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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
26/98

24.エルン

 汚染物質の発生源をたどっていくと、ある排水溝に行きついた。



「この排水溝から汚染物質が流れ出ているな」

「そうですね。確かにこの先から流れているように見えます」



 排水溝の流れ出る排水溝を見つけたのはいい。

 だがこの汚染物質の元をたどるにはどうすればいいのだろうか?

 排水溝を壊して汚染された水を泳いで突っ切るなんてことはしたくないしな……


 仕方ない。

 多少遠回りにはなるが、この辺りに住む種族の住処をあたろうか。



「排水溝がここにあるっていうことはこの近くに住んでるやつが汚染物質を流しているんだろう。ミリーナ、この辺りにはどんな種族が住んでいるんだ?」

「そうですね、賢猿族ワイズエイプがこの近くの山に住んでいるという話は聞いたことがあります」

「そうか、とりあえずその賢猿族の住処をたずねてみようか」



 俺達は賢猿族の住処を目指し、山を登ることにした。





 俺達は川の上流をたどっていく形で山を登って行った。

 そうすることでいつでも川から水分補給ができて便利なんだよな。

 この川の水は、汚染物質が流されているよりも上流の水だから、汚染もされておらず、飲む分に問題がないのだ。

 食糧は山に住んでいる動物を狩り、火で炙ったりして食べる。


 日が暮れてきたので山の中でも比較的な平坦な場所を選んで今日の寝床にすることにした。

 狩ってきたイノシシを焼いて夕食をとる準備をする。


 じっくりと焼いていると香ばしい肉の香りが辺りに広がる。

 なかなかいい香りだ。

 早く食べたいな。



「に……にくぅ~」



 ん?

 何だこの声?

 俺は声がした方を振り向くと、そこには大きな岩があった。

 そして岩の後ろから今にも倒れそうなほど痩せ細った猿がひょっこりと出てきた。



「もしかしてお前、賢猿族か?」

「とにかくにくぅ~」



 話にならないな。

 どうやらよほど腹が減っているらしい。

 仕方ないから少し分けてやるか。



「―――って全部食ってんじゃねえよ!? 俺まだ少しも食ってねえのに!?」

「えへへ~ごめんね、トカゲさ~ん」



 結局焼き上がった肉は全部その猿が食べてしまった。

 なんという食欲なのだろう……

 俺達が食べる分の肉がなくなってしまったので数人のアクアリザードが狩りに行った。

 俺も手伝おうとしたが、ミリーナに休んでいていいと言われたので、お言葉に甘えることに。

 俺はその場に残って猿から話を聞くことにした。



「いやぁ~こんなところで食事にありつけるなんて思わなかったよ~」

「そうか、良かったな。それよりも聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「なんでも聞いてね~あ、ボクはエルンっていうんだよ~よろしく~」

「そうか、エルンっていうのか。俺はバルファっていうんだ。よろしくな。ところでエルンは賢猿族なのか?」

「そうだよ~この山にあるエプール村に住んでる賢猿族だよ~」

「エプール村ってどこにあるか分かるか?」

「分かるよ~案内してもいいよ~」



 エルンの喋り方はなんか気が抜けて調子が狂うものの、難なく賢猿族の村に案内してもらえることになった。

 アクアリザード達が狩ってきた動物を調理して食事をとった後、その日のうちに村にたどり着けるようにすぐ出発することにした。



「エプール村に着いたよ~」



 エプール村に着いた俺は、その村の光景に驚いた。

 まず、家がコンクリートでできているのだ。

 それは賢猿族に高度な建築技術があることを物語っている。

 そしてそれだけではなく、機械があちこちに見られるのだ。


 村の案内所のようなところに村の様子を映し出す画面があるようだ。

 監視カメラが村に設置されているのだろう。

 あまりに発展しているので村と呼ぶと少し違和感がある。

 俺の住んでいる天空竜国にひけをとらない技術力なんじゃないだろうか、この町は。



「すごい発達した村なんだな」

「そうでしょ~? ボクたちの研究の成果だよ~」

「お前も何かの研究をしているのか?」

「そうだね~形状についての研究をしてるよ~」



 なんか雰囲気とは違ってなんか真面目そうな研究をしているようである。

 だが、形状の研究って何してるんだ?

 いまいちピンと来ない。



「形状の研究ってよく分からないんだが、例えばどういう研究してるんだ?」

「そうだね~例えばリンゴにそっくりな形のものを作るとかかな~色をしっかりと塗ると本物のリンゴみたいになったりするよ~」

「そうか、結構すごいこと研究してるんだな」

「どうなんだろね~でもボクはまだまだうまく作れないんだけどね~てへ~」



 てへ~?

 自分で言うのか?

 というか、こいつってボクっていってるけど男じゃないのか? 女なのか?

 声も見た目もどっちともとれる感じなので判断つかないのだ。

 どこからツッコミいれればいいのやら……



「エルンって……もしかして女なのか?」

「可愛い女の子に見える~? 見えちゃう~?」



 そう言ったエルンがセクシーポーズをし始める。

 なんかウザい。



 エルンが指差した先には二人組の男が話をしながら歩いていた。



「ほら、あのオカマ猿、また変なやつを連れてきたぞ」

「本当迷惑なやつだよな、あいつ。さっさとこの村から出ていけばいいのに」



 男達の言葉を聞いた途端にたまらず俺の体が動き出す。

 しかしその動きは制止される。



「バルファくん、優しいんだね~でもこんなのは慣れっこだから気にしなくていいんだよ~」



 エルンがそう言って俺を止めたのだ。



「でもそんな悪口許しちゃ駄目だろ! お前、こんなこと言われ続けて苦しくないのか!?」

「大丈夫~! だいじょうぶ~だから、もういいんだよ……」



 結局俺はエルンに止められ、怒りがおさまるまでその場で立ち尽くしていた。

 しばらく経つと、エルンが口を開く。



「ボクが形状について研究しようと思ったのも、こうした環境のおかげなんだ~」

「環境のおかげ?」

「そう。形状の研究を極めるとね、色んな形を本物のように作ることができるんだよ~もちろん自分の体もね~」

「そうか、色々大変だな」

「大変だけど、夢の為だったらいくらでも頑張れちゃうかな~」



 そう、エルンは笑顔で言い切った。

 実は最初、エルンに対して嫌悪感を持っていたのだが、意外と根性があるヤツだと思って見直した。



「まだまだ未熟だけど、いつか立派な研究者になったらバルきゅんの為に何か作ってあげるね~」



 やっぱりこの調子には慣れないけどな。

 というか、バルきゅんって何だ、バルきゅんって!?



「バルきゅんって何だよ!?」

「だってバルきゅんはバルきゅんだよ~」



 いや、答えになってないから。

 なんかレンがリザースを相手に苦労していた理由が分かったような気がする。



「バルきゅんってなんか恥ずかしいから、バルファって普通に名前で言えよ!」

「え~ヤダ~バルきゅんって呼ぶったら呼ぶ!」



 しばらくその場でエルンと言い争いをするのだった。



「あの……そろそろ良いですか?」



 そう口を挟んだのはミリーナだった。

 その言葉をうけて周りを見ると、明らかに周囲の人が怪訝そうな顔で俺達の方を見ている。

 事情を知っているはずのアクアリザード達は自分達は関係ないとでも言うかのように、俺達から距離を置いていた。



「あ、スマン、悪かった……」



 エルンと言い争いをしたものの、結局エルンは俺のことをバルきゅんと呼び続けている。

 なんかもうこれ以上注意するのもアホらしくなってきたので気にしないことにした。


 もう夜は遅いからということで宿屋を借りようとしたんだが、エルンの好意でエルンの家にお邪魔することになった。





 エルンの家に着いて、今日一日慌ただしかった俺はようやく一息つくことができた。


 とりあえず、今の状況を整理しよう。


・汚染物質が排水溝から流れ出ていた

・川の上流に向かって進むとこのエプール村に着いた

・エプール村は技術がかなり進展していた

 


 このことから考えると、エプール村の誰かが汚染物質を流しているようにしか思えないんだよな。

 何かの研究で発生した廃棄物を川に流して捨てるなんてありそうな話だ。


 でもこれってエプール村の住民を疑うということなんだよな。

 そうすると、今後は村の住民を敵に回す可能性が高い行動をとる必要があるかもしれない。



「そういえばバルきゅんはどうしてこの村に来ようと思ったの~?」



 エプール村に住むエルンにとっても、これから俺達がやることは敵対行動になるかもしれない。

 だけどもしエルンが協力してくれるなら、一気に犯人にたどり着ける可能性がある。

 エルンの場合、村の人の事をよく思っていないみたいだし、俺達の味方になってくれるんじゃないか?

 ちょっと賭けにはなるけど、正直に話してみよう。


 こうして俺はここまでの経緯をありのままに話した。



「そうなんだ~だとすると、どこかの研究室が違法に薬物を処理している可能性が高いね~」

「俺がエルン達、賢猿族を疑っていることは気にならないのか?」

「う~ん、別にありそうなことだし、実際アクアリザード達がそんなに困ってたんだったらボク達が悪いのは当然だよ~結構ここの研究者って、外の世界に疎いから、川に薬物を流して下流に住む生き物が困ることなんて気にしない人がほとんどだろうし~まあ、大半の研究者は法律を破ってまで川に薬物を流したりはしないんだけどね~」



 あれ、意外とあっさりしているんだな、エルンって。

 まあエルンに関係ない人が犯人ならば、そんな反応になっても不思議ではないか。



「それにボク、自分の民族好きじゃないし~。バルきゅんの方がずっと大好きだよ~!」

「民族好きじゃないっていったって、普通ここの世界の魔物は他種族と関わらないのが普通なんだぞ?」

「そんなことは知ってるよ~! だからこの村で何とか頑張ってるんだから~!」

「あっ、そうだよな……ごめん」

「いいんだよ気にしなくて~その代わり、ボクをバルきゅんの所につれてって~!」

「いや、それは断る」

「なんでよ~バルきゅんのケチ~!」



 ブーブー文句をいうエルン。

 エルンがこの村にいるのが辛いのは分かるが、俺は俺でやることがあるし、連れて行くわけにはいかないんだよ。


 それからエルンやミリーナ達と雑談をしてから眠りにつき、一日を終えることになった。

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