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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
35/98

33.悪夢と現実の違い

「あ~バルきゅん起きたんだ~心配したよ~」

「目、覚まさないと思った。良かった」



 フィナと話していると、エルンとエナが部屋の中に入ってきた。



「バルきゅんったらもう二日間ずぅっと眠り続けてるんだもん! 心配したよ~!」



 どうやら俺はだいぶ長い間眠り続けていたらしい。

 というか、二日間って眠りすぎだろ、俺。



「けっこううなされていたみたいだけど、一体どんな夢をみたのかよかったら教えてくれない?」

「ああ、実はな―――」



 俺は夢で見た一部始終の出来事をみんなに話した。



「という事は、今ってその夢よりもだいぶ厳しい状況におかれているわね……時間がないわ」

「どういうことだ?」

「だってその夢よりも必要なものを集めるのに二日も遅れてしまっているもの……」



 俺は二日間眠り続けていたということだった。

 そして俺が気を失ったのは、レンが体を持たなくなって四日目の午前中である。

 ということは、今は五日目か六日目ってことか?



「俺が気を失ったのを四日目の午前中だとすると、今は何日目になる?」

「五日目の夜。あと二日しかない」



 あと二日。

 その期間で恐らく精霊の涙、深紅の宝石を集め、ジールダースと戦った後に双竜の奇跡を起こさないといけないのだろう。

 普通に考えれば絶望的なこの状況。

 しかし、俺にとっては取り返しのつかない状況からやり直す機会が与えられたようなものだ。

 絶対にくじけたりするものか。



「時間がないが、あきらめない。とりあえず、精霊の涙を集めないとな」

「あ、精霊の涙ならもう私が取ってきたわよ」



 フィナが俺に小さな瓶を渡す。

 夢の中で見た小瓶と全く同じで、中には液体が入っている。



「ありがとう、フィナ。そうすると、次は地竜の洞窟に行かないといけないな。今すぐ行こう」



 俺がそう言うと、フィナ達はうなづき、この部屋を出発した。





 外に出ると、空中にあちこち光が浮かんでいて幻想的な光景が広がっていた。



「バルグは気を失っていて初めて見るかもしれないけど、ここが私の故郷、妖精の里フィーティアよ!」



 里全体がぼやっとした光につつまれていて、思わず見とれてしまいそうだ。

 だが、そんな余裕は俺にはない。

 町を軽く眺めた後、俺達はすぐに魔光の窟へと入っていく。


 魔光の窟に入ると、いきなり例の広い空間に出た。

 しかし、その空間の中央にあったはずの巨大な結晶がなくなっている。



「結晶がなくなっているけど、どういうことだ?」

「あの結晶って実は妖精達が防犯の為に設置していたものだったらしいわ。ちょっと危ないから私が里から出発するまではその結晶をどかしておいてもらうことにしたの」



 また、続けて聞いたフィナの話によれば、魔光の窟にある石をあちこちから抜き取って、それを魔法で合成することであの巨大な虹色の結晶を生み出したらしい。

 俺達が魔光の窟を通るときにあちこち不自然に石がなくなっている所を見つけていたが、その石がなくなっていた原因は妖精達にあったようだ。


 妖精達を若干恨む気持ちもあるのだが、ある意味貴重な経験ができたとも言えるので、気にしないことにした。

 それよりも気になるのは、俺が気を失ってから経験したあのリアルすぎる夢のことである。

 あまりに具体的で、実際に未来にそうなってもおかしくない状況が夢の中にはあった。

 俺が誰かに話しかけると相手は自然と言葉を返してくれるし、夢にいたとは思えなかった。

 一体どういうことなのか疑問に思った俺は巨大な結晶の作用についてフィナに聞いてみると、



「あの結晶の被害にあったのって、実はバルグが初めてらしいの。だから、あの結晶がどんな影響を及ぼすのかはよく分かっていないわ」

「そうか、でも不思議だったな。まるで未来に本当にいるみたいだった」

「不思議よね。小さな結晶の集まりでは幻覚を見せるだけのはず。でももしかすると、あの虹色の結晶には一つの未来を見せるような特殊な力を秘めているのかもね」



 どうやらフィナもよく分かっていないみたいだった。

 まあ、あの夢はすごい詳細で不思議なものだったけれど、今俺達が過ごしている現実とは既に違うものになっている。

 ただの夢にすぎないのだから、あまり気にする必要はないのかもしれない。



 俺達は一時間ほど歩くと特に問題なく魔光の窟から出ることができた。



「やっぱりここ通るの疲れるな~」

「私、あまりここを通りたくない」



 俺も正直エルンやエナと同感である。

 変わり映えのしない同じ光景がずっと続いて、進んでいるかも分からない状態が一時間も続くのだ。

 嫌になるのも当然だろう。



「さあ、気を取り直して、地竜の洞窟へ向かうぞ」



 俺は変身魔法を解き、エルン達をのせて大空へとはばたく。





 地竜の洞窟付近に到着する頃にはもう日が昇り始めていた。


 六日目――あと残された時間は最長で二日だ。

 悪夢の未来ではもうこの日のうちに双竜の奇跡を起こそうとしていた。

 そう考えると、俺達がいかに遅れているか分かる。

 でも、決して間に合わない訳ではない。

 間に合うことを信じて、とにかく前に進むのだ。


 地竜の洞窟の入り口に着くと、俺は変身魔法をかけずに竜の姿のまま洞窟の中へと入っていく。

 地竜と会うためにわざわざ化ける必要もないし、地竜の洞窟には地竜が暮らしていけるほどの広い空間があるから、俺が竜の姿のままでいても狭さを感じることなく過ごせるのだ。


 

 洞窟の中に入った俺達は、特に迷う事もなくジールダースの所にたどりついた。


 

「ジールダースいるかー? 言われたものを集めて戻ってきたぞー!」

「バルグか。思ったよりも早く集めてきたな」



 そう言う声とともに、奥から巨大な竜が現れる。



「ひえ~でっかいよぉ! バルきゅんよりも全然大きいよぉ~」

「び……びっくりした」

「これが地竜なのね……すごい迫力だわ」



 エルンたちが口々に言う。



「いや、早くなんかない。あと二日で双竜の奇跡を終わらせないと間に合わないから急いで準備を進ませてくれないか?」

「あと二日だと……ずいぶん急な話だな。とにかくこれから必要なことを話すぞ」



 ジールダースの話をまとめると今後の流れはこうだ。

・地竜の洞窟の奥から行ける火山の山頂付近にある深紅の宝石をとりにいく

・覚悟を示すためにジールダースと一騎打ちをする

・双竜の奇跡の為に少し準備が必要である



 双竜の奇跡の準備というと、夢の通りなら、魔法陣を完成させることだな。

 そしてもう一つ必要なことがある。



「”代償”が必要なんだろ?」


  

 双竜の奇跡を起こすための”代償”を準備することが必要である。


 

「何故それが分かった? 確かにその通りだが」



 どうやらあの夢は時期がずれるものの、未来に起きることとしてはだいぶ正確なようだった。

 となると、もし期限内に双竜の奇跡を起こそうとしても、夢と同じ結末になってしまう。

 それは絶対に避けなければならない。

 だが、どうしたらいいのか?



「悩んでいても仕方なかろう。とにかくできる事をすれば良い。その中で答えが見つかるかもしれんぞ」

「確かにそうかもな……ありがとう、ジールダース」

「礼には及ばない。いや、代わりといっては何だが、我の息子、ジルをお前達と同行させてはもらえないだろうか?」

「ジル? どうしてそんなことを?」

「ジルはまだ外に出た経験がない。故に大きな成長につながると思うし、いい経験を積ませたいのだ。もちろん、ジルは我と同じく地竜だから戦闘で足を引っ張ることはないだろう。どうだ、受け入れてくれるか?」



 やはり夢の中で見たジルという地竜は実在したようだ。

 まあ別に断る理由はないので素直に受け入れることにした。



「バルグさん。オレ、ジルって言うッス。よろしくお願いするッス!」

「ああ、よろしくな」



 双竜の奇跡について不安が残るものの、とりあえず今できることをするべきだろう。

 ジルを加え、俺達は深紅の宝石を入手するために火山へと向かう。

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