25.クーリ
朝起きてから俺は早速、エルンから汚染物質流しの犯人にどうしたら止めさせるかを聞いてみた。
「エルン、どうしたら汚染物質の流出を止められると思うか?」
「そうだね~犯人を逮捕できれば手っ取り早いかもね~」
「逮捕か……。犯人が汚染物質を流している所に警察が偶然出くわして逮捕できたらいいんだけどな」
「おっそれは良いアイデアだね~実はボクの知り合いに警察の人がいるんだ~その人が同行してくれればきっとできるよ~」
えっ、そんな事できちゃうのか!?
エルンって意外と人脈あるんだな。
ちょっと驚いた。
というか、そんな単純にいくものなのか?
「俺は冗談で言ったつもりだったんだが。警察が調査をしようとして正面から入っても多分奴らは隠蔽しようとするだろうし、なかなか見つからないんじゃないか?」
「べつにだれも正面から調査するなんていってないよ~裏口からこっそりと潜入して、決定的瞬間をパチリ。それで十分だよ~」
警察がそんなんでいいのか、と思ったが賢猿族の世界では全然アリなのだろう。多分。
作戦が成功する自信はないのだが、とにかくここはエルンに任せることにした。
俺達は外に出て、エルンにしばらくついていく。
すると俺達の方に駆け寄ってくる人がいた。
「おー、エルンだ! 無事だったのか! 心配したんだぞ!」
「キーたん、心配かけてごめんね~」
「エルン、お前がふらっといなくなるのはいつもの事かもしれないが、教授をこれ以上心配させるなよ……」
「えへっ、ごめんごめん!つい研究に夢中になっちゃってね~」
「まあ、フィールドワークも大事だから俺も止めはしないけどさ、あまり頑張りすぎるなよ」
「分かってる分かってる~」
なんか、エルンとだいぶ仲良さそうだな。
「そういえばエルン、この人はエルンとどういう関係なんだ?」
「この人はキーたんだよ~ボクの親友~」
「あっ、そんな変な名前じゃなくてですね、キータと申します。お初にお目にかかります」
やっぱりエルンの変なあだ名呼びは健在という所か。
俺に対してだけではなかったようだ。
「キーたんはね~ボクが所属する研究室の同期でボクのことを色々と世話焼いてくれるんだ~」
「まあ、腐れ縁ってやつですね……」
ハハハ……とキータは苦笑いを浮かべながら言う。
「そういえばキーたん、クーたんに用事あるんだけどどこにいるか知らないかな~?」
「クーリか。なんであいつに用なんてあるんだい?」
「う~ん、そうだね~バルきゅん、話しちゃってもいいかな~?」
相変わらずバルきゅんという言い方にモヤモヤするが、うなづいておいた。
エルンから事情を聴いたキータはエルンと同様にそこまで驚かなかった。
「なるほど、確かにそんなことしている連中がいてもおかしくないですし、それであなた方が困っているのであれば放っておけないです。あなた方に協力しましょう」
「協力感謝するよ。キータ達の種族を疑うようなことして悪いな」
「いえ、別にありそうなことですし、気にしないですよ。とにかく、クーリに協力を取り付けにいかないとですね」
こうして俺達はキータについていき、クーリの所まで向かった。
「着きましたよ。ここにクーリがいるはずです」
俺達は一つの建物の入り口に立っていた。
この建物、全面ガラス張りで賢猿族の高い技術が見受けられる。
入り口にはコーボネルドにあったようなセキュリティゲートがあったのでそこを通過する。
「では僕はクーリと会えるように手続きしておきます。みなさんはその辺にある椅子に腰かけたりして休んでいて下さい」
キータはそう言うと、受付の方へと向かっていった。
「暇になっちゃったな~」
そうエルンはぼやく。
確かにただ待っているだけというのも退屈だよな。
せっかくなのでエルンに話を聞くことにしようか。
「そういえば、エルンとクーリはどういう関係なんだ?」
「そうだね~クーりんとの直接的な関係はあまりないから友達の友達ってところかな~でも結構紳士的で優しい人だから信頼できると思うよ~」
クーリはキータの友達っていうところか。
「キーたんが信用しているような人ってみんなボクに優しくしてくれるし、良い人ばっかりなんだ~」
「おお、それは良かったな」
「うん。キーたんがいるからなんとかこの村で頑張っていけてるんだ~」
キータはエルンにとって大事な人らしい。
でもキータはエルンとは腐れ縁だって言ってたからなんか複雑な事情がありそうだ。
まあ、深入りしない方がいいだろう。
「そういえばバルきゅんってどうして旅してるの~? 何か欲しいものでもあるの~?」
旅の目的か……もちろん目的について全部話すわけにはいかないが、探し物についてエルンに聞くチャンスだから活かさない手はないだろう。
「そうだな、ある伝説のアイテムを探しているんだ」
「伝説のアイテムってなに~?」
「その名は生命の若葉! 名前しか聞いたことのないんだけどな」
本当はレンを救う為に旅をしているわけなんだが、生命の若葉を探す旅をしているということにしておいた。
別に生命の若葉を探す旅でもあるので嘘は言っていない。
「生命の若葉かあ~ボク心当たりあるよ~!」
えっ!?
エルンの予想外の反応に俺は戸惑いを隠せない。
俺が戸惑っているうちにキータともう一人の賢猿族がやってきた。
「皆さん、お待たせしました! こちらがクーリです!」
「クーリと申します。今回は潜入捜査にご協力感謝致します」
なんか俺達が賢猿族の警察に協力する形に代わっている気がするが、大したことはないので気にしないことにする。
その後、俺達はクーリと軽く自己紹介を終えた。
「早速、行動に移りたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「作戦とか練らなくていいのか?」
「心配いりません。このようなケースは慣れていますから」
そんな簡単にいくものなのか不安を感じる。
だが、クーリが全く平然としていることから自信があるのだろうと推測できるし、問題はないようにも思える。
こうして俺達はクーリの先導に従って、汚染物質流出の容疑のある者の研究室へ侵入することにした。
汚染物質を流している容疑のある人がいる研究所は、エプール村の研究施設が集まる建物の地下8階にあるらしい。
俺達はその建物の入り口付近に着いた。
ちなみに潜入捜査をするのは、俺、エルン、キータ、クーリの四人だ。
ミリーナ達アクアリザードはエルンの家で待ってもらうことにしている。
数が多いと目立ってしまうからな。
「バルきゅん、着心地はどう~?」
「ああ、意外と悪くない」
潜入捜査は研究所の人に成りすまして行うことになっている。
だが研究所には賢猿族の人しかいないため、ランドリザードの姿をしている俺がそのまま侵入すると目立ってしまう。
そこでエルンの形状研究の出番という訳だ。
エルンの研究の成果物として賢猿族に擬態できるものがあった。
それを俺が使うことで、俺が賢猿族の見た目になるという訳だ。
伸縮する素材で作られていて、体にフィットしてくれる。
着心地は悪くなく、重さもそれほど感じない。
「こんなもの作れるなんて、エルンはすごいんだな」
「えへへ~もっと褒めてくれてもいいんだよバルきゅん~」
「それでは潜入しますよ、覚悟はいいですね?」
クーリの言葉にうなづいた俺達は、建物の中へと入っていく。




