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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
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26.汚染問題の解決

 建物に入った俺達は、目的にしている地下8階の一つ上の階、地下7階の一室に入った。

 地下8階の奴らを逮捕する為にクーリが地下7階の研究室に協力を要請し、準備に使う部屋を借りているのだ。



「では作戦を告げます。キータは地下8階で騒ぎを起こして人の目を引き付けてください。私はその隙に汚染物質が流されている部屋に侵入します。バルファさんは私の護衛を、エルンは周りの人に気づかれにくいように音を遮断したり、見張りをお願いします」

「分かった。作戦終了したらこの部屋に戻ってくればいいよな?」

「ああ、そうしてくれ。騒ぎが一段落したらキータは自宅に帰ってくれてもいい」

「やっぱり長期戦になるのか?」

「多分な。早く現場をおさえることができたらいいんだが……」



 そうクーリとキータが話す。

 クーリはキータに対してだけはため口なんだな。

 二人はだいぶ仲が良いようだ。



「じゃあ早速行ってくるよ」



 そう言ってキータが部屋から出ていった。


 キータが出て行ってから数分後、俺達も地下8階へと向かうことにした。





 俺達三人は研究所の地下8階へとやってきた。

 地下8階では何やら慌ただしく人が走り回っている様子が見える。

 キータが恐らくうまくやってくれているのだろう。



「さあ、今のうちに急ぎますよ」



 クーリが俺とエルンにこう耳打ちした後に走り出す。

 俺とエルンはクーリの後をついていった。


 クーリは迷うことなく、ある場所を目指しているようだった。

 そしてある扉を開き、中へと入っていく。

 俺達もクーリに続く。


 部屋の中には段ボールが積まれていたり、実験装置らしきものがたくさん置かれていた。

 どうやら俺達は物置部屋に入ったようだ。

 クーリはその部屋にある灰色の棚の前で立ち止まった。



「ここが怪しいですね……鑑定眼ジャッジアイ!」



 クーリが呪文を唱えると、クーリの目が赤く光る。



「やはり、ここが入り口になっていますね。バルファさんかエルンさん、軽く火属性の魔法をこの棚に撃ってくれませんか?」

「棚に撃つ……? よく分からないがやってみよう。火球ファイアーボール!」



 俺が呪文を唱え、火の玉が棚に当たると、棚が赤く変色し、棚の中央に直径一メートルくらいの円型の穴が空いた。

 あれっ、これやりすぎちまったんじゃ……?



「予想通りですね。この穴が塞がる前にさっさと奥へと向かいましょう」



 クーリは穴が空いても全く動じず、そのまま穴をくぐって先に進んでいく。

 俺とエルンも穴をくぐってクーリを追う。



「クーリ、なんか棚に穴空いちゃったんだがやりすぎだったか?」

「いや、上出来ですよ。穴が空くのは仕様なので気にすることはありません。あの穴はしばらく経てば自然と塞がるようにできていると思いますよ」



 穴が塞がるだって?

 疑問に思った俺は、後ろを振り向いてみた。

 すると、遠目ではあるが穴がだいぶ小さくなっているように見えた。

 どうやらクーリの言う通りのようだ。


 隠し通路を進んでいくと、少し広めの空間にたどり着いた。

 そこには水が噴き出して、川のようになっているものがあった。



「着きました。恐らくこの川みたいなものに汚染物質を捨てて処理していたのでしょう」

「そうなのか、でもどうしてそんな面倒な捨て方するんだ? 直接排水溝にでも捨てればいいんじゃないか?」

「法律がなければ他の人もそうしているでしょう。でも、私達には法律があって、研究所の排水施設に汚染物質が流れていないかチェックする装置があるので、安易に汚染物質を流させない仕組みがあるのですよ」



 どうやら、環境を保護するための法律が賢猿族にはあるらしい。

 そして取り締まる為の測定装置を各研究所の排水施設に取り付けているから違反をしたらすぐに分かってしまうのだろう。


 

「普通の排水溝に捨てたら測定装置に検知されてバレてしまうから、自分達で独自に排水溝を作ったっていうことか?」

「そういうことですね。排水溝を作るような時間があったら、その時間を水を浄化する研究にでもあてればいいと思うんですけど」

「まあ、確かにそうだな」

「……皆さん、そろそろ隠れる準備をしましょう。決定的瞬間をとることが目的ですから、見つかってしまっては意味がありません」



 俺達は空間に転がっている大きな木箱の後ろあたりに隠れることにした。

 また、例の研究者が来ても分かるようにクーリは監視装置を隠し通路に設置していた。

 後は身を潜め、じっと決定的瞬間を待つのみ。

 

 ちなみにクーリは決定的瞬間は記録装置を使って記録すると言っていた。

 本当に賢猿族の技術力って凄いんだな。



 しばらくは全く変化はなかった。

 まあ秘密の部屋みたいなものだし、そんなに人の出入りがあったら逆におかしい訳だが。

 だが、数時間ほど経ったところで、動きがあった。



「来たようですね、このままじっとしていましょう」


 

 俺達はじっと身をひそめる。

 すると入口に現れたのは二人の賢猿族の研究者だった。



「ふぅ。なんでこんなところまで来ないといけないんだ……」

「仕方ないだろう、俺達が下っ端なんだから。このおかげで俺達は他の研究室よりも多くの研究費が使えるんだし」



 現れた研究者は下っ端のようだ。

 上司や先輩から汚染物質を流してくるように指示されたんだろうか?



「こんな危ない仕事したくないんだけどな……まあさっさと終わらせようぜ」



 そう言った一人の男が川の近くに座り込む。

 そして白衣にあるポケットから液体の入った試験管を取り出し、川に液体を捨て始めた。



「それよりもさっきのボヤ騒ぎ、一体何だったんだろうな? 通路に火事の原因になるものなんてないから誰かが放火したんだろうけど」

「まあ、考えても分かんねえし、どうでもいいんじゃねえか? それよりも今日はさっさと帰ることを考えようぜ」



 二人で隠し持っていた試験管に入っていた液体を川にたれ流す。

 そしてしばらくすると、二人は立ち上がった。

 おそらく汚染物質を捨て終わったのだろう。



「じゃあ、私は行く。何かあったら助けに来てほしい」



 クーリは俺達にそうささやき、隠し通路の出入口に立ち塞がった。


 

「君達、汚染物質を勝手に捨てるのは犯罪だよ? 大人しく来てくれるね?」



 二人の男はそう言うクーリを見て驚いた様子であった。



「け……警察!? なんでこんな所に!?」

「うわぁ、俺達終わったな……なんでこんなことになるんだ……」

 


 こうして男達はクーリに反抗することもなく、あっさりと捕まることになった。

 戦いを覚悟していた俺はちょっと拍子抜けしたが、早めに解決できたのでいいことだろう。


 また、クーリが二人の男の発言や川に汚染物質を流す様子をとった記録装置によって、二人の男が所属する研究室は大幅な予算減、一定期間の研究禁止が言い渡されたそうだ。

 しっかりと処分がされるので、川に汚染物質を流すような研究者はしばらくはいなくなるだろう。

 一安心である。


 こうしてアクアリザードが悩んでいた川の汚染問題は解決された。

 俺やアクアリザード達は一日エルンの家で休んだ後、それぞれエプール村から出発することにした。

 問題が解決したことで、ミリーナ含むアクアリザード達はミ・ザーカ村へと帰るようだ。

 


「ありがとうございます。このご恩は決して忘れません。何か困っていることがあれば言ってください。すぐに駆けつけますので!」

「ありがとう、またどこかで会ったらそのときはよろしくな」



 俺はそう返事をして、エプール村を出ていくミリーナ達を見送った。

 そして落ち着いたところで俺はエルンに話を切り出す。



「エルン、そういえば生命の若葉を知ってるって本当か?」

「うん、知ってるよ~生命の源泉フロセアにあるんだよ~」



 どうやらエルンは本当に生命の若葉のことを知っているらしい。

 でも生命の源泉フロセアなんて聞いたことないんだが……



「フロセアって初めて聞いたんだが、実在するのか?」

「う~ん、昔は確かに実在したんだけど、今は微妙かな~」



 実在するか微妙って意味分からないんだが、どういう意味なんだろうか?



「実在するか微妙ってどういうことだ?」

「実はね~フロセアは腐敗の地ブロドーアの近くにあるんだけど、今はブロドーアの汚染がフロセアを飲み込みつつあるから、フロセアが既に滅んじゃってる可能性があるんだよ~」



 ブロドーアの汚染がフロセアを飲み込むだと?

 つまり一刻の猶予もないということか。

 もたもたして生命の若葉が手に入らないなんて、そんなのは御免だ!



「ありがとう、エルン。俺は急いでフロセアに向かうからここでお別れだ! じゃあな!」

「あ、バルきゅ―――」



 何か話そうとするエルンをその場に取り残し、俺は大急ぎでエプール村を飛び出した。

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