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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
32/98

30.バルグとフィナ

 竜の姿で飛んだ俺はそれほど時間かからずにミ・ザーカ村にたどり着いた。

 村から少し離れた所で着陸し、ランドリザードへの変身魔法を自分にかけてから村に入っていった。


 ミ・ザーカ村ではアクアリザード達が俺達を歓迎してくれた。

 村長に会って、借り物を返してほしいということを伝えても、快く返してくれた。

 まあ水の汚染が止まったんだからもう必要ないもんな。


 ミ・ザーカ村でアクアリザード達と少し話をしてから、かーぱぁ村へと向かった。


 ミ・ザーカ村の時と同様にランドリザードに変身してから村の中へ入っていく。

 だが俺がかーぱぁ村に入った途端、村の河童達は慌てて家の中に入ってしまった。

 まるで俺から逃げているかのようだった。


 村から河童の姿が見えなくなり、物音一つせずに静まり返っている。

 以前訪れたときはそれなりに賑わっていたので、今の状況は異常に見える。

 一体何が……?


 ボーっとしていた俺のそばに誰かが近づいてくる。



「……バルファ兄ちゃん……だよね?」



 恐る恐る聞いてくる声。

 そこには俺が出会った最初の河童、かぱながいた。



「もしかして、かぱなか? 久しぶりだな! 会えてうれしいぞ!」

「バルファ兄ちゃん……よかった、変わってないんだね! やっぱりバルファ兄ちゃんはあいつらとは違うんだ!」



 俺が声をかけた途端、かぱなは嬉しそうな笑顔になった。



「あいつらとは違う……? かぱな、この村で何かあったのか?」

「実はね……」



 かぱなによれば、


・三人のランドリザードがかーぱぁ村に入ってきた

・ランドリザードは村に入ってくると、怪しい腕輪をつけるように強制してきた

・村長は拒否したのだが、ランドリザードによって三人の河童は無理やり腕輪をつけられた

・腕輪をつけられた河童が急に村を襲い始めた

・村は混乱に陥ったが、なんとかランドリザードや腕輪をつけられた河童を追い払うことができた


 ということだった



「それはひどいな……」



 確かにそんなことがあったらランドリザードを見ただけで恐れることも無理はない。

 それよりも気になるのは、腕輪の存在である。

 腕輪は恐らく洗脳するための道具なんだろうが、つけられた瞬間に洗脳が完了してしまうとはよほど強力な道具なんだろう。

 かなり厄介な存在である。



「けっこう大変な感じだね~このままじゃまともに情報収集もできなさそうだけど、どうする~?」

「そうだな……」



 かーぱぁ村に来たのは情報収集の為なんだが、この状況では話をまともに聞くこともできなさそうだ。

 他の村で情報収集をした方がいいだろう。

 ただ、かーぱぁ村に来た理由は他にもある。



「かぱな、これを村長さんに渡してくれないか? 協力してくれてありがとうって言ってたって伝えてほしい」



 俺はかぱなにあるものを渡す。



「バルファ兄ちゃん、これって……禊の聖皿?」

「ああ、本当は俺が直接渡したかったが、それだと村長さんに怯えさせちゃうからな……」

「そっか、分かった。わたしが責任もって届けるよ!」



 借り物を渡した俺は、かぱなに見送られながら、かーぱぁ村を後にする。



「なんかせっかく来たのに何も得られなくて残念だな~」

「これは仕方ない事。気を取り直して次に向かうべき」



 俺はかーぱぁ村を襲ったランドリザードについて考える。

 ランドリザードがかーぱぁ村を襲うというのはかなり珍しいことだと思う。


 ランドリザードがこの大陸の東側までやってくることが少ない。

 もしランドリザードが東側までやってきていたら、アクアリザードとの縄張り争いが頻発しているはずだが、そんな話は聞かない。

 ランドリザードの姿になっている俺を見たミ・ザーカ村のアクアリザード達にそんな敵意を感じなかったことからも、最近ランドリザードとの争い自体ないのではないだろうか。

 

 それに大陸の西側から東側に行くには関門があるのだ。 

 ウルフと戦った森である。


 あの森にはウルフが生息していて、並大抵の者では生き残れない。

 また、実力があったとしても、方向感覚を失ってしまって森から出られなくなる者も珍しくない。

 無事に森を抜けることは非常に困難なのだ。



「ランドリザードか……なんでこんな所にいるんだろうな?」

「どうなんだろうね~?」

「不思議ね。何か原因があるはず」



 まあ、あれこれ悩んでいても仕方ないだろう。

 今は情報収集ができそうな村を探さないといけないな。


 今まで村を訪れるときにはランドリザードに変身していた。

 だが、ランドリザードが何か悪さしているようなので、俺がランドリザードの姿でいるのはまずい気がする。

 他の種族に化けるとするか……


 色々と悩みは尽きない俺だったが、かーぱぁ村から西の方向を進むことにした。




 西に向かって飛んでいた俺は一つの村を発見する。

 俺は発見した村のちょっと離れた所で着陸し、アクアリザードに変身した。



「バルきゅん、せっかくなら賢猿族に化けてくれてもいいんだよ~?」

「いや、エルフに化けるべき」

「賢猿族の方が頭良さそうでバルきゅんに似合うよ~」

「エルフの方が神秘的でバルグに合う」


 なんか変な所で言い争いをしている二人を置いて、俺は上空から見えた村へと向かう。




 村には巨大な魔物がたくさんいた。

 どうやらこの村はオーガの村らしい。

 村について一人の村人に話を聞くことにした。



「お、この村に客なんて珍しいな。どうしたんだい?」

「ちょっと情報収集をしにきたんだ。情報を集まりそうな場所って分かるか?」

「それならあそこにある集会場に行くといいぞ」

「ありがとう、そこに向かってみる」

「そうか、お前さんもうまくやれよ」



 ニヤニヤした表情で村人の男はそう言った。


 こいつ何なんだ?

 変にニヤニヤしていて少し気味の悪さを感じた。

 だが、周りを見渡すと、他のオーガの男も俺達の方をみてニヤニヤしていたり、ぼーっと見つめている様子が見えた。

 これってつまり……



「いえ~い、私達注目されちゃってるぅ~?」

「なんか、恥ずかしい……」



 俺が女たらしに見えてるってことなのか!?


 どうやら周りのオーガはエルンとエナに夢中になっているらしい。


 確かにエナはかわいらしい美少女と言っても過言ではないと思う。

 そして、その外見とは裏腹にキリっとしたクールな表情をしているので、そのギャップが一層魅力を引き立てている気もする。

 エルンは見た目だけなら、美少年、美少女とも表現できる中性的な顔立ちしているし、事情を知らない人がみたらかわいい女だと思うかもしれない。


 だが、エナは結構ぶっきらぼうで冷たい所があるし、エルンはウザいし、女じゃないしで、あんまり惚れるとかそういう感情にはなれない。

 まあ、そんな所も個性だし、仲間として一緒にいる分には楽しくて良いとは思っているんだけどな。 


 

「ほら、さっさと行くぞ」



 嬉しそうなエルンと恥ずかしそうなエナを連れて俺は集会場へと向かった。





 集会場の中は、オーガが100人入っても余裕がありそうな空間が広がっていた。

 なんか、わらの家って小さなイメージがあったから、こんな広いと少し違和感がある。


 

「じゃあ早速情報収集を始めるか」



 俺達はそれぞれ分かれて情報収集を行った。

 俺は比較的スムーズに情報を聞き出すことができていたのだが、エルンとエナはもてはやされているのか、なかなか話を聞き出せずにいるようだった。



「みんなボクの魅力にむ・ちゅ・う~?」

「エルンちゃん最高ー!!」



 あのエルンがますます手がつけられなくなっている。

 回収するのが面倒そうで、嫌になる。



「ねえ、何が好きなの? なんでも買ってあげちゃうよー?」

「そんなのいい。それより情報ほしい」

「情報なんてそんなことよりも、欲しい物言ってごらんよ?」



 なんかエナは怪しい男に絡まれているようだ。

 やばそうだったらすぐに回収しないといけなさそうだ。



「お前さんも大変だね? で、どっちが本命なんだい?」



 俺が情報を聞いていた男からもそう言われてしまう始末だ。



『なんか調子狂うな……』



 やりたいことがこんな形でうまくいかないなんて今までなかったので正直疲れる。

 俺一人で情報収集していた方が良かったなとつくづく思うのだった。  

 

 

 そんなあるとき、急にエナが慌てて俺の方に近寄ってくる。

 なんか相手の男に変なこと言われたのだろうか?



「バル……ファ、大変! 妖精がランドリザードに襲われているのが見えた!」



 妖精が襲われているのが見えた?

 恐らくエナは未来を見る力で、未来の一部分を見たのだろう。



「妖精とランドリザード?ああ、そういやぁ、このオーズド村の南の方で妖精を見かけたって話を聞いたことがあるな。ランドリザードもその辺にいて、何かを探している様子だってよ」



 俺と話していたオーガの男がそう言った。

 エナが見た未来はどれ位未来か分からないが、急ぐ必要がありそうだ。



「ありがとな、おっさん!」



 そう言って俺は集会場から急いで飛び出し、オーズド村の南の方向へと駆け出す。

 エナも俺に続く。



「ま、待ってよぉ~」



 浮かれていたエルンは慌てて俺達を追いかける。





 オーズド村の南の方向に進んでいると、遠目にランドリザードが見えてきた。



「そろそろ見つかる危険があるから慎重に行動するか」



 俺は自分とエルンとエナに隠密魔法をかけ、進むペースをおとして慎重に行動を始めた。


 オーズド村の南のこの地域は山がちで、岩など死角になるような障害物が多い。

 恐らく隠密魔法をかけなくてもランドリザードに見つかることなく移動できると思う。

 だが、万が一にも見つかると厄介なことになるため、保険として隠密魔法をかけているのだ。



「予想以上にランドリザードの数が多いな……」



 思わず俺はそうつぶやく。


 ざっと見た限り、十数人はいるだろう。

 かーぱぁ村を襲ったランドリザードは三人と聞いていたので、そのときはランドリザードの荒くれ者が村を襲っただけだと思っていた。

 だが、こんなに多くのランドリザードが東側に侵攻しているとなると話は別だ。


 おそらく種族として、ランドリザードは東側に侵攻しているのだろう。

 だが、一体何のために侵攻しているのか分からない。

 それに、今見えるランドリザード達は何かおかしい。

 なんか黒いオーラをまとっていて、近寄りがたいのだ。

 ランドリザード達に何かあったのだろうか……?



「れん……レンなの!?」



 急に聞こえてきた声に俺達は驚く。



「だ、誰かいるのぉ~?」

「わ、私よ、フィナよ。隠密魔法で姿は見えないけど、オーラでレンって分かるもの!」



 どうやら声を出しているのはフィナのようだ。

 聞き覚えのある声だし、間違いないだろう。


 ちなみに隠密魔法は、同じ術者がかけた人の間では見えるが、そうでない場合は全く見えなくなってしまう。

 俺、エルン、エナは俺の隠密魔法を受けているので、互いの姿は見える。

 だが、フィナにはフィナの隠密魔法がかかっているので、フィナからは俺達の姿が見えないし、俺達もフィナの姿は見えないのだ。



「エルン、エナ、相手は妖精だ。敵じゃない。むしろ助ける相手だ」

「そうなんだ~じゃあ後はこっそりオーズド村にでも向かえば良さそうだね~」

「そうね、無駄な戦いは避けたいし、そうしましょう」



 俺達の方針は決まった。



「フィナもそれでいいか? ここじゃまともに話せそうにないからな」

「ええ、分かったわ」



 隠密魔法がかかった俺達はランドリザードに気づかれることなく、オーズド村へと向かうことができた。



 俺達はオーズド村に向かって進んでいる。



「エルン、エナ、申し訳ないんだが、村につくまでは話をしないでくれ」

「了解だよ~」

「分かった」



 エルンとエナは俺のことはレンではなくバルグだと知っている。

 そしてエルンやエナが話すと、俺のことをバルグと呼んだりして、俺がレンじゃないことがばれてしまう可能性が高い。

 そんなことでフィナが冷静さを失って、立ち往生するなんてことは避けたいのだ。

 せめて、事実を伝えるのは村に着いて落ち着いてからにしたい。



「レン、どうしてこんな所にいるの?どうして声をかけてくれなかったの?」



 こんな所にいる理由はレンを助けるため、声をかけなかった理由はいる場所が分からない、もしくは余裕がないからである。

 だが、そんなことを言っても余計に混乱させるだけだと分かるので、レンが答えそうなことを言おう。

 あと、できればレンのような話し方をするべきか。



「どうしてかって? コーボネルドから脱出して、妖狼族から逃げる為だよ。東の方は妖狼族はやってこないからね」



 確かこんな感じの口調だったよな?

 我ながらなかなかの再現だと思う。



「そっか、コーボネルドから抜け出せたんだね。良かった。あんなやつがレンじゃないって分かって本当に良かった……」



 フィナは泣きそうな声でそう言った。


 あんなやつか……おそらくレンの体を持った悪魔のことだろう。

 きっとひどいことをしているに違いない。

 そう考えると、ランドリザードが東側に侵攻しているのってもしかして、その悪魔が関わっているんじゃないかと思えてきた。

 実に厄介な事になったな……


 でも今はレンを助けることが優先だ。

 悪魔が何してようと俺達に被害がなければ後回しでいいだろう。

 本当は対策をうつべきなんだろうが、相手が相手だから分が悪い。

 まともに悪魔と戦おうとするならば、しっかりとした準備が必要なのである。

 俺にはそんな時間はないのだ。


 しばらく会話もなく、俺達は黙々とオーズド村へと向かっていく。

 そしてついにオーズド村へと到着した。


 オーズド村に到着した俺達は隠密魔法を解く。

 すると、妖精族、賢猿族、エルフの他に、変身した俺、アクアリザードの姿が現れる。



「レン、なんでアクアリザードの姿なんてしているの?」

「それについては、宿屋についたら話すよ」



 相変わらずオーガから注視されていて落ち着かないな。

 とりあえず宿屋の場所を村人のオーガに聞くことにする。



「おお、アンタか。今度は可愛い子をもう一人連れてやってくるなんてやるねえ」

「ちょっと事情があってな、それより宿屋ってどこにあるか分かるか?」

「ん?そうかそうか、それならあそこに行くといい。楽しんでこいよ!」



 こいつ、変な想像しているな……と思いつつ、



「あ、そうかありがとな」



 そうお礼だけ言って、さっさと宿屋の方へと向かう。




 宿屋に着いた俺は、自らの失敗に気が付く。

 ―――お金を全く持っていないのだ。


 宿屋の料金を払うときになって俺はその事実に気が付き硬直する。



「レン、お金使っちゃったの? 仕方ないから私が払うわね」



 フィナがそう言って宿代を払ってくれた。


 こうしてなんとか落ち着く場所を確保できた俺達は、わらのベッドに座って少しのんびりしていた。

 そして、俺が話の口火を切る。 



「フィナ、だましてすまない。俺はレンじゃない、バルグっていうんだ」

「え、どういうこと……? でもレンのオーラをあなたから感じるのに……」

「なんて説明したものかな? フィナがレンのオーラだと思っていたものは、実は俺のオーラだったと言えば分かるか?」

「え? なんでレンのオーラがあなたのオーラなの?」

「そうだな、レンに火の力を与えていたのが俺で、俺はレンの体の中に憑依していた存在なんだ。だからフィナが感じ取った力のオーラは俺のものだという訳さ」



 フィナはよく分からないという顔をしていたので、俺はレンとの出会いから今まで全部話すことにした。

 フィナから受ける数多くの質問に一つ一つ答えていくと、フィナは次第に納得して、落ち着きを取り戻していったようだった。



「つまり、バルグはレンを助ける為に行動しているのね?」

「そうだ。そのために今は精霊の涙を探している」

「精霊の涙ね……難しいかもしれないけど、でもなんとかなるかな」

「心当たりあるのか!?」

「ええ、当ったり前でしょ! 私は精霊を使役する妖精なんだから!」



 フィナは精霊の涙のことを知っている様子だった。



「そうか、それじゃあ今すぐにでも……」

「ごめん、私ずっとランドリザードから逃げてきたから疲れちゃった。一晩休ませてくれないかな? 時間がないのは分かってるけど、ちょっとこのまま出発するのは厳しいわ……」



 よく見ると、フィナは体がボロボロになっていて、少しやつれて見える。

 こんな状態のフィナでは場所が分かってもまともに案内できないだろうと思い、一晩休むことに決めた。


 それからは、俺の過去話についての質問などでしばらく談笑した後、明日に備えて眠ることになった。

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