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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
31/98

29.タイムリミット

 俺はエルンの近くから離れ、緑の物体のそばにいる。

 黒い物体や赤黒い物体が一緒の所はそれらが混在しているのだが、緑の物体の周囲には他の物体が見当たらない。

 同種を倒してしまうほどの強力な物体のようだ。


 そんな強力な物体に対して果たして足止めもまともにできるのか不安はあったが、やるしかないだろう。

 

 俺が緑の物体の近くに到着すると、不思議なことに緑の物体の動きが急に止まった。

 いったい何が起こっているんだろうか?

 すると……



「あ、あなたは、私を見逃してくれた方デスネ!?」

「ん? 何か声が聞こえたが誰だ?」

「あ、姿が変わって分からないデスヨネ? 私ですよ、ヘドドデスヨ!」



 どうやら目の前の緑の物体は、以前俺と戦ったヘドドらしい。

 でもヘドドは黒かったはずで、緑色じゃなかったはずなんだが……?



「ヘドドか! でもお前って黒くなかったか? 緑色じゃなかったと思うんだが?」

「実はデスネ……」



 ヘドドの話によると、


・ブロドーアに着くまでは俺と別れたときと同様、小さくて黒い状態だった

・ブロドーアに着くと汚染物質が体にまとわりつき始め、体が肥大化していった

・ヘドドは理性を失うまいと頑張った

・ヘドドは理性を失わずに成長を遂げ終わったことで、体に変化が起き、緑に変色した


 とのことだった。



「そうか、力を飲み込まれずに耐えきったんだな、すごいじゃないか!」

「いやぁ、それほどではないデスヨ。また同じ過ちを繰り返したくなかったダケデス」



 ヘドドは謙遜しているが、十分にすごいことだと思う。

 それに以前は言葉が棒読みのように聞こえたのに対し、今のヘドドは感情を持っているような言葉を話している。

 ヘドドは体だけでなく、内面や知性も大きく成長したんだろうと思えた。



「すごい成長したな、ヘドド。だが、ここにいると危ないぞ? 今俺達は黒い物体や赤黒い物体に襲われているから、ヘドドもその物体と一緒に攻撃をされてしまうかもしれないぞ?」

「心配には及ばないデスヨ。私の力はあなたも知っているはずデス。それより、罪滅ぼしじゃないデスガ、あなた達の町の防衛の役に立たせてもらえまセンカ?」

「え? 助けてくれるのは心強いが、それだとヘドドは同族を攻撃していることになるんじゃないか?」

「そうデスネ。でも、悪いのは私達デスシ、ここはきちんと罰を与えないといけないと思うんデス」



 この苦しい状況で助太刀してくれるヘドドは本当に助かる存在である。

 ヘドドも心から協力してくれるようなので、その思いを素直に受け取ることにしよう。



「そうか、それなら頼む。でも、同族を攻撃するのは心が痛むだろうし、無理しなくていいんだぞ?」

「ありがとうございマス。無理はしまセン。安心してくだサイ!」



 こうして俺はヘドドと別れた。


 緑の物体がヘドドだと判明し、協力を約束してくれた。

 ヘドドが間違えて攻撃されてしまうのはかわいそうなので、緑の物体は味方だから攻撃しないようにエルフの人達に急いで伝えまわった。

 

 エルフの人は、緑の物体が味方なんて言われて戸惑ってはいたが、敵がたくさんいる状況だからか、意外とあっさりと信用してくれた。

 三種類の物体を敵に回さなければいけないと思っていたが、実際の敵は二種類の物体だけで、その上、味方も増えたのだ。

 こんな心強いことはないだろう。


 ヘドドが助けることができるようになってからは戦いはずいぶんと好転した。

 俺達は黒い物体の抵抗物質を使って黒い物体を倒していると、ヘドドは残った赤黒い物体を倒してくれるのだ。

 そしてついに、ほとんどの黒い物体や赤黒い物体を駆除し終わると、残った黒い物体や赤黒い物体は撤退をし始めた。



「やった、私達、勝った……!?」


 

 戦いが終わり、エナはそう言って満面の笑みを浮かべる。。

 エナが喜びの声を上げると同時に、他のエルフの人も歓声をあげた。

 みんな笑顔で嬉しそうにはしゃいでいる。


 俺はそんな中、緑の物体、ヘドドに近づいた。



「ヘドド、お前が協力してくれたおかげで勝てたよ。ありがとう」

「いえ、大したことはしてないデスヨ。少しでもお役に立てたなら幸いデス。では、私も行きますネ」

「ああ、元気でな」



 そう言葉をかけ、ヘドドが去るのを見送った。


 俺達はなんとか生命の源泉フロセアをブロドーアの汚染から守り抜くことができた!

 そしてフロセアを救ったことで、俺やエルンにフロセアの町長からお招きがかかった。

 俺は生命の若葉に関する情報を得るチャンスだと思い、町長の住む所まで出向くことにした。



「で、どうしてエナは俺についてきているんだ?」

「ただあなたに恩返ししたいだけ」

「恩返しって……それならエルンにしないと意味ないんじゃないか? 俺はエナの腐食の進行を抑えていただけだし」

「そうかもしれない、でもそのエルンはあなたについていくみたいだから、私もあなたについていけば恩返しできる」

「まあ、それはそうかもしれないが……」



 確かにエルンは何故か俺についてきていて、俺についていくことはエルンと一緒に過ごすことにもつながるし、エナの言ってることも分かる。

 だが、正直俺にとってエナは足手まといになるんじゃないかと思っている。

 エナの体は強くなさそうだし、ちょっと強敵と戦うことになったら、すぐに致命傷を負ってしまうのではないかと心配になるのである。



「私の体は強くない。でも未来が分かるから危険は避けられる。だから足手まといにはならない」

「うーん……でもなぁ……」  

「あと5日……」

「うん?」

「今日を含めてあと5日で助けないと、もう助からないよ」



 5日?

 それってもしかして……



「5日って何の事だ?」

「バルグの持ってる白い宝玉にあるレンの魂が残っている時間……」



 おいおい、レンの事も分かるのかよと驚いた。

 しかし、重要なのはそこではない。

 エナはあと5日でレンの魂がなくなってしまうと言うのだ。

 

 確かにレンの魂をとどめておく器として白い宝玉は不十分なものなので、いつかは魂が拡散してしまうと俺も考えていた。

 しかし、あと5日で魂がなくなってしまうだと?

 それはつまり、レンの魂が何かに憑依してから7日しか持たないということである。

 そんな短いものだったのか?

 それにどうしてエナがレンの魂のことを知っていて、あと5日で魂がなくなると言えるんだ?



「エナ、どうしてあと5日でレンの魂がなくなってしまうって思うんだ?」

「それはね……今から5日後にレンの魂を復活させようとしたバルグが双竜の奇跡を起こすのに失敗した未来が見えたから……」



 おいおい、冗談じゃないぞ?

 失敗した未来が見えただって?

 洒落にならないじゃないか……

 でも、5日でレンの魂がなくなるって断言しているってことは、逆に言えば



「でも、今から4日後にレンの魂を復活させようとした俺は、双竜の奇跡を起こせているんだな?」



 そう。

 期限に間に合えば、双竜の奇跡に成功させることを意味すると捉えることができるのだ。

 しかし……



「ごめん。バルグが今から4日後に双竜の奇跡を起こした未来が見えてないから分からない……」

「なんだよ……それじゃあんまりじゃないか!?」

「不安にさせてごめん。でも私がいればきっとバルグは早く双竜の奇跡を起こせるはず。だから協力させて?」



 俺は迷いなく頷いた。

 エナが嘘を言ってるとは思わないし、協力してくれるというのだから拒む必要もない。

 

 俺はレンの復活に必ず成功するものと過信しすぎていたのかもしれない。

 双竜の奇跡は大昔の資料にあるだけで、ジールダースが言っていたように、近年の成功例はない。

 まあ、それは地竜と天竜の交流がなかったからだろうが、それにしても難しい儀式には変わりないだろう。

 だが、俺は双竜の奇跡に失敗する訳にはいかない。

 双竜の奇跡に失敗するということは、二度とレンに会えなくなることを意味するのだから……


 今後は一刻も無駄にできない。

 急ごう。



「エナ、時間が惜しい。一刻も早く町長の所に向かうぞ!」

「ええ」



 こうして俺とエナは町長のいる場所へと走り出す。



「どうしてそんなに急ぐの~!?待ってよ~」



 事情を知らないエルンは慌てて俺達を追いかける。



 俺達は町長がいるらしいフロセアの役所にやってきた。

 俺達は町長に招かれた旨を役所の受付の人に伝えると、入り口で少し待つように言われた。



「どうしてバルきゅんとエナたん、そんなに急ぐの~?」

「そうだな、ちょっと急ぎの用ができたんだ。これからは一刻も無駄にはできない」

「そっか、何か大事なことがあるんだね~。分かった。ボクに協力できることあったら遠慮なく言ってね~」

「そうか、ありがとな」



 深く事情を聞いてこなかったエルンなりの配慮を感じた俺は、素直に感謝の言葉を伝えた。



 しばらく待っていると役所の人に町長室まで案内してもらえることになった。

 そして俺達は町長室へとたどり着く。



「ここが町長室になります。中へどうぞ」



 扉が開かれ、俺達は町長室の中へと入っていく。



「おお、あなた達が町の危機を救ってくれた方々ですか! わざわざこんな辺境の地までご足労いただきありがとうございます! ささっ、どうぞお座りください!」



 町長の勧められた通り、俺達は町長室のソファーに座った。

 木製の建物にソファーって何か違和感があるのだが、ふわふわしていて気持ちいいのでよしとする。



「皆様がフロセアの地にお越しになったのは何か理由があるのでしょう? よろしければお聞かせ願いますか?」

「そうだな、俺がフロセアに来たのは生命の若葉を手に入れるためだ」

「生命の若葉、なるほど。必要ならばこちらで用意させてお渡しできますが?」

「そうなのか、それは助かる。だが、貴重な物なんじゃないのか? そんな簡単にもらってもいいのか?」

「ええ。確かに貴重な物ではありますが、もしこの町が腐食してしまったら途絶えてなくなっていたもの。あなた方に渡す位どうってことありません」



 どうやら生命の若葉はもらえることになりそうであった。

 時間がない俺にとってはありがたい話である。



「実はこの部屋に生命の若葉が一つあるんですよ。それをお渡ししましょう」



 そう言った町長は立ち上がり、部屋の隅にある小さな植木鉢をとってきた。



「これが……生命の若葉なのか?」

「はい、そうです。ただの芽にしか見えないでしょう? でもこれが大いなる土地の浄化をしてくれる、生命の源ともなるものなのです」



 確かに見た目はただの植物の芽に過ぎないし、そんなすごいものには感じない。

 でもこれがレンを救うために不可欠なものなのだと思うと何か胸の高鳴りを感じる。



「……もらっていいんだな?」

「はい、どうぞ。この町を救ってくださったのですから遠慮することありませんよ」



 こうして俺は双竜の奇跡に必要なものの一つ、生命の若葉を手に入れることができた。

 町長と少し話してから、お礼を言い、俺達は役所を後にした。

 町中を歩いているときに俺は二人に素朴な疑問をたずねる。



「エルンもエナも、自分の故郷にいなくていいのか? しばらく帰れなくなるぞ?」

「大丈夫だよ~研究室のみんなも分かってくれるだろうし、心配ないよ~」

「私は、大丈夫」



 心配は無用とでも言うかのように即答する二人。

 そこまで決心をしてくれているなら俺がとやかく言う必要はないだろう。

 なら次の目的について話すか。



「精霊の涙が必要なんだが、精霊の涙について知っていることはないか?」

「う~ん、知らないなあ~。精霊に関係するものなんだろうけどね~」

「その未来は見えてない。分からない」



 頼みの綱のエナも精霊の涙について知らないようだ。



「エナが知らないってことは、エナが見た未来の俺は精霊の涙を集めていなかったってことか?」

「いや、そういう訳じゃないと思う。未来の全部が見える訳じゃないから……」



 未来の俺が精霊の涙を集めずに不完全な状態で双竜の奇跡を起こそうとしていたならば、失敗するのも無理はないだろう。

 ちょっとそのことを期待していた俺がいた。



「え~エナたん未来が見えるの~? すごいすごい! どんな風に見えるの~?」

「突然切り取られた未来の一部見える感じね。それで見た感じ、未来のバルグは全部必要なものを集めていたと思う。何か欠けている状態で無理やり儀式を行ったような様子には見えなかった」



 未来の自分の失敗の原因が時間経過以外にあることに期待していたから、少し残念だった。



「ねえ、エナはどうしてバルきゅんのことバルグっていうの~? バルきゅんはバルファっていうんだよ~?」

「あっ、ごめん、つい……」



 エナ……

 まあこれも良い機会か。

 エルンも一緒に旅する仲間になる訳だし、俺の本当の正体や、目的を伝えることにしよう。


 こうして俺はエルンにこれまでの経緯を話す。



「そうなんだ~そういう事情があったんだね~それじゃあもっとほっとけないよね~」

「騙してたってことで怒ったりしないのか?」

「バルきゅんに何か事情があることは分かってたし、そんなの気にしないよ~それにバルきゅんはバルきゅんで変わらないからね~」



 まあ、バルという二文字は変わってないからなと内心ツッコミをいれる。

 なんかエルンって無神経なようで気遣いできる部分もあって何かよく分かんないなと思うのだった。



「私も、もっとバルグを助けたくなった」

「ああ、ありがとな。それよりもこれからどうするかなんだよな。精霊の涙について知ってるやつがフロセアにいるんだったら聞き込みをすればいいんだが」

「私も知らないことだし、多分知ってる人はいないと思うけど、手分けして探してみる?」



 手がかりがない以上、そうするしかないだろう。



「そうだな。じゃあ俺は正面にいる人から聞いてみる。エナは左、エルンは右の道を頼む。ある程度聞き終わったらここに集合な」

「分かったよ~」

「ええ」



 こうして俺達はフロセアの住民に聞き込みを開始した。




 俺達は多くの人に聞き込みをして頑張ったのだが、目ぼしい成果は得られなかった。

 だが、ちょっと気になる情報があった。



「河童の村に立ち寄ったときに妖精の目撃情報を聞いたことがあるって言っていた人がいたよ~」



 妖精の目撃情報か。

 精霊を使役する妖精に会えれば、精霊の涙についての有力な情報を得られるに違いない。

 これはかーぱぁ村に向かう必要がありそうだ。

 借り物を返す必要もあるからな。

 そうなると、かーぱぁ村に向かう前にミ・ザーカ村で借り物を返してもらわないと。


 行くべき所が決まったら早速行動である。

 俺達はフロセアを離れて、森から抜けた。

 そして人がいなさそうな場所に行き、変身魔法を解いた。



「バルきゅんってすっごい大きいよね~びっくりしちゃうよ~」

「エルン、前みたいに俺に変なことしたらただじゃおかないからな」

「わ、分かってるよ~ボクだって大変な目にあったからもう懲りてるってば~」

「大丈夫。いざとなったら私がエルンを止める」

「そうか、頼りにしてるぞ、エナ」

「ちょっと~なんでボクが厄介者扱いされてるの~!?」



 一通り談笑した後で、竜の姿に戻った俺にエナとエルンを乗せる。


 そしてかーぱぁ村を目指して俺は飛び立つ。

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