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異世界で魔物生活  作者: はちみやなつき
第二章 バルグの冒険
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21.地竜

 恐らくレンの魂は救えただろうが、この後はどうするか悩んでいる。

 白い宝玉にレンの魂が入っていそうとはいえ、俺が赤い宝玉に閉じ込められたときのように強制力が働くものに閉じ込められている訳じゃないだろう。

 あまりもたもたしているとレンの魂が外気に拡散して取り返しがつかなくなるような気がするのだ。


 一応レンが肉体を取り戻して生活できるような方法に心当たりがあるのだが、あまり気が進まない。

 でも、それしか方法が思いつかないので、その方法を実行するしかないだろう。


 東の方向にずっと飛んでいた俺は、その方法を実行するために訪れる必要のある洞窟に到着した。



『ここが地竜がいるとされる洞窟か……』



 俺が考えているレンの復活方法には地竜の協力を得ることが欠かせない。

 地竜の協力を取り付けるために地竜が住むと言われる洞窟まで飛んできたという訳だ。


 しかし、地竜と俺のような天竜の仲は非常に悪い。

 これが俺が考えているレンの復活計画における最大の障壁であり、計画を実行する気が進まない理由でもある。


 でもそんな障壁があってもレンを復活させられるなら乗り越えてみせようと思っている。

 それほど俺にとって、レンは大事な存在なのだから。





 俺は天空竜国ヴェルナーダの王子であった。

 そのためか、教育がしっかりと行われ、一般人との関わり合いはほとんどなかった。

 俺と関わる人はみんな目下の者ばかりでとてもよそよそしくて心の距離を感じていた。

 自国にいるときはそのような関係しかないようなものだった。


 魔法使いにはめられて赤い宝玉に閉じ込められてからも心が満たされない時期が続いた。


 レンと出会った赤い宝玉部分は俺の意識部分が入っている。

 だが、他の赤い宝玉部分にもわずかに俺の意識が混じっていたようであった。

 そして赤い宝玉に封印されてからレンと出会うまでの間、俺は様々な人、魔物に出会って意識を共有してきたことが分かった。


 しかし、いずれの人や魔物からも道具や力の根源としての扱いしかされず、俺は虚しさを感じていた。

 この虚しさの苦しみは俺が全ての意識部分を取り戻したからこそより明確に分かる。

 そしてレンが俺のことを対等に扱ってくれていたことがいかにありがたいことだったかよく分かるのだ。


 レンとの出会いは俺の強引な融合で起こしたもので、良い出会いとは言えたものじゃなかった。

 でも一緒に戦ったときの一体感、日常を共有する楽しさ、戦いを任せてくれる信頼感など今まで味わったことのないものをレンは与えてくれたのだ。

 これはレンが俺のことを対等に、相棒として扱ってくれたことの証であり、今まで俺が関わってきたどんな人とも違う、深い絆で結ばれた関係なのだと思う。


 そんな絆を取り戻して、またあの楽しい日々が戻るんだったら、多少の苦労だって乗り越えて見せるさ。






 俺は洞窟の中を歩き回っていたが、一向に地竜の住処には到達しそうにない。


 暗くてじめじめしたこの感じ。

 レンと出会った鍾乳洞を思い出すな。

 そのときは確か、壁の一部が変色していた所があって、そこを押したら外への道が見つかったんだった。

 そう思いつつ、辺りを見渡すと、壁の一部が変色しているところがあった。


 洞窟の隠し通路ってこんな風に変色しているものって決まっているのか?

 そう疑問に思いながらも、変色した壁を押してでてきた通路を通って俺は先へと進んだ。


 同じような仕掛けを潜り抜けてしばらく進むと広い空間にでる。



「汝、何故ここへ来訪する?」



 どこからかそうたずねてくる低く重たい声が洞窟中に響き渡る。



「俺の相棒を復活させるためさ!」

「それは我が地竜と知っての来訪か?」

「ああ。お前達地竜の力が必要なのさ、協力してくれ!」

「我が力を欲するのならば、資格があることを示すがよい」



 すると奥から三人の地竜が現れた。

 多分この地竜に勝つことが資格を得るための条件なのだろう。

 ”力こそ全て”の地竜らしいな。


 ちなみに天竜と地竜の仲が悪い理由は、”力こそ全て”の地竜と”知恵こそ全て”の天竜で考え方が全然違うことにある。

 力を重視しない天竜を地竜が馬鹿にし、知恵を重視しない地竜を天竜が馬鹿にしているのだ。

 本当に馬鹿みたいな話だ。


 とにかくそんな理由で何年、いや何千年も地竜と天竜は会うことはなかったらしい。

 そもそも天竜がその期間中ずっと空中の都市に引きこもっていたのだから、会わなかったのは地竜に限らない訳だけど。



 三人の地竜が俺に襲い掛かってきたので、俺は空を飛んで攻撃をかわす。

 地竜は戦闘経験が豊富だからか、屈強な肉体をしている。

 動きも俊敏だ。

 このまま身体能力のみを使って戦い続ければこちらが数からしても不利だろう。

 まあ別に俺がこの地竜よりも身体能力でも劣っているとは思わないが。


 だとすると、こちらがすぐれている所で勝負するしかない。

 地竜が重視しない、知恵を使ってな。

 別に力が全てだとも知恵が全てだとも俺は思わない。

 両方大事だと思うしさ。


 今回はその知恵を駆使すれば多少の不利な状況は簡単にひっくり返すことができるだろう。

 出し惜しみをする必要はあるまい。



身体弱体化ボディウィークニング!」



 肉体弱体化呪文を三体の地竜にかけてから、



炎熱爆発エクストリームヒートブラスト!」



 強烈な広範囲の爆発攻撃を地竜へ向かって放つ。

 地竜の強靭な肉体は魔法攻撃に対する耐性もあるはずだが、攻撃前に弱体化魔法をかけたからか、一回の爆発攻撃で三体とも倒れてしまった。

 まあ、少し距離をとって呪文を放ったので殺しはしていないとは思うが。



「見事だ。我が一族の中では弱い三人を相手にしたとはいえ、一撃で葬るとは。汝、名は何という?」

「バルグだ。よろしくな」

「バルグ……か。なるほど、天竜の王子だな。どうりで強いはずだ」



 そうやりとりをした後で奥から一人の地竜が現れる。



 その地竜は先ほど倒した三人の地竜と比べるとかなり大きい。

 俺の三倍以上の大きさはあるだろうか。

 体も三人の地竜よりもさらに強靭なものであるように見えるし、所々に見られる体の傷跡は数々の激しい戦いを乗り越えてきたことを示している。

 見ているだけで威厳が感じられるな。



「我は地竜の長であるジールダースと申す。バルグよ、改めて問う。何故汝は我らの元へ来訪した?」

「俺の相棒を復活させるためだ。訳あってこの白い宝玉の中に魂が閉じ込められているんだ。そこから早く解放して自由にしてやりたい」

「それは、早く楽にする……殺すという意味か?」

「違う違う! そんなことしたら俺がただじゃおかないぞ! 俺が言いたいのは地竜と天竜が力を合わせたときに起こる奇跡、”双竜の奇跡”を実現させたいということだ!」

「”双竜の奇跡”だと……!? そんなの長年生きた我でさえこの目で見たこともないぞ!?」

「そうかもしれないな。だがそんな言い伝えがある位だ。あり得ない話ではないと思うんだがな」

「ふむ……できるかどうかは分からないが、できることは協力しよう。我はバルグのことを気に入ったしな」

「本当か!?」

「ただし、単なる言い伝えでしかないし、失敗して取り返しがつかない可能性の方が大きい。もしそうなっても……後悔しないんだな?」

「ああ! 万が一にも失敗なんて俺がさせないから心配ないさ!」



 なんて無謀な奴なんだろうという目でジールダースから見られている気はしたが気にしない。

 命に代えてでもレンは復活させる、そう決めたのだから。



「汝の覚悟は受け取った。だが、双竜の奇跡を起こすには多くの準備がいると言われておる。その準備の為に汝に頼み事をしても構わないか?」

「ああ、俺にできることなら全部俺がやっても構わない」

「そうか、では双竜の奇跡に必要となるものを伝えよう」



 ジールダースによれば、生命の若葉、精霊の涙、深紅の宝石が必要なのだという。

 そのうち生命の若葉と精霊の涙を集めてきたらひとまずここに戻ってきてほしいとのことだった。



「深紅の宝石とやらは集めなくていいのか?」

「とりあえずな。これから汝が集める必要があるのは二つでよい」



 よく分からないが、入手の目途がたっているんだろうと思い、それ以上の詮索はしないでおいた。



「それじゃ、俺は旅立つよ」

「ああ、気をつけてな」



 そう言葉を交わし、俺は地竜の住処を後にするのだった。



『意外とうまくいくもんなんだな』



 それが俺の正直な感想だった。


 地竜と天竜の仲はとても悪いことで有名だったので、もっと協力を取り付けるまでに時間がかかると思っていたのだ。

 でも実際は、多少の戦闘を経て自分の力を示す必要があったもののそれ以外はさほど問題になることはなかった。

 もしかすると地竜と天竜は互いに分かり合えないって決め付けてるだけなのかもしれないと俺は思った。


 魔物達は自然と他種族とは分かり合えないという思いこみから他種族の交流を避ける傾向があった。

 天竜はまさにそういう魔物の象徴であり、天空都市という他種族との一切の接触を断ちながら生活している。


 俺も他種族とは分かり合えないものなんだとしばらく思っていたけど、レンと行動しているとそんなことはないと実感する。

 レンの気持ちが分かる俺だから言えるのだが、レンは自分から他種族と仲良くなろうと積極的に動いている訳ではない。

 どちらかというと、他種族のいる場所に巻き込まれてしまったパターンがほとんどだった。


 でもそんなレンをほとんどの魔物は歓迎したり、頼ったりしてきたし、自然と分かり合うことができていたのだ。

 本当はどの魔物も他種族とも分かり合いたいと思っているのではないかと考えてしまう。


 まあ、そんな考え事は置いておいて、今はやるべきことに集中するか。

 生命の若葉と精霊の涙を集めることが必要なんだったな。


 生命の若葉というと、何かの植物に関連するものなんだろうか?

 今まで俺が読んできた本にそんなものの記述はなかった。

 そうすると結構入手困難なものなのかもしれない。


 精霊の涙は、精霊のいるところにいれば手に入りそうだが、精霊ってどこに住んでいるんだろうか?

 フィナがいれば聞けて楽だったんだがと思ってしまう。


 とにかく今は情報が少なすぎる。情報を集めるためにどこか魔物の村とかに立ち寄ろうか。

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