16.コーボネルド観光
朝に待ち合わせだと昨日コルトは言っていた。
具体的な時間を決めなかった僕も悪い。
だけど、それにしても遅いよなぁ……
もうこの世界の太陽も真上に来ている。
それなのにコルトは集合場所にいないのだ。
待ち合わせる図書館を間違えたのかな?
街の人の案内でコーボネルド最大の図書館に一度行ったことがあり、図書館といえばそこだろうと思っていたので、どこの図書館に集合するかまで決めていなかったのだ。
もしかするとコルトの地区の図書館に集合するべきだったかもしれない。
まぁそもそもコルトがどの地区に住んでいるのかすら分からないんだけど。
そんな心配をしていると、遠くにコルトが走ってくる姿が見えた。
どうやら心配は無用だったようだ。
「おーい、レン! 待たせてごめんなー!!」
「僕が集合場所間違えたんじゃないかって心配したよ……」
「いや、ここで合ってるよ! ただ寝坊しちゃってね。待たせてゴメン!」
本当に朝早くから待っていたらどれだけ長い間待つことになったのかと想像すると恐ろしい。
実は僕も結構寝坊していたのだ。
珍しく寝坊して良かったと心の底から思うのだった。
『でも本当にこんなに眠りこんでしまうなんて久しぶりだな……』
確かに元の世界ではゲームをやりすぎて夜更かししたので起きたのが昼過ぎってことはあった。
でもそれはただ寝始めた時間が遅いだけ。
睡眠時間はそれほど長くはならない。
でも昨日に限っては、早く寝たにも関わらず、起きたのは昼前。
多分半日は寝ていたんじゃないだろうか?
だからこそ起きたのが昼過ぎということに自分でも驚いていた。
自分でも寝すぎたと思う。
そして他にも気になることがある。
『バルグ、こんなに寝すぎちゃうなんてなんか僕変だよね?』
『………………』
そう。
起きてからバルグの返事が全くないのである。
今までバルグに意識して呼びかけていたときにはバルグが反応しないことなんてなかったので心配になる。
昨日から体調悪そうだったし、何かあったのか余計に心配になる。
ただバルグは精神体なので、どういう状態にあるかを確かめる術はない。
バルグに何かあったなら、早く最後の赤い宝玉を取り戻してバルグを元の姿に戻してあげないといけないだろう。
僕の体に取り付くことでバルグにだいぶ負担がかかってしまっていたのかもしれない。
特に赤いウルフ戦ではだいぶバルグの力を引き出させてもらったこともある。
もしかするとその負担でバルグの体調が優れなかったのかもしれないと思った。
今日はコルトとの約束があるし、明日から全力で宝玉集めを頑張るとしよう。
ぶらぶら歩いていると看板に剣、槍、杖のマークの入った建物が目についた。
「もしかしてあれって武器屋?」
「その通り! 入ってみようよ!」
「そうだね、入ってみよう!」
こうして武器屋の中に入っていく。
武器屋の中は何種類もの剣や槍、杖がおかれていた。
「うわぁ、すごい数の武器が並んでる! 盗まれたりしたら大変だなぁ」
「盗まれたりなんかしないよ。そこにあるのは鎖でつながれていて持ち出せないようになっているし、そもそも展示されているのはレプリカだから盗んだところで意味ないのさ」
「そうなんだ。でも本物を飾っていないと価値は分からないんじゃ? デザインだけで決めるものでもないだろうし」
「本物じゃなくても触り心地とか持ったときの感覚は本物とほとんど変わらないから武器選びにはもってこいなのさ。あ、そういえばレン、オレ剣を見ててもいい?」
「うん、いいよ。僕は武器使わないから、コルトが剣選びしている所を見ているよ」
剣が多く展示されている所に着くやいなや、コルトは一本の剣を手に取る。
「おぉー! この剣カッケーな! 値段は……300ガーダ!? やっぱり高けぇな……」
コルトはそう言って剣を元の所に戻す。
そういえばこの世界のお金のことを初めて知ったのはキノーフェ村の宿屋に泊るときだったよね。
そのときは一文無しだったからリザースにお金を借りたっけ。
でも、今の僕は違う。
キノーフェ村の長から30000ガーダという報酬をもらっているのだ。
まあ、その報酬は僕とリザースとフィナの三人で山分けしたので僕の取り分は10000ガーダになるわけだがそれでも十分だと思う。
ちなみに山分けするときに、どうしてゴーレムと戦っていないフィナがお金をそんなにもらうのか議論にはなったが、今後僕達の役に立ってくれることを見越して10000ガーダをフィナにもあげたのだ。
実際フィナは僕達の旅に貢献してくれたし、その報酬に見合う働きは十分にしていたと思うので後悔はしていない。
そもそもこの世界でお金を使うことがあまりないんだよね。
だからちょっとお金に余裕があることもあったりもするので。
「コルト、その剣買ってあげようか?」
「え、レンってこの剣買えるほどの金持ちなの?」
「そういう訳じゃないけど、街を案内してくれるお礼にどうかなと思って」
「街を案内するだけでそんな大金もらうような真似できないよ!」
「そっか、コルトが喜ぶならそれでいいと思ったんだけどな……」
コルトは申し訳ないという反応をして、断ってきた。
でも剣を見た後に槍や杖など他の武器も見たのだが、結局コルトの視線は例の欲しい剣に常に釘づけだ。
そんなに欲しいなら買ってあげるって言っているのに。
「コルト、そんなに欲しいなら買ってあげるよ?」
「……その気持ちはありがたい。だけど町案内でこの剣の対価になるとは思ってはいない。そこでだ。お金を借りるという形で買わせてほしい。それでもいいか?」
「別にそれでコルトの気が済むならいいよ」
コルトは結局、半分はコルト自身のお金で買い、半分は僕からお金を借りることで剣を買った。
買った剣を満足そうにコルトはしばらく眺めていた。
よほど気に入っているんだな、その剣。
お金を貸してあげて良かったと思う。
「お金を貸してくれたお礼にオレのお気に入りの場所に案内するぜ!」
こうして武器屋から出た僕達はコルトのお気に入りの場所へと向かった。




