになった。



「そうか、受け入れてくれるか。ありがたいことだ。ジル、レンの足を引っ張らないように精進するんだぞ!」

「そんなの分かってる! レンさん、精一杯頑張るッス! よろしく頼むッス!」



 面倒だけど、こんなに仲間がいたら一人位増えても変わらないだろう。

 何よりジールダースには逆らう気も起きない。

 逆らう位だったらジルと仲良くやっていけるように努力する方が数倍マシだよね。


 こうして、僕達は地竜の洞窟から旅立つことになった。

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